〜 エバセブ熱血行進曲 〜
                              作 A/Z&Mr.Volts


<Programm Nummer Twei:Wettrennen von Paaren>
       [プログラムナンバー2:二人三脚]



 「只今からプログラムナンバー2番、二人三脚を開催いたします。
  参加を希望される方は中央にお集まりください」

  スピーカーから放送が流れる。

 「つぐみ、早く行こうぜ」

 「ええ、行きましょう」

  放送を聞いた武とつぐみは校庭の中央に駆けていく。

  ホクトと沙羅は先に集合場所に行っているようだった。

 「この競技は俺達に有利だな」

 「武、油断しちゃ駄目よ?」

  余裕の表情で笑う武をつぐみは苦笑しながらいさめる。

  確かに、武とつぐみが組めば勝利は間違いないだろう。

  キュレイ爺さんがいくら手強かろうが、組む相手が一般人であれば
100%の力を発揮するのは難しい筈である。

 「つぐみ、期待してるぜ」

  中央に着くや否や武が言う。

 「ええ、あなたも頑張ってね」

  つぐみが微笑む。と、そこへ

 「ふぉっふぉっふぉっ、『仲良きことは美しきかな』じゃのう〜」

  どこからかおもむろに現れたキュレイ爺さんが二人に声をかける。

 「爺さん、この勝負は貰ったな。俺とつぐみの力を見せてやるぜ!」

  気合たっぷりの武に対して、キュレイ爺さんは動じた様子も見せず

 「ふぉーふぉっふぉっ、若いのう。しかし、そう上手い具合に事は運ばんのじゃよ」

  余裕の笑みさえ浮かべつつ言う。

 「それはどういうこと?」

  と、つぐみが問うても

 「ふぉっふぉっふぉ、ここの二人三脚のルールを聞けば嫌でも分かることじゃよ」

  爺さんはニヤニヤしながら答えるだけである。

  そんなやり取りをしている内に参加希望者が集まったのか、
前の方でスタッフが説明を始めた。

 「えー皆さん、それでは二人三脚について説明いたします。よく聞いてくださいね」

 「一体どんなルールだってんだよ・・・」

  武がつぶやく。

 「まずは男性と女性に分かれていただきます。次に、あちらを御覧下さい」

  スタッフが校庭の左右を指差す。

  そこにはいつの間に用意されたのか、青いカードと赤いカードが
それぞれ左右に散りばめられていた。

 「スタートの合図と同時にまず男性の方は青いカードの方へ、女性の方は
  赤いカードの方へ走って行ってカードをお一人様一枚だけお取りください」

  さらにスタッフは散りばめられたカードと同じ物を取り出すと、
  参加者に見せながら説明を続ける。

 「青いカードには例えば『ロミオ』とか『お内裏様』といった男性を示す
内容のものが、そして赤いカードにはそれに対応した『ジュリエット』とか
 『お雛様』といった女性を示す内容のものがそれぞれに書かれています」

  参加者は頷きながらスタッフの説明を聞いている。

 「もうおわかりですね。つまり、まずカードを取ってからお互いのペアを
探してください。ペアが見つかったら一旦スタート地点に戻ってきて、
そこでお互いの足を結んでから再び二人三脚でゴールを目指してください」

  スタッフの説明を聞き終えて武とつぐみはハッと気がついた。

  先ほどのキュレイ爺さんの笑みの理由はこれだったのだ。

  ペアがランダムで選ばれるため、誰と組むことになるかはわからないのだ。

 「なるほどな・・・そういうことか」

  武が歯噛みする。

 「仕方無いわね・・・」

  つぐみも残念そうに言う。

 「この競技は、皆さん一斉に行ってもらいます。賞品の方ですが
上位十組のペアの方それぞれにお渡ししたいと思います。
それでは男女別に整列してください」

  スタッフの声と共に、参加者は列を作り始める。

  倉成家としては同士討ちは避けたかったが、一度に行うのであれば仕方が無い。

  要は上位十組に入ればいいのである。

  程なくして男性参加者、女性参加者共にスタート地点についた。     

 「準備はよろしいですか?それではヨーイ・・・」

  パンッ!というピストルの合図と共に、参加者は一斉に
カードの置いてある場所に向かって駆け出した。


  例えカードを早く手に入れても、かなりの人数が参加している為
  ペアの相手を探し出すのはなかなか困難である。

  それでも武とキュレイ爺さんは、他の参加者より一足速く
既にカードを取っていた。

 「えーと、何が書かれているんだ・・・」 

  武がカードに書かれている文字を読む。

 「何々・・・『お父さん』?」

  カードには『お父さん』と書かれていた。

  現在の彼の境遇に相応しいカードといえなくも無い。

 「うーん、この場合相手は『お母さん』だよなあ・・・よしっ!」

  武は中央に向かって走りはじめた。





  校庭の中央は、混乱を極めていた。

  参加者の中では早いうちに中央に戻ってきた武であったが、
  相手が見つからなければいくら早くても手の打ちようがない。

  そうこうしているうちに他の参加者も中央に集まり始めて
今の状態に至っているのである。

 「『ジュリエット』はどこだぁ!」

 「『ヘンゼル』はどこぉ?」

 「『乙姫様』はいませんかぁ〜?」

 「『白』ぅー!返事してぇ!」

  このような有り様が方々で起こっている。

  かく言う武もいまだに『お母さん』を探して奔走していた。

 「まいったなあ、見つからねえぞ。このままじゃ・・・」

  そうぼやいていると、不意に

 「『お母さん』をお探しですか?」

  後ろから声をかけられた。

  声からすると若い女性の様である。

 「はい!そうです!」

  やっと見つかった!――そう思いながら武が後ろを振り返った時、
  彼は絶句した。

 「なっ!?」

  武が驚いたのは相手の女性が黒のノースリーブにミニのタイトスカートという
  およそ運動会には相応しくない刺激的な服装をしていたという理由からではなく、
彼の眼前によく見知った人物が立っていたからである。 

 「ゆ、優・・・何でお前がここに?」

  そこには田中優美清春香菜が『お母さん』のカードを持って立っていた。

  突然の知り合いの登場にただただ目を丸くするだけの武に対して春香菜は

 「いやー、偶然ね〜倉成♪それじゃ、早速スタート地点に向かいましょ?」

  武をスタート地点に連れて行こうとする。

 「ああ、いや、そうじゃなくてだな・・・だから何でお前がここにいるんだ?」

  武は腕を引っ張る春香菜を制しながら言う。

 「あら?私がいたらいけなかった?」

  春香菜がイジワルな質問を返す。

 「そ、そういうことじゃなくてだな・・・」

  武が困ったような素振りを見せると、春香菜は笑いながら

 「今日ここで運動会があることは、ユウがホクトから聞いていたのよ。
  最近研究所にこもりっきりで運動不足だから少しは身体を動かそうと思ってね」

 「ああ、なるほどな」

  武は納得した表情で頷いた。

 「今日までに仕上げないといけない論文を書いていたから出られないかなあって
  思ってたんだけど明け方に何とか書き終わったから急いで飛んできたの。
  いや〜、間に合って良かったわ♪」

  相変わらず春香菜は活動的である。

  そして春香菜はふいに

 「ねえ倉成?このカードって私達にピッタリよね〜?」

  と武に笑いかけた。

 「ん?どういうことじゃい?」

  武がその言葉の意味を理解できないでいると

 「だって、『お父さん』に『お母さん』よ?この際いっそ本当に
  ホクトと沙羅の『お母さん』になっちゃおうかしら〜」

  春香菜がイタズラっぽい口調で言う。

 「お、おい優・・・」

  武がその言葉にどうリアクションしていいかわからず、ただオロオロしていると

 「うふふ、冗談よ♪それじゃ急ぎましょう」 

  春香菜が武の手を引いて、二人はスタート地点に向かった。

  その様子をつぐみが一部始終見ていたことを知らずに・・・



  つぐみは眉を吊り上げ、いかにも不機嫌といった様子だ。
  しかし今は競技中だ。二人を追いかける訳にはいかない。

  ちなみに彼女は、まだペアの相手を探しているところである。
  彼女の手にしたカードには『美女』と書かれていた。
  これもまた、武と同様にピッタリのイメージではある。

  つまり、ペアとなるべき相手のカードは・・・

 「『美女』はどこじゃあ?『美女』はおらんかの〜?」

  つぐみが声の方を振り向くと、そこには『野獣』のカードを持って
  走り回るキュレイ爺さんの姿があった。

  ふと、つぐみとキュレイ爺さんの目が合い、
  爺さんがつぐみの方へ駆け寄ってくる。

 「もしかして、お嬢さん?お前さんが『美女』かのう?」

  尋ねる爺さんに対して

 「・・・そうよ」

  さも不機嫌そうに答える。

 「ふぉふぉ、やっと見つかったわい。しかしお前さんが相手とは奇遇じゃのう」

  笑う爺さんに対して、つぐみは何も答えない。

 「さっき、旦那さんが走っていくのを見たぞい。中々のべっぴんさんと
  ぺあになっとったのう。お前さん実は妬いてたりしてのう、ふぉっふぉっ」

  プチッ・・・つぐみの中で何かが切れた。キュレイ爺さんの冗談が、
  つぐみの怒りにとどめを刺したのである。

  スタート地点に着いたところで、つぐみは無言のまま
爺さんと片足を結び始めた。

 「まあ、今回は一時休戦といこうぞ。あのべっぴんさんがどのくらい速いのかは
  わからんがワシらの速さならば充分追いつけ・・・いや1位も狙えるのう」

  そんな爺さんの言葉を無視して黙々と足を結ぶつぐみ。

  心なしか、かなりキツ目に結んでいるようだ。

 「そろそろ結び終わったかの?それではまず息を合わせてじゃな・・・ぅどわあ!?」

  紐を結び終わると同時に、つぐみがハヤブサの如き速さで走り出した。

  キュレイ爺さんを『引きずる』という形で・・・

  会場から「おおっ!」という歓声が沸き起こる。

  砂煙を巻き上げながらこのペア(?)は怒涛の速さで
  他の走者をどんどん追い抜いていく。

  アッという間にトップだった武、春香菜ペアを追い越し
  ゴールテープを切ってしまった。

  砂煙がおさまると、そこには息一つ切らしていないつぐみと、彼女の足元で
 『カキフライ』のようにこんがり揚がって横たわるキュレイ爺さんの姿があった。

  つぐみはスタートしてから終始無言であった。

 『カキフライ』も同じく無言であった・・・

 『カキフライ』はしばらく湯気を立てながら沈黙していたが、
  ようやく復活したのかガバッと跳び起き、土をペッペッ!と吐き出すと
  つぐみの暴走を責め始めた。

 「なにをするんじゃ!ワシを殺す気かお主!?老人はもっと大事に――」

 「一位だし、賞品は手に入るんだから文句は無いわよね?」

  爺さんの言葉を遮ってつぐみが言う。

 「だからと言ってじゃな――」

  納得のいかない様子の爺さんに対してつぐみはもう一度言った。 

 「・・・無いわよね?」

  その迫力に押されて、爺さんは口をパクパクさせながら黙って頷いた。 





  一位の賞品は缶紅茶ダンボール一箱分であった。

  順位が下がるにつれて、貰える紅茶の本数が減っていくという仕組みだ。

  つぐみとキュレイ爺さんはそれぞれ一箱ずつを貰って戻っていった。

  先ほどまで不満をこぼしていた爺さんもすっかり機嫌を直し、
  紅茶の缶でお手玉なんぞをしている。


  一方、つぐみはと言うとある一点をじっと凝視していた。それは―――

 「あれ?かなり硬いなあ」

 「どうしたの倉成?」

  武が春香菜との足に結んだ紐をほどこうとしている。

  傍らには二位の賞品である缶紅茶三十本が置いてある。

  春香菜はミニのタイトスカートで体育座りというかなり刺激的な体勢で
  あるのだが、武はそのオイシイ状況には気付かずに紐をほどくことに
  躍起になっていた。

 「うーん、なかなかほどけないな・・・」

 「ほどけないなら無理してほどかない方がいいかも♪」

 「いや・・・そういう訳にもいかんだろう・・・」

  そこへつぐみが黒いオーラを漂わせながらやって来ると、
  ブチッ!と紐を素手で引きちぎり

 「これで大丈夫よ」

  完全に目の笑っていない笑みを浮かべると、ダンボールを担いで
  自分の席へ戻っていった。


 「お父さん、お母さんに何かあったの?」

  と、そこへ競技中にバラバラになっていたホクトと沙羅がやってきて
  武に声をかけた。

 「相当怒ってるみたいだったけど・・・」

 「いや、それが俺にもさっぱり・・・」

  武にもつぐみの不機嫌の理由が飲み込めなかったのだが、
  沙羅は武の隣にいる春香菜を見てすぐに理由がわかったようで

 「ははあ、なるほど。パパ、後でママに謝っておいた方がいいでござるよ〜」

  と、座りこんでいる武の肩を叩きながら言った。

 「え、何で俺なんだ?」

  まだ納得のいかない様子の武に沙羅は

 「いいから謝るの。ママを怒らせると後が恐いんだから〜」

  そう言い残すとホクトを連れて自分達の席にさっさと戻っていってしまった。

 「うふふ。それじゃあまたね、倉成♪」

  春香菜もご機嫌な足取りで軽く鼻唄なんぞを歌いながら
  どこかに行ってしまった。

 「だから何で俺が謝らなきゃいけないんだよ〜!」

  一人取り残された武の叫び声がグラウンドにむなしく響き渡った・・・



 あとがき


 Az:申し訳ございません・・・先生への妄想丸出しでございます。
   どうしても、黒のノースリーブ&ミニタイト(書いてて恥ずかしいですが・・・)

 Vo:ハイ有難うございました〜。では早速次のあとがきに行ってみましょうか。

 Az:お待ち!!もう少し先生について話させとくれよ、お前さん。

 Vo:でもこれは原稿あげるの早かったよねえ君。書くって言った翌日に
   もう原文が送られてきてこっちはびっくりドンキーでしたよ。

 Az:先生の服装と、体育座りさせるのと、爺さんをアレにすることしか頭に
  ありませんでした・・・。先生キャラと違うけど、これで良しとしましたw

 Vo:結局先生は最後までその方向で行く事になったからね。まあ書いてて
   楽しかった事は認めますが。

 Az:体育座りの先生・・・誰か描いてくれないかなぁ・・・w。

 Vo:えーと、この珍獣にそんなもの見せると大変な事になりますので、
   もしそれらの絵を描かれる方がいらっしゃいましたら発送は私宛にお願いします。

 Az:貴方の部屋は一階にありましたよね・・・?


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