あの事件から3ヶ月たった。
倉成も、ココも帰ってきた。
それはそれで嬉しいのだが・・・私は、彼が生還してきた事が一番嬉しかった。


〜TWO HART〜
                              作 BREAKBEAT!


「涼権、そのレポート取って」
「涼権、コーヒー」
「涼権、肩揉んで」
「涼権、・・・呼んでみただけ」
……………………………………
俺は何をやっているんだ?
あの事故から三ヶ月がたったが、状況は一変していない。
俺が優にこき使われているという現実。
優には逆らえないという事実。
17年間、俺は優の命令を忠実ともいえるほどにことごとくこなしてきた。
しかし・・・その17年間が、俺に妙な癖を植え付けたのだ。
俺は、優には絶対に逆らえないという癖を・・・・

17年間・・・彼は本当によくやってくれた。
私のことを支えてくれたし、愚痴も聞いてくれた。
はっきり言って、私の最高のパートナーだ。
彼は
ココの笑顔をもう一度見る。
それだけのためにがんばってきたのだ。
他人から見れば馬鹿馬鹿しく見えるだろう。
しかし・・・彼はそれだけのために自分の役目を成し遂げたのだ。
自分の人生を削ってまで私と一緒に戦ってくれたのだ。

優には感謝している。
ココを助けてくれたから。
しかし・・・それだけなのか?
俺がLeMuから生還した時、彼女は両目に涙を溜めながら喜んでくれた。
俺も優に会えた時は本当に嬉しかった。
本当のことを言うと・・・ココと再会できた時よりも嬉しかったのだ。
優ともう一度会えたことが、とても嬉しかったんだ。

涼権がLeMuに入る前に、私は彼と約束をしていた。
「絶対に死なないでね」
何故こんな約束をしたのかわからない。
自然と口から出てきたのだ。
6日後、約束どおり彼は戻ってきてくれた。
私はそれがとても嬉しかった。
思わず抱きついてしまった。
彼の胸元で泣いてしまった。
だって、倉成みたいに帰ってこれなくなるかもしれなかったから・・・
また、一人になるのが怖かったから・・・

考えてみれば・・・LeMuのなかでは、ココとBWと、優のことしか考えてなかった。
ココが本当に生き返るのかが心配になり、愚痴を漏らす。
その愚痴は必ず優のことに繋がっていき、最終的には、優のことしか考えていなかった。
俺にとって、優はどういう存在なんだ。

彼とは何度も身体を重ねた。
愛の無い行為。
ただ、お互いを慰めるためだけの行為。
本当にそうだろうか?
私は彼に頼って、彼は私を頼ってくれた。
最初は愛の無かった行為。
しかし・・・それに愛を感じ始めたのはいつの日だっただろうか・・・?
倉成より、彼のほうを考えることが多くなったのはいつの日だっただろうか?

愛は無い。
お互いに好きな人がいるから。
だったら、何でそんなことをしたのか?
慰めあうだけ。傷を舐めあうためだけだ。
本当にそうなのか?
ココのことは好きだった。
彼女の笑顔を見るためだけにがんばってきた。
しかし、本当に俺は彼女を愛していたのか?
ただ好きだっただけじゃないのか?
知らず知らずに優のことを想い始めたのはいつの日だったのか?
そのことに気づいたのはいつの日だっただろうか?

二人はお互いを盗み見するかのように見つめていた。
チラ、チラ、っと相手の顔を見つめては、視線を違う方向にやる。

何度かそんなことを続けているうちに、二人の視線が交わる。
慌てて目をそらし、少し顔を赤く染める。
直視できないから、悟られたくないから、横目で相手を見ながら軽く一言。
「な、なによ・・・」
「そ、そっちこそ・・・」
少し沈黙ができてから、また沈黙。
「言いたいことがあるなら言えよ!」
「べ、別にないわよ」
「そうか・・・」
「あ、やっぱりある!ううん・・・ない・・・」
「どっちだよ!」
「あんたこそどうなのよ?さっきから人のことをじろじろ見つめちゃてさ。なに?私の気があるの?」
少しニタつきながら相手をからかう。
彼女が彼と会話を交わすときは、大体こんな光景ができる。
「ば、馬鹿!そんなわけないだろう!」
真っ赤に染まる涼権の顔。図星なのは一目瞭然だ。
「ふ〜ん・・・ま、いっか。だったら私から話すわね?」
「どうぞ・・・」
涼権は、素っ気のない返事をした。

もしかしたら断れるかもしれない。
倉成の時は、それが怖くて告白できなかった。
自分がもうすぐ死んでしまうこともあった。
でも、断られることのほうが大きかった。
だからつぐみに負けた。
今度こそは後悔したくない。
玉砕の覚悟はできている。

私は、彼の近くにより彼の胸元に飛び込んだ。
「ゆ、優?」
彼の少し慌てた行動が可愛い。
根は17年前と変わらないのだ。
そう思うと、普段の彼が強がっているように思えて、可愛い感じがする。
私は彼の胸元に顔を埋めながら、彼に聞いてみた。

「ねぇ・・・私たち・・・付き合ってみない・・・?」

涼権は、黙りながら私を抱きしめてくれた。


ちょっとした疑問から気づいた自分の本当の気持ち。
優が涼権を
涼権が優を
愛してることに気づいた。

過去に好きだった人の代わりなんかじゃない。
純粋に彼らは今を生き、今の恋をしているのだ。
17年間気づかなかった恋。
17年間成長を止めていた恋。
その恋は、今成長を始めた。

二人が真っ赤なバージンロードを踏み始めたのはそれから9ヵ月後、二人が出会った日。
よく晴れた空の下で、7人の仲間達に祝福されながら、彼らは誓いのキスを交わした。
二人の幸せは、ここから始まる。

〜Fin〜



あとがき

どもッす!BBです!
退院ばんざ〜い!

このSSは本当はBB的SS第三弾に当たります。
第二段は・・・?後々のお楽しみ!
優春のSSを書いていると、スランプ発生!という緊急事態に見舞われ、息抜き代わりにこのSSを書いてみたら、はまっちゃって、はまっちゃって・・・

基、このSSは優春×涼権です。
二人の心境ばかりに重点を置いていたら、描写のことを何も考えていませんでした。未熟者だね〜(笑)
中盤の二人が見詰め合うシーンが少し無理やりに見えますね?
進行具合も、ちと悪い。
個人的には武×優春の組み合わせが見たいですが、なんとなくこっちの組み合わせを作ってみました。
こんな組み合わせも悪くないっしょ?




2002


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