※この作品には暴力的な表現が含まれています(笑)
そういった表現が嫌いな方は読むのをご遠慮ください。

Weiser Hund  〜ある日常の1コマ〜
                              作 如月紅葉

私の名は小西一也。鳩鳴館女子高等で教鞭を振るっている。
正確に言えば私が振るうのは指揮棒なのだが、それはここでは置いておこう。
友人達は私が若い女性の中で働けて羨ましいと思っているようだが
実際はそれほどに楽なことではないのだ。特に世代の壁は厚い。
現に私は彼らに「コニー」と呼ばれているようだ。
はっきり言っておこう。私はこの愛称を気に入っている!
だから私はコニーと名乗ることにしよう。

コニー「はぁぁぁぁぁぁ……」
私は大きなため息をついた。
真っ昼間から大の大人が公園に入り浸っているのは異様な光景だ。
職場にも顔を出さず一人で鬱に入っていた。
コニー「ああ、ポチ、どうして逝ってしまったんだい?」
ポチというのは私が飼っている、いや飼っていた電子犬の名前だ。
コニー「一緒にお風呂に入ったのがいけなかったのかい?」
そう、ポチはお風呂に入ったきり動かなくなってしまったのだ。
コニー「せめて逝くなら私も感電死させてくれればよかったものを!」
そう叫んだ私にいくつかの白い視線が突き刺さる。
昼間の公園は若いママさん達の集合場所だ。脚光を浴びるのは悪い気がしない。
コニー「帰って来い!ポチ〜〜〜〜〜!!!」
粘りつくような視線もものともせず再び私は叫んだ。
??「クゥ〜〜〜ン?」
コニー「む?」
その遠吠えに反応したのか、一匹の白い犬が私を見上げていた。
白い犬「ワン!」
コニー「おお!かわいいなぁ……」
私は自他共に認める無類の動物好きだ。
白い犬「ワン!ワン!」
コニー「ひょっとして私を慰めてくれているのかい?」
白い犬「ワン!」
コニー「おお、そうかありがとうなぁ」
私はその白い犬を抱き上げた。が、すぐにその子に違和感を覚える。
コニー「まさか、君は電子犬なのか?」
電子犬「クゥ〜〜〜ン?」
コニー「いや!間違いないな。君は電子犬だ!」
恐ろしく精巧に出来ている電子犬だ。市販の物とは比べ物にならないレベル。
外見や反応も本物となんら変わりない。
コニー「そうか!君は私と出会うために生まれてきたんだね?」
犬に熱心に語りかける私を見て無邪気な子供達が反応を示す。
子供「ママ〜、あのおじさん犬と喋ってるよ?」
ママ「しっ!指を指しちゃいけません!」
なかなかに酷いことを言われているようだが、今の私には関係なかった。
ようやく運命の伴侶に出会うことが出来たのだ。
コニー「ああ、君よ。これからはずっと一緒にいてくれよ?」
その台詞を聞いたママさん達が子供を連れて
そそくさと公園をでてくのが目の端に映ったが気にしない。
コニー「さあ!君にさっそく名前を…」
??「ピピ〜!どこに行ったの〜?」
む?何ものだ?私とこの子の邪魔をするのは?
??「あら?ピピ、ここにいたのね」
ピピ?「ワン!」
この子の飼い主だろうか?オレンジ色の髪を肩まで伸ばし、何故か白衣を着ている。
どこかで見たことがあるような顔立ちだった…が!
今はそんなことはどうでもよかった。
私とこの子が離れ離れになるのかもしれないのだ!
コニー「やらせんよ……」
??「は?」
コニー「この子を賭けて私と勝負だ!」
??「あの?ちょっと?」
ピピ?「クゥ〜〜〜ン?」
コニー「問答無用!」
鋭い右ストレートを繰り出す。しかしそれをあっさり回避する謎の女。
謎の女「ちょっと、危ないでしょ?」
コニー「ちぃっ!やるな!」
次は右足でミドルキックを繰り出す。しかしこれも回避される。
謎の女「本気のようね……それならこっちも手加減はできないわよ?」
コニー「望むところだ……来い!」
謎の女「はっ!」
気合と共に繰り出される、鎌の如きハイキック。
タイトスカートでキックを出すというのは男に対しては有効だ。
見えそで見えないというのが男の浪漫だからに他ならない。
コニー「甘いなっ!夫婦仲の冷え切った中年を甘く見るな!」
バックステップでそれを避ける。そのまま滑るような動きでインステップ。
ダン○ィーステップと呼ばれる動きだ。
コニー「私の相手をするのに君はまだ、未熟!!!」
そのままの勢いを使い拳を繰り出す……その直前に殺気を感じ行動を停止する。
ロマン○ャンセルと呼ばれる動きだった。
身を屈めた私の頭上をひどく重い一撃が通り過ぎる。相手の女の顔に焦りが浮かんだ。
おそらく一撃目はフェイク。
次の一撃をカウンターで入れることによって決着をつける気だったのだろう。
だが見切ってしまえばどうということは無い。
コニー「とどめだっ!くらえぃマッハパン…ぐはっ!?」
隕石が頭に直撃したのかのような衝撃が私を襲った。
コニー「二撃目も……フェイク…だとっ!?」
天才的なボディバランスによって二撃目の軌道を無理矢理、変えての一撃。
コニー「見事、なり……」
そのまま崩れ落ちる。この戦い一遍の悔いも無し!
コニー「ふっ。時折、君のようなのが現れるから人類というのはおもしろい。」
謎の女「ヤバ……ひょっとして頭打っちゃたかな?」
あれほど小気味いいカカト落としをいれておいてそれはないものだ。
謎の女「ま、まあ目撃者もいないみたいだし。いっか。」
おい!何を考えている!?
謎の女「それじゃ、お大事に。ピピ、行くわよ」
ピピ?「ワン!」
女は去っていった。
コニー「ふふふ……ふはははははははははは!」
素晴らしい!なんと素晴らしい人生の転機だ。
拳を交わすに相応しい強敵(とも)に会うことができた。
一生を添い遂げるに相応しい伴侶に出会うことができた。
どうやら人生な新たな目標が出来たようだ。
コニー「ふははははははははははははははははははははははは!!!」

彼の笑い声は春の澄み切った空に溶けていった。
世の中はどこまでいっても平和だった。



妄想暴走シリーズ、第三弾
おそらく彼にスポットが当たるのは最初で最後でしょう。
そんな主役を使うのが私が私である所以。
彼の名前は「当たり、当たり、当たり前〜!!!」の人から頂きました。
さて「謎の女」とはいったい誰のことか(笑)
わからなかったらもう一度最初から読みましょう。


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