最近みんなの様子がおかしい。
どこか俺に対してよそよそしい感じを受けるんだが・・・。何かしたっけ、俺?
最近の出来事といえば、いつものようにつぐみと空が、最強を決めるために戦っていて、俺にまで被害が及んだこととか。(ちなみにその日の夜、つぐみの料理を食わされた。おいしいかと気いてくるつぐみのあの顔は二度と思い返したくない)
優がホクトと優秋のことで相談があるといって、何度も家にやってくることとか。
ココが遊びにきたとき、「ここはなっきゅにとって第3視点みたいなものだよねぇ」とかわけのわからんことをいってたこととか。
つぐみが料理しようとして、うっかりボヤを起こしかけて、SECOM作動させてしまったこととか。
沙羅が「拙者は誘惑にかてなかったでござるよ、買収されてしまうとは忍者失格でござる。よよよ」とかいって俺にじゃれついてきたことや。
ホクトがなにやら頬を染めながら「お父さんを独り占めはずるいよ」と言っていたことなど。
まあ、波乱万丈なようでいつもどうりのなんでもない毎日だったはずだが。
俺からみんなに対して何かしたとは思えないんだがなぁ。
ああ、そういえば、この前桑古木がやってきたときに少しからかっちまったことがあったか。


そう、確かあの日は・・・




教えて桑古木くん
                              桜園



「ねえ、パパ、パパぁ」
「・・・・・・」
「ねえってば〜」
「・・・・・んーーーーー」
「どうしたのよ、パパ。こめかみに指なんか当てて、透視の練習?」
「・・いや、やっぱり、そのパパってのになれないなぁと思ってな。なんというか、こう世間とのギャップがまだ埋められない状態なんでな」
「だって、パパはパパでしょ。パパ以外の呼び方なんてないんだから。」
そうだ、確かに沙羅は俺の娘だ(のはずだ)。いくら寝てた間にできた子供であっても、それ間は違いなく俺の子供であって、いいのがれできないことだというのはわかってる。
(実はこっそり知り合いに頼んで内緒でDNA鑑定をやってもらったりするんだが、それはみんなにばれると怖いと思うので黙っておこう。ちなみに100%あなたの子供ですといわれた)
けど、実際年齢がほとんど離れてないから、娘ってよりは友人って感覚の方がしっくりくるんだよなぁ。
「パパは私が娘だったらいやだって言うの?」
なんていいながら引っ付いてくるが、こういう無防備な行動がどうしても戸惑ってしまう。
う〜ん、やはり俺は沙羅に対して異性を感じてしまっているのだろうか。
ピンポ〜〜〜ン
「よーう、武〜、いるかー」
気の抜けたチャイムの音と玄関から声がして誰かが入ってくる気配がした。
「おお、なんだクワコギか」
「クワコギいうな!」
入ってきたのは、【なんちゃって倉成】の称号をもつ、桑古木、通称クワコギだった。
今日もあいかわらず頭に手がくっついている。
どうやら接着剤の効能は半永久的のようだ。
みんなからは桑古木っていわれてるけど、俺的には少年って呼び名の方がしっくりくるんだよな。
さすがにキワクってのはどうかと思うが、ココだって少ちゃん呼ばわりだし。
桑古木っていわれても一瞬で誰だか思い出せないときだってある。
「おはよ、桑古木」
「よう、沙羅。あいかわらず武にべったりだな。優秋が寂しがってたぞ」
「なっきゅ先輩が」
こいつは数ヶ月前、俺とココを救い出すために17年間、武になりきるための特訓をしてきたらしい。
桑古木曰く「優好みの武に無理やり矯正させられてた日々だったらしい」そのせいか今でも優にはまったく頭が上がらなくなってるそうだが、俺にはなんのこっちゃな話だ。
今でも優秋や沙羅なんかはたまに武って呼ぶことがある。
オリジナル武の俺としては笑えない冗談ばかりいうところや、不必要に「だべ」を使うところとか、いつも貧乏くじを引くところなんかとか。言いたいことはいっぱいあるんだがなぁ。
ぶっちゃけ、あんまり似てないだろ。
声以外。
「ねえねえ桑古木。どうして今日も手と頭がくっついてるの?かつらでも支えてるの?」
「何度もいうがその点については触れるな、頼むから」
沙羅はなんともお上をも恐れない大胆発言をする。
娘よ、あまり世間には触れてはいけないこともあるんだぞ。森羅万象、摩訶不思議、この世は不可解な出来事がいっぱいなんだ。
それをいうなら俺が知ってる桑古木は飯のときでも、走ってるときでも、いつでもポケットに手を入れてたぞ。
「・・あれ、今日つぐみは?いないのか」
勝手にソファに座り込んで、茶を入れながら聞いてくる。
「ん、ああ、つぐみは今は出掛けてるよ」
「そうそう、パパの所有権を確実にもぎ取ってくるって意気込んで出てったよ」
「ふ、ふ〜ん。そりゃ、おっかねえな」
「何だ、珍しくうちにきたかと思ったら、つぐみに用だったのか」
「い、いや・・そうじゃないけど」
桑古木の要領を得ない話し方に直感で何か隠してるなと感じる。
それもおもしろそうなにおいだ。
こういう楽しそうな隠し事には俺も沙羅も、目がない。
「・・・・・・・・」(グッ)
「・・・・・・・・」(グッ)
俺と沙羅は瞬間的に目を合わせると親指を立ててお互いの意思を確認する。
(頼んだぞマヨ隊員)
(まかせるでござる)
すばやくアイコンタクトをとると、あ、うんの呼吸で行動を開始した。
「なあなあ桑古木、ちょっとあれ見てみろよ」
「ん?」
俺はなんでもない家族写真を指差し桑古木の注意を引く。
「写真かー。4人で仲よくくっついちまって、なんかもうアットホームな雰囲気つくってるなぁ。」
「まあな、沙羅が首に飛びついてきて苦しかったよ。」
「・・・・・俺も武に飛びつきてぇ〜」(ぼそっ)
「ん?」
「いや、なんでもない。こっちの話だ」
「何をいってるんでござるか。パパだって大ノリでポーズしてたじゃない」
「そうだったか?」
「そうでござる」
俺らは息のあった会話をしながらも目では別の会話を繰り広げる。
(どうかね、マヨ隊員)
(成功でござる)
(任務完遂ご苦労)
ニヤッ
俺と沙羅は同時になんともいえない笑みを浮かべた。
こういうとこみると俺の娘なんだなぁって実感するよな。
「桑古木、自分ばっかり飲んでないで俺にも入れてくれよ」
「ああ、悪い、悪い」
「拙者にも」
いきなりの話題転換だが桑古木は気にした様子もなく茶を入れ始めた。
「ほいよ」
「おお、サンクス。んじゃ、乾杯でもするか」
「そうでござるな、ほら桑古木殿も」
「お、おお」
俺と沙羅の言葉に押される形で慌てて湯飲みを持ち上げる。
俺一人でやったら怪しまれただろうな。こういうとき、タッグというのは心強い。
『かんぱーーい』
かつんと湯飲みをぶつけると茶に口をつけた。もちろん桑古木も、
ニヤッ
そのとき沙羅がえもいわれぬ邪悪な笑みをする。ああ、俺もこんな顔してるんだろうな。
「・・・・ぐっ!」
そして、同時に桑古木の口からうめき声が発せられた。
「フフフ、成功だな。マヨ隊員」
「まかせるでござる。我が里秘伝の自白剤の効果、ご堪能あれ」
ぐったりと倒れこんだままの桑古木をみて、我々は作戦の成功を確信した。
「自白剤だと・・・なぜ」
ここにいたって俺らの悪巧みに気づいたんだろう、苦しげにうめいた。
「どうやら、お前がなにやら隠し事をしていたようなんでな。仲間思いの俺たちがちゃっちゃと吐いてもらってスッキリしてもらおうと思ったわけだ。我慢は体に悪いぞ少年」
沙羅が飲ませた自白剤はおそらく先日俺が飲まされたものとおなじものだろう。
先日、朝帰りした(ただ単に徹夜でココとひよこごっこしてただけなんだが)時に、般若となったつぐみに問答無用であごをこじあけられて飲まされた。
あの時は意識が朦朧として、気づいたのは10時間後。しかもその日の朝帰りのことだけでなく、空の手料理を食いにいったことまで吐かされていたらしいからな。
起きた後につぐみのスペシャルフルコースコンボでめためたにされた。
キュレイってこういうとき困るよなぁ。回復するもんだから、手加減なし、容赦なくやられるし。
自分でやっといてなんだが、同じように朦朧とした瞳で倒れている桑古木をみると同情をしてしまうな。
「さて、桑古木殿、吐いてくだされ。何の目的がありこの家に訪れたのか。そして、何をたくらんでいるのかを」
おお、沙羅。すごいぞ、尋問はお手の物か。さすが、なんちゃって忍者。
パパちょっぴり驚きだ。


「実は優の提案で、この家のいたるところに監視カメラを仕掛けようという話になって。その役目を俺が頼まれた。というか、命令された。つぐみには前に武を悩殺できる勝負下着とかいって発信機入りの下着を渡してて、今日その反応が家から出て行ったから、チャンスと思い家を訪れてみた」

「本来なら、監視カメラなんて俺もちょっとやばくないかとか思ったんだが、・・・主にばれたときの俺の処遇が。・・・優の命令に逆らうと押入れに閉じ込められるし、役目を果たせばたまにココとのデートをセッティングしてくれたりとご褒美もあるしと思って」

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

(ボソッと)「・・・後、ちょっぴり、武とグフフな関係になりたいなとか。考えたりしてました。」


「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・ねえ、パパ」
「・・・・ん、なんだ娘よ」
「桑古木にもいろいろあるんだね」
「・・・・だな。こいつはこいつでいろいろ苦労してるんだな」
「今日のことは、みんなには内緒にしてあげておこうか」
「そうだな。意味のないことは言わないのが、うちの家訓だからな」
「なっきゅ先輩の母上には私のほうから、こういうことはしないでといっておくでござるよ」
「まかせる」

ぐったりと倒れる、桑古木の姿。
それは誰に似てたんだろう。
ホクトや沙羅に言わせれば、先日の俺の姿にダブってるのかもしれない。
しかし・・・
「昔から少年として優にこき使われてた桑古木だが、17年経っても変わらないんだなぁ。むしろ進歩してるのか、悪い方に」
「がんばるでござるよ、クワコギ殿」
「クワコギいうな!」







P.S

桑古木のグフフ発言により、昔から心配されていた二人のやおい疑惑が浮上した。
沙羅から優へ、優から空へと、そのうわさは広まり、その内容はより過激な方へ加速すると共に倉成家でも蔓延することになる。
これが、武をさりげなく避けてた真実なのだが、そのことを本人が気づくのはまだ先のことになるだろう。





【あとがき】
えー、はじめまして。初めての作品なのでお気に入りの3人を元にしたSSを書かせていただきました。

まだまだ未熟なところも多いと思われますが、楽しく読んでいただけたらと思います。
一度読み終わったあとに冒頭の導入部を読んでこの後何があったかなどを想像してもらえるとうれしいです。
それでは。



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