B−T−B
                             HELLCHILD作

type=6


ズドォン!!

アルバートの巨体が、地面を破壊した。
「どわっ!!」
間一髪で避けるアツシ。あと0,001秒ほど反応が遅かったら、下敷きとなっていただろう。
(こ・・・・こんな巨体で、ここまで身軽に動き回れるなんて・・・・・・・)
反則であった。200kg以上ありそうな巨体が、いきなりジャンプして襲いかかってくるのだ。
「はあっ!!」
「うぉ!?」
鋼鉄の脚が、間髪入れずにローキックを放ってくる。何とか後ろに下がって回避した。
「クソがあ!!」
キックを避けた瞬間、アツシは一気に前へ出た。
「どりゃどりゃどりゃあ!!」
秒間約10発の拳を放った。少し出っ張った腹が、拳の形に凹んでいく。
が、アルバートは蚊に刺されたほどの衝撃も感じていないようだ。
「フッ・・・・・・この程度か。」
「な・・・・・・・・・」

ゴッ!!

アルバートのボディーブローが、アツシの腹部にヒットした。
アツシは思いっきり吹っ飛ばされた。豪速球の如きスピードだ。
20mほど後ろにある木に直撃した。恐らくトラックにでも跳ねられない限り、ここまで吹っ飛ばされることはないだろう。
「ぐっ・・・・・・」
アツシが衝撃に俯いている隙に、アルバートはブローニングM2重機関銃を構えていた。
「・・・・・・死ね、B−T−B。」
「げっ・・・・・・ヤベェ!!」

ドガガガガガガ・・・・・・・・!!!

無数の弾丸が地面を抉る。猛スピードで駆け出すアツシ。
「・・・・っきしょお!」
苦肉の策で、木の茂みの中に隠れるアツシ。だが・・・・
「・・・・無駄だ。」
また銃撃が襲ってきた。しかも、アツシの居るところを正確に捉えている。
「な・・・・・何故だ!? 何故暗闇の中のオレの姿が・・・・・・」
「俺の両眼は人口眼球だ。貴様らと同じインフラヴィジョンを搭載した、な。」
弾は途切れることなく襲ってくる。暗闇に隠れても無駄。
このまま猛スピードで走っていては、その内スタミナが切れてしまう。その前に、アツシは賭けに出た。
猛スピードでアルバートに突進するアツシ。
「ぬぅおりゃああああああああ!!!」
ジャンプして、胸部にタックルを喰らわした。アルバートの体がバランスを崩す。
「ぬぅ・・・・・!!」

ドズゥン!

そのままアルバートは倒れた。その隙に、アツシはマウントポジションを取った。
「いくら肉体改造狂でも、頭は改造できねーだろ。」
「く・・・・」
「・・・・・・これでキメるぞ。」
そして、アツシの両腕が見えなくなった。残像が微かに見えるだけだ。
凄まじい勢いでパンチを決めていくアツシ。アルバートはやられているだけだ。
が、いきなりアルバートの手がアツシの脚を掴んだ。
「な・・・・・・!?」
「フッ・・・・・・ぬかったな。常人だったら腕も封じられているだろうが、俺の体の体積は別物だ。」
確かにそうだ。普通は胸の辺りに乗って攻撃する体勢だが、慎重が3m以上あるアルバートの場合、顔にダメージを与えようとすると、鎖骨の辺りに乗る体勢になってしまう。衝撃に耐えられさえすれば、反撃も可能だろう。
アルバートは、そのまま立ち上がった。相当な体重のはずなのに、簡単に立ち上がったのだ。
「な・・・・・・何でそんな簡単に立ち上がれんだ!?」
「対B−T−B用に、特殊チューニングにしておいた。出力係数を普段の5倍以上に設定し、神経の伝達速度も850mに強化した。そしてその負荷に耐えられるよう、体の改造パーツ全体を取り替えたのだ。衝撃吸収板も最新型になり、従来の物の4倍の衝撃に耐えられるようになった。これなら流石のB−T−Bも歯が立たないだろう? さあ・・・・・・ゆっくりと痛ぶってやる。」
「ぐっ・・・・・」
「はああっ!!!」

バシィン!

アツシの体を思いっきり地面に叩きつけた。地面に当たり、アツシの体が跳ねる。
「ぐはっ!」
血を吐くアツシ。相当な衝撃のはずだ。
「死ねェ!」
すぐさまアルバートのキックを喰らった。鳩尾にモロヒットだろう。
「があっ!」
「粉砕してくれるわぁ!!」
アルバートが腕を振り上げた。恐らく、渾身のストレートを放ってくる。
ダメージを喰らいすぎて、アツシは上手く動けない。仕方がなく、全力でガードしようとしたが・・・・
「フンッ!!」

ボゴォ!!

「ぐあぁぁっ!!」
ガードごと吹っ飛ばされた。更に、ガードを突き抜けてダメージを顔面に喰らった。
アツシの体が、また後ろの木に激突した。今度は17mほど吹っ飛んだろう。

バキッ!

あまりの衝撃に、衝突した木が折れた。ここまで来ると、前面だけでなく背面からのダメージも相当な物だ。
「ぐっふ・・・・・・ぅ・・・・・・お・・・・・・」
「・・・・・意外と脆いものだな、B−T−Bよ。」
「ぐ・・・・・ま・・・まだ、終わりじゃ・・・ねぇ・・・・・・・」
「終わらせてやるさ。俺の最終兵器でな。」
アルバートが、銃を取り付けていない方の掌をアツシに向けた。すると・・・・

ジジ・・・バジッ、ジジ・・・・・・

掌が帯電している。やがてそれが集中していき、一つの巨大な光球になった。
(ヤ、ヤベぇ・・・・・・・!!)
危険を感じ取ったが、あまりのダメージで思うように身動きがとれない。
(く、くっそー!! 動けよ、オレの体だろうが!!)
「終わりだ・・・・・・・さらば、アツシ・サクライ。」
その光球が、アツシ目掛けて放たれた―――――――――――――


ズドォォン!!


大爆発が起こった。ナパーム弾の数倍程の威力だ。
「・・・・・・・・・よく避けたな。」
「ヘッ・・・・オレの反射神経とスピードを舐めないでくんない?」
そう言いつつも、殆ど余裕がないのも事実だった。体力はアルバートの攻撃でかなり削られてしまった。
「それにしても・・・・・・・・大した武器じゃん。」
「新型兵器“プラズマクラッシャー”だ。これも対B−T−B用に製造された物だ。いくらB−T−Bといえども、コイツを喰らえば肉片も残らない・・・・・・・さあ、地獄へ堕ちろ。」
そう言って、また掌を向けてきた。チャージの速度がさっきよりも速い。
「・・・・っきしょぉ!!」
「死ねぇ!!」
立て続けにプラズマを放ってくるアルバート。何とか猛スピードで回避するアツシ。
だが、段々とアツシの息が切れてきた。もうそろそろスタミナ切れだ。
(ぐ・・・・・・んのやろぉ・・・・・・・)
段々とアツシの目が霞んでいく。視線の焦点も定まらなくなっている。
その隙を突き、アルバートが突進してきた。肩をこちらに向けている。
「粉々になれ!!」
へヴィ級ボクサー何十人分の体重と、サーキットカーの如きスピード。常人なら肉片に化けかねない。
「があっ!」
全力のショルダータックルを喰らった。最大速度の大型トラックでも潰れてしまうだろう。

バキバキバキ・・・・・!!

何本もの木を突き抜けて、6本目あたりで止まった。
もう既にアツシの体は動かなくなっていた。限界が来ている。
「・・・・・・・本当の力は発揮しないままか?」
「本当の・・・・・力・・・・・・・?」
「とぼけるな。貴様らB−T−Bにはそれぞれ隠された超能力があると聞く。その力を最大限に発揮し、かつて米軍の一個師団を壊滅させたのだろう? それだけの力を発揮しないまま、なぶり殺されて終わりか?」
「・・・・・・・あんた如きに使うまでもねえよ。」
「ほう・・・・・・・・・ならば、死ね。」
へヴィ級なクセに、ライト級のスピードでラッシュをかますアルバート。アツシも必死で回避する。
「はああ・・・・・・・・」
一旦距離を置き、掌を帯電させるアルバート。今がチャンスだとアツシは睨んだ。
「ぐぅおりゃあああ・・・・・・!!!」
何と、折れた木を持ち上げた。そして更に木を、やおらアルバートの方にブン投げた。
「ふん、この程度など!」
だが、その木もブローニングで粉々にされてしまう。しかし次の瞬間、アツシがアルバートの目の前に現れた。
「な・・・・・・」
「アニイ直伝粉砕絶叫滅殺最強正拳突きぃ!!」
アルバートの鼻面に、アツシの拳がめり込んだ。が、それほど堪えてなさそうだ。
「げっ・・・・・・・・!!」
「・・・・結構痛かったぞ。お返しだ。」

ゴン!!

何とチョーパンでアツシを叩き落とした。また地面に叩きつけられるアツシ。
「ぐはあ・・・・・・・!」
もうそろそろ体力に限界が近いようだ。息切れが激しい。
アルバートの方は、エネルギーチャージが完了したようだ。これまでにない大きさの光球が出来上がった。
「さらば、B−T−Bよ!!」



ズドォォン!!



大量の火薬を積んだ爆撃機が墜落したら、恐らくこの位の威力だろう。
煙に包まれて見えないが、恐らくアツシが粉々に粉砕されたはずだ。
「・・・・・・・・意外とあっけなかったな。」
・・・・・・が、段々と煙が晴れてくると、アツシの姿が確認できた。しっかりと立っている。
「な・・・・・・・・・あれを喰らって生きているだと!?」
生きているだけではない。しっかりと大地を踏みしめて立つその姿は、凄まじい覇気を放っていた。
アツシの体は、黒い光に包まれていた。体中が不気味に輝いているかのようだ。
「・・・・・・・・あんたを少々見くびっていたようだ。」
口調はいつもと変わらないはずなのに、どこか言い知れぬ殺気を帯びている。
「あんまり‘こいつ’を使っちまうと、みんな一瞬で死んじまうからな。だが、あんたのタフさだったら大丈夫だろう・・・・・・・・・ちょいとマジモードで行くぜ、覚悟しとけよ。」
そういうと、アツシは右手を天にかざした。
「汝、今こそ我が手に降り立て・・・・・我が守護神(ガーディアン)よ。」

――――――――――キン。

「うおおっ!?」
あまりの眩しさに、アルバートは顔を覆った。
そして、段々と光が収まってきた。アルバートはゆっくりと目を開けた。
(・・・・女・・・・・? ・・・・・・あの黒い双翼は・・・・・・・・)
そう、そこには美しい女が居た。短い黒髪をたなびかせ、一糸纏わぬ肌を黒い翼で覆っている。
「・・・・・・・・・汝、変われ。」
その言葉に反応したかのように、黒翼の女は形を変えていった。体中が融解し、やがて剣の形を形造っていく。
「・・・・・・サシの勝負で‘これ’を使わせた奴は、あんたが初めてだ。誉めてやるよ。」
その手にはアツシの身長と同じ位の、ツヴァイハンダーの如き大剣が握られていた。漆黒の刀身がメタリックな鈍い輝きを放ち、柄の部分が女性の裸体を模している。ちょうど腹の部分をアツシの手は握っていた。
「これは魔剣『タナトス』・・・・・・魔力を持った剣だ。こいつが出た以上、あんたに勝ち目は無いと思った方が良いぜ?」
「ふん・・・・・・それはどうかな!?」
掌をアツシに向けるアルバート。もう一回プラズマを放つ気だ。
「今度こそ死ねぇ!!」
さっきと同等の大きさのプラズマだ。だが、アツシは一歩もその場を動かない。

ズドォォン!!

今度こそやられたか、そう思いきや・・・・・・・・
「・・・・・・無駄だ。」
「何!?」
アツシの半径1m以内は、紅いドーム状のバリアに包まれている。
オーロラの如く輝くそれは、正面に向けた剣の切っ先から放たれているようだ。
「物理的攻撃じゃあ“タナトスの障壁”は破れないぜ。」
「くうぅっ・・・・・・おのれぇ!!」
アルバートが飛び掛かってくる。凄いスピードだ。
アツシは両手で剣を握りしめ、そして前へ踏み出した―――――――――――

ガギィン!!

直下降に剣を振り下ろした。二人は交錯し、そして・・・・・・
「な・・・・・・馬鹿な!! お、俺のブローニングが!!?」
ブローニングM2重機関銃を切り裂いていた。凄まじい切れ味らしい。
「そんなのは只の物理攻撃だ。こんな事だって可能だぜ?」
突然、剣が黒く発光しだした。まるで闇そのものを纏っているかのようだ。
「うおりゃあ!!!」


ドゴォン!!


「な・・・・・・・・・・!?」
剣がアルバートの腹部を切り裂いた。と同時に、真っ黒な爆炎が巻き起こった。
爆炎には衝撃吸収板も耐えられないようだ。機械組織が剥き出しになる。
「“タナトス”の魔力・・・・・・・・そいつを爆炎に昇華した。」
何だかFF化してきた。しかし、強いことに変わりはない。
圧倒的物量攻撃がメインのアルバートに、もはや勝ち目はないのか。
「諦めな。もうあんたに勝ち目はない・・・・・・・さっきの攻撃に反応できない時点で、オレの相手は無理だ。」
「ぐぅ・・・・・・・・・・・・・・!!!」
唇を噛み締めるアルバート。そして、突然心臓の辺りを掻きむしった。
やがて心臓の部分の装甲を突き破り、中にある回路を弄り始めた。
「な・・・・・・・・・!?」
その異常な行動に、目を見張るアツシ。
「フザケルなあああぁぁぁぁ―――――――――――――――――!!!!!」
見る見るうちにアルバートの顔が紅潮していく。機械の両腕と両脚が突然スチームを発した。
「な・・・・・何だ?」
「ぐはははは・・・・・出力係数を17倍まで引き上げた・・・・・これで貴様にも勝ち目は無い!!!」
さっき弄っていたのは、出力回路だったらしい。
「フヌゥおあああ――――――!!!」
突然飛び掛かってきた。さっきよりも数段速い。
「なっ・・・・・・」
「ガアアア―――――――――――っ!!」
物凄いスピードでラッシュを放つアルバート。腕を振るだけで風圧が起こる。が、それだけでは只の扇風機だ。
「クソがぁ!!」
一瞬の内に3発の斬撃を放つアツシ。3つの爆炎が起こる。しかし、アルバートは堪えた様子を見せない。
「ウゥオオオオ―――――――――ッ!!!」
全く怯まず襲いかかってくる。しかし、見た限りでは理性をほぼ失っている。

ボンッ!

突然、アルバートの肩が破裂した。それと同時に、体の至るところがスパークしかけている。
(なっ・・・・・・・野郎、まさか・・・・・・・)
「死ねええ――――――――――っ!!」
フルパワーのパンチが地面に炸裂した。その力は、小型隕石並の威力だ。地面に大穴が空く。
パンチをかました方の手が、またスパークした。グロテスクな人工筋肉が剥き出しになる。
「もうよせ! 体が負荷に耐えられなくなって来てんじゃねーか!!」
そう、アルバートの体には負荷が大きすぎるのだ。しかも只でさえアツシにダメージを加えられた体だ。傷物のジェッティングのバイクにニトロを積むようなものである。
しかし、アツシの訴えは届かなかった。完璧に頭が逝かれてしまっているのだ。
「殺ス!!」
掌をアツシに向けた。プラズマを放つ気だ。
「必ず殺ス!!!」

ズドオオオン!!!

さっきまでの数倍の威力だ。しかも連続で放ってくる。殆ど絨毯爆撃に近い。
これだけの攻撃を放って、アルバートの体に負荷が掛からないわけがない。既に体中がスパークを起こしていた。
「ったく・・・・・・ブタちゃんがよぉ。」
アツシは剣を握りしめ、前へと踏み出した―――――――――。
「殺ス、殺ス、殺ス、殺ス、殺ス、殺ス、殺ス、殺ス!!」
もはや彼を止めるには、倒すしか無い。彼は狂気に満ちた眼をしていた。
「やめろって・・・・・・・・・・・・・・・言ってんだろーが!!!!」



ドゴオオオオオン!!!!



0,03秒の内に、17発の斬撃を放った。両手脚を完全に破壊し、胴体も粉々に粉砕し、出力回路も破壊した。
アツシの足元には、アルバートの頭が転がっていた。首だけになっても、まだ生きている。
「まだ・・・・・・終われない・・・・・・勝つのは・・・・・・俺だ・・・・・・」
「哀れな奴だ・・・・・・・・・そんな姿になってまで、強くなりたいのか?」
「最強は・・・・・・俺だ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・いいだろう、トドメを刺してやるよ。」








あとがき

プラズマって、改造教師オオ●キかい。イオンVSトール戦の予告のつもりかよ、俺。
というわけで、当初は予定の無かったイオンが参戦いたします。何か途中で出そうと思ったら、どんどん構想が膨らんでいっちゃってw。
尚、タナトスについては謎が多いですが、この次の作品辺りで説明が出てくるかと。
ちなみに短い黒髪の女というのは、win版想君のパッケージの彼女というのはナイソ(ぇ
文華VSヒサシ戦も、かなり凄いことになっておりますので、ご期待下さい。

BGM:『タナトス』BUCK−TICK


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