卒業式が始まり、学校の廻りは先ほどまでの喧騒が嘘のように静かになる。
そんな中、校内を伺う様に立つ、二組のシルエット。

何故、校内に入らないのか?

父兄であるのなら、何故、式に参列しないのか?

もし、この情景を見ているものが居れば、そう疑った事であろう。


そんな遠景が、しばらく続き、



「何時まで、茶番、続けるつもりなんだ?」

 男の声で、終わった。




未来へ続く夢の道 −本編4 卒業式 裏−
                              あんくん




 ばっ!!!

 振り返り様、駆け出そうとするシルエット。

 だが、
「………」
「………」
 道の両側、電柱の陰より現われる、白衣姿の男達。
 丘の上の一本道。
 既に、退路は失われていた。

「ふん。最近、不審者が出没するって話でね。
 しかし、証言がどうもあいまいで一致しないってんで警察さんはあんまり真面目に動いてなかったみたいだが。
 …そりゃ、二組が別々に動いていれば、証言も割れるってか」

 最初と同じ声。

 退路を塞ぐように仁王立ちし、男は二組の男女を、見据えた。

 元々は、良い仕立てであったろうスーツ。
 しかし、それは、ほつれ、汚れ、もはや元の姿を想像することは難しい。
 髪はぼさぼさ。肌を見れば、恐らく入浴も碌に出来ていないことが判る。

 そんなくたびれきった中年の男女が二組、彼の視線の先に居た。

「取り敢えず、自己紹介だけはしてやるよ。
 俺は、桑古木 涼権。ただし、7日間だけは『倉成 武』だった。
 こう言えば、あんた達にゃ十分理解できるだろ?」
 凍りついた視線。温度を欠いた目で見据える。


「ふっ、ここまでか。どうやら最期の願いすら叶いそうにないな。
 因果応報。当事者にならないと、本当の意味は分からないものだな」
「あなた…」
「いいんだ。これも運命だな。最期に関係者に会えただけでも良しとしよう」
「主任…」
「ゲームオーバーだ。後始末は、彼に託すとしよう。…それでいいな?」
「お任せします。私は、もう疲れました」
 一方の女性が、もう一組の男性に何かを手渡す。
 そして、受け取った男性が、一人、覚束無い足取りで前に出て、そのまま桑古木の前に立つ。
 
「私達の自己紹介は、不要だな?
 ならば、さっさと、終わらせることにしよう」

 そのまま、二つの縦長の包みを桑古木に、渡した。

「………」
 無言で包みを解く。
 無記名式の、預金通帳。対のカード。暗証番号のメモ。
 毎月、同じ額だけが入金され続け、2034年の4月で途絶えている。
 そんな、通帳が、2通。
「何の、真似だ?」
 表情一つ変えず、桑古木は、目前の男を見る。
「どうやら、私達はここで終わりのようだ。
 資金も使い果たし、行き場とて無い。
 このままでは、そいつも使ってしまいそうでね。
 だから、せめて最期にあの子達の姿を見たかった。それだけの事だ。
 そいつは、あの子達の両親に渡してくれ。汚れた金だが、金は金だ。あって困ることは無い。
 ただの自己満足だ。誹ってくれて構わんよ。今の私達には、どうでもいいことだ。」
 淡々と、連なる言葉。目に、光は無い。

「ああ、誹ってやるよ。どうでもいい事じゃねえからな。
 あんた達の自己満足に付き合う義理なんぞ本来無いんだが。手前勝手な理屈で、ホクトや沙羅が傷つくところなぞ見たくも無い。
 それだけでも腹が立つっていうのに、その役を俺に託すだぁ?冗談も休み休みいってくれ。
 つくづく、エリートって連中は、自分勝手なもんだ」
 初めて、桑古木の言葉に感情が生まれる。
 視線は、氷のそれから灼熱の炎に変わっていた。

「ライプリヒのお金は、一切使っていませんでした。
 身をやつしても、それだけは守りました。
 でも、もう無理だったのでお金は子供の両親に渡しました。
 そして、私達は、報いを受けて死にました。
…お笑い種だ。ただの自己陶酔じゃねえか。それであの子達が喜ぶと思ってるんだから、尚更救われねえ。
 喜んでるのは、あんた達だけだろうが!!!悲劇の主役を気取ってるんじゃねえぞ、おい」

 一歩、前に出る。
 気圧され、よろよろと下がる男。
 その襟元を掴み、引き寄せる。
 キュレイの腕力である。軽々と持ち上がる。

「ホクトや沙羅は、そんな人でなしか?人が死んだことを喜ぶような、そんな子だったのか?
 あの子の父親は、他人の命を誰より大切にする男だ。
 あの子の母親は、そんな夫の言葉を大切にし、あんた達が2年足らずでへこたれた日々を17年間生き抜いた。
 そんな二人の子供だ。そんな子供が、人の死を悲しみこそすれ喜ぶわけがねえだろうが!
 結果を伝える役を俺にだと?あの家族に、罪の十字架背負わせる役目を託すだと?
 俺は、そんな名誉な役目など御免だね!!!」


 手を突き放す。
 勢いで、道路に転がる男。

「げほっ、げほっ…それで、私達に、何をしろというのだ?」
 むせながら、見上げる。弱弱しい言葉。
 桑古木は、呆れたように空を仰ぎ、再び、前の男を見下ろす。


「…呆れたもんだ。エリートさんには、こんな簡単なことも解らんか。
じゃあ、特別サービスで教えてやるよ。

 生きろ。命のある限り、生きろ。

 それだけだ。地下生活の日々に耐えかねて死を選ぶなんて楽な手段は許さねえ。
 死ぬ勇気があるんなら、そいつは過去の償いの為に使え。
 俺よりずっといい頭持ってるんだ。それくらい、出来るだろうが?」
 吐き捨てる様に、言い放つ。

「考え違いだな。エリートというものは、組織に在ってこそ意味がある。このような状況では、君の方がずっと優秀だ。
 償いなんて、こうなっては出来ないんだ。我々は」
 最早、立ち上がる気力すらないのか。
 男は、しゃがみ込み、下を向いて応えた。



 沈黙の帳が降りる。



「―優の言ったとおりだったか。しょうがねえな…」
 桑古木は視線を外す。

「あんた達の死体には、一銭の価値も無い。
 だから、研究者として頭脳で償え。
 組織でしか役に立てないというのなら、組織で役に立て。
 …ただし、結果が全てだ。子供達の為、キュレイの為、具体的な結果を残せ。
 残せなければ―わかっているな?」


ぱちん。


 指を鳴らす。 

 白衣の男達が四人に駆け寄り、強引に引き起こす。

 猛スピードでバンが疾走してきて、見事なスピンターンを決めて急停止。
「急げ、もう生徒達が出てくる時間だ」
 男達はスライドドアを開き、四人を押し込む。かちりと閉まるドア。
「散れ。帰所の手段は、各自任せる」
 男達は、その声を合図に、四方に散った。


「はろ〜♪」
「はろ〜♪、ぢゃねえだろ!いきなり呼び出された挙句、なんて事をさせるんだよ。ったく」
 助手席に飛び込んだ桑古木を、運転席の優が能天気な声で出迎える。
「ごめんごめん。ああいう役って、私じゃちょっと、ね」
「…まあ、こんなのでも一応女だからな。ああいう役を女にさせるのは性にあわんし」
「こんなのとは何よ、こんなのとは!」
「胸に手を当ててよーっく考えろ」
―田中研究所における、最大最悪の禁忌にふれてしまった桑古木。その、運命や如何に。
 まあ、狭い車内ゆえ、ストレートやボディは飛んでこない。だから大丈b…
びしっ!!!
「おぷふぁ!!!」
…説明しよう。キュレイ種の瞬発筋力及び、それを支える腱や骨の柔軟性や耐久力はサピエンス種を遥かに凌駕してしている。
 故に、指の一弾きでさえ非常識な破壊力を有する上、衝撃が一点に集中するわけであるから…
 でこぴん一発で桑古木は撃沈したのであった。合掌。


「いつつっ。ったく、俺でなけりゃ死んでるぞ」
 かなりの時間を要したが、無事復活を遂げた桑古木。
「ふん。こんな可愛い女の子捕まえて『こんなの』呼ばわりしたんだから、当然の結果よ」
「女の子って、優、おまえ年幾つだ?」
「あんた、死にたいの?」
 にっこりと、大人の笑み。周囲の世界がネガポジ反転しそうな、そんな笑み。
「…すみません」
 全面降伏。過去何度繰り返されたかわからないやり取り。
 こうして、桑古木の連敗記録の歴史に、また一ページが追加されたのであった。



「にしても、何時見てもこの車の装備って無茶苦茶だな」
「こういう無駄なところに掛けるお金があるのなら、本業に使って欲しかったわね」
 外装は、そこいらの警備会社が使っているようなありきたりなウィンドウレスの大型バン。
 しかし、その内実はと言うと…
 エンジンはトルク重視のフルチューン。
 ボディはチタニウムとケプラー緩衝材をふんだんに使ったハニカム構造。ノーマルとほぼ同じ車重ながら、新NATO弾から携帯型無反動砲の直撃まで耐えられる耐弾・耐爆仕様である。当然、ガラスも耐弾・耐爆仕様。携帯型小火器では、この車の防壁を貫通することはほぼ不可能。
 タイヤも当然防弾。ムース充填式で、拳銃弾やライフル弾程度なら被弾しても走行に支障は無い。
 完全防音で、車内の音はまず外に漏れない。が、車体のあちこちに偽装された高性能集音マイク及び解析コンピュータにより、周囲数十mの数デシベル程度の音まで集音・解析、マルチサラウンドスピーカに偽装された車内スピーカで再現できる。
 カーステレオに偽装されたそれは、高性能マルチバンドデジタル無線兼用パッシブレーダーシステム。一般無線はもとより、秘匿回線でも秘匿レベルが低ければデジタル化されていてもデコードできる。
 これさえあれば、検問など筒抜け。カーナビゲーションシステムともリンク可。
 他にも、サーマルスコープ付きヘッドライトとか、そういったまともな車には付いていないギミックが多数搭載されている。
 これ一台分のお値段でべ○ツ500SL-○MGがウン台も買えてしまうくらいのシロモノなのである。
 しかも、この車両の主な用途は…
「運命って皮肉よね。元々は沙羅の監視用に作られた車を、私が運転しているんだから」
「車には罪は無いとは言え、なあ」
 揃ってため息をつく。
―つまりは、そういう事である。



「って、あんたがダウンしていたせいで帰りそびれちゃったじゃない!
 あ〜あ、卒業生がいっぱい出てきちゃった。こうなると、逃げ出すとかえって目立つなあ」
 しょうがないなーといった按配で、額に指を当てかぶりを振る優。
「って、俺のせいかよ!」
 思わず反応する桑古木。
「だまらっしゃい。…こうなったら、うん。そうしよっか」
 うんうんと一人で納得している優。
「?」
「よし、それじゃ…うん、見つけた」

 カチッ

 オートウインドウの作動音。
 優はいきなりウインドウを開けた。
 桑古木はその窓の外の風景を見て、瞬時に優の意図を悟った。

 そして、


「おーい、ホクトー、沙羅ちゃーん!」

 
 そう、声を掛けた。




『あっ、優さんに桑古木さん?』

『一体どうしたんですか?』
『平日だから、仕事だ。…正直、優の運転て言うだけで気が滅入るんだが』
『涼権。聞こえてるわよ?』
『聞こえるように言っているんだ。第三者が居るから、真実は明らかだしな』
『『あ、あはは…』』


『ところでだ、仮の話なんだが。
ホクトと沙羅の、育ての親。もし、生きていたとしたら、どうする?』

『『!』』

『いや、訳有っていろいろ調べてみたんだが。どうも、旧ライプリヒの方も、警察の方も消息を掴んでいないらしい。つまり、もしかしたら二人に接触してくる可能性も有るってこった。
 正直、こんな日に聞くのは気が引けるんだが。もし、接触してきたら、どうする?』

『お礼を、言うと思う』
『うん、沙羅も、そうだよ?』

『ほう、意外だな。てっきり、恨み事の一つでも言うかと思ったぜ』


『うーん。多分、一年前だったら、桑古木さんの言う通りだったと思うよ。だけど、今はね、不思議と恨む気持ちが、無いんだ』
『沙羅も、そうだよ。今幸せなのも、良く考えると今生きているから。あの人たち、好きじゃなかったけど、それでも、あの人たちがいたから沙羅はここに居るの。だから、とりあえず、お礼から言うかな』
 

『うんうん、良哉良哉。人間、恨みや過去に捕らわれちゃだめよん?』
『優、茶々を入れんで欲しいんだが』
『涼権にシリアスは似合わないわ。ごめんなさい、このバカが妙な事聞いて』


『いや、いいよ…優さん、最近、ユウは元気?何か最近忙しいみたいだよね?体、大丈夫なのかな?』
『ああ、ユウね?なんか、大学でいろいろあるみたい。一段落したら連絡させるから。その時は煮るなり焼くなり好きにしなさいな。もっともホクトにできたら、だけどね』


『『優さん!!!』』
『おっとっと、じゃあね〜!!!』


 カチッ。

 オートウインドウが作動。窓が閉まる。
 急発進のスキール音と共に、バンはあっという間に加速した。

「…優」
「何よ?運転中は話しかけないで!」
 前を見据えたまま、優が言葉だけで返す。
「甘いんだな」
「…何のことかしら?」
 姿勢に、変化なし。
「別に。なんでもない」
「そっか」
 目的地に辿り着くまでに交わされた会話は、それだけだった。

 微かに漏れる声には、気付かない振りをして。





 午後7時30分 田中邸入り口




 結局、その日は真っ直ぐ帰ることになった。
 倉成家ではささやかな卒業パーティが催され、優と俺も招待されたのだが、
「こういう時くらい親子水入らずで楽しんでよ。どうせ私達と参加するパーティなんていっぱいあるんだから」
という事で優が辞退したのだ。
 正直、俺にとってはありがたかった。とても、そんな気分じゃなかったから。

 帰り道、俺は優を自宅まで送った。
 田中家に車は1台しかない。今日は秋香菜が使っている。そういう日は俺が優の送り迎えの担当だった。
(完全に小間使い扱いだぜ…)
 現実に、優がらみの事項は全て俺に一任する=押し付ける。これが田中研究所全研究員の共通認識となってしまっている。
(いつまで経っても、「少年」の頃と立場、変わらんな)
 微かにため息をつく。

 あっという間に到着する。
 建物に明かりは点っていない。秋香菜はまだ帰っていないみたいだ。
「優、着いたぞ」
 隣の席を見やる。
「優?」
 彼女の視線は真っ直ぐ前方。しかし、優に動きは無い。
「優、おい、どうしたんだ、優」

「涼権って、ああいう喋り方、できたんだ…」
 優の口から、漏れる言葉。話しかけているのか、独り言なのか。
「そっか。ああやって、私の知らない裏側に、一人で居たんだ…」
「お、おい、優…」
「私って本当に、馬鹿。少年に汚れ仕事押し付けて、そのくせ一人で頑張ってたって思い込んで。いつも、後始末の時少年笑ってたから。そんな空笑いすら、私、気付けなかった…」
(しまった。そういえば、ああいう汚れた後始末の場に優を連れて行ったことは無かった。近くに待機してもらった事が仇になったか)
 あの車の集音・解析能力。恐らく、優はそれで俺の会話を聞いていたに違いない。
 その後騒がしかったから、俺もこの可能性を失念していた。
 優も根が優しい。そんな彼女が、ああいった俺を知ったら…

 優の顔に、表情は無い。こんな顔は、見ていられない。だから俺は、

 びしっ。

「痛ったーい!」

 軽く、でこぴんをお見舞いしてやった。あくまで、軽く。

「ったく。優は何でも出来るから、そうやって全部背負い込んじまう」
「でも、涼権」
「―俺の理想の存在は武だってこと、知ってるよな」
「いきなり、何言い出すのよ」
「いいから、黙って聞け。
 武は、汚れ仕事や危険な仕事を絶対に女性に押し付けたりはしなかった。
 だから、俺もそれを真似ただけだ。
 泥を被るのは男の仕事。いくら闇に染まろうと、泥の下でもがこうと、絶対に苦しいそぶりは見せない。まして女性をそれに巻き込むのは下の下ってな。
 だから、優がこの事で悩む必要は無い。
 修行が足りないのは俺のほうだ。見せちゃいけない姿を、見せちまったからな。覚えてても構わないが、そいつで悩んだり自分を責めるのだけは止めてくれ。
 俺が、つらいから。そんな優の姿を、見るのはさ」
 口を挟む暇を与えず、一気に言いたいことを言ってしまう。俺の語彙じゃ、間を空ければ優に言い負かされてしまうから。
「でも、でもっ!」
 優の顔は半泣き。最近、よく見るようになった顔。

 ぽんっ。

 よく武が沙羅にしてやるように、軽く頭を撫でる。

「優は後ろにどっしり控えて、笑ってツッコミ入れてくれればそれでいいんだ。後ろに優がいれば、如何に闇に染まろうと、俺は道を誤らない。
 今回だってそうだ。最後は優の言うとおりになった。その辺を手配してくれなければ、みすみすスタンドプレーで失敗するところだったぜ」



    ―「涼権、エリートって人種は組織の中にあってこそ、その力を発揮できる。
      組織に属していなれば並以下の存在よ。
      気持ちは分からなくもないけど。でも、理屈ってものは人の数だけある。
     多分、あなたの理屈を訴えても、彼らは前へ進むことは無いわ。
      まずは、彼らの生きてきた世界の理屈を受け入れましょう。それから、
     私達の理屈を時間をかけて彼らに叩き込んであげるわ。
      私達の理屈を受け入れない限り、ホクトや沙羅と分かり合えるなんて無
     理なんだから」


「そういえば、そうだったっけ」
「ああ。だから、汚れ役は俺に任せてくれ。後ろは優に任せるから。それでいいだろ?」
「それで、いいの?」
「それでいいの!だから、この話はこれでお終いだ。明日同じ顔してたら、本気で俺は怒るからな!!!」
 わざと、怖い顔をしてみせる。
 優の肩が落ちる。…俺、もしかして大失敗をやらかしたか?
「ふふふふっ、そうよね。涼権の事で悩むなんて、馬鹿馬鹿しいわ。
 望みどおり、今後は容赦なくこき使ってやるから。明日から、覚悟しなさいよ」
 上目遣いに見上げてくる優の目。…元気は取り戻したようだが、どうやら余計なきっかけまで与えてしまったらしい。
「なぜそうなる!」
 無駄を覚悟で、反撃。
「少年、男らしくないぞ!泥かぶりの仕事なら幾らでもあるから、しっかり頑張ってね♪」
 無駄だった。もしかして俺、悪魔に尻尾を捕まえられたかもしれない…

「さて、それじゃ帰るわ、涼権。まさか、上司に顔を背けて挨拶する気じゃないでしょうね?」
「この我侭上司め。それじゃ、さよなr…」








 全ては一瞬。



 言葉は物理的に止められ、



 優は真っ赤になって家の中に飛び込み、



 俺は一人、呆然としたまま車内に取り残された。










 唇には、自分以外の人の体温と匂いが残っていた。

















 脇役達の、歯車は廻り始める。

 幕が下りるまでの数年の日々が、ここに始まった。


                  ― To Be Continue ―


 


後書

 前半と後半、落差激しすぎ。
 自分で言うのもなんですが、まるで別の作品です、これ。

 全体的に(特に序盤)重い作品になりました。でも私はハッピーエンド至上主義者なので、後ろに行くほど明るい方向へ…とやったら、最後に大暴走。
 いや、いつかはこういうシーンを入れないといけない訳でして。たまたまこういうシリアスシーンが出来たので、ここでやっちゃえーって書いたらああなってしまいました。
…うーん。賛否分かれるだろうなあ、絶対。

 ギャグや壊れではロリコン扱いデフォの桑古木ですが、グランドフィナーレ準拠のほのぼのシリアスのアフターを考えると、どうもココだと尺が合わなくなります。なんと言いますか、精神的なギャップが大きすぎるとでもいいましょうか。

 2017-34年の17年間、優と桑古木は唯一信頼できる盟友という関係になります。
 優は女性である事、身内を含めて公式にライプリヒの関係者であること、優秋の存在等の事情もあり恐らく諸工作の前面には出てこなかったはずです。
 特に、妙齢の女性が他者に協力要請交渉をすると現実的に18禁な展開が大いにありえますし。私はそういった裏設定は絶対許容いたしません。18禁的交渉術を、目標として武を仰ぐ桑古木が許容するなんてありえないでしょうから。
 そうなると、工作の実行者は必然的に桑古木ということになります。
 優がプランを立て、桑古木が実行する。本当に必要なときのみ、優が表に出てくる。二人はそういう関係だったと思います。
 当然、桑古木は世界の裏側、闇をことごとく見てきた事になるでしょう。
 そんな桑古木が、「BWのお兄ちゃん」に惚れているココを得る事を望むか?私は懐疑的です。
 多分、汚れた自分はふさわしくないと身を引くでしょうね。

 前置きが長くなりましたが、そういうわけでこういう話が出来ました。 まあ、このサイトさんのほのぼの、ラブ話で結構優×涼がありましたので受け入れてもらえるんじゃないかなーなんて思ってますが…受け入れてもらえるといいなあ。

 次回はプランが二つ。どっちからやろうか思案中。

 最後に、このような駄文を最後まで読んで頂き有難うございました。


 2006年3月21日初稿
 2006年4月 4日後書改稿   あんくん


TOP / BBS /  








SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送