ここに、一人の女性が待っている。

それは、仕事ではない。
会社が崩壊してからも、彼女は働き続けた。
もちろん給料など出るわけがない。
しかし彼女は「幸福」という名の給料を得ていた。

「・・・待たせたな。」
「いいえ、そんなに待っていません。」
「・・あなたには、随分お世話になってるわね。」
「・・・そうですか?私は出来ることが少ないのであまりお役に立てていないと思うのですが・・・。」
「少なくとも陸斗よりは役に立ってるわ。」
「・・・マジかよ?」
「・・・冗談よ。言ってみただけ。・・・でも、あなたには陸斗と同じくらいの信頼がおける。」
「そう言ってもらえてうれしいです。日真理さん。」
「それじゃあ、後を頼む。」
「了解しました。陸斗さん。」




無限ループは終わらない〜The endress of infinity〜
                              横右


第五話:上の空





陸斗と日真理は、田中研究所に来ていた。

「ここね。田中研究所。」
「ああ。俺は何回か来たが、お前は初めてだったな。」
「ここが、私たちの・・。」
「『死に逝く場所』・・だろ?」

そう、彼らは死ぬつもりなのだ。ここで。
正確には、ここでしか死ぬことが出来ないというべきか・・・。
そのためには、まずここの主、田中優美清春香奈をどうにかしなくてはならない。
当然、「成りすまして隙を突く」のが正攻防だろう。
秋香奈も気づかなかったのだから、成功する可能性も高い。
それに今回は「保険」がある。


「あいつらはいつもどうやって通ってるんだ?」
「前もってもらっていたカードを使い、暗証番号を入れてロックを解除して中に入る。
その後は、優春の部屋に直接行ってたみたい。」
「そうか・・・じゃあ、どうする?」
「セキュリテイ解除は私がするわ。」
「ああ。頼む。」

Lemuのセキュリテイレベルと同等の壁。
常人では到底無理だろう。
しかし彼女は「ある物」を使い難なくカードロックを外し、暗証番号を見抜き、入力していった。

「全セキュリテイ解除。いいわ。大丈夫よ。」
「よし、行くか。」

通路を進んでいると、優春が歩いてきた。

「・・・あれ?倉成。それにつぐみ。・・・どうしたのよ。二人そろってここにくるなんて。」
「優、ちょっといいか。」
「・・大事な話があるんだけど・・・。」
「・・・。ははーん、そういうことね。いいわ、部屋へ行きましょう。」

「(どうやら信用したようだな)」
「(まだ分からないわ。・・・相手は17年間私たちを相手にボロを出さなかった兵よ?)」
「(そうだな。警戒するに越したことはないか。)」

陸斗達は部屋へ行った。

「それじゃあ、お茶入れてくるからちょっと待ってて。」
「ああ、分かった。」
「ええ。」

春香奈は部屋を出ると同時に部屋をロックした。
そして、コントロールルームに向かった。

「・・・やっぱり。」

春香奈が見ているのは生体反応数。
しかしこの生体反応数は、キュレイ種のみをカウントする特殊なもの。
つぐみも武もキュレイ種。だから当然ここにいるキュレイ種は3人のはず。
なのにカウントは、「1」を示していた。

「あの二人から、ライプリヒの気配がしたの気のせいじゃなかったのね。なら・・。」

春香奈はパスワードを入力し、ボタンを押した。

一方、陸斗達は・・・。

「・・・・。」
「遅い。」
「・・・・。」
「遅すぎる。」
「・・・。」
「なにやってんだ?優のやつ?」
「私たち、閉じ込められてるわ。」
「・・・・マジ?」
「ええ、さっきロックをかけるのが視えたわ。」
「・・・・なんでまたそんな易々と・・・。」
「あの時反撃したら計画がすべて水の泡になってしまうわ。」
「・・・はあ。仕方ない。ここを出るか。」
「・・・残念ながら、そう簡単には逃がしてくれる気は無いみたいね。」


プシューーーー!
目の前に広がってゆくのは明らかに毒々しいガス。
明らかにこれは猛毒の一種。けたたましい異臭が彼らの周りを覆っていく。

「・・・まずいわね。」
「・・・みたいだな。」
「とりあえず脱出しなきゃね。」

ドゴッ!!


日真理が壁をけりつける。しかし壁はヒビ一つ入らなかった。

「・・・かなり丈夫な壁と見たわ。」

周りには猛毒のガス。破れない壁。次第に彼らの動きが鈍くなってきた。

「・・・そろそろ・・・・やばい、わね。」
「・・・・ああ。」
「・・・仕方ない、わ。・・陸斗、アレを、つかって。」
「・・・い、いいのかよ?・・アイツ等、専用、だろ?・・これは。」
「・・・しょうが、ない、わ。・・・今、死んだら、元も、子も、ない。」
「・・・ちっ。・・・で、出来れば、使いたく、なかったんだが・・。」


コントロールルーム。

どうやら決着がついたようだ。
アレは猛毒だが、キュレイには効かない。
すなわち反応を見れば、対象がキュレイか人かしっかりと区別できるのだ。

「・・・アイツ等、いったい何者?」

今となっては後の祭りだが、後ろからついていて分かった。
アイツ等は「自分より強い」ということが。
だから、このような戦法をとらざるを得なかったのだ。
・・背後から人の気配がした。
咄嗟に振り返る。

「・・・なんだ、空か。」
「田中先生、どうかなさったのですか?」
「なんでもないわ。さあ、仕事仕事。」

と、立ち上がろうとしたとき、めまいがした。
世界が回る。
否、回っているのは自分。
そして、空はただ立っていた。


脱出した二人は通路を通り、コントロールルームへ向かっていた。

「ふぅ、何とか出られたな。」
「アレは少し危なかったわね。まあ、そんなに計画には影響しないからいいけど・・。」

そして、コントロールルームに着いた。
そこには、空がいた。

「無事で何よりです。陸斗さん、日真理さん。」
「ああ、危なかったが大丈夫だ。」
「助かったわ。あなたがいなかったら次の手を打たれていていろいろ面倒なことになってたわ。」
「LM-RSDS-4913-Aは私がロックを掛け、現在休止状態にあります。」
「すまないな。面倒なことをさせて。」
「いえ・・・。では、私はそろそろ行きます。・・・田中さんを頼みます。」
「ああ、行ってくれ。」
「それでは・・・さようなら」

部屋を出る空。

「もう、終わりね。」
「そうだな。とても終わりに近い。」

無言の間
それはやはり、今までの振り返りなのだろうか?それとも・・・。

「行きましょう。」
「ああ。」

彼らは春香奈を残して去っていった。


あとがき
横右です。毎回遅くてどうもスミマセン。今回は戦闘も入るはずだったのですが、少し長すぎて入りきりませんでした。
次こそは必ず・・・。それと、今回は空も出てきましたね。
実は話の都合上空は出れないことになっていたのですが、どうにかこうにか話をつなげて出すことができました。
空のSS(4.5話)も続きがあるのでどうぞお楽しみに。
それではまた。


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