B−T−B HELLCHILD作 |
「ぐは・・・・・・っ・・・・・・!」 手を地面に付くヒサシ。服は所々破け、露出した肌からは火傷が覗いている。 有り得なかった。"あんな事"が起こるなんて、どう考えても説明が付かない。 「ど・・・・どういうことだ・・・・・・」 「さっき起こった通りですよ〜・・・・・・もう一回やってあげましょうか〜?」 スガァン!! 「うああっ!!」 突然、ヒサシの足元から爆発が起こった。その爆風は、ヒサシの体を飲み込むほどの大きさだった。彼の足元には、地雷も何も設置されていないはずだ。本当に"有り得ない"現象だった。 「う・・・・・・」 「驚きましたか〜? これは私の人口眼球から出る特殊光線によるものです〜。」 「光線・・・・・・?」 「ええ〜。正確に言えば不可視の特殊ビームで、私の視野全体に照射することが出来ます〜。だから・・・・・・」 ズガアアァン!!! さっきの数十倍の音を立てて、文華の前方30m以内を爆風が包み込んだ。 「こんな風に、広範囲に渡っての爆撃が可能です〜。」 こんな爆撃を何度も喰らっていては、B−T−Bといえども歯が立たない。だが、ヒサシには一つだけ解決法があった。 「それなら・・・・・・こうだっ・・・・・!!」 フルスピードで、一直線に文華に接近する。文華の視野にはバッチリ収まっているはずだが、何故か爆撃は起きなかった。 「接近戦なら爆撃は使えない・・・・・・自分も巻き込まれるからな。」 フルスウィングのアッパーを、文華の顎に喰らわす。文華の小さな体は、大きく反り返った。 「ぐっ・・・・・・!!」 「行くぞ・・・・」 次々と拳の連打を仕掛けるヒサシ。だが、文華には全くヒットしない。全て避わされてしまっている。 当たれば相当なダメージは与えられるだろう。現にヒサシの拳からは、風圧が放たれている。だが、それだけでは只の扇風機だ。文華にはまだ、ダメージを殆ど与えていない。 「くっ・・・・・・」 「ほらほら、その程度ですか〜? さっきは油断しましたけどね〜。・・・・こっちも攻撃しますよ〜?」 文華がボディーブローをかます。それはヒサシの鳩尾を的確に捉えていた。 「ぐ・・・・・・!!」 いくら人間離れした能力を持っていても、やはり急所の位置を変えることは出来ない。腹を抱えてうずくまる。 それを見て、今が好機と言わんがばかりに、文華が攻勢に転じた。その体躯には全く似合わない速さと重さを兼ね備えた、重量級&高速ラッシュがヒサシの体を連打する。 「とどめ〜!」 ズドン!! ヒサシの胸部に、文華の掌底が命中した。その部分は不自然に凹み、一瞬間を置いてから、後方へブッ飛んだ。 何本もの木々をヘシ折りながら、ようやく大木に当たって地に落ちた。 「ぅ・・・・・ぉ・・・・・」 「ふふふ・・・・やっぱり虫ケラは、その程度の強さしか持ち合わせていないんですね〜。」 「虫ケラ・・・・・・だと・・・・・・?」 「そうですよ〜。まぁ、そんな連中を皆殺しにすることが、私たちの楽しみなわけですけど〜。」 「・・・・・・・・ふざけんじゃねえ・・・・・・・・!!」 しっかりと大地を踏みしめながら起き上がるヒサシ。血反吐を吐きながら起き上がる様は、雄々しいと同時に何処か痛々しい。 「・・・・弱い人間ブッ殺して喜んでんじゃねーよ、この殺戮狂が!!!」 正面切って突撃する。が、そんな攻撃では簡単に避けられてしまう。が、文華の手前より少し後ろに来たとき、ヒサシは強く大地を蹴った。 「!?」 消えた。完璧に文華の前方からは消え失せた。否、消えたのではない。猛スピードで文華の後ろに廻ったのだ。 ヒサシは拳を振り上げた。これは当たる、そう確信したが――――――― 「甘いです〜。」 「ッ!?」 それを更に上回るスピードで、文華はヒサシの背後に回り込んでいた。 「必殺ぅ〜!!」 ゴシャッ!! 文華の浴びせ蹴りが、ヒサシの頭頂部に命中した。その場に力無く倒れ伏す。 「ふふふ・・・・・・やっぱり弱いじゃないですか〜。」 追い打ちを掛けるように、鋭いケリを腹に放つ文華。何の抵抗もなく、ヒサシの身体は仰向けに転がった。 「う・・・・・・」 「虫ケラは虫ケラらしく、私の足元で這いつくばっていれば良いんです〜。」 スピードもパワーも段違いに強い。こんな奴を相手に、どうやって戦えと言うのか。 「だいたい、あなた達B−T−Bだって殺戮者じゃないですか〜。ウイルスに犯された、何の罪もない人間達を、片っ端から消していったんでしょ〜?」 確かにそうだ。B−T−Bは各地でのテロ活動の他、キュレイキャリアやTB感染者、その他の新型ウイルスの感染者の抹殺も行っていた。"救済"という大義の名の下に、数多くの命を奪った。その数は、両手では数え切れない。何度と無く、5人の両手は赤く染まった。 「むしろ大義名分を振りかざした偽善者の集団より、自分たちの欲望に忠実な私たちの方が、ずっとマシだと思いますけどね〜。」 そうかもしれない。5人のやってきた事は偽善かもしれない。それを否定することは、ヒサシを含め、誰も反論は出来ないだろう。しかし・・・・・ 「・・・・・・ふざけんじゃねーよ・・・・・・!!」 ここまで痛めつけられ、血を流しながら、ヒサシは尚も立ち上がろうとする。その足元はおぼつかないが、表情は怒りを浮かべ、眼光は覇気でギラついていた。 「確かに、オレ達は殺人者だ・・・・・・だがな、人の命を奪った分だけ、オレ達は生き抜いてんだ!! オレ達は、そいつらの命を全て背中に背負ってんだよ!! 自分たちで築いてきた屍の山に、あぐら掻いて座ってるテメーラなんかとは、絶対に違う!!!」 全ての力を振り絞り、ヒサシは叫んだ。それは、一言一言に魂がこもっていた。 そして、文華の表情に笑みが浮かぶ。ただし、それは通信機でトールに見せた、醜悪に歪んだそれだ。 「ふふふ・・・・・・・・・」 見ていて鳥肌が立ちそうな程の醜さを湛えた表情で、文華はヒサシを睨み付けた。 「・・・・・・この期に及んで、よくもまあ減らず口が叩けますね〜!!!」 ドン、ドン!! 「ぐっ!!」 ヒサシの両脚に、爆発を起こした。これでもう立てないと言うことか。確かに倒れたまま立ち上がらない。 「それにしても・・・・・・本気、出さないんですか〜?」 「本・・・・気・・・・・・・・・?」 「鬼怨の技を受け継いだ者は、全員が特殊能力を持つと聞きます〜。そして、B−T−Bは全員が鬼怨の技を受け継いでいるはず・・・・・・・・・どういうことです〜?」 ヒデは伽螺頻迦を操り、アツシはタナトスを召喚する。それならば、ヒサシにも超能力があっても良いはずなのだ。もうここまで来てしまったからには、その能力を解放しないと勝てないはずだ。だが、彼は言い放った。 「ケッ・・・・・・キサマみたいな外道に、見せてやる価値はないな。」 「へぇ・・・・・・・・・・・・じゃあ、死んで下さい〜。」 数分後、ヒサシの両手両脚はあらぬ方向に曲がっていた。肋骨を全て砕かれたのか、胸部も若干凹んでいる。 「ぁ・・・・・・ぅ・・・・・・」 微かな呻き声を上げる。もう言葉を発する体力も残っていないということか。 「これでも見せる価値がないと言い張りますか〜?」 「・・・・・・ペッ。」 血の混じった唾を、文華の頬に飛ばす。表情には出さないが、奥底には途轍もない怒りが渦巻いている。 「・・・・・・本格的にトドメを刺しますか〜。」 懐からプラスチック爆弾を取り出すと・・・・・・ 「がッ!?」 ヒサシの口に、爆弾をねじ込んだ。起爆スイッチは既に押されているようだ。 「脳味噌ばらまきながら死んで下さい〜。」 ドコオオオン!! ――――――――爆発した。 首から上は、跡形もなく消し飛んだ。 「意外とあっけなく死んじゃいましたね〜。」 つまらなそうな顔をして立ち去ろうとする文華。 しかし次の瞬間、今度は文華が"有り得ない"光景を目撃することとなった。 不意に背後に何かの気配を感じ、振り向く。すると・・・・・・ プシュッ! 「ひっ!?」 血潮を噴き出し、首から上の身体が再生していく。その光景は、文華でさえも戦慄させた。 「・・・・・・本当の力は、一度死なないと発揮できないんだ。」 全てが再生し終わり、ゆっくりと起き出すヒサシ。その姿は、さっきまでとは若干異なっていた。 頬の傷が消え失せ、代わりに刻印のような文字が刻まれていた。そこには、 Bloody | Tearing | Beasts そう刻まれていた。B―T―Bの印と言うことか。 「傷が・・・・・・?」 「・・・・・・これは鬼怨に伝わる極印"絶詛"・・・・・・フツーの時にはタダの傷にしか見えないけど、オレが一度死ねばこの極印が力を与えてくれる・・・・・・」 そう、ヒサシの身体には、さっきまでとは比べ物にならないほどのパワーがみなぎっていた。そのことは、文華にも察知できた。 「さあ、仕切り直しだ・・・・・・!!」 拳を握り、構えを取る。力を溜め、そして再び文華を目掛けて走る。 「っ!?」 速い。今までより数段の素早さだ。 そして、ボディブローをヒットさせる。パワーも格段に上がっているらしく、文華の身体は後ろに吹っ飛んでいった。 追い打ちを掛けるように文華に近付くヒサシ。文華は今の攻撃でふらついている。 「ぐ・・・・!!」 「決まりだ・・・・・・」 先程の文華のラッシュを上回る、本当の超重量級&光速ラッシュを決める。残像が文華の身体の前で壁を作る様子は、まさに拳の弾幕と呼ぶに相応しかった。文華はヒサシの攻撃を受けまくり、完全に操り人形と化している。まるで奇妙なダンスを踊っているようだ。 「ぐ・・・・・・・・・・・・あがああああーーーーーーーっっ!!!!」 声を張り上げて叫ぶ文華。その声量には、一瞬ヒサシも隙を作った。 その間に間合いを取る。やはりここは、無闇に攻撃するより回避に徹底した方が得策だ。 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・・こうなりゃ見せて上げますよ〜、この柊文華の100%の力をね〜〜〜!!!」 ザン!! 体全体から放出される殺気に、辺り一面の草むらが揺らぎ、木々が振動した。 近くにあった木に手を添える文華。そして、その手に力を込め・・・・・・ 「はぁ!!」 バギッ!! 気合いを入れると、木が粉々に砕け散った。 「どうですか〜・・・・・・この力さえあれば、血化粧のカリヤさんでもカスタムアルバートさんでも簡単に倒せます〜・・・・・・これならB−T−Bだって簡単に殺せまs」 全てを言い終わらないうちに、ストレートが文華の頬に飛んできた。また文華が後方に下がる。 「が・・・・・・!」 「なるほど・・・・・・だったら何処までやれるか、試してみるか?」 「ぬぅ・・・・・・・・・クソ虫共に負けてたまるかってんだ〜!!!!」 ――――――――――二つの竜巻が発生した。 互いに攻撃を受け合い、防ぎ合う。その衝撃が、凄まじい量の暴風を生み出していた。 ヒデとカリヤの時もこんな嵐が巻き起こったが、今度は相手がカリヤよりも数段強い分、そこに渦巻く風と殺気は本当の竜巻に近いほど荒れ狂っていた。 「死ね死ね死ね死ね死ね〜〜〜〜〜〜!!!」 「こっちのセリフだオラァ!!」 二つの攻撃の威力が相殺し合い、弾き合いに似た現象が起きる。互いに一歩も引けを取らない。 「クソがぁ、本当に殺す〜!!」 ボンッ!! 爆発が起きる。例の人口眼球を駆使した能力だ。 だが、ヒサシは瞬時に避けていた。1mほど横に立っている。 「こんちきしょう、ざけんじゃねぇぞ〜!!!」 爆発させては横にずれる。そんなことを何回も繰り返しやっていた。そしてそれを数十回繰り返したときに・・・・・・ 「―――――――――!!」 視界が煙で覆われた。何度も爆発を起こしすぎたため、煙で視界が閉ざされてしまったのだ。 (し、しまった・・・・・・・・・これじゃ爆発が使えない!) 恐らくヒサシは最初からこれを狙っていたのだろう。ヒサシは完璧に気配を消している。 だが、これは向こうも視界が閉ざされていることを意味する。お互いに膠着状態と言うことか。 (煙が晴れるまで待っていれば・・・・・・・・・) しかし、そんな暇はなかった。 突然、真上から強烈な殺気を感じて、上を向く。そこだけ煙が晴れていた。 「・・・・・・終われ・・・・・・!」 ジュッ!! 光線が、文華の下半身を焼いた。一瞬にして下半身が焼失し、文華は倒れた。 「あ・・・・・・!?」 痛みを感じる暇もなかった。一瞬にして光が文華の体を飲み込み、消し去ってしまったのだ。 ゆっくりと着地したヒサシの手には、ペンライトを巨大化させたような物が握られていた。 「万が一のためにと、用意して置いて本当に良かった・・・・・・」 シャープペンを廻すようにクルクルとそれを弄びながら、痙攣する文華に近付いていった。 「がが、あ、ぐ・・・・・・そ、その武器は・・・・・・!?」 「こいつは高出力レーザー砲『スタビライザー』・・・・・・2,3発しか使えない武器だから、使い所を見極めなきゃならなかった・・・・・・」 凄まじい威力を持った武器であることは、容易に想像できる。一瞬にして文華の体の半分を消し去ったほどだ。 そしてそれほどの重傷を負った文華は、ビクビクと痙攣しながら苦しんでいた。そしてヒサシは、更に追い打ちを掛けた。 グシャッ! 「うぎゃあああ!!!」 両方の人口眼球を潰した。これで本当に爆発を起こせなくなった。潰された両眼からは、血が止めどなく溢れる。 そして、スタビライザーを再び文華に向けた。その眼からは、一切の容赦も感じられない。 「こいつで細胞を一つ残らず焼いてしまえば、流石のあんたでも再生はできないだろう・・・・・・あばよ、柊文華。」 |
あとがき 何か従来の物より容量が少ない気がしますが、気のせいですw。 『スタビライザー』・・・・・・一応由来を説明しておきますと、フェルナンデス社の開発したギターです(彼のオリジナルモデルです)。すげぇ変わった形ですが、機能的には普通のギターと変わらない・・・・・・って、何の話してんだ、俺は。 とりあえずメインの3人はこれで終わりです。次がラストバトルなので、お楽しみに。 しかし『頬の極印って、死なずのシンダラじゃん』というツッコミは受け付けませんw。 BGM:『MY FUCK'N VALENTINE』 |
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