〜White Snow Love  〜
                              作 BREAKBEAT!


雪がしんしんと降り注ぎ、街はさまざまな光を放つ。
雪も光にあわせ、ちらちらと姿を変えた。
体温で暖められた息は、吐き出すと同時に周りの空気にさらされて白く染まる。

人が行き交わる。
箱を片手に、喜びの顔で足場に移動する者もいれば、二人だけで楽しそうに歩く男女もいる。
複数で仲良く移動する者もいれば、一人寂しく移動する者もいる。

―12月24日―
今日がイエス・キリストの誕生日の前夜祭が本来の目的であることを知っている人は、この中に何人いるだろうか・・・
人ゴミの中でぽつんと立っている少女はそう思った。
茶色のコートと毛糸で編んだ帽子には雪が積もっている。だいぶ前からここにいるのだろう。
手袋をした両手でかばんをしっかりと持ち、ゆっくりと空を見上げる。
「ホワイトクリスマスか・・・」
ゆっくりと落ちてくる雪を見ながら、少女はぽつりとつぶやいた。
白い吐息が彼女の口から流れる。
少女はそって手のひらを胸の部分まで挙げ、雪を受け止めた。
雪は手のひらの上で溶け、小さな水になった。
目の前には人がたくさんいる。
後ろには時には静かに、時には優雅に水を吐き出す噴水がある。
なぜか・・・寂しい感じがする。
人ごみの中で一人でいる自分。
人ごみの中の人は、皆楽しそうに話をしているような気がする。
誰も私には視線を向けない。
つまり・・・私だけ一人ぼっちでいるような気がする。
それが今の少女の心境だ。
「くしゅん!」
可愛いくしゃみをして、軽く赤くなった鼻をさする。
「あぁ〜もう、風邪ひいちゃったじゃないの・・・」
彼のせいだ。
「ふぅ・・・ホクト・・・早く来ないかな?」
少女―田中 優美清秋香菜はつぶやいた。
待ち人の・・・たった一人の恋人の名前を・・・


黒いジャンパーを羽織った一人の少年が白色の息を切らせながら走っている。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」
ジャンパーの袖を軽くあげて、腕時計で時間を確認する。
「あっちゃー。優、怒ってるだろうなぁ・・・」
そう言うと少年は、さらに加速した。
普通の人なら通り抜けることは到底無理な人ゴミを少年は縫うように走り抜ける。
何故彼は急いでいるのか?彼は待ち合わせに遅刻したのだ。
彼は恋人にプレゼントを買おうとした。
それが遅刻の原因だ。
「優・・・待っててね」
少年―倉成 ホクトはつぶやいた。
待たせている人の・・・たった一人だけの愛しい人の名前を・・・

     
ちらっと、かばんに目を向ける。
緑色のくしゃくしゃになった包装紙に不器用に赤いリボンが巻かれ、『ホクトへ』と手書きで書かれたカードがリボンと包装紙の間に挟まれたものが入っている。
不器用な彼女なりの、彼に対するプレゼントだ。
12月が始まってから、母親に習って編んだプレゼント。
この日のために、一生懸命編んだプレゼント。
「ホクト、気に入ってくれるかな?」
小さな不安が頭をよぎった。


走りながらジャンパーのポケットに手を入れ、確認する。
「うん・・・入ってる」
彼のポケットにはシワ一つ無い白い包装紙に綺麗に青いリボンが巻かれた長方形型の箱が入っている。
彼女を愛する彼のプレゼント。
先月から、彼女に内緒で始めたアルバイトのお金で買ったプレゼント。
この日のために、働いたお金で買ったプレゼント
「優は、気に入ってくれるかな?」
ちょっとした不安が頭を掠めた。


「ホクト・・・」
「優・・・・・・」
二人はお互い聞こえない距離でお互いの名前を呼び合った。


少年は最後の難関に到達した。
待ち合わせ場所は大通りの中央にある噴水。
その場所は、待ち合わせの場所として有名な場所だった。
その分人は密集し、大通りという最悪の条件も重なってかなりの人がいる。
それでも行くしかないのだ。
愛する人のためにはそこを通り抜けないといけないのだ。
少年は少女に会うために、その身を・・・人ゴミの中に押し込んだ。


人ゴミを抜け、少女を見つけた。
「優!」
少女は少年の声に答えた。
「ホクト!」
少年と少女はお互いの聞こえる名前を呼び合った。
少年は少女の元に走り寄る。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ごめん、待った?」
「うん、ものすごく待った!」
少女はきっぱりと答える。そのはっきりした性格が彼女の魅力の一つでもある。
少年は彼女を見つめた。
軽く赤くなった鼻。
頭の帽子に軽く積もった雪。
長い間、自分を待っていたのは明白だった。
「ご、ごめん・・・」
少年は優の頭の上の雪を優しく叩いてから少女に謝った。
「わかればよろしい!」
少女はにっかっと笑った。

少女も少年を見つめた。
普段の白くて綺麗な肌とは正反対ともいえるぐらいに赤く染まった顔。
冬だというのに、顔いっぱいにかいた汗。
ちょっとやそっとじゃ息切れを起こさないはずの彼がここまで息を切らしてくれている。
少女は、少年が自分のためにどれほどがんばってくれたかがすぐに理解できた。
「ありがとう」
少女の心には、その一言だけが浮かんだ。

気がつけば、雪はもう止んでいた。
人ゴミは少し小さくなってきていた。
しかし、二人はそんなことには気づかなかった。
二人には目の前にいる人さえいればいいから。

少しの間二人は見詰め合っていいた。すると、

ゴ〜ンゴ〜ン

と、急に大きな鐘の音が鳴った。
「あ、優、時間だよ」
「うん」
少女は少年の手を握る。少年はその手を握り返す。
そして、今度は二人で駆け出した。

二人は大きなクリスマスツリーの前まで来た。
「大きいね」
「うん」
少女の言葉に少年は同意する。
ツリーの周りはたくさんのカップルでにぎわっており、ツリーに向かって何本かのはしごが出されていた。
「早くしよう。イベント、終わっちゃうよ」
「そうだね・・・急ごうか」

このクリスマスツリーにはちょっとした伝説がある。
好きな飾りに願い事を書いて、大好きな人と一緒に飾って、クリスマス当日の最初のイルミネーションを見れば願いごとがかなう。

そんなありきたりな伝説だ。
しかし、少女は唐突に言い出した。
「今度のクリスマス・イヴに、このクリスマスツリーに行ってみない?」
伝説や神話民話逸話を信じない少女がこんなことを言ったのだ。少年は驚いた。
いや、少年は伝説のことに驚いたのは彼女に誘われた日ではない。
少年は伝説のことは知らなかった。今日、出かけるときに妹に教えてもらうまでは知らなかったのだ。
伝説なんかを信じない優が急にこんなことを言い出すなんて・・・。
少年は少し考えながら街中を歩いていた。
そのせいで、普段より少しだけ歩く速さが遅くなったのだ。
これも遅刻した原因である。
しかし・・・今は気づかないフリをしている。
ただ・・・今は伝説のことを言わないほうがいい。
そんな気がするから言わないのだ。

「飾りをツリーにつける前に、飾りに願い事を書くんだって」
少女は軽く説明する。少年はただ、
「わかった」
と答えただけ。
二人は、それぞれ好きな飾りを選んだ。
少女は金色の星の飾りを、少年は淡いオレンジ色のボール型の飾りを・・・・
二人はお互いの願い事が見えないように、見ないように書いた。

そして、一つのはしごに二人で登っていく。
少年は、一見華奢に見える腕で力強く少女を支えた。
少女は少年を信用し、心配させるようなそぶりは見せずに
「うんしょ、うんしょ」
と、飾り付けだけに夢中になっていた。
願い事が少年に見えないように、願い事の部分を裏返してつける。
少女が飾り付けをした後、少年は彼女が飾り付けをしたところの隣に飾り付けをしようとした。
ふと、彼女の飾りが目に入った。
金色に輝く星を軽く捲れば、彼女の願い事がわかる。
一瞬、躊躇したが、彼はそんなことをする男ではなかった。
何事も無かったかのように飾り付けをして、はしごを下り、彼女と話した。

時間はゆっくりと過ぎていった。
少年と少女は同じベンチに寄り添うように座っている。
いや、座っているのではない。
少年の右側にはファーストフードを食べ終えた袋が置いてあり、左側の肩には少女の寝顔がある。
少女は眠っている。
幸い・・・雪は降っていない。
雪が降っていたらこんなところには長い間座っていられない。
少女は食事を取った後、寝てしまった。ずっと立ち続けていたから疲れたのだろう。
本当は・・・待ち合わせをして、食事をしてからイベントを見るつもりだったのだ。
「最近流行のパスタ店に行こう!」
と昨日まではしゃいでいた彼女の顔が思い浮かぶ。
「優・・・ごめんね・・・」
少年はそうつぶやいた。
「な〜に言ってんのよ、ホクト」
「へ?」
彼女は目を覚ましたのだろうか、そっと彼女の顔を見つめる。
「う〜ん・・・むにゃむにゃ・・・」
「なんだ寝言か・・・」
彼は、ふうっと息をつき、彼女を見つめなおした。
彼の吐息は白く染まり、暗闇の中に消えていった。
少年は彼女の寝顔を見るたびに、ふ、と優しく笑う。
愛する人が自分の側にいる。

こんな時間が永遠に続けばいいのに・・・

到底無茶な願望が頭に思い浮かんだ。

腕時計で時間を確認する。時刻は23時58分を指そうとしている。
「そろそろ・・・優を起こさないとね」
少年は彼女の肩を軽く揺さぶる。
「優、起きて。時間だよ」
「う、うんん・・・」
可愛い寝顔のお姫様のお目覚めだ。
少女は瞼を開き、軽くあたりを見渡した後、少年へと焦点を合わせた。
「あ・・・ホクト・・・私、眠ってた?」
「うん・・・すっごく気持ちよさそうにね」
「う〜ん・・・そうかも」
少女は彼の左肩から頭をどけ、ゆっくりとベンチから立ち上がり、両手組み、両腕を頭の上で伸ばしながら背伸びをした。
「そろそろ?」
「うん・・・あと・・・34秒だね」
「そう・・・じゃあカウントしない?」
「あ、いいね。そうしよう」
少年は腕時計に目をやる。
「23,22,21,20・・・・」
少年はデジタル時計に表示される秒数を逆に数えた。
「14,13,12,11・・・」
「「10」」
二人の声が重なった。
「「9,8,7,6,5,4,3,2,1」」
順々に数を数えていく。
「「0!」」

ゴ〜ン、ゴ〜ン、ゴ〜ン、ゴ〜ン・・・

二人が最後の数を数えると同時に鐘が鳴り始め、鐘は12回鳴ると、鳴り止み、静止した。
一瞬でパアっと周りが明るくなり、『ジングルベル』が流れた。
イルミネーションが始まったのだ。
「メリークリスマス!優」
「メリークリスマス!ホクト」
二人はキリストの誕生日を祝福した。

二人はツリーを見つめていた。
「綺麗・・・」
「そうだね・・・」
いろいろな色がついては消え、ついては消える。
その幻想的な光景を二人は見つめていた。
「あ・・・そうだ!」
少年が何かを思い出したかのように声を上げ、ポケットに手を突っ込んだ。
「はい、これ」
少年は少女に包装紙とリボンでデコレーションされた箱を差し出した。
「なに・・・?これ・・・?」
少女は、きょとんとした表情で箱を受け取る。
「クリスマスプレゼントだよ」
「開けてもいい?」
少女の目は光り輝いて見えた。
「うん。いいよ」
少年は安易な答えを返した。
少女はそっと、リボンと包装紙をはずし、最後に白い長方形型の箱を開けた。

チャラチャラ・・・

少女は軽い金属音を立てながら、銀色のネックレスを箱から取り出した。
ネックレスには銀色の十字架の下に、銀色の可愛いハートがついていた。
ハートの裏には、『YOU』という三文字が刻まれている。
「こ、これどうしたの?」
少女は驚きを隠せないようだ。
なぜなら・・・このネックレスは彼女が欲しがっていたものだから。
彼女が密かに欲しがっていて、誰にも話していなかったことだから、彼女は驚いたのだ。
少年は、偶然目撃していたのだ。
彼女がショウウインド越しにそのネックレスを見つめていたのを・・・

少女はショウウインドを見つめていた。
「あ、ゆ・・・」
少年は声をかけようとしたが、普段とは何かが違う彼女に気づきしばらく様子を見ることにした。
「わぁ・・・これ可愛いな〜」
少女はネックレスを見つめていた。
サイフを開けて、チラッとネックレスの値札を見直す。
「うぅ・・・高いッス・・・」
しょぼんとうなだれながら・・・
少年は少女にもう一度声をかけようとしたが、その気にはなれずその場を離れた。

それから彼はそのネックレスを買うことを決心し、お金を貯めていたのだ。
「どう?気に入ってくれた?」
「うん!」
少女は、言葉を発すると同時にうなづいた。
「よかった・・・。そうだ、つけてあげようか?それ」
「うん、お願い」
少女は彼にネックレスを手渡すと、後ろを向いた。
少年は少女から受け取ったネックレスのフックをはずし、ゆっくりと彼女の首にかけ、フックをつけた。
少女は首筋にネックレスの冷たさを感じた。けれど・・・彼の暖かさのほうがもっと強く感じられた。
「ね?似合う?」
彼女は少年に向かってネックレスをチェーンを手で浅く掴んで、少年に見せた。
「うん、とっても似合うよ」
「ふふ・・・ありがとう」
彼女は嬉しそうに笑うと、ネックレスを見つめた。
本当に嬉しそうだ・・・買って良かった。
少年は、そう思った。
少女はコートからネックレスだけを出した。
「あ、そうだ」
少女は軽く手を、ポン、と合わせるとかばんから例の包装紙を取り出した。
「はい、これ・・・私からのプレゼント・・・」
少女は頬を赤く染めている。
「い、いいの?」
少年は思わず聞き返してしまう。
『ホクトへ』と書かれたカードが見えなかったわけじゃない。あまりの嬉しさに思考能力が落ちているだけだ。
もちろん少女は、うん、と首を上下させただけだ。
「あ、ありがとう!」
少年は包装紙を受け取り、大いに喜んだ。
「開けてもいい?」
もちろん、彼女の答えも、
「うん。いいよ」
の二言だけ。
少年がリボンをはずし、包装紙をはずすと中から茶色いマフラーが出てきた。
いろいろなところから短い毛がはみ出している。
「確かにできは不細工だけど・・・私なりにがんばったんだよ・・・」
少女は、少年が自分のプレゼントを気に入ってくれるかどうか心配だった。
しかし・・・少年は聞こえてないのか、返事が返ってこない。
「ホ、ホクト・・・?」
少女は恐る恐る少年に問いかけた。
すると少年は・・・
「あ、ありがとう!優!」
と急に大声を上げた。
プレゼントは値打ちが高ければいいって物じゃない。渡す相手にどれだけ思いが伝わるかが大事なのだ。
少年のオーバーリアクションは、周りから見ればわざとらしく思える。しかし、少女はそのリアクションが演技なんかではなく彼が本当に喜んでいること知っている。
「ホクト、つけてあげようか?」
「うん、お願い!」
少女は彼からマフラーを受け取ると、正面から後ろに回すように軽く首にかけ、両端を正面で軽く結んだ。
「これでよし!」
少年の首にマフラーが巻かれた。首にマフラーを巻いたことは何度もあるが、ここまで暖かいマフラーは初めてだった。
「それとね・・・もう一つプレゼントがあるんだ・・・」
「え?」
少女は、少年の首にかけたマフラーの結び目を掴んでかるく引っ張った。
軽くバランスを崩した少年は顔がやや大げさに少女に向かって下がる。
そして、少女も少年にかおを寄せ、目を閉じる。

少女と少年の唇が、優しく重なり合う。
キス
二人が始めてするキス。
ファーストキスだった。

どれだけ時間が流れただろう。
時計を見れば30秒程度だというのはわかる。
しかし、二人にはすごく長い時間に感じられた。
少女は少年の唇から自らの唇を離した。
「ふぅ・・・しちゃった」
一息ついてから、あどけなく笑う。
その頬は赤みを増していた。
少年は時が止まったような状態で立ち尽くしている。いや、手が唇に触れているし、顔が真っ赤に染まっていることから、現状の把握まではできていたのだろう。ただ・・・情報が大きすぎて、途中でフリーズをしてしまったのだ。
「お〜い、ホクト〜・・・大丈夫か〜?」
少女は軽くふざけた声を出しながら、少年の目の前で手をヒラヒラと動かした。
「あ、う、うん・・・なに?優」
少年は、はっと我にかえった。
「はぁ。だ〜めだこりゃ・・・」
少女は少し大げさに肩をすくめて見せた。

少年と少女は、いまだにツリーの前に立ち尽くしている。
少女の両手には黒い缶コーヒーが、少年の片手には茶色の缶コーヒーが握られていた。
二つの缶コーヒーからは白い湯気が立ち上っていた。
少女はその缶コーヒーをゆっくりと口につけ一口飲んだ。
「ふぅ」
一息つき、少年のほうを見る。
「いまだにブッラクの良さがわからないなって・・・おこちゃまね〜」
少年もコーヒーを一口飲んでから答えた。
「うるさいな〜第一、ブラックは身体によくないんだよ」
「はいはい・・・言い訳は結構」
「む・・・僕だってブラックぐらい飲めるよ」
「そう、だったら証明してみ」
そういって、少女は少年に向かって缶コーヒーを押し付けた。コーヒーの香ばしい香りが、彼の鼻を刺激する。
「う・・・」
「ほれほれ、どうしたどうした?」
「わ、わかったよ」
少年は覚悟して、少女から缶を受け取り、缶を見据え、ごっくとつばを飲んでから少年は言った。
「では!」
その声に少女は答える。
「どうぞ!」
少年は缶を口につけて、上を向いて飲み始めた。
一口、二口・・・
飲むたびにのどが動いているので、本当に飲んでいるのがわかる。
「ふぅ、どう?ちゃんと飲めたよ」
少年は勝ち誇った顔をしながら彼女を見た。
「ふふふ・・・大人への階段を一歩進んだね。えらいえらい。れべるあっぷだよ」
少女は自分より少しだけ背が伸びた少年の頭に手を伸ばし、よしよし、といった感じで頭をなでた。
少年は恥ずかしそうに顔を赤く染めた。
ふと、缶コーヒーが少年の目に入る。
少年は、さっき自分がした行為を思い出し、さらに顔を赤く染めた。
少女は少年の頭から手をどけた後、少女は受け取った缶コーヒーを口に運ぶ。
「ん?」
少女は何かに気づいたかのように、缶から口を離した。ゆっくりと缶を傾ける。
コーヒーは・・・こぼれなかった。
「あー!コーヒー、残ってないじゃない!」
「あ・・・」
少年はしまった、といった感じで目を泳がす。
「もう・・・しょうがないな。それ、頂戴」
「え?」
少年の返事も待たずに、少女は彼から缶を奪い取った。
それを口につけて、くぃ、と傾けコク、コクとそれを飲み始める。
少年は漠然とそれを見つめている。
「ふぅ・・・」
少女は口から缶を話した。
「う〜・・・やっぱり甘すぎるよ〜」
少女はうえ〜といった感じで、下を向きながら口を開ける。そして、少年に缶を渡しビシッ!っと遠くにあるゴミ箱を指差した。
「はいはい・・・」
少年はしぶしぶとゴミ箱に向かって歩き出した。
少女に渡された茶色い缶が目に付く。
少年は、ゆっくりと茶色い缶口に運ぶと、ちょっとだけ口をつけて、慌てて離した。
「は!いかんいかん・・・なにをやってるんだ僕は・・・」
少年はゴミ箱の前で立ち止まり、缶をゴミ箱に投げ入れた。
なんとなく・・・残念に思えた・・・

少年がツリーに見とれてる少女の隣に並んだ時、しんしんと雪が降り始めた。
少年と少女はそれに気づき、空を見上げた。
暗い闇夜を照らす、明るい人工的な光の中で、雪は違う輝きを放っていた。
少女がツリーを見つめているに気づき、少年もツリーを見つめ直した。
幻想的なイルミネーションはまだ続いており、雪のおかげで、さらにその、幻想さが増した。
少女が口を開いた。
「ねぇ、ホクト・・・知ってる?」
「ん?なにがを?」
少年はまだ気づかないフリをしている。
少女は恥ずかしそうな態度をとった後、思い切って話した。
このクリスマスツリーにはね『好きな飾りに願い事を書いて、大好きな人と一緒に飾って、クリスマスの当日の最初のイルミネーションを見れば願いがかなう』って伝説があるの・・・」
「あれ?優はそういうのは信じないんじゃなかったの?」
軽く意地悪な返事をする。
「もう!そんなことはどうでもいいの!」
少女は軽く頬を膨らました。
少年はそれを見て、笑い出し、少女もそれを見て笑い出した。
二人で、もう一度ツリーを見つめなおす。
「本当はね・・・口実なんだ・・・」
「え?」
「私ね・・・あなたと一緒に居たかったんだ・・・」
少女は続けた。
「ホクトと居ると・・・なんだか安心できちゃうから・・・」
「優・・・」
神様なんか信じない。伝説なんか信じない。
現実しか信じない彼女が、唯一少年に願った願い事。
それは彼女がかなえて欲しいたった一つ願い事だった。

それから、二人の間だけに、沈黙ができてしまった。

「それで・・・優はなにをお願いしたの?」
最初に沈黙を破ったのは少年だった。
「え?」
少年の問いかけに少女は赤く頬を染めた。
「ホクトこそ・・・なにをお願いしたの?」
「え?」
少女の問いかけに少年も頬を赤く染めた。
どうやら二人とも、少し恥ずかしい願い事をしたようだ。
「う〜ん、気になるな〜・・・ねぇねぇ、お姉さんにチョコっとだけ教えてみ」
少女は軽くニタつきながら少年に問いかける。
「そ、そっちこそ。どんなお願いしたんだよ?」
少年も少女に問いかける。
何度かこんなやり取りをしている間に、二人はある結論に導かれた。
「じゃあ・・・3,2,1!で同時に言ってね」
「うん、わかってる」
どうやら、二人で同時に答えを言うようだ。
「じゃあ・・・いくよ?」
少年はうなずいた。
少女と少女は軽く息を吸い、吐き出しながら
「「3,2,1!」」


「―――――――――――!」
「―――――――――――!」


二人は同時に言った後、笑いあい、見つめあい、軽く抱き合って、再び唇を重ねあった。
雪とクリスマスツリーの輝きが、彼らを祝福しているように見えた。

少女の名前は田中 優美清秋香菜
少年の名前は倉成 ホクト

この日は二人には忘れられない日になり、二人のプレゼントは二人だけの、一生の宝物になるだろう。

二人が唇を離した後も・・・
雪はゆっくりと静かに降っていた。


〜Fin〜



あとがき
ちーす!BBです。
BB的クリスマスSS第一弾。いかがだったでしょう?
とりあえずこのSSはクリスマスプレゼント用SSとして以前から考えていました。
本当は違うのがあったけど、あれはどうもキャラのイメージが壊れていたからやめました。

まぁ・・・見てのとおり・・・あれです・・・・優秋とホクトの純愛系SSです。はっきり言ってかゆいです。恥ずいです。

描写は前よりは少しはよくなった、と自負しておりますがどうでしょうか?

題名『White Snow Love』について
ありえませんが、『白い雪のような恋』と訳してください。
asとかそうゆう単語入れたら題名の雰囲気壊しちゃいそうな気がして入れませんでした。
白い雪=綺麗という自分の見方から、
白い雪のような綺麗な恋。
を目指して書きました。

キャラ設定について
優は、ちょっと女の子の弱さ(別に、優が女の子みたいじゃない!といてるわけじゃないですよ)ってやつを強調するために最初は少し寂しい感じを使ってみました。
ホクトといるためにツリーにホクトを誘った自分作の秋なっきゅがすごくかわいい←(親ばか?)
ホクトに関しては、中学生くさいことをしてみました。恋愛に対して未熟(=ウブ)なところを強調するためです。

プレゼントについて
優のネックレスは初期設定だとロザリオだったんです。
なんか飾りっけないな〜と思って、今のネックレスにしました。
優て、クリスチャンてイメージないし。
ホクトのマフラーは手袋付きで黄色と黄緑の縞々模様だったんです。
しかし、キスシーンで必要なのはマフラーのみ!
そう上、書いていて手袋の色が思いつかなかったのが一番の原因!
マフラーの色が変化したのはホクトがLeMUで柄がない(単色)の服を着ていたから、ホクトは単色の服が好きなのかな〜と思ったからです。

缶コーヒーについて
まぁ・・・一言で言えばラブコメですな・・・はい、それだけです・・・
缶コーヒーはコーヒーを飲んでる最中に思いつきました。
閃きと展開!
それが我がSSネタの哲学です。

願い事について
伝説の木(なんかとき●モみたい・・・)にかなえて欲しかった願い事はひ・み・つ

ラストの雪の描写
二人の時が静かに過ぎていく。って意味を込めて書いています。

そっれにしても・・・臭すぎですね?

もう・・・書くこと無いよな・・・?
では!次のSSで会いましょう!





2002


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