エバセブ闘牌伝 
ー代打ち集団LeMU−

                              鳴きの虎


第11話 最終局後編 決着

−異端のルールで行われた決勝戦・・・。
 ステージA、ステージBに分けて行われるこの決勝戦では、ステージAにおいて役満を先に和了したチームが、
 ステージBにおいて有利な条件を手にすることができる。
 四暗刻を死に手同然にされつつも、ひたすら可能性を追い続け百万石をテンパイしたホクトと優だったが、
 結局それを成就させることは叶わず、結果天が大三元を和了、ステージAを制した・・・。
 点棒の多寡、力量の差に絶対的な不利を噛み締めつつも、ホクトと優は最後の闘牌へと突き進む・・・。−

天:「親は俺だ。」

−東家天 南家ひろゆき 西家ホクト 北家秋香奈−

黒服:「原田さん、どう思います?」

原田:「・・・順当に行けば、天の勝ちは動かない・・・。前局を制した勢いがあるからな。
だが、あの二人が次は何をやらかすか、それが俺にとっての楽しみでもある・・・。
フフ・・・。素人の分際で、百万石までたどり着いたことには少し俺も驚いた・・・。
さて・・・じっくり見せてもらうとするぜ。」

−原田の予想通り、天がやはり勢いに乗っている。凡手ではあるが、ピンフ、一盃口を4巡でテンパイ・・・。
だが、優も能力を生かし、勝負に行こうとする。
4巡で、優七対子イーシャンテン。−

つぐみ:「七対子とピンフ系の手の対決のようね。だけど、単騎待ちの七対子でぶつかれば、不利は目を見るより明らか・・・。
武だったら、どうする?」

武:「さすがにまだリーチは早急かもな。俺だったら、せめてドラが絡むまでもう少し待つと思うぜ。」

桑古木:「せめて満貫以上は、いきたいところだな。点差の不利を少しでも覆さないと・・・。」

−だが、天が一枚ドラの一筒をツモ・・・。一盃口を崩すこととなるが、さらに凡手を高めるきっかけとなる・・・−

天:「(この手、まだ高まる・・・。リーチは早急だな・・・。)」

−そして次巡、更にドラの一筒ツモ−

春香奈:「(天がドラを2枚重ねた・・・。ピンフ、一筒、ドラ2で既に満貫確定ね。リーチをかけなくても、
直撃で優やホクトを仕留められる。さて、優はどうかしら?」

−捨て牌に目をやる春香奈・・・−

春香奈:「(七対子が、完成してない・・・。しかも2回、対子が被っている・・・。
七対子は、イーシャンテンまでは案外楽だけど、ここからが厄介なのよね。
勢いの差は、確実だわ・・・。)」

つぐみ:「優の手の進みが悪いようね・・・。ここは、軽く流すのが常道かしら?」

武:「だったら、ホクトの手が問題だな。」

−だが、ホクトもまだ二シャンテン・・・。和了には遠い・・・−

武:「ホクトもまだか・・・。このままだと、天にツモられちまうな。」

沙羅:「空、ちょっとまずいね・・・。お兄ちゃんにも先輩にも、やはり今流れが来てない・・・。
しかも、天さんは親で満貫をテンパイしてるし・・・。
でも、何でリーチをかけないのかな?」

空:「そうですね・・・。天さんはプロですから、まだあの手には、更なる可能性が残されていると読んでいるのかもしれません。
もし、私の考えが正しければ・・・。」

桑古木:「なるほど・・・。連続でドラを重ねたとき、気配を感じたんだな。」

沙羅:「どういうこと?ドラが重なって二翻手が高くなって・・・。あっ!」

春香奈:「分かるでしょ?純チャンタ、二盃口よ。」

空:「しかし、そこに辿り着くためには、天さんが手の中で使っている九萬の4枚目が必要ということになりますね。
さすがに、そこまで辿り着くのは・・・。ああっ!?」

−天、九萬ツモ・・・。純チャンニ盃口完成・・・!−

春香奈:「流石というところかしらね・・・純チャンニ盃口に、ドラが2枚で親の倍満・・・。
直撃なら即死、ツモでもほぼ勝負が決定するわ。
さて、優はどうかしら?」

−秋香奈、七対子テンパイ−

春香奈:「何とかテンパイね・・・。だけど、ドラも絡んでいないノミ手の七対子・・・。
しかも、ドラは2枚天が使われているから、この七対子はリーチ無しでは満貫に届かない・・・。
天の純チャンニ盃口と、優の七対子・・・。二人の力量の差を現しているといっても過言じゃないわ。」

−二人の手牌の差は、春香奈の想像通り、二人の勢い、力量の差を決定的なものとしていた・・・。
 天の純チャンニ盃口ドラ2の親倍満と、優のノミ手の七対子・・・。
 24000点VS1600点・・・。話にならない。
 天の手牌を、天空の龍に例えるなら、優の手牌はか弱き小鳥・・・。
 口を開けた龍に、小鳥が飲み込まれるのは必至である・・・。−

天:「うっ?」

−天、七萬ツモ・・・。この形の場合、七萬単騎待ちの形で和了となる。
 結果として、ツモ、一盃口、ドラ2で親満の手である。−

桑古木:「ああっ・・・!純チャンニ盃口とまではいかないが、親満ツモかよ・・・。
4000払いで二人とも残り6000点・・・。勝負、あったか?」

空:「これで、決まりでしょうか・・・?」

−だが、天の手が止まり、熟考する・・・−

天:「(確かに、これで和了だが・・・。親満ツモの手・・・。結果としては悪くない・・・。
だが、俺には予感がする、地の鼓動が・・・!)」

−天、ひろゆきにサインを送る−

ひろゆき:「(天さん、何ですか?)」

天:「(あと数巡、無茶をさせてもらう。いいか?)」

ひろゆき:「(分かりました。ですが、一体何を・・・?)」

天:「(この龍、地に潜らせる・・・!)」

天:「カン!」

桑古木:「なっ!?和了を放棄して、何考えてるんだ?」

空:「あれでは、純チャンタもニ盃口も消えて、一盃口ドラ2の手です・・・。
一体、何を考えているんでしょうか?」

春香奈:「あれが、東の総大将の勝負勘というやつでしょうね・・・。感じ取っているのよ。
地の鼓動を・・・。」

空:「地の鼓動?一体何なのですか?私には分かりません・・・。)」

春香奈:「空・・・。麻雀には本来なら犯されざる聖域があるのを知ってる?」

空:「犯されざる聖域・・・?あっ、王牌のことですか?」

春香奈:「そうよ。ところで、王牌の本質に関しては知ってるかしら?」

空:「それは・・・。王牌とは、麻雀において最後まで残されるべき14枚の牌ということは分かりますが・・・。
本質と言われますと・・・。」

春香奈:「王牌とは、王の牌と書くわよね。王の牌とされるあの場所は、王の墓を現していると言われているの。
そしてカンとは、単に同じ牌を4枚重ねて、手牌が一枚足りなくなったことでもう一枚をもらってくるというものじゃない。
本来犯されざる王の墓と交信することによって、そこにある供物、即ちリンシャン牌を頂戴するということなの。
つまりカンは、王の墓と交信する唯一の手段なのよ。」

空:「なるほど・・・。王牌とカンには、そのような意味が含まれているんですか。」

春香奈:「でも、王の墓と交信できたからって、それが必ず恵みとなるわけじゃない。分かるわね?」

空:「そうですね・・・。カンをしたときに、リンシャン牌が自分にとって必要な牌であったり、またはカンドラによって
自分の手が大きくなるというメリットはあります。
しかし、他の方の手の中にドラを増やしてしまったり、リーチをかけている他の方から直撃を受けた場合、
更に裏ドラを乗せてしまい、痛手を被るということもありえますね。」

桑古木:「・・・つまり、墓に眠る王からうまくいけば天恵を授かるし、うまくいかなければ怒りに触れて、災いを被るというわけだ。」

春香奈:「その通りよ。そして天は麻雀の世界の中では最高峰のプロ・・・。
王牌に、あの手を最大級のものとする牌があることを確信してるに違いないわ。」

−そして天、リンシャン牌に手を伸ばす・・・!リンシャン牌は、二筒・・・!
 これにより、天の純チャンニ盃口は、一巡で転生した・・・!
 完成、役満、四暗刻・・・!−

原田:「(フフフ・・・。“歴史は繰り返す”とはよく言ったものだ・・・。
決勝の舞台で、俺たち西陣営を窮地に追い込んだ、“飛龍地斬 四暗刻”がまた見られるとはな・・・。
だが、現時点ではあくまでテンパイ・・・。それ以上でも、それ以下でもない・・・。)」

−原田、ホクトと優に目をやる・・・−

原田:「(問題はあの小僧と小娘だ・・・。もし普通の勝負なら、天は既にリーチをかけているはず・・・。
だが、凡手から純チャンニ盃口、そして四暗刻へと辿り着かせたのは、
やはりあの二人にただならぬ気配を感じているからだろう・・・。
博打とは偶然の積み重ね・・・。
あの小僧をこの決勝まで押し上げたのは、幾重にもわたる偶然の積み重ねの結果・・・!
そして生じた結果は、やはり必然なのだ・・・。
和了を見送ってでも、あそこまで手を高めたのは、一撃で仕留めるという天の決意の現れか・・・。)」

つぐみ:「武、ホクトと優の手に、カンドラは乗ってるかしら?」

武:「どれどれ・・・。いや、駄目だ、乗っていない。」

つぐみ:「全てが、うまく二人に噛み合っていない・・・。もしあの一撃が決まれば、お終いだわ。」

沙羅:「パパ・・・。やっぱりお兄ちゃんとなっきゅ先輩じゃ、プロの天さんには勝てないのかな?」

武:「いや、そんなことは俺も思ってないぜ。何にせよ、最後まで見守るんだ。」

−親満を見送り、龍を地に潜らせた天・・・。
 しかし、これはこの局においてこれから始まる、異常な事態の序章に過ぎなかった・・・。
 天が四暗刻テンパイの一巡後、何と優ツモ和了・・・!−

桑古木:「おおっ?あの絶対的不利な状況の中、和了牌を掴んだ!まだ、運は残っているというわけか?
残っている微かな運が、龍を地に閉じ込めることに成功したか・・・。」

−だが、優、手牌を倒さない・・・−

桑古木:「どうした?何をためらっているんだ?優もホクトも、天の手が大物であることは認識しているはずだ。
この和了は、それを葬る千載一遇の気配だってのに・・・。
まだ、何かあるのか?」

春香奈:「どうやら優も、勝負の熱にあてられたようね・・・。自分の能力を最大限に生かすことが出来れば、
天のあの手牌に対抗できる・・・。それを感じているのよ。」

桑古木:「どういうことだ?あの七対子が、まだ化けるってのか?」

春香奈:「ええ、そうよ。次に、ホクトが切る牌次第でね・・・。」

−優、ツモった一索を手に入れ、万子の対子を切る・・・!−

桑古木:「なっ!優まで和了を放棄した!?何考えてるんだ?」

−次巡、ホクト、一索を切る・・・!−

秋香奈:「ポン!」

−次巡、ホクト、中切り−

秋香奈:「ポン!」

桑古木:「何で今更、一索と中を鳴くんだ?確かに中で浮いていた萬子の対子を処分して、これで中、混一色、対々の
満貫手イーシャンテンだが・・・。この非常事態で、なぜあの手に固執する?なぜだ?」

春香奈:「ホクトが、一索と中を切ったのは、あくまで偶然よ。しかも、今はホクトの親番じゃないから、
BWを発動してお互いの手牌を見て、組み立てることはできない。
でも、今のホクトなら、あのニ副露で優が何を狙っているかがわかるはずよ。
おまけに、あの役満に関しては、さっき空が二人に説明していたわね?
それがこんなところで役に立つなんて、ある意味この状況は必然だわ。」

桑古木:「役満だって!?あの手が、役満なのか?」

空:「私が説明・・・ですか?あっ!」

春香奈:「一索と中は、あの役満の最大のキーとなる牌よ。この段階でそれを鳴けるなんて、大したものだわ。

桑古木:「一索と中が最大の鍵・・・。そうか!役満、紅孔雀か!」

※紅孔雀
ローカルルールの役満の一つ。
緑一色とは対照的に、中と一索の刻子、そして赤の入った索子である五索、七索、九索による刻子及び対子によって
完成となる役満。
鳴いても作ることが可能である。

ホクト:「(優・・・。僕には分かるよ。さっき優は、七対子で和了していた・・・。
でも、優はそれをしなかった。確かに、あのまま和了すれば、危険は回避できたかもしれない。
だけど、これは勝負なんだ!危険を避けて、安全を選んでいたって勝てるわけないんだ!
それに天さんとひろゆきさんが、この麻雀という遊戯にどれだけ情熱を傾けて生きてきたかも、少しは分かる気がする。
ここまで辿り着いた以上、二人の失礼のないように、全力で勝ちに行く!)」

−ホクト、七索切り−

秋香奈:「ポン!」

つぐみ:「これで完成ね・・・。役満、紅孔雀・・・!」

武:「ホクトも大したもんだな。優が、何を狙っているかをBWの力無しで感じ取ってるんだ。」

春香奈:「あとは、優と天のマッチレースね・・・。孔雀が天を舞うか・・・。それとも龍が地を割るか・・・。
“孔雀天舞 VS 飛龍地斬”といったところかしら。
こんな面白いもの、そうそうお目にかかれないわね。」

−この時、先程までと違い、流れはホクトと優に傾きつつあった・・・。
 もしこの時ホクトが親番だとしたら、優が役満をツモ和了した場合、16000払いとなり
 現在10000点持ちのホクトは箱割れとなるため、優のツモ和了は不可能となる。
 また、優が親番であったとしたら、16000オールとなり、20000点を有している天とひろゆきは
 箱割れに至らないが、10000点持ちのホクトはその時点でも箱割れとなる。
 しかし、優とホクトの両方が子であり、天が親であることが、優のツモ和了を可能なものにしていた。
 ステージAを取られ、圧倒的不利な状況から二人に徐々に風が吹き始めているのだ・・・。−

ひろゆき:「(まずい・・・。ホクト君と田中さんが、まさかあんな手をテンパイしているなんて・・・。
原田さんがローカルルールの役満を認めるといっている以上、あの手は有効となる・・・。
この局、僕の和了は無理でも、せめて田中さんのロン牌を握りつぶせれば・・・。あっ!)」

−ひろゆき、五索をツモ・・・−

ひろゆき:「(やった・・・!一枚握りつぶした・・・!これで残りは3枚・・・。今度は・・・うっ!?)」

−ひろゆき、次巡更に五索ツモ・・・−

ひろゆき:「(これで、田中さんのロン牌は九索のみ・・・。しかも、九索は一枚僕の手の中・・・。
孔雀の片羽は、僕が折った・・・!最早、孔雀が天を舞うことは無い・・・!)」

桑古木:「マジかよ・・・。五索が2枚とも、ひろゆきに流れた・・・!しかも九索も一枚、ひろゆきの手の中だ・・・。
結局さっきの百万石と同じで、成就しないのかよ!?」

春香奈:「孔雀が天を舞うには、もはやホクトの助けは借りられない。優自身が、自力でツモるしかないのよ。
でも、私の推察では、優の最後のツモは、九索じゃない・・・。
普通に進めば、まず和了はできないわ。」

桑古木:「おい!?最後の最後で、二人の可能性を見限るのかよ!?」

春香奈:「私は、“普通に進めば”と言ったのよ。優がもし、聖域の王と交信し、認められたのなら可能性はある!
孔雀は、天を舞うわ。」

桑古木:「聖域の王?ということは、つまり、王牌にどちらかの和了牌があるってことか?」

春香奈:「二人とも、あの凡手をここまで昇華させたこの局・・・。必ず、どちらかが和了するわ。
龍か、孔雀か・・・。どちらを選ぶかは、あとは王が決めることよ。」

−次順、天のラストツモ・・・−

天:「(来るか・・・?うっ!?この感触、三筒でも一筒でもない・・・。萬子か・・・。
だが、こいつは・・・!」

−天、七萬ツモ−

天:「カンッ!」

ひろゆき:「(来たか?天さんの飛龍地斬!もし歴史が繰り返されるのなら・・・!)」

天:「・・・・・!」

ひろゆき:「(ああっ・・・!)」

桑古木:「違う!和了牌じゃない!」

−天、飛龍地斬ならず・・・!−

春香奈:「これで龍は、地に閉じ込められた!片方折れた翼で、孔雀が舞い上がる!必ず!」

秋香奈:「(これが、私の最後のツモ・・・!お願い!孔雀よ、天を舞って!)」

−汗が滲む指を、そっとずらす優・・・。だが、その牌は、九索ではない・・・。
 しかし、優のツモ牌は、中・・・!−

桑古木:「来たっ!舞い上がれっ!」

春香奈:「どうやらこの局、王は、優を選んだようね!」

秋香奈:「カン!」

−リンシャン牌に手を伸ばす優・・・。そして孔雀は、天を舞った・・・!−

秋香奈:「ツモ!紅孔雀!役満よ!」

桑古木:「やったぜ!」

沙羅:「なっきゅ先輩、さすが!」

春香奈:「(この役満で、ホクトも8000点失って、残り2000点だけど・・・。
その代わり、親の天に16000点、ひろゆきに8000点のダメージを与えた・・・。
プロである二人に、一矢報いた形になったわね。だけど、これで勝負が決したわけじゃない・・・。
本当の勝負はこれからよ・・・。優・・・。ホクト・・・。)」

天:「すまんなひろ・・・。今回は、龍が日の目を見ることはできなかった・・・。」

ひろゆき:「いえ、いいんです。僕も承知したことですから・・・。」

天:「それにしても、田中さんとこのお嬢さん、無茶するもんだぜ・・・。
あの役満で、親番の俺に大打撃を与える代わりに、彼氏を窮地に追い込んだんだからな・・・。
まあ、ホクト君も承知の上だろうが・・・。」

ひろゆき:「・・・・・」

天:「この次の局、俺かお前がうまくツモれれば点棒の合計で俺達の勝ちになるかもしれないが、案外それは難しそうだ・・・。
お前は早急なリーチは避けて、慎重に行ってくれ。」

ひろゆき:「わかりました。」

ホクト:「優、ありがとう。優の能力のおかげで、何とか五分五分までもちこめたよ。」

秋香奈:「何とかね・・・。だけど、正直疲れたわ。これだけで、今日の運も力も、使い果たしちゃったかもね。
ホクト、あとは頼んだわよ。」

天:4000点
ひろゆき:12000点
ホクト:2000点
優:10000点

−現在、4人の点棒状況は、このようになっている。両陣営とも、一人が点棒的に余裕があるのに対し、
 もう一人が満貫ツモで即箱割れになるという、際どい状況にある。
 共にサドンデス、いよいよ決勝は決着へと動き出す・・・!−

ホクト:「(優の起死回生の紅孔雀で、一矢報いた形になったけど、また点棒では4000点リードされてる。
僕が満貫をツモできれば理想だけど、ちょっと厳しい配牌だな・・・。)」

−ホクト、發をツモ、暗刻にする・・・−

ホクト:「(これで一翻、役は確保・・・。だけど、まだまだテンパイには遠いな・・・。
それに対して、天さんはメンタンピン風の好手・・・。まだ勢いは、衰えてない・・・。)」

ひろゆき:「ポンッ!」

−ひろゆき、ドラの北をポン−

ホクト:「(ひろゆきさん、遠いけど混一色へと手を進めるつもりだな・・・。
あの北は、ひろゆきさんの役牌じゃないけれど、早めに僕の手の高まりを防ぐ意味合いも込められてる・・・。
これで、僕のこの手の中のドラは、不要牌だ・・・。)」

−着々とテンパイに向かって進める天に対し、ホクトはツモ切りが続く・・・。
 また、役牌もほとんど切られてしまい、ホクトの手の可能性は發のノミ手に留まる・・・−

ホクト:「(結局この手、發以外に役が無い・・・。リーチして引ければ、ドラ一つで満貫になるけれど、
そんな余裕は無さそうだな・・・。)」

天:「リーチ!」

ホクト:「(タンヤオ、ピンフ、一盃口、ツモで満貫か・・・。これを和了して、僕たちに引導を渡す気だ!
ひろゆきさんは今親だけど、点棒にも十分余裕があるし、天さんの満貫ツモは一番理想だ。
ここを凌げなければ、僕に勝機は無い!)」

−数巡後、天、二索切り−

ホクト:「(これを鳴けばテンパイ・・・。だけど、發のみの1000点か・・・。
これじゃ直撃しても、天さんを箱割れにはできない・・・。
だけど、このまま迷っていても、ジリ貧だ!)」

ホクト:「チー!」

−ホクト、發のみでテンパイ・・・−

ホクト:「(これで、天さんの満貫ツモを阻止できるかも・・・。あと、ロン牌は2枚か・・・。
何とかうまく、こぼれてくれたら・・・。)」

−次局、ひろゆきがホクトのロン牌を切る−

ホクト:「(来た!これでこの局は凌げる!よし!)」

−ロンを宣言しようとするホクト・・・。だがその時、發の暗刻から何かの鼓動を感じる・・・−

ホクト:「(え・・・?これを和了するなって?僕に、待てと言っている?)」

−そして数巡後・・・−

ホクト:「(何かが僕に、語りかけてきたような気がする・・・。
この手には、勝負を決定付けられる可能性が残っている、そう言っていた・・・。
だけど、何があるんだ?既に鳴いて、これ以上役は付かないし、ドラだって既に切ったし・・・。
そういえば以前にも、こんなことがあったような気がする・・・。)

−卓の状況を見据えるホクト・・・。−

ホクト:「(そうだ!あの時!烏丸さんとの対局の時だ!あの時、僕は何かを感じて、リーチをかけなかった!
そして役牌のみの手で、流れを変えることに成功したんだ!
もし、これがあの時と同じなら・・・!)」

天:「(早めにリーチをかけられたが、なかなか来ない・・・。流局も近いな・・・。うっ!?)」

−天、初牌の發を引く・・・−

天:「(くっ・・・!こいつは初牌!嫌な時に、こいつが来やがった・・・!
だが、俺は既にリーチをかけてる・・・。厳しいが、通せっ!)」

ホクト:「カン!」

天:「(しまった・・・!)」

ホクト:「確認しますが、大明カンは責任払い、いいですね?」

天:「ああ・・・。もし引いたらの場合だけどな・・・。」

−ホクト、リンシャン牌に手を伸ばす−

ホクト:「・・・和了です。これは天さんの、責任払いですね。」

秋香奈:「やったわね!ホクト!」

沙羅:「これで、お兄ちゃんと先輩の優勝?」

空:「いいえ、待ってください。あの手は子の發、嶺上開花で3200点です。
天さんは4000点持ちですから、まだ勝敗は決していません。あとは、新ドラ次第です。
一つでも乗れば、6400点で、ホクトさんの勝ちです。」

ホクト:「天さん、僕の位置からだと遠いので、新ドラをめくってくれませんか?」

天:「・・・俺に、新ドラをめくるのを任せてもいいのか?」

ホクト:「構いません・・・。天さんは、どんな状況でも真っ直ぐな人だと分かっていますから。」

天:「(こいつ・・・。)」

−新ドラをめくる天・・・。だが、新ドラは乗らず・・・。結局この手、3200点に留まる。−

沙羅:「ああっ!惜しかったでござるっ!」

春香奈:「・・・流石は東の総大将。この土壇場で、たいした強運だわ。」

天:800点
ひろゆき:12000点
ホクト:2000点
秋香奈:10000点

−止めはさせなかったものの、あと一歩まで天と追いつめたホクト・・・。
 すでに後が無い天は、この後安和了によって場を凌いでいく・・・。
 一方ホクトも点棒に余裕が無いため、読みやすい手作りとBWの能力を生かし、優に差込をさせる。
 お互いのツモ和了を阻止しつつ、勝負は2回目の半荘、東2局へと進む・・・。−

天:800点
ひろゆき:10000点
ホクト:2000点
秋香奈:8000点

ホクト:「(これが僕の能力を生かす、最後の機会・・・。ここで必ず、決着をつける!)」

天:「(今回ただの賞金マッチだと思っていたのが、この子達の参戦でこんな形になるとはな・・・。
だが、俺も負けるわけにはいかん・・・。最後まで勝利に向かって、突き進む!)」

ひろゆき:「ポンッ!」

−ひろゆき、東と西をポン−

秋香奈:「(まずいわね・・・。しばらく安手でツモ和了の阻止が続いたけれど、今はホクトが親だし・・・。
ロンはもちろん、ツモでも和了を狙ってる・・・。)」

−この場合、ひろゆきがツモで満貫を和了したとなると、天とホクトの両方が箱割れとなるが、
 結果天側の点棒は、10800−2000で、計8800点、
 ホクト側は10000−6000点で、計4000点、
 天とひろゆきのチームの勝利が確定する。
 順当に行けば、天はひろゆきの満貫ツモを待っていれば、勝利が転がり込む。
 ホクトたちは、まずひろゆきの和了だけは何としてでも阻止しなければ、勝つことは不可能である。−

ホクト:「(優、ひろゆきさんは萬子の混一色を狙ってる。
優の切る牌は、ひろゆきさんがチーも可能だから、迂闊に切らないで!)」

秋香奈:「(分かったわ。)」

−BWの透視能力とテレパシーによる指示を受けながら、手を進める優・・・−

ホクト:「(優、そっちの状況はどう?)」

秋香奈:「(ドラを4枚抑えて、今イーシャンテンよ。そっちはどう?)」

ホクト:「(今僕もイーシャンテンだけど、役が無い・・・。リーチをかけるしか無いと思う。)」

秋香奈:「(ひろゆきの手牌はどう?)」

ホクト:「(六萬が浮加減だから、あれを切ってテンパイに辿り着くと思う。)」

秋香奈:「(東と西を合わせて、満貫確定か・・・。テンパイに辿り着かれたら、万事窮すね・・・。」
そうだ!ホクト、私に考えがあるから、聞いてくれる?
この方法なら、ひろゆきのテンパイを阻止できるかもしれない!」

ホクト:「(ひろゆきさんのテンパイを阻止する?どうやって?)」

秋香奈:「(ホクト、私が今から、五萬を切って、リーチをかける!!)」

ホクト:「(なっ!?優、何を考えてるのさ!?まだ優は、テンパイしてないじゃないか!なのに何故?)」

秋香奈:「(この局で決着をつけるには、ホクトがツモるか、安手でも天を直撃するしかないでしょ?
その前に点棒で余裕がある、ひろゆきに満貫を和了させるわけにはいかない。
私が五萬でリーチをかければ、本命牌である六萬を切るのに躊躇いが生じるはず。
もちろん、それ自体も賭けだけど・・・。
でも、今この場でひろゆきのテンパイだけは阻止しなくちゃいけない!
流局までは、少なくとも私がノーテンリーチだとばれずに済むわ。
確かに、ノーテンリーチがばれて満貫払いというリスクはあるけれど、
この局はあなたの能力を生かして、二人で戦える最後の機会だと思う。
私がひろゆきを足止めしている間に、確実に決着をつけて!)」

ホクト:「(分かった!)」

秋香奈:「カン!」

ひろゆき:「(なっ!?ドラ4?)」

秋香奈:「リーチ!」

沙羅:「ええっ!?先輩、それはノー・・・。」

武:「しっ!(沙羅の口を押さえる武・・・)」

沙羅:「(小声)先輩、何を考えてるのでござるか・・・?テンパイしてないのに、リーチなんて・・・。」

つぐみ:「(小声)仕掛けたのよ、勝つために、大博打を。」

桑古木:「(小声)ホクトの能力を、考えてみたら分かるぜ。」

沙羅:「(小声)お兄ちゃんの能力は、BW発動による透視・・・。あっ!そうか!」

春香奈:「(小声)ホクトの親番の時は、透視とテレパシーによって、協力して戦うことが可能となるでしょ?
ホクトは多分、透視によってひろゆきの手牌から、六萬が浮いているのを知っている。
ひろゆきの満貫ツモを阻止し、尚且つこの局で決着をつけさせるために、リスクを覚悟で、優は足止めに行ったのよ。
流局したら満貫払いのリスクを伴う、渾身のブラフを・・・。」

ひろゆき:「(少なくともリーチドラ4・・・。満貫確定か・・・。あとはタンヤオも何でも、一翻でも絡めば、ハネ満・・・。
僕の点棒は、残り10000点・・・。ハネ満直撃で終わる・・・。
少なくとも、一発だけは避けなくては・・・。)」

−ひろゆき、現物切り・・・−

ホクト:「(よし!ひろゆきさんの手の進みが鈍った!チャンスはここだ!)」

−ホクト、テンパイ−

ホクト:「(何とかテンパイ・・・。だけど、リーチをかけなくては役が無い・・・。
ツモのみでは、500オールで800点持ちの天さんに止めを刺すには至らない・・・。
どうする・・・?手変わりを待つか・・・?)」

−熟考して、手が止まるホクト・・・−

ホクト:「(いや!駄目だ!何のために、優がひろゆきさんを足止めしたと思ってるんだ!?
もしこの場が流局になったりしたら、いや、僕が和了できなかったら、それでお終いなんだ!
優は僕を信じて、僕に命運を託してくれた!だから僕も、自分を信じて、突き進むんだ!
前に行くことでしか、道は開かれない!嫌というほど味わったことじゃないか!
優!行くよ!この一打に、僕の全てを賭ける!)」

ホクト:「リーチ!」

天:「(いよいよだな・・・。そいつで俺に、止めを刺す気か・・・。)」

−次巡、天もテンパイ・・・−

天:「(生憎役無しだが・・・。リーチをかければ中のドラ1つが絡んで、2600点・・・。
しかも親番はホクト君だ・・・。ツモで確実に決着をつけられる・・・。
この手で、俺も勝負に出る!)」

天:「リーチ!」

春香奈:「いよいよ決着ね・・・。観光を兼ねて、軽い気持ちで参加させたこの大会が、ここまでのものになるとは予想も出来なかったわ。」

沙羅:「お兄ちゃん・・・。お兄ちゃんを信じてくれた、先輩のためにも頑張って。」

ココ:「空さん・・・。ホクたん、勝てるかな・・・?」

空:「信じて見守りましょう・・・。私達に出来るのは、それだけです。」

武:「いい顔つきになったよな・・・。ホクトの奴。数日で、まるで別人だぜ。ありゃ完全に、ギャンブラーの顔だな。」

つぐみ:「・・・そういう世界に首を突っ込むのは、今回限りにしてほしいけどね・・・。親としては。」

−一方、大会本部側−

原田:「(天の待ちは、カンニ萬・・・。奴がかつての東西戦で俺を制したのと、同じ待ちか・・・。何とも複雑だぜ・・・。)」

僧我:「(ふう・・・。冥土にまた、いい土産話ができたかもしれんな・・・。
面白いもんを見せてもろたで・・・。)」

赤木:「(ククク・・・。倉成の坊やもあの子も、大したもんだ・・・。
あの歳で、あそこまでお互いの全てを預けられるとはな・・・。
案外、親父とお袋に負けず劣らずのいい夫婦になるだろうぜ・・・。)」

天:「(分かったぜ・・・。田中さんとこのお嬢さんの手は、多分ブラフ・・・。
ひろゆきの満貫ツモを阻止するために、あの一巡をノーテンリーチで買ったというわけか・・・。
このまま流局に向かえば、チョンボで満貫払い・・・。あの子の箱割れが決定する・・・。
だが、ホクト君が、リーチをかけたとなれば、話は別だ・・・!
ここは勝負所・・・。それも、最後の決着をつけるための・・・。
二人とも、なりふり構わず勝負に来ている・・・!
勝利が転がり込んでくることを期待しているような奴に、女神は微笑まない・・・!
奪い取る覚悟なくして、勝利など無い・・・!)」

−BWの力で、状況を静観するホクト・・・−

ホクト:「(ひろゆきさんの手牌に、天さんのロン牌の二萬は無い・・・。
今ひろゆきさんが差し込みで、この局を流すことは不可能だ。
だけど、今リーチをかけて動けない優が、もし二萬を引いてきたら・・・。ああっ!?」

秋香奈:「・・・・・・」

−優、二萬ツモ切り・・・−

ひろゆき:「(来たっ!天さんのロン牌、二萬・・・!」

天:「・・・・・・!」

ひろゆき:「(天さん、和了るんですか?和了しないんですか?)」

ホクト:「(二萬・・・!まさかこの土壇場で、優が引いてくるなんて・・・。
もしこれを、天さんが和了すれば、自動的に仕切り直しが決定する・・・。)」

天:「(来た・・・!思いもかけず・・・。だが、どうする・・・?これを見逃せば、ロン和了はできない・・・。
しかも、残りのツモはあと2回・・・!)」

−流石の天も、手が止まる・・・。これを和了すれば、場は当然仕切り直しとなる。勝負は、次局に持ち越される。
 少なくとも、この局でホクトにツモられて天が箱割れになることは避けられるのだ。
 だが、生粋の勝負師である天にとって、そのような曲げた一打は誇りが許さない・・・!
 そして、その一打こそ、重い勝負では何よりも命取りになりかねないのだ。
 勝負に賭ける、分厚い天の意志の力が、自力で勝利を掴み取ることを選択した・・・!
 天、二萬見逃し・・・!−

ホクト:「(これで天さんの、ロン和了は無くなった!あとは、僕が和了牌を掴み取るだけだ!
行けるか・・・?うっ!違う・・・!)」

−ホクト、ツモ和了ならず・・・。勝負は次巡に持ち越される・・・。
 そしてこの勝負、さらなる迷走へと突入する・・・!
 優、ホクトのロン牌、二索ツモ切り・・・!−

ホクト:「(これで僕の、ロン和了も無くなった・・・!後は、僕か天さんが、自力で引きあがるだけだ!)」

−そして天、自身のラストツモへ・・・−

天:「(長かったぜ・・・。ここまで来るのに・・・。
桑古木さん・・・。ココちゃん・・・。茜ヶ崎さん・・・。沙羅ちゃん・・・。
そしてホクト君、田中さん・・・。
こんなに熱い勝負が出来たのは、かつての東西戦以来だ・・・。
赤木さんの命を永らえさせてくれて・・・。そしてこんな所まで付き合ってくれて・・・。
あんたたちには、本当に感謝してる・・・。
俺はこれ以外、何にも出来ないやくざなろくでなしだけど・・・。
こいつに対する思いだけは、誰にも負けちゃいねえ・・・!)」

−ツモ牌を手にする天・・・。そして・・・!−

天:「ホクト君、田中さん・・・。そしてひろ・・・!長かったが、終了だっ・・・!
ツモ!リーヅモドラ!2000、1000だ!」

ホクト:「・・・・・・。」

−東西戦、遂に決着・・・!互いを追いつめ、そして追いつめられた勝負の行方は、僅差で天が制した・・・!
 そしてその和了牌は、かつて天が西を制した、二萬であった・・・!











SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送