*お読みいただく前に*
 前作からの続編的要素も交えてあるため、前作をお読みいただくことを推奨いたします。




怪傑キュレイ団 

                              作者:やまちゃん

〜沈黙の艦隊〜




★世界の中心で……★


 現れた一つの影は、彼の見知った顔だった。今、広間には一陣の巻き起こるはずのない旋風が巻き起こっている。沙羅の脳内のみで。


 漢の名は桑古木涼権。自称ミラクル涼ちゃん。又の名をロリコン大帝。

 漢の名は倉成ホクト。別名ぱぶろ・でぃえご・ほせ・ふらんしすこ・で・ぱうら・ふあん・ねぽむせの・まりあ・で・ろす・れめでぃおす・しぷりあーの・くりすぴん・くりすぴにあーの・で・ら・さんてぃしま・とりにだっど・るいす・い・ぴかそ。

 ここに漢対漢の一騎打ちが幕を開ける。
 それが沙羅によって仕向けられた、お兄ちゃん獲得大作戦のプロローグとも知らずに……。

『第一次お兄ちゃん獲得大作戦』

 プロデューサー:松永沙羅
 協賛:茜ヶ崎空

(フフフ……戦え! 戦うのよ! 私の筋書きはこう。お兄ちゃんと桑古木が戦えば、当然身体的条件において勝る桑古木が勝つに決まってるわ。それはつまり、お兄ちゃんがなっきゅ先輩を守れなかいということ。そしてそれを目前にしたなっきゅ先輩はお兄ちゃんに愛想を尽かして、二人の仲はアメリカとイラクより深く切り離されるのよ! フフフフフ……)

 狡猾な沙羅に対して、空の方はと言えば。

(何だか面白いからここは松永さんの言うことを訊いておきましょうかね)

 ある意味、沙羅より欲望に忠実なのであった。
 この戦い、果たしてホクトに勝機はあるのか!?

「ユウ……早くその男から離れるんだ。側にいるとあらゆる意味において身体に良くない。」
「な、何だかよく分からないが酷い言われようだな……。俺がお前に何をしたって言うんだ?」
「黙れ! 僕はお前の腹の奥底に潜む黒く澱んだものを知っているんだ。お前なんかにユウは渡さない!」
「いや、別にいらないし……。俺にはココがいるし……。」
「僕は伊達にユウの彼氏をやっているわけじゃない。お前なんかが絶対に知りえないことを知っているんだ。」
「おーい。俺の話を訊いているかー。」
「そう! 僕はユウのスリーサイズを知っているんだ!」
「って、何言い出」
 止めに入ろうとするユウ。しかし時既に遅しで、暴走したホクトを止めることは地球の回転を止めるより難しいのだ。それは更衣室での鏡を見たときの暴走ぶりを思い出してもらえば火を見るより明らかであると思う。


「ユウはB××W××H××なんだぞ!」


 その日、世界が沈黙した…………


★そして伝説へ★


「……何で私より……?」
 沈黙を破ったのは、鬼のような形相でユウを凝視する彼女の母親だった。其の言葉の意味するところは定かでは無いが、次の瞬間、彼女は白目をむいて卒倒してしまったのである。
「フ……哀れね……。」
 余裕の表情で春香奈を見下すつぐみは、大人の女性そのものだと形容すべきなのだろうか。確かにある意味において間違ってはいない。そして沙羅の『お兄ちゃん獲得大作戦』は、同時に大人の威信を賭けた戦いにまで発展してしまったのである。空が口元に微笑を佇ませていたことは秘密だ。
 ともあれこの戦い、残念なことに再び現れた研究所の敵戦力によってお開きとなる。だが、別段戦わずとも武率いるキュレイ種メンバーがライプリヒ戦力に勝つことが明らかであるように、ユウがホクトといつまでも一緒であるということも明らかなのだ。何故なら二人は、あの日、船上で誓いのキスをたてたのだから……。


 …………


 数十分後、戦闘に終止符が打たれた。
「いい加減、この戦闘状況にも辟易してきたな……。」
「しつこいったらありゃしないわね。」
「ユウ……何で私より……?」
 口々に戦闘後の感想を述べるキュレイ軍団。傍らには生け捕りにした兵士が一名。
「おい、こいつを利用してさっさと親玉の所にいかないか?」
「桑古木にしては良い提案ね。賛成よ。」
「そうですね。私も小町さんと同意見です。」
「ユウ……何で私より……?」
「よし、じゃあ早速尋問を始めようか。つぐみ、この手のことはプロのお前に任せるよ。」
「ねぇ武、プロって何よ……。まあいいわ。じゃあ始めるからとっとと吐いちゃった方が身のためよ!?」
「ひぃいいいいっ!!! 頼むから俺を食わないでくれぇえっ!!」
「誰が食うかっ!」


 …………


 尋問の末、結果として兵士から得られた情報はこうだった。この情報は空が嘘かどうか解析した結果でもあるため、間違いは無いと思われる。

 其の一:兵士は下級兵であり、司令官に会ったことは無い。
 其の二:兵士及び研究所職員への指令は、すべて朝にコンピューターを通じて通達される。
 其の三:樋口遙は一つ上の階に捕らわれており、その階でクローン軍団開設の実験が行われている。

 以上である。

「少ない情報だけれど、非常に有力なものを得たわね。」
「そうですね。小町さんにしては良くやった方だと思います。」
「空……あんた、帰ったら眠れないと思いなさいね。」
「あら嫌だ。私は眠りませんのよ?」
「じゃあ今すぐにでもいいのよ? ウフフ……」
「ほらママ! 空! 言い争いは樋口遙さんを助け出してからよ!」
「ちっ、ゴングに救われたわね、空。沙羅に感謝なさい。」
「あら、それは私のセリフですよ?」
「いいから早く行くぞ!」
「うん、武♪」
「はい、倉成さん!」
 武には忠実な二人なのであった。


 …………


 階段を上った先は、いくつかの部屋が存在する、やはり白い空間が広がっていた。
「この階に樋口遙ちゃんが捕まっているんだな。」
「いくわよ、武! って言ってもまずはどの部屋から攻めようかしら。」
「いや、迷う必要は無いぞ。武には分からないだろうが、俺には既に答えが分かっている。」
「え? 桑古木、あんた本当に知ってるの?」
「ここだ!」
 桑古木は力強く一室を指差した。
 そして彼が指差した部屋の上には『クローン実験室』と書かれていたのである。
「探すまでも無かったってことなのね……。」
「よし……行くぞ!」
「おぉ!」
 一同、武に続く。


★謎の宝箱★


 クローン実験室内部。
 多くの武装で固められていることだろうという予想とは裏腹に、室内は暗く、人の気配が感じられない。壁にあったスイッチを押すと明かりがついた。辺りを見回すと、多くの機械と数台の寝台が置かれているのが目に入ったのが分かる。そしてその中の一台に一人の女性が横たわっているのを認めることが出来た。
「武。」
「……ああ。」


 …………


 彼女は間違いなく樋口遙その人であることが分かったのだが、何故彼女を放置したまま全職員がいなくなってしまったのか、という疑問は残る。気になるは彼女曰く、一人の研究員が『実験は終わりです』と呟いて出て行ったこと、である。室内にあった機械はクローン技術の粋を集めたものばかりらしく、研究員の言葉からはクローン人間大量生成実験に成功したともとれる。
「空、ここにあるクローン人間生成マシーンみたいな機械は使える?」
「少々お時間をいただければ高性能な私ですから、楽勝で使いこなして見せます。」
「へー、空でも使えるのね。なら、私にも使えるわね。」
「な……」
 そして中には見覚えのある機械も。
「あれ? これってハイバネーションの装置じゃないか、優?」
「あら、本当ね。使い方も同じみたいよ。空、あんたも使えるのよね?」
「ええ、高性能な私なら余裕で使えますよ。」
「と、言っても今は使わないから関係ないんだけど。ん……いや、関係あるかしら……」
 その時、優の顔が怪しげに歪んだことには誰も気付かなかったのである……。


 …………


 樋口遙を助け出した一行は、一先ず彼女を安全と思われる部屋に留まらせ、指令を出していると思われる人物を探し出すこととしたのだが、不気味なことに施設内からは人の気配が一切しなかった。
「ふぅ。これだけ探して何も無いってことは、既に全員脱出した後なのかもしれないな。」
「ん……待って! ここに階段があるわよ? まだ上の階があるみたい。」
「む、まだ見落としていた所があったか。さすがはユウだな、目ざとい。」
「どうするの?」
「どうするって行くしかないよね、パパ?」
「そうだな……準備はいいか?」
「大丈夫よ、何も準備するものなんて無いから。」
「そうですよね。」
 苦笑する武を尻目に、一同は階段を登っていった。
 そしてついに、地獄の蓋が開かれた……。




 つづく


あとがき


 お読みいただき、ありがとうございます。
 長々と続きましたが、次回で最終回になります。ラストは全員幸せになれる話を用意しています……ある意味。
 後一話、お付き合いいただければと思います。
 それではまた♪


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