B−T−B HELLCHILD作 |
PM4:13 「さて、と・・・・・・・・・・・・・・装備はこれでバッチリだな?」 5人とも、戦闘準備を済ませていた。本当に戦争に行くのかと思うほどの格好だ。 「会長、船着場に不審な船が!」 「よぉし、来やがったか・・・・・・・・・・・・・・・・・・4人共、行くぜ!!!」 「「「「オオオオーーーーーーーーーー!!!!」」」」 「あの・・・・・・・・・・・・・・八神さん。」 「あん?」 優春がトールの袖を引っ張っている。顔を俯けていて、表情がよくわからない。 「私がもっとしっかりしてれば・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・・・」 少しだけ目が潤んでいた。少し責任を感じてしまっているのだろう。 優春の頭に手を置くトール。そして、こう言った。 「お前が責任感じることはねーよ。いつバレるか解らなかったしな。それに、こうなっちまった以上は仕方ねーし。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。」 「謝んなっての。じゃあ、行ってくるからよ。」 「はい・・・・・・・・・・・・・・・あ、あの、帰ってきて下さいね。」 「おお、もちろんだ。じゃあな!」 そのセリフを最後に、5人は疾風と化した。 ドドドドドド・・・・・・・・・・・・!!! ひたすらマシンガンを乱射しまくるヒサシ。いつものボーっとした無表情が、今は怖く見える。 二足歩行ではあるものの、もはや殆どヒトの面影をとどめておらず、全身の赤肌が剥き出しになった生命体。『アラベスク』だ。 通常、ラビットとアラベスクはそれぞれチームを組んで行動する。彼等のコンビネーションは絶大だからだ。 アラベスクの場合は大人数でチームを組む。そのため、一瞬で大勢の敵を殲滅できる武器が必要となる。それがマシンガンだ。 アラベスクは主にこの船着場から発生していた。インゼル・ヌルには5つの船着場があり、それぞれから違った生物兵器が放たれている。こちらは1人ずつに別れて、敵を叩くという戦法に出た。 (ちっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫かよ、弾数) 割と早く弾が減っていく。敵を全て倒す前に弾切れにならないといいが。 だが、敵も物凄い速さで倒れていく。ここから前に進んでいき、最後は敵の元である船を小型爆弾で爆破する、という寸断だった。しかし、ジリジリとしか進まない。 (他の4人は大丈夫か・・・・・・・・・・・・・・・・・・?) ユータはひたすらハンドガンを連射していた。リズミカルに敵が倒れていく。 「ちっ、面倒くさ・・・・・・・・・・・・」 自分の能力を使えばこんな手間をかけずに済むのだが、それでは我を忘れて暴れ回ってしまう危険性がある。 結局のところ、地道に敵を倒していくしかなかった。ラビットは割と少数でグループを組むので、ハンドガンでも片付けやすかったが。 「シャアァ〜ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・」 後ろから、ゆっくりとラビットの集団が迫ってくる。ユータが気付いている様子はない。 「シャアッ!!」 隙を見てラビットが飛び掛かり、カギ爪でユータを捕らえた―――――――――と思いきや 「ウザいよ。」 ドン、ドン、ドン、ドン、ドン!! 背後を振り返り、的確に頭を撃ち抜く。彼に死角はなかった。 シュー、コー・・・・・シュー、コー・・・・・ 奇妙な呼吸音が聞こえてくる。『マンアフター』だ。 外見は人の形をしている。だが、その姿は3m近くに膨れ上がり、アラベスクと同じく赤肌が剥き出しになっている。その上、口や右腕、両目、両脚などに機械が取り付けられている。 彼等はより実戦用に作られている。身体能力は生物兵器の中でもトップのはずだ。 高温に対する耐性や、寒冷気候に対する適応もあり、正に『兵器』と呼ぶに相応しかった。 こいつらを殺すには、相当な威力の武器が必要となる。ガトリングガンが必要ということだ。 反動の強いガトリングガンを扱えるのは、トールしかいなかった。 ドドドドドド・・・・・・・・・・・!!! 一気にゴリ押しで攻めていくトール。両手にガトリングガンを持って戦っている。 「頼むから、弾切れにはならないでくれよ・・・・・・・・・・・・・・」 弾の無くなる速度はマシンガンよりも速い。持ってあと30分くらいだろう。 しかし、敵を倒す手だてが無くなるわけではなかった。いざというときは素手で戦えばいいのだ。 「ったく、さっさと倒れてくれよ・・・・・・・・・・・・!」 ドオォン!! グレネードランチャーが炸裂する。敵は抉れたような傷を負い、回復することなく倒れる。 マンアフターとアラベスクの部隊を、ヒデは相手にしていた。彼等全員をグレネードランチャーで倒すのは弾の無駄だということで、マンアフターをグレネードランチャーで、アラベスクをハンドガンで倒すという、少々器用な真似をしなければならなくなった。 前線に攻めてきたアラベスクを片手のハンドガンで倒し、その次に攻めてくるマンアフターを、もう片手のグレネードランチャーで片付ける。かなり面倒くさかった。 「っざけやがって・・・・・・・・・・・・・・まだ死ねないんだよ、オレはっ!」 まだ精一杯生き抜いていない。これから人生始まるってのに、殺されてたまるか。 かつてない執念が心の中で燃えていた。それは、今までヒデが抱いたことのない感情だった。 ドゥン!! 敵の上半身が吹っ飛ぶ。同時に、周囲の敵にもダメージが及ぶ。 3種類の敵の混成部隊がアツシの相手だ。全員をまとめて片付けられる武器が欲しいということで、ショットガンを手にした。 ラビットとアラベスクはこれで十分だ。一発で数体を倒せる。マンアフターですら、これを喰らえば上半身が吹っ飛ぶ。 (悪く思うんじゃねえぞ、『元』人間サマよお) 罪悪感を微塵も感じないわけではなかった。彼等に罪はない。だが、生かされていたところで、どうしようもないだろう。 それを感じているのは、アツシだけではないはずだ。罪悪感に悩まされたことはないが、知らないうちに意識していることはあるはずだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だからこそ、オレ達は生き抜くんだ。奴らの分までよお!」 PM8:42 「全艦爆破完了、か?」 ついさっき、他の4人と連絡を取った。みんな敵の船を爆破したらしい。 トールは肩を降ろした。今回は特に負傷もなく、敵を全滅させることが出来た。 敵を全員撃退したら、優春のところに集合する予定になっていた。トールは集合場所へと急いだ。 「しかし、特に負傷者が出なかったってのは結構幸運だよな。」 「ああ。傷一つ負わずに終われたってのは、結構奇跡に近いんじゃないか?」 「まあ、俺達の『経験』ってものが活かされてきたんじゃないか?結構あいつらとも戦ってきたし。」 「あっくんも、今回は無闇に突っ走らなかったね。銃で戦ってたからかもしれないけど。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 夕食に、彼等はインゼル・ヌルにある焼き肉屋で肉を焼いていた。命懸けの闘いをした後で・・・・・・・・・恐ろしく図太い神経である。 「あーっ、タン塩が焦げるぅぅ!!は、早く取らないと・・・・・・・・・・!!」 「田中先生・・・・・・・・・少し落ち着いて・・・・・・・・・」 一番でかいテーブルを占拠して、B−T−Bの5人と優春と空でグループを組んで飯を食っていた。 他のスタッフ達は別のテーブルで食っている。しかし、肉の50%はB−T−Bの権限で持っていかれてしまった。 本当に食う量が半端ではないのだ。ついさっき、ご飯も山盛り7杯目に突入した。 やがて宴が進むうち、7人は酒に手を出し始めた。みんな物凄い勢いで呑んでいく。 特にトールが凄かった。JINROの瓶を両手に持ち、口の真上で逆さまに向ける。 「ぱらりらぱらりら〜、うおりゃあああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 逆にヒデは速攻でダウンした。焼酎4杯目辺りで、へべれけになってしまった。 「へげ・・・・・・・・・へげ・・・・・・・・・・・ふみゃあああ〜〜・・・・・・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・約2時間後。 既にトールとヒサシ以外は全員ダウンしていた。トールの回りに転がっているビール瓶と焼酎とJINROの瓶は、合計で50本ほどに達していた。マジでウワバミのような奴らだ。 「んだよ、情けねえなあ。」 「うう・・・・・・・・・・・・・八神さん達が強すぎるんです・・・・・・・・・・・・」 優春がフラフラになりながら立ち上がった。彼女も相当の量を呑んだはずだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ヒサシは酔った様子すら見せていない。どんなに呑んでも、いつもどおりの無表情だ。 「ったく・・・・・・・・・・・・・・おい、ホテルに戻るぞ!!」 全員を叩き起こし、彼等の泊まるホテルまで引きずっていった。 5月4日 AM10:14 「んあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 アツシはホテルのベッドで目を覚ました。確か、重い身体を引きずりながらホテルに戻ったのだった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・あ、頭痛え・・・・・・・・・・・・・・・・」 我ながら凄まじい量を飲んだものだ。トールに対抗するということがどれだけ恐ろしいことか、身に染みて分かったような気もする。 「うう・・・・・・・・・・・現場行かなきゃ・・・・・・・・・・・・・」 みんな青い顔をしていた。確実に二日酔いだ。優春と空ですら、地べたに座ってぐったりとしている。 「あ・・・・・・・・・・・おはよお・・・・・・・・・」 他の4人を見かけたので、声を掛けた。今やB−T−Bは、元気な奴とそうでない奴に別れていた。 「あ・・・・・・・・・・・・あっくん。」 「あひゃゃゃぁ〜・・・・・・・・・・・海とお空が真っ逆様〜・・・・・・・・・・」 やはりヒデとユータは真っ青だった。ヒデは早めにリタイヤしたから良いものの、ユータはアニイに対抗意識を燃やして呑みまくったため、足元が少しおぼつかなかった。 「よぉ、アツシ。」 「・・・・・・・・・・・・・おはよう。」 トールはやはり元気だ。昨日の夜は少し酔っていたが、今はそんな様子は微塵も見せない。ヒサシが一番恐ろしかった。どんなに呑んでも酔った様子すら見せない。彼は結構酒好きなタイプだが、いくら呑んでも酔えないと言うのはどんな気分なのだろう。 ピー、ピー、ピー! 全員が音のした方向を振り向く。B−T−B専用の通信機からだ。 また彼等からだろうか。だが、もう既に敵は撃退した。こちらには無敵の連中がついているのだと、みんな安心していた。 トールが通信機を手に取る。 『あ、八神さんですか〜。やりますね〜、まさかあれだけの数の兵器を倒すなんて〜。』 「これでわかったか?降伏するのはテメェらの方だ。」 『ふふ・・・・・・・・・・・・こうなったら、こっちも奥の手を使いますよ〜。』 「奥の手?アメリカの時みたく、絨毯爆撃でもするってのかよ?この日本でか?」 『私もそこまでバカじゃありませんよ〜。私たち第187番部隊が、直接あなた達に制裁を加えに行きます〜。』 「何・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 なるべくライプリヒも、事は極秘で済ませたいはずだ。暗殺などもこなす彼等なら、派手な行動は起こさないだろう。 『カリヤ、アルバート、私の3人で行きます〜。本当に殺されたくないなら、マジで降伏することを強く勧めますよ〜?』 「ごめんだな。この前も言ったろうが。テメェらみたいな外道に降伏するくらいなら、舌噛み切ってやるとよ。」 『・・・・・・・・・・・あんまり侮らないで下さいよ〜、私たちを〜・・・・・・・・・・・・』 小さなモニター越しではあったが、そこからは殺気が放たれていた。 「来るなら来いや。返り討ちにしてくれる。」 強く言い放った。その言葉は、まるで決意するかのように清々しい響きを帯びていた。 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・明日の朝には、そちらに向かいます〜。』 ―――――――――――――――――プチン。 通信が途絶えた。 PM6:54 「ある意味、核弾頭3発ブッ込まれるより厄介な奴らだぜ、あいつらはよお。」 彼等の実力は知らなかったが、恐らく相当の力を秘めているはずだ。彼等と顔を合わせたトールなら知っている。 「へっ、笑わせんな。クズが集団で来たところで、怖くも何ともねえ。」 ヒデは全く意に介さなかった。前回の敵の量が異常だったため、たった3人が相手の今回は楽勝だと思っているようだった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に、誰が来ようと同じだろ?」 ヒサシも特に気にしていなさそうだった。 「この5人で力を合わせりゃ無敵なんだし、どうって事はないさ。」 ユータも自信がありそうだった。確かに5人で戦えば、確実に勝てるだろう。 「しかし、なんで4人一緒に攻めてこないんだ?たった3人でオレらを相手にするなんて・・・・・・・・・」 「そりゃ疑問だな。確かに俺達は、ライプリヒに警戒されているはずだ。」 恐らくこの5人は、ライプリヒのブラックリストに確実に名を連ねている。 そんな奴らを相手に、たった3人というのは少し舐められてる感じがするのは気のせいか? 「・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、あえてハンデ付きで戦うってんなら、こっちもハンデ付けてやろーじゃん。」 「何?」 アツシは立ち上がった。そしてトールの方を向いて、こう言った。 「オレ達も奴らを3人で迎え撃とうじゃねえの。3×3のタイマン勝負だ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「いいじゃん、どうせたった3人だ。オレ達全員で掛かるってのも、なんか卑怯な話だろ?」 「・・・・・・・・・・・・まあ、確かに。」 3対5では、確かにこちらに分が有りすぎる。しかし、これは武道の形式張った闘いではないのだ。 「けどよお、別にこれは武道の試合じゃ・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・いつだったか、あんたオレに訊いたよな。なぜあんたに協力するのかって。」 「え?」 トールの目を見つめながら、アツシは言った。 「この闘いが終われば、オレは自分の意志で自らの道を切り開ける・・・・・・・・オレはそう信じて戦ってきた。」 「ああ。だからこそ5人で協力して、さっさと闘いを終わらせ・・・・・・」 「けど今のオレじゃ、まだ駄目だ。オレはあんたに道を用意されていたんだ。今の今までな。」 考えてみればそうだった。今まで本当に自分一人で道を切り開いていったかと言えば、そうでもなかった。 トールと行動を共にするようになったのも、結局は彼が話を持ちかけてきたからだ。 恩返しをしなければならない身ではあったし、ライプリヒがある限り、真の自由は得られない。そういう理由もあり、彼等はトールと行動を共にした。というより、そうするしかなかったのだ。 常に5人で、共に行動していた。言うなればそれは、彼等がトールに依存していたとも取れる。 別にトール自身は、彼等を保護している気なんて更々ないだろう。しかし、彼等は心の何処かで、トールに頼っていたところもあるのだ。 「オレ一人の力で、この闘いに勝つ。そうじゃなきゃダメな気がするんだ。」 一人の力で道を切り開いてこそ、その道は自分のものとなる。それが彼の信条だった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オレもそうだ。」 突然、ヒデが口を開いた。他の4人が、彼の方に向き直る。 「オレもよ、アニイみたく生き抜いてみたいって思ったよ。けど、今のままじゃそれは無理なんだ。 あっくんと同じく、オレもアニイに道を用意させられてたんだ。けどよ、この闘いが終わったら、もうオレ達は自分自身の力で、生きる道を探さなくちゃいけない。だから、オレも奴らと戦いたい。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・それはオレもだ。」 今度はヒサシが口を開いた。 「・・・・・・・・・・・・・・・オレも探してみたい。自分の道を。」 注文通りのものを作っていればよかった。 空の体を作ってくれと頼まれたときも、テラバイドディスクの情報を人間のDNAデータに翻訳した後、キュレイウイルスを使って空の体を作り上げた。 キュレイのウイルスベクターを作るのも簡単だった。塩基配列を少しイジれば、ウイルスの性質なんて簡単に変わってしまう。 この闘いが終わったら、自分なりに学問を極めてみたかった。けど、今のヒサシじゃそれは無理だと解っていた。 「頼むよ、アニイ・・・・・・・・・・・・・オレ達は、自分で道を切り開きたいんだ。」 アツシの双眸。深淵の闇とも取れる瞳が、爛々と輝いている。 「・・・・・・・・・・・・・・・オレ達を信じてくれ!」 アツシは叫んだ。信じて欲しかった。今なら、きっと戦い抜ける。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった。奴ら3人は、お前達に任せよう。」 トールも承諾した。彼等を信頼する気になったようだ。 「気をつけろよ・・・・・・・・・・・・・奴らはマジで手強いぞ。」 「たかがヘタレ剣術使いとサイボーグデカブツとロリガキと白髪ヤロー程度にビビってちゃ、B−T−Bは務まらねえって。」 「へっ・・・・・・・・・・・・・・・アツシらしいな。」 自由・自信・自我。それが彼等の生きる糧となっていく。 その3つが合わさって、彼等は強くなっていく。強く生き抜いていく。 彼等の本当の歩みは、ここから始まるのだ―――――――――――――――――――――。 |
あとがき すんません、あと少しです!!もうちょっとで彼等のバトルシーンが見られます。 いいところで終わっちまうよなぁ、と我ながら思います。本当に、書くペースが鈍いんですよね、オレって。 彼等のバトルは凄いですよ。このSSの本当の醍醐味は、バトルシーンにあると言っても過言じゃないので。 あー、さっさと書きてえっ!! BGM『蝶々』BUCK−TICK |
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