〜 エバセブ熱血行進曲 〜
                              作 A/Z&Mr.Volts


<Programm Nummer Sechs:Staffellauf>
 [プログラムナンバー6:リレー]



 「只今より本日の最終競技、リレーのエントリーを行います。
  参加ご希望の方は本部前受付までお越しください」

空は少しづつ雲が切れ始め、雲の隙間から傾いた太陽の西日が差し込み
  グラウンドが赤く染まり始めた。つぐみは紫外線がだいぶ少なくなった
  時間帯とは言え、念のために出かける前に塗ってきたUVカットクリームを
  もう一度念入りに身体に塗り始めた。

 「よーしとうとう最後の競技か!ラストはビシッと決めてやるぜ!」

  放送を聞いた武が拳で手の平を叩く。

 「パパ後半は殆どいいところ無しだもんね」

  と沙羅に突っ込まれて一瞬固まったが

 「ヒーローは最後の最後にカッコよく活躍するもんなんだ!」

  とすぐに復活した。

 「お父さん、早くエントリーしに行こうよ」

  先ほどのパン食い競走の石化がようやく解けたホクトが武の腕を引っ張る。

 「そうね、早めに済ませるに越したことはないわね」

  と、つぐみも帽子を被って席を立つ。

 「よし、行くか!」

  武を先頭に、倉成一家はグラウンド奥にある本部前に向かった。

  だが・・・





 「5人必要だあ?!」

  本部前に武の声が響き渡る。どうやらリレーは1チームにつき数を
  5人揃えてやるらしい。倉成家は4人家族(+チャミが1匹)
  である。しかしまさかチャミを連れてくるわけにもいかない。

 「困ったわね・・・」

  つぐみが呟く。しかし人数が足りない位で米30kgを
  あきらめるようなことにはしたくない。

 「浜岡さんとかに頼めないかな?」

  ホクトが提案する。しかし

 「無理だろ。俺達以外の皆はリレーのルールは知ってるだろうから
  チーム編成は既に終わってるはずだ。今さら引き抜けない」

  と武は首を振る。すると沙羅が手を叩いて

 「なっきゅ先輩は?」
  と続いて提案した。

 「おお、そうか。その手があったか!」

  と武も同意する。確かに秋香菜なら戦力としても申し分ない。

 「ホクト、連絡をとってみてくれ」

 「うん。わかった」

  そう答えるとホクトは携帯を取り出して秋香菜の番号をコールした。

  トゥルルル、トゥルルル、トゥルル・・・

 『はーい、優でーす!ただ今ちょっち忙しくて電話に出れないのだー!
  用件のある方は発信音の後に・・・』

 「駄目だ、留守電になってる」

  電話をしまいながらホクトが沈んだ声で言った。
  と、その時人影の隅に優らしき姿が見えた。

 「あっ、優!」

  ホクトはそっちに向かって走り出した。

 「あら、ホクトどうしたの?そんなに急いで」

 「あ、田中先生・・・」

  しかし、ホクトが呼び止めたのは春香菜の方だった。しかし、
  春香菜なら秋香菜の居場所を知っているかもしれないと思って

 「あの、優どこに行ったか知りませんか?」

  と聞いてみた。すると春香菜は首をかしげて

 「あら、聞いていないの?急いでいたからかしら。さっき友達から
  電話があって『もう一つ明日締め切りのレポートがあったの
  すっかり忘れてたー!!!』って言って飛んで帰っていったわよ」

  と答えた。それを聞いてホクトはがっかりしたが、気を取り直して

 「あの、次のリレーに僕たちと一緒に出場してくれませんか?」

  と誘ってみた。春香菜は唐突な誘いに驚いて

 「え?どういうこと?」

  と聞き返した。そこへ、武、つぐみ、沙羅も追いついてきた。
  ホクトは事情を簡単に春香菜に説明した。

 「・・・というわけなんです」

 「なるほど。人数制限をクリアしないと参加資格が得られない
  というわけね」

  説明を受けた春香菜は腕を組んで頷いた。

 「正直戦力面での不安はあるけど、この状況で頼めるのは
  あなたしかいないのよ」

  二人三脚や昼食時に衝突があったとはいえ、彼女以外の援軍は見込めない。
  つぐみはなるべく感情を押さえこんで努めて平静に加勢を頼んだ。

 「うーん、手伝ってあげたいのは山々なんだけど今日一日研究所を
  空けてしまったし、夜には会議にも出ないといけないし・・・」

  と、春香菜は考え込んでしまった。そこへ武が

 「優、忙しいときに無理を言ってしまってすまないが、
  何とか頼めないか・・・?」

  と食い下がってみたところ

 「やるわ」

  即答だった。

 「ち、ちょっと・・・会議はどうするつもり?」

  たまらずつぐみが声を上げるが春香菜はそれには答えず、
  懐から携帯電話を取り出すとどこかに電話をかけ始めた。

 「あ、もしもし桑古木?今日の会議ちょっち忙しくて出れなくなったから
  代わりに出ておいて。机の上に資料が乗っかってるからそれぞれ20部
  づつコピーして持って行ってね。後ついでに昨日の研究の・・・」

 「え?ちょ、ちょっと待っ・・・」プツッ。

  用件だけを一方的に伝えると、返事を待たずに春香菜は電話を切った。

 「はい、これでOK♪」

 「鬼ね、あなた・・・」

  さすがにつぐみも怒りを通り越して呆れている。

 「さ、倉成。行きましょ♪参加する以上は絶対優勝よ!おーっ!」

 「わ、わかったから引っ張るなって・・・」   

  と武の腕を引っ張って受付会場の方に歩いていった。

 「・・・」

  それを見つめるつぐみの後ろ姿が小さく震えている。

 「南無阿弥陀仏・・・」

  つぐみの黒いオーラを感じ取った沙羅はこの後に
  武の身に降りかかるであろう大いなる災いを予想して念仏を唱えた。





 「さて、エントリーは終わったし、とりあえず走る順番でも決めておくか?」

  武はそう言って全員を見渡した。自分とつぐみとホクトの3人を軸にして、
  その間に沙羅と春香菜を挟んでいくかな・・・そんな事を考えていると

 「ふぉっふぉっふぉ、遂にこの時が来たのお」

  と既に聞きなれた声がした。

 「爺さんか。残念だが今回はあんた一人じゃ出れないぜ」

  武はそう言って振り返り、真っ赤なボディスーツを着込んだ
  爺さんの姿を見て思わず動きを止めた。

 「カッカッカッ。そんなことは百も承知じゃ。ワシには幾多の
  戦いを通じて芽生えた固い友情によって結ばれた強敵(とも)がおる」

 「へえ、どこにいるんだそんな奴?見たところ爺さん一人じゃないか」

  と、武は辺りを見回した。が、やはり誰も見当たらない。

  しかしその時、キュレイ爺さんの後ろの空間が
  歪んだかと思うと、4つの影が飛び出してきた!

 「熊田・イエロー!」

 「ボリフェノール・ピンク!」

 「望月・ブルー!」

 「名も無き酔いどれ・ブラック!」

 「キュレイ・レッド!」

 『ワシら強気をくじき弱きを助ける陽気な正義の5人組!キュレンジャー!!』 

  何と腕相撲で死闘を演じたあの誇り高き戦士達がパワーアップして
  町の平和を守るために帰ってきたのだ!バンバラバンバンバン。

 「ふぉっふぉっふぉっふぉ。驚いたじゃろう?」

  目の前で起こった奇劇に固まってしまった倉成チームに
  爺さんは得意そうに話しかける。

 「へっへっへ、久しぶりだなボウズ。こんなに早くリベンジのチャンスが
  やって来るとは思わなかったぜ。」

  黄色い特注のデカTシャツ姿の熊田がホクトを見て笑みを浮かべる。

 「ミーのすばーらしい活躍でマイドーターとマイワイフに愛の勝利を捧げマース!」

  ピンクの衣装に身を包んだボリフェノール・三郎は華麗なポージングを決める。

 「望月駿。人呼んでかっとびの望!腕相撲では脚力は関係ないために
  不覚をとったが、走りで俺の前に出られる奴はいないぜ!」

  青いジャージを着た望月は軽くステップを踏みしめた。

 「我輩は酔っている、名前はまだ無い!だが小娘、貴様を葬るのに
  名前など不要!あの時の一撃の借りをここで返してくれるわっ!」

  黒いスーツを着込み、頭にネクタイを巻いた男はつぐみをビシッ!と
  指差すと、一気にビールを飲み干した。

 「ふぉふぉふぉ、ワシら無敵の5人組に勝てるかな?
  お主らの健闘を期待しておるぞ」

  キュレンジャーの5人組はそう言ってスクラムを組んでどこかに去っていった。

 「・・・はっ?!」

  彼らがいなくなって数分後、ようやく復活した武は先ほどの出来事が
  たちの悪い白昼夢か何かなんじゃないかと思ったが、周りの人間が
  まだ固まっているところを見ると現実だったのだろう。

 「おいお前ら、しっかりしろ!」

  一人一人の頬を張って目を覚まさせると

 「円陣を組め!!!」

  と言った。武、つぐみ、ホクト、沙羅、春香菜が組み合って円ができる。

 「いいか、敵は手強い。爺さんだけでもかなりヤバイってのに
  他にも超人の域に達している奴等が入ったキュレン・・・いやいや
  あのチームは間違いなく今までで最強の敵だ」

  危うくキュレンジャーなどという恥ずかしい名前で呼びそうになった
  武の顔は少し赤くなっていた。

 「だが、あいつらは所詮寄せ集めだ。ここまで共に戦ってきた
  俺たちのチームワークは無敵だ!俺たちは・・・」

 『俺たちは、絶対に、勝つ!!!』

  倉成チームは気合を入れると、力強い足取りで集合場所に向かった。





  走る順番は話し合いの結果ホクト、沙羅、つぐみ、春香菜、武の順番に
  決まった。キュレンジャーもそれに合わせて組んでくるだろう。

 「よし、みんな、行くぞ!!!」

  武の掛け声に合わせて、みんなそれぞれの配置に向かっていった。

 「武・・・」「うん?」

  武が振り向くと、そこにはつぐみが立っていた。

 「どうした、つぐみ?」

 「・・・頑張りましょう」

  雲の隙間から差し込む陽光のせいか、帽子の影から覗くつぐみの顔が
  少し赤く見える。武はつぐみに笑いかけて

 「おう!ここまで来たら米30kgも俺達がいただきだぜ!」

  そう宣言すると一瞬だけつぐみの肩を抱き寄せ、
  アンカーの位置に走っていった。

  その後ろ姿を最後まで見送っていたつぐみは微笑みを浮かべて
  自分のスタート地点へ向かった。





  第1走者はホクトである。ということはキュレンジャー1番手は
  当然熊田イエローが出てきた。

 「へっへっへ。俺をデカイからってノロマな奴だと勘違いしてもらっちゃ
  困るぜ。高校時代は「人間魚雷」の異名でラグビーでならしたからな、
  自慢じゃないが100mは11秒台だ」

  そういって走りやすい軽装になった熊田の巨体は確かに脂肪が
  殆どついていない引き締まった肉体だ。体脂肪率は一ケタ台だろう。

  ホクトはゆっくりと柔軟体操をしながら、ウォーミングアップをしている。

 「ふっ、でもオメェも今日一日で随分でかくなったよなぁ。最初に見た時の
  リングに上がる前のオドオドしていた頃のオメェと今じゃ大違いだぜ」

 「熊田さんのお陰ですよ」

  と身体を曲げつつ、熊田の目を見ながらホクトは言う。

 「へへへ、随分言うようにもなったじゃねえか?オメェがもうちっと大人なら
  この後で酒でも酌み交わしたいところだがな、数年後の楽しみにしといて
  やるよ」

 「楽しみにしてます」

  そう言って笑い返すとホクトは立ち上がり、スタート地点に向かった。

 「位置について・・・ヨーイ・・・」

  パン!!!ピストルの音と完全に同時にホクトはスタートを切った。
  熊田もそれに続く。

  他の走者も決して遅くはなかったがホクトと熊田のスピードは
  他者のそれと比べて圧倒的に勝っていた。ぐんぐん加速して他の
  走者とのリードを広げるホクトに対して熊田もその巨体からは
  想像できないスピードでホクトのすぐ後ろにつけている。
  まるで重機関車に追われているようなプレッシャーを感じながら
  ホクトは走った。





 「俺の相手は君か。悪いが容赦はしないよ」

  望月ブルーは沙羅の方を見ずに身体を上下に揺らしながらそう言った。

 「平気です」

  沙羅はそう答える。

 「ん?君は俺に勝てる自信でもあるのかい?」

 「いいえ」

 「じゃあ何か秘策でもあるとか?」

 「何も。私はあなたにはどうやっても勝てないと思います」

  望月はそこで初めて沙羅の方を向いた。そろそろホクトと熊田が来る。

 「それなら何で君はそんなに落ち着いているんだい?」

  沙羅は望月の質問に対して

 「信じているからです」

  と答えた。

 「信じている?」

 「はい、私がここで勝てなくてもお兄ちゃんと、田中先生と、ママと、
  パパとみんなで力を合わせればきっと勝てると信じています。
  家族ってそうやって助け合って生きていくものだと思っていますから。
  だから、私はここで自分の出来ることを精一杯やるだけです」

 「家族か・・・くだらんな。人間最終的に頼れるのは自分ひとりだよ」

  そう呟くと望月は正面に向き直った。

 「そうかもしれません。でも、いつかその考えが変わるといいですね」

  笑顔でそう言うと沙羅もいつでも走れる体勢をとった。

  コーナーを曲がってホクトと熊田の二人が第2走者地点にやってきた。
  差は殆ど無い。沙羅と望月はほぼ同時にバトンを受け取った。

 (家族とか、絆とか、そういうものはとうの昔に捨てたし、
  今更それに未練も無い)

  望月は最後の思考を捨てると、全神経を己の足に集中した。





 「なんだあー?全然勝負にならないじゃねえか?
  こりゃもう勝負は決まっちまったな!」

  酔っ払いブラックの声ではない。別の方向からきたヤジだ。
  しかし、そう見られても無理はない。望月はそれほどまでに速かった。
  伊達に自称してはいないその俊足ぶりはホクトよりも速いかもしれない。
  青い一陣の風は沙羅との距離をどんどん開いていった。

 「さすがに相手が悪かったなぁ〜、あの望月相手に勝てるやつぁ
  この町内ではあの爺さんくらいさ・・・ヒック!」

  こちらはブラックだ。相変わらず酒を手放さず時々あおりながら
  つぐみに話しかけていた。

  しかしつぐみはそれには答えなかった。ただこちらに向かって
  必死に走り続ける娘をじっと見つめていた。

 「あん時は不意打ちで不覚を取ったが、女にやられて大地に膝を
  ついたとあっちゃあ男として一生の恥よ。我輩も・・・ヒック!
  望月ほどじゃあないが昔は陸上のホープとしてちょっとは
  名のあがった男。あれだけの差がついてて悪いが、
このまま勝たせてもらうぜ」

  つぐみは相変わらず無言のまま懐から黒いリボンを取り出すと
  邪魔にならないように髪を結んで、帽子を取って係員に預けると
  スタート地点に向かった。

 「はは、嫌われたもんだなあ我輩も」

  酔っ払いは首をすくめるとビールをあおり、つぐみの後を追って
  スタート地点に千鳥足で歩いていった。

  望月と沙羅の差は相当広がっていた。望月は最後尾ランナーを追い抜き
  かねない勢いでラストスパートをかけると、酔っ払いにバトンを渡した。

  バトンを受け取った酔っ払いはビールを飲み干し、大きな息を一つつくと
  望月に空き缶を投げ渡し、若かりし頃に死ぬほど酷使した足の筋肉に
  もう一度稼動命令を出した。

  沙羅がようやくつぐみのところに着いた時にはホクトのつけた
  他の走者とのリードもかなり減っていた。それでも必死に走って
  つぐみのところまで辿り着くと力強くバトンを渡した。

  つぐみは娘からバトンを受け取ると、雲の隙間から薄く西日の差す
  茜色のグラウンドを切り裂くように駆けていった。





 「HAHAHA、とうとうミーの出番デース!腕が鳴りマース」
  ボリフェノール・ピンク・三郎はそう言いながら柔軟体操なのか
  ポージングなのか判別の困難なアクションをしている。

 「あそこにいるのは娘さんかしら?」

  第4走者のスタート地点の向かい側にある客席の一番前に
  ちょっとそばかすのあるまだ小さい金髪の女の子が立っていて、
  こちらに向かって何か叫んでいる。

 「YESYES!その通りよ。マイドーターね。ミーは娘を愛してマース。
  ワイフも愛してマース。だから今日のレースは絶対に勝ちマース!」

 「可愛い娘さんね。奥様はどこにいらっしゃるのかしら?」

  その質問に対して三郎は少しだけ表情にかげりを見せて

 「マイワイフは今ヘブンにいマース」

  と言った。

 「えっ、天国って・・・ご、ごめんなさい」

  聞いてはいけないことを聞いてしまったと思った春香菜はすぐに
  三郎に詫びた。だが三郎はすぐに首を横に振り

 「ノーノー、ミセスは謝る必要ありませーん。ミーには娘いる、
  愛してる。この町の人もみんないい人。愛してる。
  ワイフも天国にいる、愛してる。それだけデース。
  だからミーは今とても幸せデース」

  と言って笑った。その笑顔はまぶしく、既に表情にも声にもかげりは
  全く無かった。だから春香菜も笑って

 「そう、娘さんとお話ししてみたいな。名前は何ていうの?
  後で会わせてくれるかな?」

  と言った。

 「No problem! 大歓迎よ。マイドーターのキャロルも日本に
  フレンズがまだあまりいないからとてもハッピーよ!」

  三郎は春香菜の申し出を喜んで受け入れた。春香菜はそれを聞いて
  一層嬉しそうに笑ったが、すぐに顔を引き締めて

 「ありがとう。でも私もこの勝負には賭けているものがあるから
  負けるわけにはいかないの」

  そう言ってアンカーのいる地点に目をやる。

 「オフコース。勝負は勝負よ!ミーは絶対に負けまセーン」

 「私も、負けないわよ!」

  ブラックとつぐみの勝負はつぐみが凄まじいスピード
  で巻き返しをはかっていた。ブラックも一般人からすると
  相当速いほうだったが、つぐみのそれはもはや速いという領域を
  超えていた。お祭り騒ぎが3度のメシより好きな町内の観客も、
  声を上げることすら忘れてつぐみの走りに魅入っていた。

 「はいっ!」

  つぐみがバトンを差し出す。春香菜はそれを受け取ると
  無心で足を前に投げ出した。





 「いよいよじゃのぉ・・・」

 「・・・ああ」

  アンカー地点では、武とキュレイレッドが最後の対決を前に静かに
  並んで立っていた。雲は完全に切れて、今日一日出番がなかった
  太陽が最後の仕事とばかりに二人の影を細長く大地に伸ばす。

  気分は落ち着いている。静かだ、周りの歓声も殆ど聞こえない。
  知覚できるのは自分と、隣にいる今まで何度も激闘を繰り返してきた
爺さんと、自分の所までバトンを運んで来てくれる人達だけだ。
  ホクトが、沙羅が、つぐみが、春香菜が協力して走って自分のところまで
  バトンを運んで来てくれる。負けるわけにはいかない。

 「今、何を考えている?」

  爺さんが武に問う。

 「さあね、爺さんこそ何考えてるんだよ?どうせ今夜のおかずは
  納豆とアジの開きに葱と豆腐の味噌汁がいいとか考えてるんだろう?」

  武は冗談で返した。爺さんは少し考えて

 「うむ、確かにそれは魅力的じゃのお」

  そう答えてから

 「・・・多分、お主と同じじゃよ。」

  と、付け加えた。

 「・・・そっか」

 「・・・そうじゃ」

 「負けられねえな・・・」

 「・・・ああ、負けられん」 

  そこから先は二人とも無言だった。信じている、信じてくれている人達の
  想いを乗せたバトンが自分の手に乗せられる時をただ静かに待ち続けた。

 「はいっ!」

  想いが重なった。武は全てを開放すると、歓声と赤い光に包まれた
  グラウンドへ身体を放り込んだ。





 「それでは表彰式を行います」

  全ての競技が終了した。競技のほかに個人別評価での優秀選手の発表が
  あるらしい。もちろんこれにも賞品がついてくる。最後の最後まで
  お祭り好きな人達らしい。

 「リレー部門第一位・・・倉成武チーム」

  パチパチパチ・・・拍手が送られる中、町内会長が米30kgを持ってきた。

 「よく頑張った!感動した!!」

  どこかで聞いたようなことを言われながら米を受け取った武は
  今日一番の拍手と歓声に包まれながら壇上を降りつつ、この運動会で
  たくさんの人達から受け取ったものにこの米の重さ以上の手ごたえを
  感じたが小さく首を横に振って

 「らしくねえかな」

  と感傷に浸るのをやめて家族の待つ場所に戻っていった。
  ちなみに優秀選手の一人にホクトが選ばれ、近所のデパートの
  商品券3000円分を追加でゲットした。



 「以上で、第51回町内運動会の全プログラムを終了いたします」


  パチパチパチパチ・・・


  こうして、町内運動会は今回も幾多の伝説を生み出して静かに幕を閉じた。



  あとがき


 Vo:いよいよ運動会最後のイベントですね。腕相撲で出てきたアツイ奴等が再登場。

 Az:なぜか、酔っ払いまで・・・てゆーかキュレンジャーて何よ?

 Vo:自分て作っておいてなんだがあれは飛ばし過ぎだねw。
   これも話の内容は割とシリアスなんで書くのが結構大変でした。

 Az:ところで・・・妄想戯言吐いても良い?

 Vo:つまんなかったら即Deleteの刑ね。

 Az:髪を結んだつぐみん・・・なんか新鮮で良いかなあと・・・
   後、ここでも先生はあの服装で・・・(ニヘラっ)

 Vo:先生走りづらっ!!あと、そうやって、アイ○ルのCMに出てくる犬のような
   目をして暗に読者の方に『イラスト描いて♪』の願望ビーム出すのは禁止です。

 Az:うっ・・・。後、先生走りづらいなら、スリットとか入れれば・・・

 Vo:おっと、それ以上は放送禁止なんで頭の中でやってください。

 Az:既にやっていて、容量が越えたから表に出しているのでぃす♪

 Vo:・・・家の周りに燃えるもんとか置いとかん方がええでぇ。

 Az:萌え♪


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