凍えるような乾いた冬空の下。僕は一人、待ちぼうけをくらっていた。
緑と赤を基本とした装飾が街の至る所に飾られ、
ジングルベルのリズムが流れ、街はクリスマスムード一色に染まっていた。
その中を楽しそうに行き交うカップル達を横目に見ながら、思い出に耽る。
『(そういえば、あの時もこうやって誰かを待っていたんだよなぁ…)』
決して忘れることのできないだろう事件を思い出す。
あの時と、今と、待っていた人はきっと同じ人だったのだろうと思う。
時計を確認する。まだ10分前、急いで来すぎたかもしれない。
でも待つのは全然苦痛ではなかった。
むしろ彼女の笑顔が見れるのならそれだけで心が躍る。
「おぉ〜〜〜い!少ちゃん!」
ドクン!自分の心臓が跳ねるのを感じる。小走りに彼女が近づいてくる。
やがて……彼女は僕の前に止まり、笑顔を浮かべた。


〜幸せな日常と流れ行く未来へ〜
                              作 如月紅葉


「はぁっ、お待たせ!少ちゃん。」
「ワン!」
ココの浮かべた笑顔にドキドキしつつピピが一緒なのを残念に思う。
『(二人っきりだと思っていたのに……)」
「ん?どーしたのかなぁ?」
『ゴメン。なんでもないよ。それじゃ早速いこうか。』
「うんっ!」
すっと手を差し出す。ココも自然にその手を握ってくれた。
ココの手はこの寒空の下でもとてもあったかかった。
今回のことのきっかけはお互いに学校が冬休みに入ったので
一緒に遊ぼうという話になったのだ。
――あの事件、LeMUでの事件の後、無事に全員脱出できたものの
皆が皆、予断を許さない状態だった。特にココはTBの症状が重く、
入院を余儀なくされた。一時は命も危ぶまれたが父親の八神岳人氏の適切な処置もあり
まもなくココは元気になった。娘が危機にさらされたこともあり八神氏は
ライプリヒを告発。事件の全貌が明らかになり、ライプリヒ製薬は日本から撤退した。
普通の生活に戻ることができた僕は、その後もココと連絡を取り続けていた。
そう……友達として。滅多に会うことが出来ない以上、今回のことは楽しみだった。
「ふっふぅ〜ん♪ふっふぅ〜ん♪」
「ワンワン!ワンワン!」
『楽しそうだね?ココ。』
「うん!楽しいよぉ〜。だって少ちゃんと初めてのデ〜トだもんね〜♪」
『デ、デ、デ、デ、デ、デッ、デート?』
「そうだよデ〜トだよぉ。」
『だ、だ、だって、そんなのは、ほら、それが、そうじゃないとっ!』
我ながら何を言ってるのか全く意味不明だった。
「ま、いいから、いいからぁ〜。」
ココが飛びつく様に僕の腕に抱きついてくる。
僕の心臓はずっとドキドキいっていた…
駅前までそのまま歩いていく今日は遊園地へと行く予定だった。
駅前の見慣れた風景に埋まってしまうモミの木も今日だけは大活躍だ。
天辺の星は煌々と輝き、その下には天空を目指す星から流れ出た雫を思わせる、
色鮮やかできらびやかな電飾が施されていた。
ツリーは昼間にも関わらず明かりを灯し、その存在感を示している。
「綺麗だねぇ…」
ため息を吐くようにココが呟く。
『うん…そうだね。』
生返事を返す。僕の意識は右腕の重みと温もりに集中してしまっていた。
「あんなおっきなツリーがお家にあったらいいのにねぇ?」
『うん…そうだね。』
「…………」
「クゥ〜ン?」
『………?』
「ねえ、少ちゃんはココと一緒にいるの……つまらないかな?」
『え!?そんなこと無いよ!』
「でも……」
ココの顔が泣きそうに歪む。僕はそんなココの顔を絶対に見たくなかった。
『僕はココの笑ってる顔が好きなんだ……だからそんな顔しないでよ……』
「……笑顔だけ…?」
『え…?』
「……笑顔だけなの…?」
『ココ?』
「ココは…ココはね……涼ちゃんのこと好きだよ。」
え?今、ココは僕のことを涼ちゃん、って呼んだのか?
それにココが僕のことを、好き…って?
僕の頭はひどく混乱していた。それでもココは告白を続ける。
「ココはね、ずっと前から涼ちゃんのことが好きだったんだ。ココ知ってるんだよ?
 IBFにいた時とか、ココが入院してる時とか、その後電話してた時とか、
 涼ちゃんがずっと傍にいてくれたって、知ってるんだよ?」
『…………』
「だからね、ココは涼ちゃんのこと好きになったんだよ?」
『…………』
ココの瞳には僕しか映っていない。
何か!何か言わなきゃ!頭ではそう考えていても口は動いてくれなかった。
「やっぱり……ダメ…かな…?」
だから僕は代わりにココの小さな体を抱きしめた。
「涼…ちゃん…?」
『…………』
「…………」
『…………』
「…………」
「クゥ〜ン?」
『僕も…僕もココのこと好きだよ。ずっと前から…いや初めて会った時から…』
「涼ちゃん…ホントにホント?」
『ホントにホントだよ。』
「ホントにホントにホント?」
『ホントにホントにホントだよ。』
「ホントにホントにホントに…」
『僕はココのことが大好きだ!!!』
キリがなさそうだった。だから思いを強く口にする。
『僕は、ココのことが、大好きだ……』
そしてもう一度繰り返す。
「うん…嬉しい……」
そうして、しばらく僕たちは抱き合っていた……



今日はクリスマス・イブ。恋人達の1日だ。世界が幸せで満たされますように…
メリークリスマス!!!



あとがき
さてクリスマス用SSですがどうだったでしょう。
やや短いですがほのぼのとした純愛が書けたと思ってます。
ライプリヒやTBについてもたまには平和に終わる結末があってもいいかな?
やはり呼称は「涼ちゃん」がいいと思うのですがどうでしょうか?
ココの性格はちょっと違うような気はしますが…彼女も成長してるんだ!
ということで納得してください(笑)
と、いうかあんなテンション高いキャラ、普通に書けるか!(爆)




2002


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