EVER17―LAST LINE―
                              朝月


2017年5月7日日曜日−LeMU、圧懐

桑「助かった…僕らは助かったのか?」
一人の少年は目覚めた
桑「ここは病院?」
少年―桑古木涼権が目覚めた場所、そこは病院だった
そうだ、武とココとつぐみはどこにいるだろう?
彼らと一緒の潜水艇ではなかったが、この病院に運ばれているはずだ
桑「探さなきゃ…」
桑古木はベッドを降りた
不思議と体は軽かったつぐみから作った抗体上手く働いているからであろうか
桑「ここは何処の病院なんだろう?」
桑古木が病室を出ようとしたその時
春「小…ねん?」
優春が病院の廊下に立っていた
桑「ゆ…う?」
春「よかった…目覚ましたのね」
桑「優こそ、体のほうは大丈夫なの?」
春「うん…私は大丈夫…少年は?」
桑「見てのとおり、平気だよ」
春「あのね、少年…あなたに話したいことがあるんだけど」
桑「え?何?」
春「ここじゃちょっとね…」
桑「?」
春「こっちに来てくれる?」
そう優に言われ案内されたのは病院の外だったここに来る途中電気はほとんど
消されていた、おそらくは夜中であろう
桑「それで話って、何?」
春「少年、信じられないかも知れないけど、よく聞いて」
優春は一生懸命話した、第三視点の話、武とココが今もIBFで眠っていること
つぐみが行方不明になったこと、
そして、2人を助けるためには今から17年後に助け出さねばならないことー
それを黙って聞いていた桑古木は―
桑「−嘘だ!」
すべてを否定するとも言える声を出し反論した
桑「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だーっ!」
春「少年…気持ちはわかるけど…現実なのよ」
優春がなだめるように言った。しかし、今の彼には何も聞こえないだろう
桑「ウソ…だ…武…ココ…」
桑古木はそこに膝をついた
桑「ねぇ優…嘘でしょ?嘘なんでしょ?優…何とか言ってよ優!」
春「私だって今でも信じられないくらいなのよ…でも今はこれしか道は無いの
…」
優春も信じたくは無かったしかしあの時の声―彼は私の娘のことを知っていた
もちろんそれだけではない、それだけでは信用できないでも今は信じるしかな
かった
本当は今すぐでも助けに行きたいでも、今は言ってはいけない気がする
優春の勘がそう告げていた―それに
春「−約束だからね」
桑「え?」
春「約束は、守らないといけないでしょ?」
優春は言った、本当は自分も泣きたいのに、自分も早く助けに行きたいのに
彼女は涙をこらえていった
春「彼との、約束だから、約束は、守らないといけないから」
桑「………」
桑古木は黙ってしまった
桑「でも、そんなの…」
桑古木は立ち上がった
桑「そんなの!納得いかないよ!納得できるもんか!ぼくは、あの時ココを助け
る事ができなかった…自分のことで精一杯だった…だから、今度こそ彼女の力に
なってやりたいと思ってたのに…思ってたのに!またぼくは何もできないの
か!」
春「少年…」
桑「もう嫌なんだ…このままでいるのはもう嫌なんだよ!今でも助けに行きたい
のに…
17年間も待ってろだなんて嫌だ…嫌だよぉ…」
そう言って桑古木はまた座り込んだ
春「少年…」
優春はさっきからそれしか言えなかったほかにかける言葉がみつからないのだ
桑古木は考えた
ぼくに、あの時力があれば―
しかしすぐに否定的な考えが彼の頭をかすめる―
チカラガアレバアノジョウキョウデナニガデキタトイウンダ
ぼくでは武やココを救うことができなかったのか?何故?
ソレハボクニチカラガナカッタカラダ―
では、力があればぼくに救うことができただろうか―
桑古木はわかっていたあの時、あの状況で誰も、なにもできなかったことを―
あの時IBFで誰になにが出来ただろうか?ぼくはココに呼びかけることしか
できなかった。他に、ココになにが出来たんだ
ぼくには何も出来なかったあの場合では何も出来やしないんだ―
それでも桑古木は納得いかなかった自分に納得がいかなかった
桑古木は何も出来ない自分に腹が立っていた、あの時何も出来なかった自分に―
ぼくに力が―
チカラデナニガデキル
力が―
チカラデナニガデキタ
力―
ナニガ―
力―
ナニガ―
力―
ナニ―
桑「うわあああぁぁぁ!!」
春「ちょ、ちょっと少年!?大丈夫!?」
桑「嫌だ嫌だ!こんなの嫌だ!こんなの嫌だぁぁぁー!」
優春は一時戸惑ったが
春「少年…ごめんね…私も何も出来なかったよ…」
優春は桑古木に近づき、そっと抱き寄せた
桑「うあああああ…武…ココ…ココぉ…」
春「ごめっ…ごめんね…少年…ぐすっ…くらなり…ココ…本当にごめん…」
二人は泣いた、真夜中に、病院の外で―
上に広がる無限の夜空は彼らに何も語りかけてはくれなかった―

―数日後 田中家
優春は桑古木に伝えた
桑「ぼくに武のフリを?」
春「フリじゃなくてなりきってほしいのよ」
桑「なりきる?」
春「そう、なりきるの、練習はこれからすれば必ず身につく―と思う」
桑「それも彼との約束?」
春「−うん」
桑古木はやれやれと言った感じで足を崩した
桑「他には?」
春「あとは私と桑古木はライプリヒ製薬に就職すること」
桑「えっ!?」
さすがにこれには桑古木も驚いた
春「私は大学卒業してすぐに、桑古木は高校卒業してすぐに!いい?」
桑「そんなことまでやるの?」
春「ココを助けたくないの!?」
桑「わ、わかったよ」
しかし、桑古木は少し考えた
桑「でも優、本当に就職できるかわからないんじゃない?」
春「その点については多分大丈夫よ少年、今私たちの体はどうなっている?」
桑「体って、あ、そうか!」
春「そう、いま私たちの体はキュレイウイルスに感染している」
桑「当然社員に迎えることが出来れば近くで監視も研究も出来る―」
春「大当たり!まさにそのとおりよ、だから就職することは難なく
出来ると思うわ」
桑「わかった、やってみるよ」
春「ふぅ」
優は一息ついた
春「でもよかった…少年がわかってくれてこんな話、誰かに話したところで誰も
わかってくれるとは思っていなかったから」
桑「でもこうしないと武とココは助からないんでしょ?だったらぼくはやるよ
優を信じる、もちろん彼もね、それに」
春「それに?」
桑「約束、したでしょ?」
春「約束?」
桑「優と一緒に武とココを助けるって」
春「少年…ありがとう」
桑古木は微笑む
桑「だって約束は守らないといけないからね―」

穏やかな春の午後、ここに計画は発動する、全ては
17年後という一点の未来に向かって―
                      END



あとがき
EVER17で思ったこと全部をこのSSにぶつけてみました、ちなみに
初投稿です。好評、不評何でもよろしいです、もしこれを呼んだ方々、感想くだ
さい
お待ちしております
あと、タイトルについて少し…このLAST LINEこれには最後の視点、
つまり桑古木少年のことです。一本に繋がっていく螺旋の中の最後の一人
という意味が込められています
最後に一言、まだ未熟な私ですがこれからもよろしくお願い
申し上げます(ペコリ)


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