2036年10月14日(火)午後6時17分 一葉家離れ 


「…」
「『話がある』とは、どういうことでしょうか?」
 つぐみの敬語。つぐみがこの言葉遣いをする相手は、今の所一人しかいない。
「ああ、その事かい。簡単な事さ」
 一葉綾乃。つぐみの料理の師匠である。
 今日の料理教室は既に終わり、つぐみ以外の生徒は全て帰宅している。
 秋の夕暮れの赤い光が差し込む中。綾乃は口を開いた。

「つぐみさん。もうあんたに私が教えられる事は無くなった。免許皆伝、いや『出藍の誉れ』ってやつさね。…私が数十年かけて覚えた事を、あんた一年で全て習得してしまったよ」





未来へ続く夢の道
−幕間5 つぐみの味−

                              あんくん





 いつものように笑う綾乃。だが、その笑いにはいつもの様な明るさがない。
「初めてさ、生徒に越えていかれる体験は。嬉しいんだか、寂しいんだか。正直、よくわからないんだ」
 そんな師匠の姿。
「とんでもありません。私なんて、まだまだです」
 思わず、慰めの言葉を掛けてしまうつぐみに、
「そういう謙遜は、相手を傷つけるだけさね。あたしが太鼓判押したんだ。それとも、私の目が曇っているとでも言う気かい?」
 綾乃の鋭い言葉。つぐみは下を向いてしまう。
「さて、あんたの気持ちも分からんでもないし。そこで一つ、師匠としてお願いがあるんだがね?」
「はい。私に出来ることでしたら」
 つぐみが頷く。そんな彼女に、綾乃は言った。

「あんた、今度は教える側に回ってみる気はないかい?」

「え………今、何と仰いました?」
 つぐみが驚きに目を見開く。そんな彼女を前に、綾乃はもう一度告げた。
「ウチの教室で、今度は先生として教えてみる気はないかって言ってるのさ」

「どうして、なんですか?」
「…つぐみさん、あんた、とぼけるのが下手だね。分かっているだろうに。
 ウチの教室は、あんたが来るようになってから大盛況だ。前は三週間に二回だったのが今では週二日。それでも希望者が多くて、仕方なく断ってる現状だよ。正直、あたしも今のペースが限界さ。趣味でやってたからお金は別に要らないけど、望んで教えを請いに来る生徒達を断るのは気が引ける。
 あんたが先生役引き受けてくれるんなら、あたしは大助かりだ。多くの生徒に教える事ができるし、あんたにもお給金を出してあげられる。正直ウチはお金に困っていないから、材料代引いた後は全部あんたの手取りでいいよ。
 どうだい?引き受けてくれないか」

 尊敬する師匠からの、破格の条件での要請を前に。

「お気持ちは、嬉しい。できるものならそうしたい。でも、私はダメ。
 だって、持ってないから、私は。私の味を、持ってないから。絶対に、持つことが出来ないから」
 表情は悲哀に歪み、それを必死に押しとどめようと歯を食いしばるが故に更に表情が歪む。そんなつぐみの姿。
 そんな姿を見ながら綾乃はゆっくりと立ち上がり、
 優しく、つぐみの肩に手を置いた。
「ある程度は悟っていたよ。そうだ、預かり物を返させてもらうからね」
 もう一方の手で懐から小さなノートを取り出し、つぐみに返す。
「あ、あっ…それは!」
 A5サイズのノート。それこそ5冊幾ら、10冊幾らで特価で売られているような、そんな安っぽい作りのノート。それを大事そうに両手に抱え、つぐみが綾乃を見上げた。
「済まないが中は見せてもらった。あたしも迂闊だった。あんたの経歴考えれば、ありうることだったよ。
 つぐみさん、あんたは味を、味覚としてしか感じられない。違うかい?」
「…はい。その通りです。甘味、酸味、塩味、苦味、うま味。この五つの組み合わせと強弱としてしか、私は味を捉えられない。『うま味』も、別に美味しいという訳じゃなく、あくまで一つの刺激に過ぎないんです。そして、」
「それに対する評価をする事を、脳が放棄してしまった。そういう事じゃないのかい?」
「正解です。だから、私にとっては、『美味しい』事も『不味い』事も、『好きな食べ物』も『嫌いな食べ物』も、遥か昔の、風化した記憶に過ぎないんです」

―――つぐみの、足掛け20年を超える地下生活。僅か2年余りの母子の生活時期を除き、まともな食事を取った事は数えるほどしかない。文字通り、ホームレス以下。善意の食事援助を貰おうとすると、ライプリヒの情報網にかかってしまう。そんな日々。
 そういう状況下では、美味しい、不味いなどという感覚はかえって足かせとなる。そういう感覚を捨て去ったつぐみの味覚と嗅覚の統合判断基準は、僅か二つになっていた。
 食べられるものか、食べてはいけないものか。ただそれだけ。そこまでして、つぐみは苦難の日々を生き延びたのだ。

 そんな苦難の日々が終わったあと。武は新しい家族を養うために必死で仕事に励まなければならず、子供達のささやかな日常を奪うわけにもいかず、家の中の全ての事柄はつぐみに委ねられた。
 やはり、一番の難題は食事だった。優が気を利かせてくれて、料理の本を譲ってくれたり秋香菜を家によこして基本的な料理法をレクチャーしてくれたりした。だが、つぐみには味がわからない。味そのものは分かる。味蕾は生きていて、むしろ常人より遥かに鋭敏に情報を伝えてくれる。が、それを判断する基準そのものが失われてしまっているのだ。そんな彼女がとった方法。
 
 それが、このノートだった。

 今、彼女の手にあるノート。その中身は、びっしりと書かれた味噌汁の記録だった。
 味噌の種類と量、塩の量。ダシの種類や量。水の量。具の種類や量。沸騰時間。その他考え付く限りの情報。その後に書かれた5つの数字。…5基本味の強さ。0〜17の数字を、つぐみは当てた。
 そして、その次にあるのが…家族の評価。はっきり言って、無残。
 『昨日より塩辛い。昨日の方がまだいい。後、ダシが効きすぎて苦い』…武
 『凄く塩辛いのに、凄く甘い。両方とも抑えてもらわないときついかな』…ホクト
 『サトイモがどろどろで甘いのに、汁が辛くて。あと、苦いのは苦手だなあ』…沙羅
 こんな感じの、一切誉め言葉が無い評価が延々と続いている。それが日付や朝昼夕の別と一緒に毎日の様に続いているのだ。思わず見るものが目を背けたくなるような、そんな記録。

 だが、綾乃の評価は違った。
「あの体育祭の日の、私の感想など甘かったね。
 あんたの家族、世界一だ。こんないい家族、世界中何処探したって居やしない。全部読んだ後、あたしは本当に羨ましくて、本当に妬ましくて、本当に悔しくて泣いたよ」

…そう、この評価の何処を探しても、『不味い』『要らない』『食べたくない』『下手』『駄目』…そういった拒否したり、けなしたり、馬鹿にしたり、貶めたりする言葉は一回も出てこないのだ。必ず、具体的に悪いところを指摘したり、前と比較したり、好みを示したり。改善するため、進歩するためのヒントをずっと与え続ける。家族の評価は、ずっとそうだった。
 つぐみの味覚の状態を、家族が知っていたのかは分からない。つぐみから聞き出そうとする事はこんな家族が金輪際する筈が無い。だが、現実には正確に彼女の意図を汲んでずっと協力し続けた。おなかを壊して寝込んだり、顔を歪めて無理をして食べてまで。
 つぐみの料理の原点は、そんな家族にある。彼女にとって、料理とは家族への愛情表現や恩返し以外の何者でもなかったのだ。

「だけど、私がここまで料理が出来るようになったのは、綾乃さんが居てくれたからです」
「…照れるねえ。だけど、今回だけは誇らせてもらうとしようかね」

 つぐみの言葉に嘘はない。
 独学の一番の泣き所は、応用が利かない事と安定しない事である。同じ様に作ったつもりでも、かならずどこかに齟齬が出る。味を微調整しようにも方法がわからない。時間をかけてやっと家族の『美味しい』を理解できても、今度はその様に作る事ができないのだ。倉成家はお世辞にも裕福では無い。失敗したから何度も作り直すなど不可能。そこで、つぐみは壁に当たってしまった。
 そんなつぐみを救ったのが、一葉綾乃であった。
 彼女の経験に裏打ちされた豊富な知識と、基本から応用まで幅広い技術。つぐみはこれらを持ち前の記憶力と、何よりも努力で吸収していった。その結果、いかなる状態下でも安定して「同じもの」を作る事が出来るようになった。
 あともう一つ。同じ場で学ぶ生徒の存在が大きかった。
 彼女(希に彼)達もまた自身の『美味しい』という基準を持ち、更にその後ろにはその家族の『美味しい』という基準がある。彼女達が好意で分けてくれた料理。その料理が、つぐみにそれを教えてくれたのだ。その結果として、やっとつぐみは世間一般で言う『普通の味』という基準を、自分の体の中に作り出す事ができたのである。他の人と、感じるメカニズムは異なってはいたが。

「…流石にその後は早かったねえ。なにしろ、考え方を変えればあんたの味覚は『絶対味覚』だからね。その上物覚えは早いと来ている。結果的に、もうあたしを超えちまった」
 センサーは最高級。いかなる状態でも、味の違いは知覚できる。あとはデータの蓄積。その味がどう評価されるのか、どういう相手に好まれどういう相手に嫌われるのか。そういう蓄積さえ出来てしまえば、逆につぐみの味覚は利点に変わる。
 そういった中で、つぐみの技量も味の見切りも飛躍的に向上していき、今では味見はつぐみの固有の役目になってしまっていた。
 だが。

 それは、つぐみの根本的な悩みを解消してはくれなかった。多くの人の『美味しい』は理解できた。それを類型化し、今ではほぼ全ての人に『美味しい』といってもらえる料理を作る事が出来る。だが、それでも。
 つぐみは肝心の『美味しい』という概念そのものを、未だに理解する事が出来ていなかった。そう。彼女が作る料理は、他人が『美味しい』と思う料理。自分にとって『美味しい料理』として作った事もなければ、『美味しい』と思って食べる事も出来なかった。彼女には『楽しい食卓』『嬉しい食卓』は存在しても、『美味しい料理』は存在しなかったのである。
 『美味しい』という事を理解しない限り、人に『美味しい料理』を作る事を教えることは出来ない。仮に教えるにしても、相手の今の『美味しい』にしか合わせられない。…現状維持は出来ても、その先が想像できない。生徒を何処へ導いてやればいいのか、自分には分からない。

 だから、私には教える資格がない。

 つぐみの出した辛い結論。

 つぐみがそれを告げると。
「…そうか。理由や経過こそ違え、あんたもそこに突き当たっちまったか」
 今まで見たことも無いような暗い顔で、綾乃は重いため息をついた。
「あんた『も』?」
 師匠の言葉の違和感に、思わず質問が口を付いて出る。
「ああ、そう。その通り。前に一回だけ話したことがある、破門した子のことさ」
 意外な応え。一番弟子と、破門された弟子。その間にあった意外な関係。
「あの子も、ピカ一だったよ。あんたが腕を上げて行った姿は、あの子を彷彿とさせた。だから、あの子のようにはさせたくないと思っていたんだが。
 やはり同じ疑問に突き当たり、同じような分かれ道にきちまったね」
「…分かれ道?、ですか」
「ああ、そうさね。あの子の場合、自分が元々持っている『美味しい』という固有感覚そのものを疑っていった。もっと上を目指すのに、この程度を『美味しい』なんて思っていいんだろうか?そういう風に思い悩むようになったのさ。
 何しろ作る物全てが『飛び切り美味しい』んだ。そうすると、これ以上の物を作る意思を失ってしまうってね。
 そして、悩んだ末にあの子は決断した。自身の『美味しい』を、完全否定したんだ」
 苦しげに、呻くように。そういう口調で、綾乃は言葉を継ぐ。

「その後、あの子はありとあらゆる『美味しい店』を食べ歩くようになった。そして、世間で言うところの『最高に美味しいもの』をベースに、自身の味覚判断基準を完全に変えようとしたんだ。
…思い当たる事、あるだろ?」
「ええ。私の味の覚え方と一緒。もっとも、食べるものや作るものの質も、目的も違うけど」
「その通り。そうなった後のあの子は酷かった。自身だけならまだ良かった。他人にまでそれを押し付けだしたんだ。こんなものを美味しいと言うんじゃない。この程度で満足するから、あなた達の料理のランクは上がらないんだって。
 料理の質を上げていくには、よりいいものでないと『美味しい』って言ったらいけない。そうすれば、あなたの料理の腕も上がり、舌も肥えていく。そういう存在が作る料理は、絶対に他に負けない美味しい料理になるんだと。
 そう周りに公言するようになった。堪らずあたしは諫言し…あとは、あんたに昔言った通りさね。私はあの子を破門にし、あの子はこの土地を飛び出してそれっきり」
 下を向いて、黙りこむ。そんな綾乃の顔には脂汗が浮かんでいた。
 つぐみがハンカチを取り出し、そんな彼女の顔を優しく拭いてやる。

「だから、あたしはあんたに聞きたいんだ。美味しい事を理解できているかとか、そういう事じゃない。
あんたにとって、料理を作り、腕を上げていく事の行き着く終末点とは一体何処なんだい?
 お願いだから、答えてくれないかい。なあ、後生だから、頼むから」
 今まで見たことが無いような、綾乃の姿。取り乱し、動転する。そんな姿。


 その姿を見た瞬間、つぐみには、答えが見えた。
(何よ。簡単な事だったじゃないの。私、何を悩んでいたのかしら)


 いつもの威厳を失った綾乃を、幼子を抱きしめるように、優しく抱きしめる。

「先生。私には、料理を作る事の終末点なんて要りません」

 初めてつぐみは綾乃を「先生」と呼んだ。喩え敬語を使おうとも、絶対に使わなかった表現で。

 驚いて顔を上げる綾乃に、優しく微笑みかける。
「やっと分かったんです。誰も生まれながらに『美味しい』なんて感覚、持っていないんです。
それは、育まれるもの。育っていく中で、食べて覚えるもの。その人にとっての『美味しい』は、その人の育った環境、そのものなんです。…だから、美味しいに貴賎なんて、無いんです」
「つぐみさん、あんた…」

 つぐみは、ゆっくりと綾乃から体を離す。
 そのまま身づくろいを整え、直立不動で真正面から綾乃を見据える。

「料理教室の先生の役目、謹んでお引き受け致します。一葉綾乃、先生」
 真っ直ぐに背を伸ばして、最敬礼。
「…どういう、ことだい?」
 綾乃の言葉を無視して、上半身を起こしたつぐみはじっと綾乃の目を真正面から見据え続ける。
「ただし、条件があります…綾乃先生、先生の『美味しい』を、私に譲ってください」
 つぐみの言葉に、今度こそ綾乃は言葉を奪われた。

「正直、疑問に思っていたわ。先生の家に家族共々招かれて何度か夕食をご一緒したけど、その時の味は、料理教室の時お手本に作られる物とは違っていたから。
 ほんの僅かですけど、いつも料理教室の時の方が塩辛いんです。…先生は、この土地のご出身じゃないんですね」
「あんたの舌、見くびっていたみたいだね。誰も、いや私自身でさえ、そんな事気付きもしなかった。
 その通り。あたしはこの土地の出じゃない。ウチの人に見初められて、遠い土地から輿入れしてきたんだ」
 つぐみの言葉を、虚空に目を泳がせながら綾乃が引き取った。
「花嫁修業で料理は徹底的にやっていたから、料理には自信があった。だが、そんなもの、何の役にも立たなかった。『美味しい』の壁に、阻まれたんだ。
 毎日のように、舅や姑、ウチの人の弟妹達に罵声を浴びせられたさ。ダイニングテーブルごとひっくり返された時だってある。そんな時、唯一私を庇いとおしてくれたのがウチの人だった。それこそ、自身の親と取っ組み合いまでしてね。
 でも、見てしまった。ウチの人が、夜、私に気付かれないようにこっそり水のみ場に行って、水を飲む姿をね。ずっと我慢してたのさ。うちの故郷の料理は塩辛いものが多くてねえ。そんなに塩分が多いわけじゃないんだが、慣れない人間は喉が渇く。ウチの人は不平一つ言わなかったから、迂闊にもこの人の口には合ってるんだって勘違いしていたんだ」
 綾乃の目には、涙。
「その姿を見て、あたしは自分の『美味しい』を捨てた。まず、この人の為だけの料理と思って始めようってね。そうやって、あたしの料理は変わったんだ。…あたしの原点はね、これなんだよ。
 でも、何故なんだい。なんで、そんな物を欲しがるんだい、つぐみさん?」


「簡単ですよ。さっき言ったじゃないですか。『美味しいは、その人の環境そのもの』だって。だから、どんなに忘れた振りをしても、体は覚えています。流石に私は、思い出すのは無理でしたけど。
 勿論、相手にとって美味しいものを作る事が、私の料理だって事は変わりません。でも、自分の『美味しい』だけは、我侭を言っても、いいんじゃないんですか?
 私は、先生の弟子です。私の料理は、先生の料理です。だから、全部教わりたい。
 技術は教わった。心も教わった。だから、最後に先生にとって『最も美味しい料理』を教えて欲しいんです。そして、それを継ぎたいんです。
 そして、胸を張って言います。『私を育ててくれた料理の師匠は、こういう味で育ってきたんです。だから、私もこの味が一番好きです』と。
 相手にとって一番美味しい料理を作る事と、自分にとって一番美味しい料理を作る事。相手の『美味しい』を尊重する事と、自分の『美味しい』を誇る事。『食べる人の為に料理は作る』という一葉流では、これって両立できない事なんですか?
 答えてください先生!」




 つぐみは真正面から綾乃に向かい合い、おでこが当たるほど近づいて問いかける。
 そんなつぐみに、綾乃は視線を合わせて、




 いつもの様に、にかっと笑って見せた。



「負けた負けた、完敗だよ。ほんとにあんたにゃ驚かされるね。欲張りと言うか、向こう見ずというか。…そうか。要は『食べる人の為に料理は作る』だったね。総師範がお題目を忘れてちゃ、世話無いね。確かに自分も、食べる人だ」
「…ええ。後は自分と他人を一緒に考えない事、だけですね」
 納得したというように笑う綾乃に、つぐみも穏やかな笑みを返す。
「『美味しいに貴賎はない』。家庭料理じゃ真実だろうさ。あの子もそういうふうに考えられたなら、道を誤らずに済んだのかもしれないね」
「美味しいの頂点争いは、お金取って料理をする人たちだけで十分だわ。私は、武やホクトや沙羅や…先生が美味しそうに食べてくれれば、それでいいのよ。他の人の評価なんて、要らない」
「そこまで言うなら、ご馳走になろうかね。まだ材料は残っていた筈だ。あんたの家族、さっさと呼んできな」
 力いっぱいつぐみの背をひっぱたく綾乃。それに押されるように、つぐみは電話のある離れの玄関へ向かっていった。


 



 その夜。

 一葉家の離れには、誕生日にすら出ないような豪勢な食卓を前に最初は絶句し、次に歓喜して舌鼓を打つ倉成一家と、そんな様を満足そうに見ながら自身も料理をつまむ綾乃とつぐみの姿があった。


               

 
                                       ― To Be Continue Next Story ―
後  書


 …最初に言っておきます。つぐみの味覚の設定、公式設定がどうなっているかは知りません。
 ただ、大抵のSSにおいてはつぐみ=料理ベタとか貧乏舌とかそういう扱いですよね。「料理上手のつぐみ」ってのはウチだけかもしれません。
 正直、ちょっとつぐみに酷な設定かなと思ったりもしましたが、17年間の生活を考えるとこういう可能性も十分あるなと。少年編の『スペシャルサンド』のエピソードの裏事情をそう解釈して作った話です。

 久しぶりに原点回帰のほのぼのショートエピソード。口調が被るキャラが多いE17やN7キャラに比べて、綾乃さんは口調が被らないから書くのが楽。敬語なつぐみもちょっと新鮮だし。
 
 つぐみも無事(?)無職を脱出。さて、この設定使いどころあるかなあ。

 次は…どうしようかな。本編か、息抜きの幕間か。どっちになるかはまだ分かりません。


 最後に、ここまで読んで頂き有難うございます。

2006年5月19日 あんくん


TOP / BBS /  








SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送