――ある研究員の手記より
神々に背いた研究を続ける我々に訪れるであろう
滅びの日のためにこれをここに書き残す。
いつの日にか真実が現われる日のために。


〜Tief Blau〜
                              作 如月紅葉


TB…それは深海119mの熱水噴出孔にのみ棲息するウィルスである。
空気感染し症例はエボラウィルスに酷似している。
このウィルスの恐ろしい点はその致死性である。
ひとたび発病すれば抗体が作られよりるも早く宿主の体を破壊する。
その性質ゆえ細菌兵器としての利用価値を見出され
以来、ここIBFで研究が続けられている。

しかし…私の持つ理論はこれらとは全く異なるものだ。
いまだ推論の域を出ないが心のどこかでは確信をもっている。
TB…存在する事さえ奇跡に近いこのウィルスはおそらく
キュレイウィルスと同じレトロウィルスだ。
多く研究員は誤解をあるいは幻想を抱いているようだが、
キュレイウィルスというものは人に不死を与えるものでは無い。
テロメアの回復を始めとした各種能力はもとより人間に備わったものだ。
キュレイ種といえども上空10000mから地面に叩き付けられたり、
10tの土砂に押し潰されたりすれば、死を迎える。
人間はけして自分の能力を超えたことをこなす事はできない。
しかしもともと持っている力を引き出すことはできるはずだ。
これがキュレイウィルスやTBが持つ力である。

それならばTBに与えられた力とは何か?
私は漠然と「人間に限界の力」をもたらすものではないか?と考えている。
人間の限界というものは人間が考えているよりも遥かに上の領域にある。
人間がその気になれば我々がいる場所、すなわち深海119mでも
生身で活動することができるはずだ。
しかしTBはあまりにも強力すぎる。ほぼすべての人間にはこの限界の力を
受け入れるだけの器が無いのだ。その力を手に入れる前に肉体が
急激な変化に耐え切れずに破壊されてしまう。
あるいはキュレイ種であればこの変化に耐える事も出来るかもしれないが、
強力すぎる免疫力がTBさえ駆逐してしまうだろう。

TBが我々に与えた試練を乗り切るにはどうすれば良いのか?
専用のアンプルを使えば症状を緩和する事も可能だが、
それも一時的な物だ。本当にこの試練を乗り越えるためには、
同じく人間の常識を超えた力が必要とされる。それは肉体を超えた力。
想像を絶する「意志」の力がそれだ。
ただ純粋に「生きたい」と願う思いでも「何か」への執着でも構わない。
生半可のものではなくただそれだけを願う、といった、
途切れようとする命綱を繋ぎ止められるほどの強い意志が必要だ。

未来の無い我々ではそれを見つけることは不可能だろう。
ただTBが汚名を負うことの無いよう、それだけを祈って…

濃紺の深い暗闇の中で抵抗を続けよう…



海中の武の復活を元にして考えました。やや強引な部分もありますが…
ただ田中氏だけが生き残ったのもこういう理由だったのではないか?
と考えました。
私はTBもライプリヒも悪だとは考えていません。
問題なのはありとあらゆる厄介事を寄せ集め、そして背負い込んでしまう、
武のトラブル体質にあるのでしょう。







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