未来へ続く夢の道
                              あんくん



序章 裏


2035年8月某日 新国連ビル 第17控室







『でも、これだけは言いたいの!私は、家族と一緒にささやかに暮らせればそれでいいのよ!この人は私の自
慢の夫ですって、この子たちは私には過ぎた最高の子供たちですって、そういいたいだけなの!』


 スクリーンから離れた入り口のドア近くに立つ、スーツに身を固めた数人の女性。
 スーツに付けられた身分証明書には
「New United Nations Department of the protection of human rights(新国連人権擁護局)」の文字があ
る。
 世界中の人々の人権の番人。
 …その職務上、彼女たちは差別に苦しみ、迫害に耐える者たちを多く知っている。
 そんな人々に援助が、救いの手が必要だということは痛いほど知っている。
 だが、そんな人々が求めるのは『援助』という名によって与えられるモノか場所か金銭、あるいは『自己の
尊厳』や『平等』という名の権利であることがほとんどである。
 当然必要な事だ。それは理解している。人々も理解している。為政者も、多分、理解している。
 ただ、彼らの援助の為に自らの資金や物資、土地を割くとなると話が違う。自身が軽蔑し、敵視していた者
を対等に扱えと言われると話が違う。理性では納得していても、感情が納得しない。
 そこに新たな軋轢が生まれ、新たな争いが起こる。
 そんな両者を仲介し、折り合いを付け、現実をより良い方向へ改善するのが彼女たちの仕事。
 それ故に、保護対象者に感情のみで肩入れしてはいけない。彼女たちの、それが不文律であった。

 だが、そんな彼女たちをもってしても感情を抑えることができないでいた。
 
 『彼女』の凄惨な過去を考えれば、十分な補償は受けられて当然だ。金銭然り、権利然り。なのに『彼女』
はそれを一言も口にしない。
 『彼女』が求めているのは、自己の尊厳でも、平等でも、増してモノでも場所でも金銭でもない。ただ、愛
する者の傍にいたい。ただそれだけのことである。
 「愛」…それは数少ない人間の共通言語である。
 『彼女』は、人を愛する女性であり、子供を愛する母親であった。
 凄惨な半生の中にあってなお、『彼女』はどうしようもないくらいに人間だったのだ。
 溢れ出る涙をこらえ、彼女たちは誓う。
 『彼女』を救えないで何が人権の番人かと。 

 そんな彼女たちの視線の先に在ったのは―――――









 
 「お母さん………」
 「ママ………」

 ホクトは、沙羅は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
 ほほを伝う涙。しかし、それすら二人は気付いていない。
 自分達が持っていたのは、お互いだけだった。二人ぼっちの兄妹。
 自分達しか見れないペンダントが映し出すのは、父親。
 幼い記憶に残る子守唄だけが、母親と自身を繋ぐ微かな糸だった。
 去年の5月。母親に再会した。嬉しかった。一緒に暮らしたいと思った。
 だけど、それは本心によるものだったか。理性が「母親と一緒に暮らせることは嬉しいことだ」と判断した
だけではないのか。
 考えなかった。考えられなかった。
 考えてしまえば、全てが終わってしまうかもしれない。
 それが怖かった。だから、考えることをしなかった。
 でも、今、やっと理解った。
 考える必要なんてない。今溢れ来る思いを、そのまま言葉にすれば、それでいい。
 





 僕は、お母さんを
 



 私は、ママを



 

『どうしようもない位、愛している』



 

   
 




 





同日  田中研究所1F大会議室




 「……………」
 「……………」
 「……………」
 
 


 新国連本部との時差は+14時間。現地の午後2時はここでは朝の4時。
 普通、こんな時間には当直以外研究所にはいない。
 だが今日だけは特別。
 ほぼ全研究員が集まり、ただ、大型スクリーンを見守っている。
 スクリーンに映し出されているのは、新国連総会議場。
 『彼女』の演説に続き、行われる採決。
 「
  The number of valid Votes 221
  Votes in favor  221 
  Negative Votes 0
  Abstention 0

  This bill is adopted a resolution unanimously.
                         」

「よっしゃーーーーーーーーーーーー!!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーー!!!」

 弾ける歓声。

 お互い抱き合う者がいる。
 白衣を手にし、高く突き上げる者がいる。
目じりを押さえ、微笑む者がいる。
 ハイタッチを交わし、ニヤリと笑いあう者もいる。
 盆と正月とクリスマスとハロウィンが一緒に来たような歓喜と喧騒の渦の中に、


 田中優美清春香菜の姿は、なかった。










 同日、田中研究所3F 所長室


「This bill is adopted a resolution unanimously.」

 モニターに「全会一致の可決」を示す電光掲示板の表示が現れる。
 その表示を見つめる女性が二人。

「決まりましたね」
「決まりね」

 その顔に、下の階で騒ぐ者たちと同じ表情はない。

「喜ばないのですか?」
「喜んでるわよ。もっとも、当然の結果なんだけどね」
「小町さんの演説ですか」
「そうよ。あれを聞いて尚反対ないし棄権をできる外交官はいないでしょう。今回の件は、世界の注目の的だ
ったし」
「国営放送が未明に実況中継する位ですから。反対などしようものなら、世界世論に袋叩きですね」
「そう。完璧なシナリオ。これで、事実上つぐみを害することのできる組織は無くなったわ」
「表からは、ですけどね」
「まったくもってその通り。そうなると、標的は私たちってことになるんでしょうね」
「田中研究所の有するキュレイウィルス株に、ライプリヒ時代の物を含む研究データ。これらを巡っての諜報
戦ですね」
「まあ、さすがに荒事は仕掛けてこないでしょうから。沙羅ちゃんと、あなたが頼りってことになるわね」
「お任せ下さい。倉成さんと小町さん、そしてホクトさん、沙羅さん、秋香菜さん、ココちゃん、桑古木さん
…そしてあなたを守るためにLM-RSDS-4913A『茜ヶ崎 空』は全力を持って対処いたします」

 胸に手をあて、一礼する空。

「願い下げよ」
「えっ?」
「私はね、『機械』としてのあなたにお願いしているわけじゃない。同志として、親友として、なにより『心
を持つ存在』としてあなたにお願いしているの。心して、『人間』として答えなさい空。あなたは、どうする
の?」

「決まってるじゃないですか。最愛の人と、大切な仲間と、親友を守るのに『理由』が必要なんですか?
私は、『茜ヶ崎 空』は、大切なものを守るためにはあらゆる手段を講じるでしょう。それが私の『意志』です」
 即答。
 顔を見合わせる二人。
 そして、




「あははははははははーーーーーーー!!!」
「うふふふふふふふふーーーーーーー!!!」




 おもいっきり、笑った。



「それにしても、これで晴れて倉成はつぐみのものになっちゃった、ってわけね。感動の家族愛で結ばれた四
人。その中の父親を略奪愛ってわけにもいかないもの」
「その通りです。残念なことですが」
「…空は余裕ねえ。まったく、敗者復活戦の可能性がある子はいいわよねえ。…私なんか、完全に目が消えた
ってのに」
「例の件の事でしょうか? あれは…」
「いいっていいって。あの陰険坊やのことは私にまかせなさいな。って、私より年上か」
「優さん…」
「いいのよ。わかっててやったんだから。それに、つぐみは十分苦しんだ。30年近い苦しみと悲しみの先にや
っと見つけた幸せを奪う権利は私にも…神様にだって無い」
「………」
「あーっ、辛気臭い顔しない!! どーせ他の連中はお祭り騒ぎ、今日は仕事になんないわ。さっさと下に降
りて宴会の段取りでもしましょう。もっとも」
「了解しました。今日こそもっとも狙われやすい日ですから。セキュリティーは『デフコン4』、今後、許可あ
るまでは1F以外は完全閉鎖、対空・対地・対人迎撃手段およびCDSは臨戦態勢。コンピュータにも施設に
もウィルス一匹入れさせません」
「上出来。酔っ払いの相手と並行させて悪いけど」
「うふふふふ。万が一の時は八つ当たりさせてもらいますから」
「…侵入者に同情するわ」


 勢い良くドアを開け放て…ないので代わりに力いっぱいドアのタッチパネルをひっぱたく。開くが早いか、
廊下と階段を全速力で駆け下り、
「こおらーーーーーーーーーー!!!!!騒いでる暇あったら宴会の準備しなさーーーーーい。今日は無礼
講、徹底的に飲むわよ!…潰れる覚悟は十分かしら?」
「上等であります、しょちょーーーー!!!」
「了解であります、しょちょーーーー!!!」
「望むところであります、しょちょーーーー!!!」 
「よろしい。早速実行してもらおうかしら」



「「「了承!!!」」」










 同日  新国連総会議場第1入場口付属控室兼用警護室





 お互い、ただ抱き合う男女。
 
 このような場所においては、見られることの無い光景である。
 しかし、この部屋にいる人々は二人を責めようとはしない。
 強面の警備員も、ピンと背筋を張った新国連官僚も、その二人から視線を外せない。
 その視線には敵意はない。ただ、優しさが込められた視線。
 そのような視線を、いままで『彼女』はほとんど知らなかった。
 だからなおさら気恥ずかしく、夫の胸から、顔を上げられないでいた。

「ごめん。俺、何もできなかった。こんな時まで、つぐみにつらい役目を任せるしかなかった。無力だよ、俺
は。つぐみを守るって誓ったのに。いったい何をやってるんだろうな、俺は…」
 


 ドガーーーーーーーーーーーーン!!!



「ぐっ、ぬうーっ」
 体ごと床に叩き付けられ、武はうめいた。ほとんど馬乗り―――まさにLemuの「アノ時」の体勢で、視線で
つぐみが彼を見下ろしている。
「やっぱり、武はバカね」
「な、」
「バカバカバカバカバカ、こんの大バカ者っーーーーー!!!一年経って少しは直ったかと思ったけど、やっ
ぱりあんたはバカ…」
「って、おい」
 突然胸に顔を埋められ、狼狽する武。どうしてよいやら分からない。
「私は、ここにいる。ホクトと沙羅も、すぐそこにいる。ライプリヒの実験体でもなく、明日をも知れぬ逃亡
者でもなく、復讐に狂うアベンジャーでもない、人間の私達がそこに在る。
 私を救ってくれたのが、武、あなた。あなたが居なければ、ホクトにも沙羅にも私は出会うことはなかった。
人間として母親として今ここに在れるのは、今こうやって未来への道を開こうと前へ進んでいけるのは、みん
な武のおかげ。
 武は、私の自慢の夫。永遠にそれは変わらない。だから、あんなこと言わないで…」
 震える肩。そんな妻を、武は優しく抱き寄せる。
「すまない。俺、勘違いしていたようだ―――」
「ふふっ、分かればいいのよ」
「やっぱり、つぐみがいないと駄目だわ、俺。つぐみは、俺の自慢の奥さんだ」
「――――――!!!」

 

 その後の情景を語るのは野暮というものであろう。
 およそこの部屋に似つかわしくないであろう光景を、同席者達は礼儀正しく見なかったことにした。










 同日 午後3時17分 新国連第17控室。


 プシューッ。

 弾かれた様に、二人は振り向く。
 視線の先に、待ち焦がれた人を見つけ、
「おかあさーーーーーん」
「ママーーーーーーーー」
 その胸の中に飛び込んだ。
「おかあさん、おかあさん、おかあさん…」
「ママ、ママ、ママ…」
 ひたすら泣きじゃくる二人の子供達。
「まったく、おおげさね。…私はどこにも行かない。あなた達が望む限り、あなた達の傍に在る」
 優しく二人を包み込み、声を掛ける『彼女』。
「ああ、俺達は絶対にお前達を置いては行かない。お前達が望む限り、お前達と共に在る」
 そんな『彼女』の後ろから三人に手を回し、優しく語り掛ける男性。
 泣き声と、優しく子供をなでる手の音。
 そんな光景が、飽くことなく続いた。





 ようやく泣き止んだ子供達の手を取り、立ち上がらせる。
 ホクトも沙羅も、私の服の裾をつかみ腕ごと抱きかかえるようにくっついてきて離れようとしない。
 もう17歳になるというのに、困ったものだ。でも、今日だけは許してあげる。
「宿泊室を用意しております。あと、事務総長が…」
 同室の職員の流暢な英語を
「不要よ」
 同じ英語でぴしゃりと言い放って止める。
 そのまま踵を返し、入り口へと向かう。
「どうなさるのですか?」
「帰るのよ。帰るべき家へ。…ここは私達の居場所じゃない」
「………」
 あ、絶句してる。そりゃ非常識かもしれないけど、これが私の本心。帰るといったら帰る―――
「屋上に高速ヘリが、空港には新国連専用超音速要人輸送機F/C-22NUNが待機しています。途中シアトルに給
油の為着陸しますので、食事・休息はその際に。それ以外は空中給油を行いますのでノンストップです。可及
的速やかかつ安全にご自宅へお送りすることを新国連人権擁護局の名誉に賭けて約束いたします」
 意地悪い笑いと共に涼やかに返す職員A。
 どうやら、読まれていたらしい。
 でも、なんだかうれしかった。
「感謝するわ。…屋上へはどう行けばいいの?」
「ご案内いたします。コマチ・ファミリー」
「お願いするわ」
 英語での会話についていけず、クエスチョンマークを浮かべている我が家族達を促して部屋を出る。
「Let's go my sweet sweet Home!(帰りましょう、愛しの我が家へ)」
 万感を込めて、高らかに宣言して。










 同日 田中邸玄関  午後11時17分

「わーたーしーはまだ、だいじょーーーぶっ」
「大丈夫じゃねえだろ、優。キュレイになってアルコール分解能力が上がったって言っても、脳がアルコール
分解するわけじゃねえんだから。飲み方いつになったら覚えんだよ」
「あーーーっ。少年のくせになっまいきーーー。みせーねんはーお酒のんじゃいけますうぇーーーん」
「いつの話だ、いつの」
「わたしはえいえんのにじゅうーさんさーい。あんたはえいえんにみせいねーーん。これキュレイのじょーし
きよー。きゃはは」
「いい加減にしろっ!!」
「はいはいーー。タッタサンドはもういやなんでしょー。いーっぱい白いご飯がたべたーいのよねー、しょー
ねん♪」
「………もはや何も言うまい」
 どうやら、俺は田中優美清春香菜の世話係と考えられているらしい。荒れに荒れた彼女を自宅に送る役目を
半ば強引に押し付けられてしまった。
 正直、優とてキュレイの端くれ。アルコールに対する耐性は大幅に向上している。多少の酒量ではこんなこ
とにはならない。
 なんでこんなことになったかというと――――




「な、なんなんだ、この有様は?」
「優、いったい何してるのよ」

 まさか、宴会の原因がその日の内に研究所にやってくるとは思ってもみなかった訳で。
 聞いてみると、超音速輸送機(しかもVIP仕様だって話。F/A22の要人輸送仕様って言ってたけど、あれすっ
ごく高価いんだぞ…)で直行で帰ってきたって話。しかも空軍基地からジェットヘリで直接研究所に乗り付け
て、理由が
「家に一番近いヘリポートがここだったから」
ときたもんだ。あきれて物が言えないという言葉の意味を改めて実感させられるハメになってしまった。
 そしてこれを聞きつけて(どこから情報漏れたんだ?)田中優美清秋香菜嬢が速攻で襲来。
 新国連で何があったのか、ラブラブ全開(本当だぞ。凄く珍しいことなんだが)の武とつぐみ。それに負け
じとホクトに迫るユウと対抗して意地を張る沙羅。
 しかも、そんな一行に向けられる研究員のほのぼの視線。まあ、今日の新国連演説聴いてれば当然だが。
 で、優が完全にキれてしまったと。さすがに武たちに絡むのは全力で阻止したが、結果として屍累々の惨状
と化し、

 俺は、優共々研究員達に研究所から追い出されたというわけだ。




 以上回想終わり。あ、情けなくて涙出てきた。
 あ、ユウは未だに研究所。ホクトも災難だが、まあ彼女なんだからしょうがない。あきらめてもらおう。
 というわけで、なんとか、優の家に到着。
「こら、着いたぞ。さっさと降りろ」
「いーやーだー。しょーねんが開けなさい。はい、かーど。なんばーは前といっしょー」
 もはや小間使い状態。反抗できない自分が悔しい。
 しぶしぶキーカードをリーダーに通し、ロックナンバーを入力する。
 作動音と共に扉がひらく。
「私の部屋は分かるでしょ。そこまで連れてって」
「へいへい、了解しましたよ、っと」
 優の寝室のドアを開ける。珍しく自動でないノブ付きのドア。最近新築するとき『部屋でまで機械は見たく
ない』とだだこねていた姿が思い出される………。
 どさどさーーーーっ。
「うおっ」
 突然バランスを失って倒れこむ。背負っていた優がいきなり全体重を乗せてきたのだ。
「な、なにしやが――――」
 言葉を失う。
 目前数十センチ先にあるのは大きな眼一杯に涙をためた優の顔。その涙はみるみる溢れ出してきて、
「うわああああああああああああああああーーーーーーーーーーん」
 俺の胸に顔を埋め盛大に泣き出した優を、俺はただ呆然と見守ることしかできなかった。
「わたしだって、あきらめよう、って、ひくっ、おもっ、てた。もう、うくっ、武は、つぐみの、もの、だか
ら、って。でも、ね、でも、ね、17年ね、ひくっ、17年ね、私、がんばった、の。武ね、助ける、為に、ね、
えぐっ、がんばった、の。
 ユウ、騙して、少年、巻き込んで、いろいろ、後ろ暗い事、して。でも、もう、おしまい。うくっ、武は、
もう、私に、あくっ、振り、向いて、くれない。ううん、振り、向い、ちゃ、だめ、なの。分かっ、てる。最
後に、ひくっ、つぐみの、背中、押したの、私、だから。
 でも、でも、私、やっぱり、女、なの。理性で、分かっていても、心は、わかってくれない、の」
 思わず、俺は力いっぱい優を抱きしめた。ただ、感情のままに。
「思いっきり泣いて、今日は忘れろ。また思い出したら、また泣きに来いよ。胸くらいなら、いつでも貸して
やるからさ」
「ご、めん。今日、だけ、は、言葉、に、甘える、ね」




 泣き疲れて眠ってしまった優をベッドに横たえ、タオルケットを掛ける。
 音を立てないようにそっとドアを開け、部屋を出る。
「おやすみ、優」






 同日 ???




「始まっちゃったわね」
「ああ、始まったよ」
 ワイングラスの中身が照明に透かされ、紅い揺らめきをテーブルに描く。 
「もう戻れないわよ」
「僕は、承知の上だ。この為に、僕は存在する」
「思った通りに踊る人なんていないわ」
「まったくもってその通り。僕は踊らせるわけじゃない。相手が、望んで踊るんだ。僕は、劇場をあつらえる
だけ」
「うそおっしゃい」
「信じてくれないとは、悲しいな」
「もう聞き飽きた。その台詞」
「まあ、信じてもらおうとは思わないけどね」
「…今でも私は反対。あなたのやり方じゃ、たとえ全てがうまくいったとしても、あなたの周りには誰も残ら
ない」
「それもまた真実だね。僕もそう思う」
「理解っていて、それでもそうすると?」
「ああ、僕は、僕の存在した理由が欲しい。それだけだ」
「つまんない理由ね」
「そうかもしれない。でも、僕にはそれが全てに優先する」
「あら、そう」
「そういう君はどうする?僕と違って君はいつでも途中下車できる」
「どうせ、あなたの周りには誰も残らない。しょうがないから、私だけでも付き合ってあげるわよ」
「そりゃどうも」
「少しは嬉しそうにするのが礼儀でしょうに。―――で、次はどうするの?」
「そうだね、とりあえず」



「結婚でも、してみるか」

 


                   To Be Continue to Main Story …
後書

 なんでだろう…TTLLほのラブ話になるはずが、なんだか重いシリアスに。
しかもいつの間にか優春のウェイトが大幅アップ。もはやTTLLとは呼べないぞ、これ。


 序章の同一日に展開されるあれこれを書いてみました。この次から正式に始まります。

 この序章を除くと、全体で3章仕立てになる予定です。
 
 最初の章では、僅かにR11(しかも設定の一部を借りるだけ)がリンケージしてくるだけです。しかし、現在
構想中の第2章においては、かなりのウェイトでN7がリンクして来る予定です。

 なにせ初心者ですので、文法・表現・文章ひっくるめて未熟ですが、とりあえず見捨てな
いでいただけるとありがたく思います。


 ちなみに次回は、解釈重視のお話。


 最後に、つたない文章を最後まで読んで頂き、誠に有難うございます。



 2006年3月18日 あんくん


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