EVER17 〜BEFORE 2017〜
                             HELLCHILD作

第五話 『鬼神カーニバル』


9月1日 AM11:20

「えー、夏休みも終わり、2学期も気を引き締めて・・・・・・」
俺達の足元で、校長の声が響いている。
現在、俺達は体育館の屋上にいる。あんな校長の下らない話を直立不動で聞けなど、拷問と同じだ。
ので、俺達は体よくサボることにした。ちなみに、『俺達』というのは、メンバーが遼一と俺だけじゃないからだ。
「いや〜、今年も暑かったよなぁ。」
「おお、確か40°越えた日もあったんじゃねぇ?」
「ああ、8月19日でしょ? あの時は私も、地球温暖化反対!ってマジで思ったわよ。」
菊地哲也、板谷裕司、菊地奈帆・・・・・・・・三人も俺達と一緒にいる。
ちなみに男5人は、全員煙草を吹かしている。1時間はここに座っているが、俺はこれで2本目である。
「しかし、校舎が新しくなったってぇのは嬉しいよなぁ。」
灰皿に煙草を押しつけながら、板谷が言う。ドレッドの長髪と耳に3つ・鼻に1つのピアスは、かなりのインパクトを醸し出している。
「まぁな。前は無駄にボロッちぃだけだったからよ。」
菊地は今新しい煙草に火を点けたところだ。何というか、口調や雰囲気がどこか三枚目である。少しだけ丸っこい体系と明るいチャパツも加わって、まるでどこかのお笑い芸人だ。
「しかもその原因ってのが笑っちゃうよね。警備員が調理室でお湯湧かしてたら、それが校舎に引火なんてね。」
奈帆だけは煙草を吸っていない。明るい髪とスラリと伸びた身長、同年代の女とは少し違った、大人びた雰囲気。本当にファッションショーに出ててもあまり違和感がない。
「・・・・・・てか遼一さぁ、最近アクティブになってねぇ?」
板谷が遼一に話しかけた。遼一は既に3本目のタバコに火を点けている。
「・・・・・・元々アクティブなつもりなんだけど、俺。」
「そーっすかぁ? 俺等が話しかけても、遼一さんはいつも無表情で無口だったッスよ。」
菊地が遼一と俺に話しかけるときは、いつも敬語だ。俺は未だにその原因を知らない。
「ねぇ、武と出会ってからじゃない? 遼一が変わったのって。」
「え?」
「あ、そーいやそうかも。武と会ってからのような気がする。」
「そうっすね。俺もそんな気が・・・・・・」
「お・・・・・オレが・・・・・?」
確かにそうかもしれなかった。
普段の遼一の評判といえば、クールで無口で何を考えているか判らない奴。そんな感じだったはずだ。
だが俺と接しているときの遼一は違う。どちらかといえば、雰囲気的にどこかライトだ。もちろん常に冷静で思慮深いところはあるが、それほど気味悪いほど静かな奴ではなかった。
「きっと、武には人を変える力があるのね。」
奈帆がそう言った。
何処か、その言葉が心に引っ掛かった。
「オレに・・・・人を変える力が・・・・」
信じられなかった。どう考えても、周囲に不快感しか撒き散らしたことがないはずの俺が・・・・・
(よぉ、武)
いきなり遼一が耳元で囁いた。
(明日の昼休みさぁ、図書室に来てくれ。次の計画についてだ)
(え? あ、ああ・・・・・・)


9月2日 PM1:03 図書室にて

金宮高校の図書室は、あまり活気がない。まあ、何処の学校でもそうなのだろうが、金宮高校は割と荒れている学校だ。
そんな連中が自ら図書室で勉強など、天変地異が起こりかねない。ということで、少しの奇特な人間が数名、本棚から本棚へ歩き回っているだけだ。
俺と遼一は、奥の方の勉強用机(一応)に二人で座っていた。
「それにしても、俺達二人だけで族一つを潰せるのか?」
いくらなんでも、それは現実的に考えて無理だろうと思っていた。
「まあ、それは無理だ。だけど、用は頭の首と、特効旗を奪っちまえば、その族は潰れたも同然だ。」
「なるほど・・・・・・・でも、何か策はあるのか?」
そう聞くと、遼一はニヤリと笑った。
「へへっ、任せとけ。」


9月3日 PM8:48

「・・・・・・・いーだろう。乗ってやろうじゃねーか、そのフザケタ案によぉ。」
「ああ。協力、感謝する。」
計画を提示した遼一にガンを付けているのは、池袋最大のカラーギャング『ホワイトデビルス』のアタマ、池崎丈矢である。
遼一の案、それは東京中のカラーギャングと手を組むことだった。
『関東愚連会・苦麗無威爆走連合』を名乗るだけあって、その影響力は関東全域に及んでいる。カラーギャングにしてみれば、苦麗無威は正に目の上のタンコブなのだ。
「言っとくがよぉ、俺等は俺等流にやらせてもらうかんな。間違っても他のチームと仲良くはやらねーぞ。」
「わかってるって。ただちょいと、休戦提供を結んでくれりゃあいい。」
俺は遼一の変わりに弁明しておいた。池崎がそんな条件を飲むほど、苦麗無威はウザイのだ。
「さて、と・・・・・・次は新宿の連中だな。奴等、結構頑固な所があるから、ちょいと厄介だ。行くぜ、武。」
「へ? あ、わかった・・・・・・」
そう言えば、最近気になることが一つだけあった。
(そういや俺、遼一にリードされてばっかりだよな・・・・・・)
今の今まで、遼一の立てた計画の通りに進んできたような気がする。それに、即興で立てた計画にしては、かなり完璧だ。
単純に遼一のアタマが凄いだけなのか? それとも・・・・・・・・・


9月7日 PM9:23

「・・・・・・・条件は解ったけどよ、決行日はいつだ?」
「10月17日。苦麗無威のバースデー集会の時だ。その時に、全員で袋叩きだ。」
遼一の言葉通り、10月17日は苦麗無威の結成日、つまりバースデーなのだ。
関東全域の支部全部が、金宮パーキングエリアに集う。この日だけは、軟派な連中が一人残らず消え去る。
一転に集まった苦麗無威を360°包囲して、一気に攻め込むという作戦だった。
「勝算はあんのか?」
「大丈夫だ。全員で手を組めば、苦麗無威といえどもボコボコだ。」
チームの一員の問いに、俺が答えた。もちろんデマカセである。
苦麗無威は武闘派で知られる集団だ。下っ端一人でも、このチームの3人分の力は持っている。
向こうもこっちも約340人、要は奇襲攻撃+凶器持ちの攻めである。
「さぁて、これでバッチシだ・・・・・・・楽しみじゃないか、武?」
「ああ・・・・・・・・・!」


9月26日 AM10:48

「え〜、この数式、解る人は居ますか〜?」
(・・・・・・・・・・・・暇だ〜・・・・・・・・・・・・)
計画の実行まで、あと2週間以上ある。あとは直前の下準備だけなのである。
(仕方ない・・・・・・・・寝るか)
最も原始的な暇潰し方法だが、こんな訳の分からない、念仏のような授業を聞いているよりはずっとマシである。
手の甲を枕にして、顔を埋める。以外と早く、俺の意識は暗闇に落ちていった。
「・・・・・・くか〜・・・・くか〜・・・・・・」


初めてできた『ともだち』だった。
すっといっしょだと、信じていた。
「なあ、あのうわさってさぁ・・・・・・本当なのか?」
「・・・・・・なにが?」
「ほら、例のあの・・・・・・・」
変なうわさが立っていた。こんな奴がそんなことをするなんて、考えられなかった。
「・・・・・・・・うん、本当だよ。」
「え・・・・・・・!」
「・・・・・・・・・たしかに、おれは・・・・・・・・・・」


キーン、コーン、カーン、コーン・・・・

「はっ!」
目を覚ますと、もう既に授業は終わっていた。けっこう深い眠りだった。
(夢を見るほど深い眠りだったとは・・・・・・最近寝不足か?)
何の夢か覚えていないほどの深い眠りだったらしい。


この公園を通って、駅に向かう。駅から学校へ行くときも、ここを経由する。
昔、唯一の友達とここで遊んでいたような記憶がある。それが誰なのかはもう忘れてしまったが。
小学生の頃は、ここら辺に住んでいたのだ。だが両親の仕事の都合で、別の場所に引っ越すことになったのだ。
金宮から少し離れた場所へは、中学を卒業したと同時にやってきた。俺の学力では、金宮以外は入れなかったので、こうしてハードな学園生活を送る羽目になったわけである。


10月14日 AM1:56 金宮パーキングエリア

「おい、全員分のビール買ってこい!!」
「「は、はいっす!!」」
リーダー格のリーゼント野郎が、下っ端らしきアイパー男に怒鳴りつける。
金宮パーキングエリアでは、バースデー集会のための予行練習が行われていた。他の支部も全部召集するため、物凄い規模の集会となるのだから、予行練習が必要といえば当然か。
俺と遼一は、自販機の裏に隠れていた。二人の男がノコノコと走ってくる。
二人が目の前に立った瞬間。俺達は二人の口元に、睡眠薬をタップリと染み込ませたハンカチを押し当てた。
「&%##%!?!!」
一瞬だけ抵抗の素振りを見せたが、すぐに沈黙した。そして、即刻崩れ落ちた。
二人を自販機の側に捨て、特攻服を剥ぎ取った。
「この服が必要なんだよなぁ・・・・・・勘弁しろよ?」
「でかい祭りを見せてやるからよ。それが礼だ。」


10月17日

「おっしゃあ!! 今回も気合い入れていくぜぁ!!!!」
「「「オオオオーーーーーーーー!!!!」」」
苦麗無威三代目総長・多岐 剛の声が響く。それに反応して、集まった支部長総勢34人が叫ぶ。
彼の持つ特効旗には、初代総長・田中陽一、二代目総長・八神隆、そして多岐の名前が刺繍で入れられている。
全員分の単車が、彼等を取り囲むようにして並べられている。
「おっしゃ、ここから一気に下るぞ!!」
「・・・・・・・・それは無理だな。」
長髪の男が、多岐の言葉を否定した。
「ああ!?」
「無線、聞いてみたら?」
そう言った瞬間、通信が入った。焦った様子の男の声が聞こえる。
『た、大変です!! 東京中の連中が、凶器持って突っ込んできます!!た、助け・・・・・・(ブツッ)』
「な・・・・・・!?」
「ど、どういうこったぁ!?」
「東京の連中が攻めて来ただとぉ!?」
「何でこんな大事な集会によぉ!!」
たちまち周囲はパニックに陥った。長髪の男だけは妙に冷静だ。
そして、輪のように並んでいる単車の列に近付き・・・・・・・

ガンッ!!

一台の単車を蹴った。まるでドミノ倒しの様に倒れていき、ガソリンが漏れ始める。
「テメーらはここでオレ達に殺られるんだよ・・・・・・!」

ボンッ!!

マッチで火を点けた。一瞬にして炎がここにいる全員を取り囲んだ。
「・・・・・・今日で苦麗無威の歴史も終わりだ!!」
そう言って、俺達は特攻服を脱ぎ捨てた。
そう、長髪の男とは、遼一のことだったのである。
「て、テメーらぁ、舐めたマネしやがってぇえ〜〜〜〜!!」
「ぶっ殺したらああ〜〜〜〜!!」
トチ狂った連中が、こちらに向かって突っ込んでくる。
「んじゃ、ザコの相手は頼んだぜ、武。オレが多岐の野郎をブッ潰す。」
「へ? 二人掛かりで多岐を倒すんじゃ・・・・・・」
「計算が違った。まさかザコまで紛れ込んでしまうとは。多岐を潰す前に、ザコにやられちまったら世話ねーだろ?」
「ちっ・・・・・・しゃーねーな。解ったよ、任せとけ。」
「おお、頼んだぜ!!」
そう言って走り出す遼一。目指す方向は、多岐の居るところだ。
多岐はまだ明後日の方向を向いている。そして、走ってくる遼一の姿に気がついた―――――
「どぉりゃあ!!」

ガン!!

鈍い音を立てて、遼一のフックが多岐に炸裂した。多岐は惚けた表情をしている。
「テメーはオレとタイマン張れや・・・・・・・・ブッ潰してやる!」
次第に多岐の顔が真っ赤になっていく。それに比例して、怒りの表情が浮かんできた。
「・・・・・・上等だぁテメー!!!」
すぐに立ち上がり、遼一に向かって走る多岐。タイマンの始まりだ。
俺はザコ共を警棒で沈めていた。中国製で、一撃を加えただけでも陥没という威力を持ったものだ。
「他の連中に邪魔はさせない・・・・・・思いっきりやれよ。」

「オルァ!!」
多岐のフルストレートが、遼一を捉えた。遼一の上半身がのぞけった。
「・・・・・・ッてーじゃねーかよ、アア!?」
が、その反動を利用して、多岐に遼一流殺人ブローをお見舞いする。
そして、多岐の足元がふらついた。その隙を突き、一気に多岐の間合いに飛び込む。
「うりゃりゃりゃりゃりゃ・・・・・・!!!」
ここぞとばかりにラッシュを掛ける遼一。ボディブローが連続で当たる。
が、しかし多岐もタダ者ではない。思いっきり腕を振り上げて・・・・・・
「・・・・・チョーシくれてんなよ、ボキャア!!!」

ガスッ!!

全体中を乗せた肘打ちが、遼一の脳天に当たった。レスラーをもう少し小柄にしたらこんな感じだろうという多岐の体型だ。威力は相当だ。
これには流石の遼一もふらつく。そしてその隙に、多岐は遼一から離れた。
「はあ、はあ、はあ・・・・・・・・」
「ヘッヘッへ、どうした兄ちゃん。そろそろバテてきたのかぁ?」
たしかに、もう遼一は方で息をしている。が、それだけではない。顔は青白く、目も充血している。
今日に限って体調が悪かったのだろうか? いずれにせよ、この状況はヤバイ。
「ぐ・・・・・・んのやろぉ!!」
一気に踏み出す遼一、だが・・・・・・・
「――――――――――――――――!?」
突然、遼一の足元がふらついた。ガードが少しだけ落ちる。
その隙を突いて、多岐が攻め込んでくる。これはマズイ。
「オラぁ、フィニッシュだ!!!」
サンドバッグのように殴られ続ける遼一。殆ど戦意を喪失しかかっている。

「遼一!!」
俺は仕方無しに、遼一と多岐の間に割って入った。
「あんだぁ? 今度はテメーが相手か。おうオメーらぁ、手ぇ出すんじゃねーぞ!!」
多岐がそう怒鳴ると、他の連中が全員黙った。
「遼一・・・・・・あとはオレに任せろ。」
そうは言ってみたものの、勝算はかなり低いように思えた。
アタマを警棒でヒットさせれば、まず俺の勝ちだ。しかし他のザコとの戦いで、俺はボロボロになってしまっている。それが不安だった。
事実、アタマがかなりフラフラして、今にも倒れそうな状況なのだ。
だが・・・・・・・・
「・・・・・・タイマン勝負・・・・・・邪魔すんじゃねぇ・・・・・・」
遼一が俺の服の裾を掴んでいた。その眼には、再び覇気が宿っている。
「な・・・・・・バカ言うな! そんな状態でケンカなんか出来るわけないだろうが!!」
「うっせーよ・・・・・・それを言うならテメーだって・・・・・・」
言葉を発しながら、遼一は立ち上がろうとする。手を突きながら立ち上がる様は、何処か悲痛だった。
「よせ、もう立つな! 死んじまう!」
「・・・・・・・・・・死ぬ・・・・・・・・・・?」
しっかりと立ち上がった後、遼一は俺を見つめた。
「死なねーよ・・・・・・全てをやり遂げるまで、死んでたまるか。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「大丈夫だ・・・・・・・・・オレは、死なない。」
そうキッパリと言い放つ遼一の目には、ほんの僅かな淀みもなかった。
「オラぁ、俺をシカトしてんじゃねー、マジ殺す!!!」
バタフライナイフを構えている多岐。俺達二人を刺し殺す気だ。
俺達の方に走ってくる多岐。そして・・・・・・・・

ドシュッ!

何と、遼一は手の甲でナイフを受け止めた。
そして、自由な方の手でボディブローを決めた。見事に鳩尾に入っている。
「が・・・・・・・!!」
「・・・・・・・キメるぞ。」
その言葉と共に、凄まじいラッシュを掛ける遼一。今度は多岐がサンドバッグになる番だ。
「これで・・・・・・終わりだぁ!!」
渾身の右フックが命中した。多岐は見事に気絶してダウンし、遼一も根尽き果てたように崩れ落ちた。
「遼一!!」
「「「そ、総長ォォ!!!!」」」
俺は遼一の側に駆け寄った。他の連中も多岐の側に来た。
「武・・・・・・特効旗、焼いてくれ・・・・・・今ならザコは多岐の方に気が向いてる・・・・・・」
「・・・・・・・ああ。」
俺は胸ポケットからライターを取り出すと、特効旗に火を点けて、空に掲げた。
「これで苦麗無威の歴史も終わりだ!!」
全員が急に俺の方を振り返ると、いきなり怒りの表情を浮かべた。
「テメェ、ざっけんじゃねーぞアア!!?」
「親兄弟でも判別できねぇようにしたるぞボケェ!!」
「東京湾に沈めたろかあぁ!?」
まだまだこいつらの相手は終わりそうにない・・・・・・そう思ったとき。

プシュー!!

段々と炎が消火されていった。消火器で誰かが炎を消しているようだ。
炎が消えた後に現れたのは、約40人ほどの苦麗無威の連中だった。
「・・・・・・テメェらぁ、舐めたマネしてくれたなぁ!!」
「ミンチになるまでボコしてやらぁあ〜!!」
「ソッコーで死体にしてぇ、晒しモンにしてやんよぉぉ!!」
カラーギャング連中では、完璧に倒しきることは出来なかったらしい。全員手負いの状態だが、今の俺と遼一を倒すことくらいは容易だろう。
「・・・・・・おい、どーすんだ? かなりヤバイ状況だと思うんだけど、これ。」
試しに遼一に聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。
「参ったな・・・・・・・タクシー呼んであるつもりなんだけどよ。」
「へ? た、タクシー???」
見当違いな遼一の返答に、俺は戸惑ってしまった。
「客すっぽかしやがって・・・・・・・後でクレーム付けないとな。」
そうこうしている内に、他の連中が攻めてきた。
こうなったら覚悟決めるしかない。そう思った、その直後―――――――――――

キキィッ!!

以前俺達が盗んだシルビアが、目の前に向かってきて、そして止まった。乗っているのは、菊地達三人組だ。
「二人とも、早く乗れ!!」
板谷が後ろのドアを開けて、叫ぶ。俺はその言葉通り、ぐったりとなっている遼一を担いで、シルビアの後部座席に飛び込んだ。
「おい、どーやって突破するんだ!?」
「こーすりゃいいだけッスよ!!」
菊地が思いっきりアクセルを踏む。それと共に、エンジンが爆発音を立てる。
「ひき殺されたくなきゃあ、さっさと消え失せろやボケエ!!」
怒鳴り散らしながら、人の群れを突破していく菊地。
かくして、何とか俺達は命をつなぎ止めることが出来た・・・・・・・。

「・・・・・・・・にしても、よくあんな状況で冗談が吐けるな。」
「まぁ、な。どんな状況でも常に余裕持ってないと、120%の力は出せないってもんだぜ?」
ニヤリと笑う遼一。しかし、その顔色はまだ優れない。
「風邪か?」
「え? あ、ああ・・・・・・ちょットタチが悪いのをこじらせちまってよ。」
「そろそろ遼一さんの家の前ッスけど。」
「ああ、じゃあ私もそこで下りるわ。遼一のことは任せておいて、武。」
「ああ、解った。頼む。」
そして、遼一と奈帆がおり、俺も家の前まで送られた。
その夜は、本当に深い眠りに墜ちた・・・・・・


10月18日 AM10:34

『よぉ、なんか族とチームの抗争があったって・・・・・』
『ああ、聞いた聞いた。苦麗無威とか言う連中だろ。』
『すっごい数の死者が出たらしいよ?』
『うっそ、マジぃ?』
朝っぱらからこの噂で持ちきりだ。今朝のニュースでもやっていた。
「昨夜、この金宮パーキングエリアにおいて、大規模な抗争が勃発しました。
全員が重軽傷を負い、現在は警察病院で、集中治療を行っているようです・・・・・」
俺と遼一が救出された後、すぐに警察がやってきて、全員お縄になった。実のところは、事前に遼一から警察を呼ぶように、菊地達は言われていたのだ。
死者が一人も出なかったことは奇蹟に等しい。あれだけの大規模な抗争だったのに。
だが、前から疑問に思っていたことが、だんだん意識せざるを得ないようになってきた。
(なぜ遼一が、あんな緻密な計画を立てられるんだ?)
いくらなんでも出来過ぎている。こんな短期間で、こんな完璧さは、まず有り得ない。
そもそも、最初にこの計画を提示したのは遼一のはずだ。だとすれば、こう考えることも出来た。
(オレは、遼一に踊らされてきたんじゃないのか?)
そんな風には考えたくなかった。だが、その可能性も否定できないのだ。
真偽を確かめるため、俺は遼一のクラスに向かった。

「なあ、遼一いる?」
「ああ・・・・瀧川なら、今日は欠席だけど。」
そこら辺のクラスの人間に聞いてみた。それはそうだろう。昨日あれだけ具合が悪そうにしていたのだ。
(・・・・・・・・あ、これ・・・・・・・・)
遼一の机だった。机の横に『瀧川 遼一』と書かれたステッカーが貼られていた。
(ちょうどいいや。アイツ教科書置いてないかな・・・・・・)
次の授業である日本史の教科書を忘れてしまったのだ。多分アイツのことだから、教科書は学校に置きっぱなしだろうと思った。
が、中には一切余計な物は入っていなかった。代わりに、変わったものが出てきた。
(写真・・・・・・誰のだ?)

そう、一枚の写真があった。

そして、そこに写っていた物。それは、『有り得ない物』だった。

(こ・・・・これは・・・・・・・・・!?)

その写真の中には・・・・・・・・・






あとがき

どうなるんでしょうねぇ、遼一(ぇ
まあ武の名ゼリフのパクリは賛否両論あるでしょうが、まあどんな感想でもお待ちしています。
けっこう驚きの真相があったりするかも?です。少しだけ楽しみにしてもらっても良いかと。
もう最終話の構想もバッチリ固まっているので、後は書き上げるだけですね。お楽しみに。
それでは〜。

BGM:『Fly High』THE MAD CUPSULE MARKETS


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