〜 エバセブ熱血行進曲 〜
                              作 A/Z&Mr.Volts


<Programm Nummer Null:Prolog>
 [プログラムナンバー0:プロローグ]



  ピンポーン♪ 倉成家の呼び鈴が部屋に響きわたった。
 
 「は〜い、今行きまーす」

  倉成沙羅は、ぱたぱたと小走りで玄関へ向かった。

 「どちら様ですか?」

 「倉成さーん、回覧板ですよー」

  ドア越しから威勢の良さそうな女性の声が聞こえる。

 「あ、ご苦労様です」

  そう言ってドアを開けるとそこには恰幅の良いおばちゃんが立っていた。

  隣に住んでいる浜岡さんである。浜岡さんは沙羅に回覧板を手渡しながら

 「はい、どうぞ。沙羅ちゃんはいつも元気よね〜、おばさんも見習わなきゃね」

  そう言って豪快に笑った。見習う必要のないほど充分大きな声が団地の
  フロア一帯に響いている。おばちゃんが声を上げる度に、金属製の手すりが
  ビリビリと震える。

 「それじゃ、それ読んだら次の人にお願いね」

 「はい、わかりました。それでは失礼しまーす」

  おばちゃんに挨拶をしてドアを閉めると、沙羅は早速回覧板に目を通した。

 「え〜と、どんなお知らせでござるかなー」

  回覧板の内容はゴミの分別の仕方や「節水に協力を」といった事務的なものが
  ほとんどであったが、沙羅はその中から興味を惹かれるものを一つ見つけて

 「これはちょっと面白そうかも」

  と言いながらリビングへと戻っていった。

 「お、回覧板か沙羅」

  沙羅がリビングへ戻ってくるなり、武はそう声をかけた。

 「そうだよ。よくわかったねパパ」

 「そりゃ、浜岡さんのでかい声がこっちまで響いてきたからな」

  武は苦笑まじりに言う。

 「あはは、やっぱり大きい声だよねえ」

 「ああ、ありゃ凄いよな。んで、何のお知らせなんだ?」

  武が尋ねると沙羅は少し楽しそうに

 「そうだ、ねえパパこれ見て」

  と回覧板を武に手渡した。

 「おう、何じゃい。何々・・・『町内運動会のお知らせ』?」

 「うん、何だか面白そうじゃない?私達がここに引っ越して来てから
  こういうイベントのお知らせは初めてじゃない?」

 「そう言えばそうかもな。でもこの年になって運動会ってのもなあ・・・」

 「うーん、面白いと思ったんだけどなあ〜」

  そんなやり取りをしていると、ベランダで洗濯物を取り込んでいた
  つぐみが戻ってきた。

 「武、さっきのは・・・浜岡さん?」 

 「つぐみにも聞こえたのか・・・もしかしたら団地中に聞こえてるのかもな」

  武は笑いながら、つぐみに回覧板を手渡した。

 「ほれ、つぐみ。回覧板」

 「ん、ありがと」

  つぐみは回覧板を受け取ると、お知らせに目を通す。

 「と言っても、大したお知らせは無かったけどな。『町内運動会のお知らせ』
  ってのはあったんだが・・・さっき沙羅にも言ったんだが、この年で
  運動会ってのも―――」

 「武・・・」

  つぐみが武の言葉を遮った。心無しか回覧板を持つ手に
力がこもっているように見える。

 「どうした、つぐみ?マジな顔して」

 「・・・参加するわよ・・・」

  大きな声では無かったが、その瞳には強い決意のようなものが秘められていた。

 「はい?」

 「だから、町内運動会に参加するわよって言ってるの」

  先ほどよりも声を張り上げて言う。

 「マジでか?一体どうしたってんだよ?」

 「武、あなたここを読んでないの?」

 『運動会のお知らせ』の下の辺りを指差して、武に見せる。

 「えーと・・・『各種目の賞品には洗剤、油、醤油等を御用意してあります。
  尚、最後のチーム対抗リレーの賞品にはお米30キロを御用意してあります。
  皆様奮ってご参加ください』・・・か」

 「ね?これで分かったでしょ?」   

  つぐみがそう言うと

 「でも醤油とか米とか貰ってもなあ・・・なんか所帯じみた賞品ばっかりだなあ」

  武がそうぼやいた。だがつぐみは大きな溜め息を一つついて

 「あのねえ、家の財政が厳しいの知らない訳じゃないでしょう?
  お義父様やお義母様からの援助があるからといっていつまでも
  それに甘えてばかりもいられないし、私達の事は私達で何とかしなきゃ
  ならないのよ。わかった?」

  と普段の彼女からは考えられない勢いで一気にまくし立てた。    
 
  つぐみの迫力に押されて、武はコクコクと首を縦に振る。

 「やったあ!さっすがママ。それじゃ、参加決定〜!」

  沙羅が嬉しそうな声を上げる。

  しかし、すぐに武が何かに気づいたようにつぐみに言った。

 「でもなあ、つぐみ。日中にやるんだぞ?お前は参加できないじゃないか」

 「何言ってるの?私も参加するわよ」

  そう答えながら、つぐみは部屋の隅に置いてある『みゅみゅーん』の
着グルミを指差す。

 「いっ!?」

 「えっ!?」

  武と沙羅が同時に素っ頓狂な声を上げた。

 「本気かつぐみ!?」

 「本気よ」

  つぐみの表情は真剣そのものである。

  武は『みゅみゅーん』の着グルミを着たつぐみが競技に参加しているところを
  想像してすぐに首をブンブンと横に振り

 「つぐみ!無理するな!俺と沙羅とホクトがマジで頑張るから
  お前は応援を頼む!!日傘があれば応援くらいはできるだろ?」

 「でも・・・」

  躊躇うつぐみに、武はさらに

 「お前の手を煩わせるまでも無いって!俺達3人で賞品ゲットするから!!な?」

 「そうだよママ!私たちに任せておいて!!」

  武と沙羅の必死の説得を受けて、つぐみは渋々

 「そう・・・分かったわ。それじゃ、皆に頑張ってもらおうかしら」

  と、参加することを諦めた。

  武と沙羅はホッと胸をなでおろした。

 「・・・ところでママ、いつやるのそれ?」

  気を取りなおした沙羅がそう尋ねると、つぐみはもう一度回覧板に目を落として

 「来週の日曜日みたいね」

  と答えた。すると武が

 「さっきはホクトと頑張るって言っちまったけど、あいつは
都合つくのかな。デートの予定とか入ってるんじゃないか?」

  と、カレンダーを見ながら言う。今日も秋香菜とデートの筈である。
  ホクトがいるといないとでは戦力差はかなり大きい。

 「あ、それなら大丈夫。なっきゅ先輩、レポートに追われて来週はデート
  どころじゃないってお兄ちゃん残念そうに言ってたもん」

 「よし、それなら参加できるな。来週は賞品をまとめてゲットしようぜ!」

  武はパンと手のひらを拳で叩いた。

 「御意、でござる」 

  ある土曜日の昼下がりの出来事であった。


あとがき


 Mr.Volts(以下Vo):いやーお疲れさん。

 A/Z(以下Az):お疲れ様でした♪

 Vo:やっと終わったね。思いつきのいち企画から一週間ほどで
   よくここまで話がデカくなったもんだよなあ〜。

 Az:ええ。書くことはあるまいと思っていたネタだったんですが
  貴方に話してみたら乗っていただいて、このような有様に・・・w

 Vo:原作は君で企画、編集がオイラって感じだったね。んじゃそろそろ
   本題に入りますか。まずタイトルは運動会って聞いてもう『熱血行進曲』
   しか思い浮かびませんでしたw。そしてプロローグ、君が原案を書いたやつだね。

 Az:無理やり運動会に結びつけたいので、回覧板などという
   強引な手段に訴えました。沙羅のセリフ回しが難しかったですね。
   Voには色々修正して貰いました。 

 Vo:そうだねー。オイラはSSって初めて書くんで最初は
  見直しする方も書く方も色々苦労しました。

 Az:キャラの把握とかが難しかったんじゃありません?
   私は、只書いてチェックしてもらう立場でしたから楽でしたけどw

 Vo:そうだね、後半はそこそこ掴めてきたけど。オリジナルキャラは
  それに比べて楽だったよ。ところであとがきって割には
全然本編に触れてないトークしてないか?オイラ達・・・

 Az:次から、うんざりするほど話しますので・・・w(妄想とか)


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