EVER17 〜BEFORE 2017〜 HELLCHILD作 |
AM10:30 クリスマスイヴ当日、俺は何とか遼一と合流することに成功した。 俺達は二手に分かれ、別々のホテルに泊まっていた。追っ手を分断するためだ。 その作戦は見事に成功し、警察は俺達二人の居場所の特定に悩んでいるようだ(制服の警察官が無線で話しているのが聞こえた) 俺達はそれぞれホテルをチェックアウトし、ピグミーランドまで辿り着いた。 「やれやれ・・・・・・何分待った?」 「45分。まあ、そうぼやくなよ。もう少しだ。」 今は二人でピグミーランドの当日券売場に並んでいるところだ。遼一の言葉通り、もう45分並んで、やっと前の方に来ることが出来た。 その間に何度ウザイ会話を耳にした事か。その会話が俺の鼓膜を揺らすたび、それに合わせて俺の眉間もピクリと動いた。 「ねえねえ、あそこのペアアクセ、絶対買おうね♪」 「今夜は寝かさないよ。」 「あそこのホロクラ、ハートだらけの背景が有るみたいよ?」 クリスマスイブだけあって、カップルの客が多いこと多いこと。しかも過半数がバカップルときた。 これさえなければ何分待とうと構わなかったのだが、こいつらの異世界での会話は俺の怒りのボルテージを否応なく上げていった。 だがそれよりも問題なのは、男二人で並んでいる俺達だ。周りからは相当浮いているに違いないが、敢えて考えないでおく。というか、考えたくない。 やがて俺達の番が来た。二人分の金を払い、チケットを手に入れた。 そして、俺達は最期の時を過ごす楽園へと足を踏み入れた・・・・・・ AM10:54 「で、ここがアドベンチャーエリアか・・・・・・」 「まあ、アスレチックの超豪華版と考えればいいさ。」 遼一の言葉通り、このアドベンチャーエリアはアスレチックの拡大版とも言える物だった。周囲の建物は全て南米のインディアンの居住区を模していた。 家は全て丸太(もちろん偽物だろうが)で造られており、屋根には赤や青の羽根飾りが付いていた。 要するに、このエリアの何処かに秘宝が隠されていて、それを制限時間内に見つけだせれば、もれなく豪華景品がゲットというわけだ。そしてその秘宝が隠されている建物が、これまたクセモノなのである。 「パスコードを入力しないと入れない扉、インディアンの守り神のクイズに答えないと開かない扉。それらの中に、財宝が隠されているのか。」 「そしてそこに辿り着くまで、数々の体力勝負が待ち構えてるって訳だ。」 超長い昇り棒やら、ハイジャンプで飛び越えないといけない壁やら、本当に体力勝負だ。先のアスレチックの超豪華版というのは、これが原因である。 しかも秘宝が隠されているような建物は色々な場所に分散していて、探し当てるのは一苦労だ。 「えーい、細かいことを考えるのはお前に任せた!」 俺は遼一に、秘宝の隠し場所のヒントが書かれた紙を押しつけた。入場時に係員に渡された物だ。 「ハァ・・・・・・いちいち厄介事をオレに押し付けんなよ。」 「うっせー。オレは頭でゴチャゴチャ考えるのは苦手だし、そんなのは性に合わねえんだよ。」 そう、入場時には何人のグループで入場するかを言わなければいけない。そしてグループ毎に違うヒントが書かれた紙が配布される。他人に協力を要請できない以上、ここは遼一の任せた方が得策だ。 「あーもう、しゃーねーな・・・・・・えーっと、ココがアレだから、これで、えっと・・・・・・」 俺は遼一を見ながら、思索に耽っていた。 これが終われば、俺達は死ぬこととなる。そして、この世界を捨てる事となる。 遼一と出会う前は、こんな世界はクソだと思っていた。何もかもが俺を傷つけるし、周りを見ていても心底ムカつくから、俺にとってこの世界は不必要だと思っていた。 本当に死んでやろうかという考えが頭の中に浮かんだ頃。遼一に再会した。 それからの日々は、本当に楽しかった。遼一と二人で無茶し合って、笑い合って、下らない冗談を言い合って、時には板谷達も交えながら酒を飲み合って。 全ての些細な出来事ですら、俺にとっては瑞々しく輝いていた。 それら全てが終わろうとしている。俺にとっては、かけがえのない物が。 俺は・・・・・・ 「うおっしゃあ!! 解けたぜ、武!!」 遼一の声が、俺の思考を遮り、意識を現実へと引き戻した。 「へ?」 「場所が判ったんだよ、ほら付いてこい!!」 遼一が走り出す。置いて行かれないよう、俺も走り出す。 こうしている間にも、終わりは近づいてくる。その時、俺は・・・・・・ AM11:15 「あ〜あ、しょぼい宝だったな。」 「秘宝なんて名ばかりじゃねーか、ったく。」 その場所に隠されていた『秘宝』、それは他の人気アトラクションの優先券だった。これさえあれば2時間待ちのアトラクションでも、ソッコーで入れる。 時間を無駄に出来ない俺達からすればありがたいが、あまりにもイメージ的にショボ過ぎた。 「とりあえず、次のアトラクションに行こうぜ。」 「ああ。そんじゃあ次は・・・・・・」 「・・・・・・実は心の底からブルってるだろ。」 「はははは、な、な、な、ナニヲイッテルノカネ、タキガワクン? あは、はハは、は・・・・」 ここはホラーエリア。簡単に言ってしまえば、巨大なお化け屋敷といった感じだ。外観は中世のゴシックな造りの城で、いかにも暗黒的且つ悪魔的な雰囲気が漂っていた。入口で懐中電灯を手渡され、それを頼りに中を進んでいる途中だ。目印はあるものの、本当に暗いので、周りがほとんど見渡せない。 遼一は結構落ち着いていた。こういうのは慣れているらしい。 『グァァァァァァァ!!』 「キャアアアアアアア!」 上擦るのを通り越して、もはや裏声を上げながら悲鳴を上げる。まるで女の子のようだと自分でも思った。しかし遼一に襟首を捕まれ、進んで行かざるを得ない。 そうして前進を余儀なくされ、ガタガタ震えながら進んでいくと、一人のミイラに遭遇した。 「ヒッ!?」 一人のミイラが座り込んでいた。こちらの存在に気付いても、別に脅かすわけでもなく、ただ床を見つめて溜息を付いている。 「・・・・・・様子がおかしいぞ、あのミイラ。」 「ななな、何かの仕掛けか???」 俺達が横を通り過ぎようとしたところで、不意を付いて襲いかかってくるのではないか。そう思うと体中に鳥肌が立った。 不審に思ったのか、遼一はその座っているミイラに歩み寄っていき、声を掛けた。 「おい、どうした? キチッと脅かしてくれなきゃ仕事にならないだろ?」 ・・・・・・反応は無い。 「もしもーし、聞こえてますかぁ? 返事をしてくれよ。 しかしさぁ、少しガリガリ過ぎじゃないか? もう少し肉付けた方が良いぞ、すっげー不健康に見える。」 ミイラの腹を撫でたり叩いたりしながら遼一は言う。すると、ミイラが遼一を睨んだ。そしてまたすぐにそっぽを向いてしまった。 「・・・・・・おいおい、客に対してその態度はないだろーが。」 すると突然、グギュルルルルルと音がした。 「何だよ、腹が減って動けないのか?」 そう言って手を差し伸べると・・・・・・ ガスッ!! 「@%?%*$%#!?!?」 殴られた。ミイラがいきなり遼一にボディーブローをかましやがった。 「りょ、遼一!」 すぐに駆け寄ろうとすると、目の前にミイラが立ちはだかった。俺のことを見下している。 すると何を思ったか、ミイラが片手で俺の両眼を覆った。目隠しのつもりだろうか、視界が闇に包まれる。 「あわ、あわわわ・・・・・・!!」 そして、いきなり頭から何かを被せられた。途端に視界が狭まり、顔中に圧迫感が広がった。 事態を上手く飲み込めないでいると、隙を突かれて足払いを喰らった。そして尻餅を付いた俺の足に、何かを着せようとした。 「ちっ、ちきしょっ・・・・・・!」 抵抗を試みるが、いつの間にかミイラは俺の肩をしっかりと掴み、抵抗できないようにしている。 そして『何か』を着せ終わると、ミイラは満足気に言った。 「それ、預かっといてくれる?」 声は女の物だった。何故か視界が異常に狭く、身体が重くて動きづらい。そのせいで顔は見えないが、かろうじて長い黒髪だけは見えた。 「悪いんだけど、もう三日も何も食べてないの。あなたの財布から、寄付させてもらうわよ。」 そう言うと、ミイラは屈み込んでいる遼一のポケットに手を突っ込み、財布を抜き取った。そしてその中から現金だけを器用に取り出していく。 「え!? お、おいテメー!!」 「脱走生活も楽じゃないのよ、ごめんね。」 そう言い残すと、元ミイラは走り去っていってしまった。 「こ、こらぁミイラァァァァ!! 待ちやがれぇぇぇぇぇ!!」 追いすがるように手を伸ばす遼一。しかし元ミイラはソッコーで走り去っていってしまった。 一方の俺は、何を着せられているのかが判らない。しかし何か甘い香りがするのに気が付いた。それはムスク系の香りだった。 (・・・・・・・・・ジャコウか?) そう、ジャコウの香りだった。そう言えば、さっきまでこれを着ていたのは女だった。少ししか見ていないが、黒い髪を濃い紫のリボンが見えた。 何故だろう・・・・・・あの女とは、この先深く関わることになりそうな気がする。 AM12:15 「ちっきしょー、何だったんだ?」 「知らない。でもオレも顔までは見えなかったからな。」 約10万円を強奪された。警察にマークされてる身の俺達に通報など出来るはずがなく、これから先は俺の金を使う事となった。 別に計画に支障があるわけではないのだが、何も出来ないのは少々悔しい。 「・・・・・・ここが・・・・・・・・・」 「アクアエリアだ。」 パンフレットを見ながら、遼一が答える。 このアクアエリアは、ピグミーランドの顔と言っても差し支えない。数々のエリアの中で、最も大きな収入を得ているのはここだ。 すぐ右を見れば、大海原が見える。元々は海岸を埋め立てて造ったものらしい。人口の岩があちこちに設置され、その上にはイルカやクジラのキャラクターが乗っかっていた。 ここのアトラクションを全て乗りこなしてしまおうという案だったが、最初に何に乗るかは現地で決めようと言う話だった。 しかしこのエリアに着いた途端、あるアトラクションが目に留まった。それを見た瞬間、一番はアレにしようと双方とも思い立った。 「アレ、だな・・・・・・」 「ああ。アレだ・・・・・・」 『アレ』は水飛沫を上げながら、猛スピードで海をギュンギュンと走り回っている。乗客達は歓喜の声を上げ、喜んでいる。 かなりの人気アトラクションだが、俺達は優先券を持っている。係員に一目見せれば楽勝のはず。 「よし、乗ろうか。」 「ああ、乗ろうぜ。」 意気揚々と足を進める俺達。係員はすぐそこにいた。後は声を掛けるだけ。 「なあ・・・・・・」 「?」 しかし俺が声を掛けたのは遼一だった。 「アレ、さあ・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 遼一は答えない。答えたくないのかもしれない。しかし、俺は問うた。 「・・・・あれ・・・・・・・・マグロ、だよなぁ?」 アトラクションの名前は『Speed Master of MAGURO』。そうパンフレットには記されていた。 解説によれば、このピグミーランドの創設者は外人で、日本に来た際に食べた鮪の大トロに感激して、このアトラクションを作ったらしい。彼なりの日本文化へのリスペクトの表れと言ったところか。 マグロの背中が座席になっており、そこに座って猛スピードを楽しめと言うことらしい。 「・・・・・・と、とりあえず乗ろうか。」 「そ・・・・そーだな。」 PM1:12 「ふい〜・・・・・・さて、と。そろそろ昼メシにしようか?」 「ああ、もうそんな時間か。道理で腹が減ってるわけだな。よっしゃ、行こうか。」 アクアエリア内にある売店で、俺達は昼飯を買うこととなった。一応レストランもあったのだが、男二人ではいるのは正直痛い。 売店はすぐそこにあった。数種類のバーガーとポテト、ソフトドリンクなどが一通り並んでいる。遼一と俺は真っ直ぐに駆け出していった。 「すいませーん、タツタバーガーセット一つ。」 「てりやきセット一つで。」 「はい、タツタセットとてりやきセット、お一つずつでよろしいでしょうか?」 売店の売り子は、やはり愛想がいい。俺等のような不審者を見ても、全く眉をひそめない。絶対に俺達には真似できない芸当だ。 そして俺がてりやきセット、遼一がタツタセットを持って、近くにあるベンチに二人で座り込んだ。 「いやー、うめえうめえ。最後に好物のマグロが食えて良かった、本当。」 タツタサンドを頬ばりながら、遼一が言う。滅多に見られないホクホク顔だ。 「マグロが好きなのか?」 「ああ。特に竜田揚げが大好きだからさあ、オレ。」 その言葉に偽り無く、僅か数分で食べ終わってしまった。やはり好物らしい。 かくいう俺も、数あるバーガーの中では照り焼きが好きなのだ。最後に食べる遼一との食事だ、好きなものをたらふく食って話をしたい。 ―――――――――そう、これで最後だ。 こんな笑顔を見ることも、もう叶わないこととなってしまうのだ。 出来るなら、もっと笑って欲しかった。こんな笑顔を、もっと見せて欲しかった。 いつもクールで冷静で、そして強かった遼一。そのくせ纏う雰囲気は何処か儚げで虚ろだった。 今ここで二人、心の底から笑い合える幸福。それを俺は今更ながら噛み締めていた。 全てが終わるとき、俺は・・・・・・俺と遼一は何を思うのだろうか? PM6:28 「すっかり夜になっちまったなあ。」 「ああ。でもこれからが見物だからな、期待しようじゃん?」 全てのアトラクションに乗り、全てのエリアを回った後、俺達はアクアエリアの港から発信するクルーザーの上にいた。 俺達の他にも20〜30人ほどの客が居るが、狭苦しさは感じられない。このクルーザー自体が広いからだろう。 そこの屋上に俺達は居た。ここには誰も居ない、二人っきりで俺達は6:30から始まる『ある出来事』を待ち構えていた。 「もうすこしだ・・・・・・10,9,8,7,6・・・」 遼一が腕時計を見ながらカウントを刻んでいく。それに比例して、ピグミーランド全域の明度が落ちていった。 あと数秒で始まる。その光景を俺達は最後に目に焼き付け、そして世界から去り逝く。 否応なしに緊張する。当たり前だ、一生に一度しか見られない物なのだから、心の準備をしなくてどうする。 そんな俺の緊張を横目に、遼一はカウントを続けていた。 「3,2,1・・・0!」 カウントが終わる。それと同時に、全ての電力がダウンした。 敷地内が沈黙と闇に包まれる。俺はその中で、その瞬間を待っていた。 もう少し、もう少しだ。 あと0,1秒先に、その瞬間が来る。 準備は良いぞ、さあ来い―――――――― 次の瞬間、電力が一瞬にして回復した。 いや、回復したというのは適切な表現ではない。普段の何倍もの種類の色が、さっきまでとは比べ物にならない明るさで光っていたのだ。 そして音楽が鳴り響く。トランペットを初めとする吹奏楽器、木琴などの打楽器による祭りの音楽だ。 そして空を見上げる。そこには様々なネオンの装飾を施したアドバルーンが幾つも漂っていた。そこからは色とりどりの紙細工が舞い落ちる。それらは無数の光を反射して煌めいていた。 そしてその欠片は俺達の元にも降りてきた。 「・・・・・・武は、雪って好きか?」 遼一が問い掛けてきた。 「雪、か? まあ好きだけど、どうした?」 「あの日も・・・・・・雪が降っていた。」 「・・・・・・あの日?」 「オレが母さんを殺した日だ。」 「あ・・・・・・」 そう、まるで虹色の雪だった。 ここにいる全ての人間に等しく降り注ぐ。これから生き永らえる者達にも、これから死に逝く者達にも。 人の幸福は平等に与えられない物なのか。俺や遼一のような者に、幸せは与えられないのか。 永久に原罪を抱いて眠るしかないのか。死の間際まで罰を受け続けながら。 「武・・・・・・武は、原罪って何だと思う?」 「原罪?」 「全ての人間に平等な者は"死"と"時間"・・・・・・誰かがそんなことを言っていた。 だけどもう一つだけある。それは"原罪"。」 「・・・・・・」 「でもオレの背負う物は、あまりにも大き過ぎて・・・・・・どうすればいいのかわからないんだ。」 俺のような凡人などとは比べ物にならない罪。身を切り裂かんばかりの苦悩。それらに遼一は心を焼かれ続けてきたのだ。 償いたくても償いきれない。生きている限り、その罪は消えないから。 死すること以外、贖う術を知らない。そんな遼一が、俺はひどく哀しかった。 「・・・・・・誰かのために生きること、じゃないかな。」 だから言った。どんな嘘でも構わない。嘘つきと貶められても構わない。どんな言葉を使ってでも、こいつの重荷を軽くしてやりたかった。 「人間は自分のために原罪を犯す。自分が生き残ろうとするために、他の動物を殺して食う。 なら自分の為じゃなくて、自分以外の誰かのために何かをしてやれれば、少なくとも何かへの償いにはなるはずだ。」 立った今考えた即興のセリフ。 こうでも言わなければ、あまりにも救いが無い。そうじゃなければ、遼一が可哀相だ。 少なくとも死ぬ瞬間は、全ての罪から解放されていると信じさせてやりたい。そう思った。 「・・・・・・そうかもな。」 遼一が答えた。 「お前の言う通りかもな。理にかなってるよ、お前の言ってること。でも・・・・・・」 「でも、何だ?」 「・・・・・・オレは、誰かのために生きられたか?」 そう、遼一はまだ解っていない。自分に誰かが救えることを。 遼一に救われた人間が、少なくとも一人、ここに立っていることを。 「・・・・・・ああ。」 それを解らせてやらねばならない。今すぐにでも。 「だってオレは、お前に救われた。お前に初めて声を掛けられたときからずっと、オレはお前に救われ続けてきたんだ。 だからきっと、お前は・・・・・・・・・全ての罪をチャラにされてるはずだよ。」 遼一に罪なんて有りはしない。生きていること自体が罪だなんて、絶対に認めない。 例えどんなに恨まれようと、こいつに罪はない。何があっても、俺はそう信じる。 「・・・・そうか。」 俺に微笑み掛ける遼一。それを見て、俺も少し気持ちが和む。 が、すぐに遼一は向こうを向いてしまった。表情を悟られまいとしているかのようだ。 そして、こう呟いた。 「そして自分以外の誰かのために命を捨てられたとき・・・・・・そいつはその生涯で積み重ねてきた全ての原罪から解放されんのかな。」 PM8:23 「・・・・・・終わったな。」 「ああ。」 パレードが終わり、俺達はピグミーランドを出た。 達成感は無かった。むしろ喪失感に似たものがあった。 これで本当に終わり・・・・・・全てが終わる。 「これで・・・・・・終わるんだな。」 「ああ。」 ケリを着ける。 この世界に別れを告げる。 クソみたいな現実から逃げ出す。 「・・・・・・んなんでいいのかよ?」 「あ?」 振り向く遼一。その顔に対して、俺は言った。 「本当に、このまま死んでいいのかよ?」 ここに来てハッキリした。このままでは、俺も遼一も終われない。 「このままじゃ・・・・・・このままじゃ死ねないよ、オレは。 まだオレは、遼一と居たいよ。まだ遼一とやりたいことがまだ有るんだ。 なあ・・・・・・考え直してみないか?」 「考え直す必要はない。」 キッパリと遼一は言い放った。その言葉には、一切の容赦も感じられない。 「忘れたのかよ? オレの命はもう永くない。放っておいても、どうせ死ぬ運命だ。だったら死ぬ日が決まっていた方がいい。」 そうだ、遼一は死ぬ運命にある。 もう余命幾ばくもないことは、遼一自身から聞いた。 確かに遼一の気持ちは分かる。俺だったら気が触れてもおかしくはない。 だが・・・・・・ 「だからこそだ! もう先がないからこそ、終わりの瞬間まで生き抜こう! オレだけじゃない、板谷や菊地、奈帆だって・・・・・・みんなお前の傍に居てくれるはずだ!!」 つい声を荒げてしまう。 だが仕方のないことだった。遼一を止めたいという感情が、俺を高ぶらせていた。 「・・・・・・一月一日、例の崖で待ってる。」 それだけ言い残すと、遼一は行ってしまった。 その姿が見えなくなった後には、俺だけがその場に立ち尽くしていた・・・・・ |
あとがき よっしゃ、もうここまで来れた・・・・・・後は最終回を書くだけ〜!! いや、間に一話挟んで、その次に最終回です。エピローグもあるから、合計3話だな。・・・・・・・・・やっぱちょっとキツイかも(汗) やっぱね、最終回は凄いことになりますよ。楽しみにしておいて下さい。賛否両論別れることは目に見えてるんで(苦笑) BGM:『見つめていたい』flow−war |
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