私は、クリスチャンじゃないし、一緒に過ごす相手もいなかったから、クリスマスに興味なんて無かった。
ただ・・・キリストの誕生日だから、神様が本当にいたら願い事をかなえてくれるかも、と思って毎年クリスマスにはお願いをしていた。

もう一度、あの人に会えますように。


〜GOD〜
                              作 BREAKBEAT!


ろうそくの光に照らされた教会の中は、幻想的な光に包まれていた。
明るいようで暗く、暗いようで明るい。
まるで私の心のようだった。
彼のおかげで満たされた心は明るく、彼がいなくなってからの心はどこか暗い。
彼を想えば心は明るくなり、現実に変えれば心は暗くなる。
心は・・・万華鏡なのだ。
くるくると回転させれば、自分の気に入ったガラが生まれ、また回せば、気に入らないガラができる。
何度やっても同じこと。
むなしいことの繰り返し。
意味がないのだ・・・

彼がいなくなってからもう7ヶ月もたっていた。
悲しくなるなら彼を想わなければいい。
わかっている。
でも、そんなことできない。
愛する人を想わないなんてこれ以上難しいことはないのだ。
簡単にできるわけがないのだ。

神様なんかいない!
信じれば救われる?
そんな戯言なんか信じられない!
だったら何故私は救われないの?
彼が生きていると信じているのに、彼にもう一度会えると信じているのに・・・
何で私は救われないの?
自然と涙が流れ、私の頬を濡らし、無機質な床に小さな水溜りを作った。

彼に会うまでは、自分はこうじゃない。
現実を知らない、綺麗ごとしか言わない周りがそうなんだ、と考えていた。
でも、その考えは違った。
彼と出会ってからその考えの間違いに気づいた。
だから、彼を思い出した後は必ず自分にこう言った。
「馬鹿・・・」

気がつけば、前のベンチに頭を押し付けるような感じで寝てしまっていた。
耳に教会内に響くパイプオルガンの音が入る。
真っ白い服を着て、真っ白な帽子をかぶった男性や女性。小さな子供から、お年寄りまでと、さまざまな人が目の前に並んでいる。
聖歌隊が登場したのだ。
ろうそくの光が彼らの顔を優しく照らす。
少しだけ緊張した子供達の顔が可愛く思えた。
一番手前にいる男性がこちらに一礼をして、ベンチ側からはささやかな拍手があがる。
男性が聖歌隊のほうを向き、両手を挙げると、聖歌隊がいっせいに男性を見つめる。
男性は演奏者にアイコンタクトを送り、演奏者は軽く頷く。
二人ともタイミングよく首を縦に振り、男性が手を振り下ろすと演奏が始まり、聖歌隊も一斉に唄い始めた。
私は賛美歌に聞き入っていた。
クリスマスの賛美歌は、大体・・・神かキリストか聖母マリアを賛美したものである。
しかし・・・賛美歌の中に一つだけ、私が知っている歌があった。
歌詞は忘れてしまったけど、確かに知っている。
小さい頃、渡米する前に教えてもらった歌。
若い男と、若い女の『愛』をテーマにした歌だった。
私は教会に入るときに渡された楽譜を手に取り、小さな声で聖歌隊とともに歌いだした。
少しだけ・・・ほんの少しだけ彼と一緒に入れたような気がした。

賛美歌が終わり、教会の中はとても静かになった。
教会には、ろうそくの光に包まれ、十字架に貼り付けられているキリストと私しかいない。
やっと、二人っきりになれた・・・
やせ細ったキリストは顔を下に向け、目を閉じ、私を見つめようとはしない。

私を見つめる自信がないの?
それとも・・・神に背いた身体を持つ私が怖い?

私はキリストを鼻で笑った。
結局、神様なんてこんなものだ。
私は神様なんか信じない!
神様なんているわけない!

でも・・・・
身勝手かもしれない。
神なんていない。
神なんか信じない。
そんな私がこんなことを言うのは、こんなことを願うのは身勝手かもしれない。
こんな時だけあなたを頼るのは身勝手かもしれない。
でも・・・本当にあなたがいるなら私の願いをかなえてください。

私は、キリストの前で両膝をつき、胸元で両手を組んで瞼を閉じる。
そして、ゆっくりと口を開く。

「神様、もう一度、もう一度だけでもいいんです。彼に、武に合わせてください」

私はそう言って、瞼を開いた。

コンコン

どこからかノックをする音が聞こえ、目が覚める。
いつの間に寝てしまったのか?
答えは・・・わからない・・・
ただわかっていることは、ここが教会であること、私が昔のことを少しだけ思い出したことだけだ。
私は音がした方向を振り向いた。
「お〜い、つぐみ〜」
「武・・・」
いた・・・。
彼はいた。
倉成武、私の愛する人はそこにいた。
私は今、教会にいる。
私は毎年、クリスマスは教会で賛美歌を聞くことにしているから彼が付き添ってくれたのだ。
「もういいのか?」
彼は、待ちくたびれたぞ。といった感じで私を見つめる。
「ちょっとまってて。お祈りしていく」
私は、去年も、一昨年も、毎年やってきた行為をする。

キリストの前で両膝をつき、胸元で両手を組んで瞼を閉じる。
そして、ゆっくりと口を開く。
でも、少しだけ違う。去年までとは願いが違うのだ。

「神様、今の幸せをいつまでも続けさせてください」

私はそう言って、瞼を開き、立ち上がって彼に駆け寄った。
彼の暖かい胸元に飛び込んで、抱きしめてもらう。
「おいおい、教会の中ではお静かに、だろう?」
こんな時でも彼は冗談を言う。
でも、彼のそんなところが好き。
彼の顔が、声が、体型が、性格が、彼の全て好きなんだ。
「用事は済んだのか?」
私の頭を優しくなでながら、彼は優しく問いかけてきてくれた。
「うん・・・行きましょう」
私は、彼の腕を引っ張り、教会の扉を開く。
外はしんしんと白い雪が降り、教会の周りは白く染まっていた。
「ホワイトクリスマスか・・・」
彼がゆっくりと口を開く。
その口からは白い息が漏れ、白い息は空へと消えていった。
「綺麗ね・・・」
私は、彼の腕に寄りかかりながら彼に問いかけた。
「あぁ・・・」
彼はそう答えただけ。
「私ね・・・あなたとこんなクリスマスを過ごしたかったんだ」
「すまね・・・待たしちまって」
そういって彼は私にキスをした。
空気に触れる部分はとても冷たい。
でも、唇だけはとても温かかった。
ゆっくりと唇を離して、見つめ合った。
そして、彼と一緒に教会の扉を閉じる。
扉を閉じる時、キリストが目に入った。

「ありがとう・・・」

初めて神様に感謝した。

武ともう一度合わせてくれてありがとう

心の底から感謝した。

「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない」
私は首を横に振った。
「そうか・・・」
彼は右手を頭に当て、左手をジーンズに入れる。
17年前と代わらない彼独特のポーズ。
目の前にいる人間は倉成武。
そう確信した。
ポーズを崩さずにゆっくりと階段を下りる彼の姿を追い、階段を下りたあと、彼の名前を呼ぶ。
「武!」
彼は振り向く。
そして・・・今度は私から彼にキスをする。

彼の名前を口にする時は嘆き、
彼を想ったときは絶望していた。

でも・・・神様は、その全てを逆転してくれた。

彼に名前を呼ばれるたびに幸せを感じる。
彼に抱きしめられるたびに彼の鼓動を感じる。
彼とキスをするたびに彼の全てを感じる。

神様は私の願いをかなえてくれた。

全部神様のおかげ・・・

唇を離した後、武に聞いてみた。
「ねぇ・・・武知ってる?」
「ん?なにをだ?」

「神様ってね、本当にいるんだよ」

〜Fin〜



あとがき

い〜つまでも 手を〜つないでいられような気がしていた〜♪
な〜にもかもがきらめいて がむしゃらに夢を追いかけた〜♪
き〜みがいなくなることを はじめて怖いと思った〜♪
人を愛するということに 気がついたいつかのメリークリスマス♪
(ただいまBB熱唱中、少しお待ちください・・・・)

今年のクリスマスは一人寂しく病室内で『いつかのメリークリスマス』を熱唱する予定だったBBです!
武×つぐみの純愛系クリスマスSS・・・どうだったでしょうか?
最近・・・浮気のしすぎだな・・・・(SSで)
しかし・・・純愛系SSにはまってるな・・・
今回も描写がうまくいきませんでした。
う〜ん・・・つくづく未熟者だな・・・・

まぁ・・・ホクト×優秋のSSもクリスマスSSだったんですが、一人で寂しかったから、見てて嬉しいSSを作ろうとしていたらこんなのができました。
個人的には、ラストの部分は見てて嬉しいです。

題名、『GOD』について
もともとは、『キリスト』という題から『Do you belive GOD?』という題へ変化し今のこれになりました。
なんでかって?
さぁ・・・自分がこれが一番いい!!と思ったからです。

つぐみ
女の子なんですよ!
精神的に辛く、心細い毎日を過ごしてきた彼女は24歳だろうが、41歳だろうが17歳ぐらい女の子と変わらない恋をしてるんですよ!
そんな彼女の弱さを表現するためにどれだけ苦労したことか・・・
(たいした結果はでてないけど・・・)


つぐみを支えるならやっぱこの人!
という訳で最後に登場させました。

キスシーンついて
武がつぐみにキスするときはわざと弱めの表現を使い、つぐみが武にキスをするときのつぐみの心境の強調を図ろうとしました。
どうだったかな?

キリスト
結構苦労しました。
本当は、
「ねぇ・・・懺悔したら私は救われるの?」
というセリフを入れたかったのですが・・・
つぐみが何を懺悔しなくちゃいけないんじゃい!
懺悔すんならライプリヒの連中だろう!!
と、一人でぶち切れてしまったため、消しました。

では!SEE YOU!





2002


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