※作品的には『壊れ』に入ると思われるので、ジョークの解せる方のみご覧下さい。
また、若干の暴力的表現が使われていますのでご注意下さい。
















【前回までのあらすじ】

ある日武が桑古木から渡されたのは、非日常的な戦いの始まりを告げる印だった!!
初めは戦いを嫌がった武だが、謎の頭痛と『小高真央』という少女との出会いが武の心に戦う決意を固めさせた!!



武「これで決まりだぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」
真「きゃあああああああっ!!」
武の輝く右腕が、真央に炸裂した。
もうもうと立ち昇る砂煙の中、ゆっくりと立ち上がった武は自分の右腕を見て、
武「これが…俺のファイナルベント…『シェルブリット』……」
そう、呟いた。


仮面ライダー武 
〜17人の戦士達〜

                             レイヴマスター


その2『一体どうしろってんだよ!!』


今坂唯笑と加賀正午は絶望した。
決死の覚悟で繰り出したファイナルベント。
それらは無惨にも空の『レイザーベント』のビット防御によって失敗に終わった。
空「貴方達は二つの失敗を犯しました」
空はあくまで冷静に、地面にへたり込む二人に告げる。
空「まず第1に、加賀さんは体力が少ないのに関わらず突進系のファイナルベントを発動した。それでは威力は半減…いえ、それ以下でしょう」
正「くっ…」
空「そして第2に、私のビットの耐久力が予想を超えていたことです。ビットは砕けてしまいましたが、私はこうして無傷でいるのですから」
言いながら空はカードを一枚引き抜いた。
空「さらに…こうすることで…」
カシャァァン!『ファイナルベント』
空がファイナルベントカードを差し込むと、壊れ地面に散らばっていたビットが、再びその形状を形成した。
空「このビットは再生するんですよ。骨折り損、でしたね」
唯「そ、そんな…」
空「終わりです」
空の前で3つのビットが円心回転を始める。
徐々に高まり、収縮されていくエネルギー。
そして。
ズドォォォォォォォォォンッ!!!
凄まじい速度で放たれたレーザーは、二人を断末魔の叫びをあげさせる暇もなく、消し去った。


                 『仮面ライダー唯笑』『仮面ライダー正午』同時脱落 ――――― 残り13人 ―――――


武「ぐわぁぁぁぁっ!!」
真央の突進攻撃を正面から受け止めた武は4,5メートル吹っ飛ばされた。
まさしく暴走トラックにはねられたかのような衝撃だった。
武「ちぃっ、一体どうすりゃいいんだ…!」
如何せん実戦経験の少ない今の武にとって、真央は手に有り余る強敵だ。真っ正面から攻めても勝ち目は低いのだが…。
武「(人生どんな時でもノーコーティング&ストレイト!それが我が家の家訓だ!!)」
やけに家訓にこだわる武は、真っ正面からの撃破しか頭に思い浮かばなかった。
武「(そういや…つぐみが言ってたな…)」
武はあることを思い出していた。


それは少し前。桑古木が帰った後、武はつぐみから再びカードについての説明を聞いていた。
つ「…それにしても、このデッキの中身、まさしく武用、って感じね」
武「ん?どういうことだよ?」
つ「カードの種類は普通3種類に分かれるわ。『近距離・直接攻撃型』『遠距離・間接攻撃型』『召喚型』って具合に。普通はそれらがバランス良く入ってるものなんだけど…」
武「けど、何だよ?」
つ「武のカードは全部『近距離・攻撃型』タイプのものなのよ」
武「うげえっ!?マ、マジかよ!」
つ「マジね。だって17枚中8枚が『ストライクベント』だもの。ある意味嫌がらせよ」
武「くそう…桑古木の奴、今度向こうで会ったら一発お見舞いしたろか…」


その時の桑古木…優春によって昇天中。


つ「でもまあ、いいんじゃない?武、遠くから狙ったりするの苦手そうだし。ふふ」
武「別にそんなことはない!だが、そんなことは漢のすることではないな、うん」
つ「そうでしょ?だから、このデッキは武に使われる為に渡されたのよ、きっと」
武「そういう捕らえ方もあり、か…。…そうだな、そう思おう!!」


武「(確かにつぐみは8枚あると言った)」
最初に使ったストライクベントは先の衝撃で壊れ無くなってしまった。普通は一枚が所持数の限界だと思うに違いない。
つまり、真央は武にはもうストライクベントが無いと思っているはず。
ならばチャンスだ。真央の突進に合わせて素早く2枚目のストライクベントを使う。
そうすれば真央は一瞬動揺して動きが鈍るかもしれない。
そこを突き、一気にファイナルベントで片を付ける!!
これが今の武に思いつく、最大の作戦だった。


武「こんな時優や空ならもっと安全な作戦を思いつくんだろうなあ〜…でもまあ、仕方ねえか」
真「何ぶつぶつ言ってるんですか?そろそろ終わりにしますよ!」
真央が距離をとって突っ込む体制に入る。
チャンスは一瞬だ。止まる場所が遠すぎれば当たらないだろうし、近すぎると吹き飛ばされる。
武は全神経を極限まで研ぎ澄ます。
真「とおりゃーーーーっ!!」
真央が周囲の空気を燃やしながら突っ込んできた。そのスピードは衰えてはいない。
武「(今だ!)」
武は素早くデッキからカードを引き抜くとバイザーに差し込んだ。
カシャァァン!『ストライクベント』
その声とともに武の腕に再びストライクベントが装着される。
真「えっ!?」
武の予想通り、一瞬だが真央の足が止まった。そしてその勢いは止まることなく…
真「ぶっ!!」
真央は顔面から地面に派手にすっ転んだ。
武「よっしゃあ!行くぜっ!!」
その隙を武は逃さなかった。デッキから流れるような動作でカードを引き抜き、差し込む。
カシャァァン!『ファイナルベント』
すると、武のストライクベントがまばゆい光を発し始めた。全身に力がみなぎる感覚がある。
武「…行くぜぇぇぇっ!!」
武は地を蹴って、猛烈な勢いで真央に迫る。
真「痛ったたたた……って、わあっ!?」
転んでいた真央が起き上がると、すぐそこまで武は迫っていた。
武「これで決まりだぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」
真「きゃあああああああっ!」
ズドォォォォォォンッ!!
武の輝く右腕が真央に炸裂した。


もうもうと立ち昇る砂煙の中、ゆっくりと立ち上がった武は自分の右腕を見て、
武「これが…俺のファイナルベント…『シェルブリット』……」
そう、呟いた。
武「……ん?」
ここで武は妙な点に気づいた。
武「(何で俺はファイナルベントの名前を知ってるんだ?)」
しかも何となくだが、少しマズい名称な気もする。また、
武「(何で俺は一発でファイナルベントのカードを引くことが出来たんだ?ありえなくはないが、1/15なんて確率は低くは無いのに…)」
とも思った。
だが武は思うだけで、口には出さなかった。つぐみの言葉が、頭に響いていたからだった。


つ『作者に消されるわよ』


多少の理不尽(ご都合展開ともいう)には目を瞑ることにした武であった。


                『仮面ライダー真央』 脱落 ――――― 残り12人 ―――――


同時刻、ミラーワールドの他方。
深山直人は無惨に破壊された愛機・赤とんぼの前で膝をついた。
直「そ…そんな…俺のファイナルベントが破られるなんて……」
?「ふふ…そんなぼろっちい飛行機での体当たりなんて、貧弱なファイナルベントよね…」
うなだれる直人の側に、余裕の表情を浮かべながら一つの人影がやってきた。
直「ぼろっちいだと!?俺の赤とんぼを馬鹿にするな!!」
?「敗者が何と言っても聞こえないわ。悔しかったら勝てばいいのよ」
直「ち…ちくしょおぉぉぉーーーっ!!」
直人は立ち上がって拳を振り上げる。だがその攻撃は空を裂き、直人はそのまま地に倒れこんだ。
?「終わりね。安らかに逝きなさい」
そう言って影はカードを引き抜く。
直「赤とんぼで空を飛びたい…ただ、それだけなのに!そんな願いすら叶えられないのか!!」
?「弱者に夢を語る資格は無いの。…さようなら」
カシャァァン!『ファイナルベント』
直「ぐっ…!?ぐああああああああああーーーーーーーっ!!」
上体を一度大きく仰け反らせた後、直人は痙攣しながら…ゆっくりと…その姿を消した。
?「クスッ…これでまた、一人脱落だね…」
影はうっすらと笑いを浮かべると、漆黒の闇の中へと消えていった。


                 『仮面ライダー直人』 脱落 ――――― 残り11人 ―――――


ミラーワールドから戻った後。武は激しい罪悪感に晒されていた。
武「俺は何てことしちまったんだ……!!」
戦いがどういうものかは知っている。ライダー同士の出会いがどのような結果をもたらすかも分かってはいた。
しかし、それでも。武には真央を倒したことへの罪悪感が重くのしかかっていた。
武「あの娘は…どうなったんだろうか…」
本当に死んでしまったのだろうか?もしかしたら強制的にミラーワールドを追い出されただけで、今はぴんぴんとしているのかもしれない。
だがそんな考えは気休めにもならず、武は右手を握っては開いて握っては開くことを意味も無く繰り返す。ふと、LeMUで命について熱く語ったことを思い出し、思わず自嘲の笑みが浮かぶ。
武「今の俺を17年前の俺が見たら…何て言うかね?」
命とは尊いものだ。美しくあるもので人の手でどうこうしていいものではない。その考えは変わらない。
その命を、自分は奪ってしまった。そのことが武を押しつぶし、殺してしまいそうだった。その時。
つ「ただいまー」
ガチャリと玄関のドアが開き、つぐみが帰ってきた。
つ「…武?一体どうし…!?」
居間に入ってきたつぐみを、武は抱きしめた。ぎゅっと力を込め、絶対に離さないかのように、強く、強く。
つ「武…」
そんな武をつぐみはゆっくりと抱き返す。武の体は小刻みに震えていたから。いつも自分を、家族を暖かく見守ってくれているからこそ、今は自分が武を包み込んであげたいと、つぐみは思った。
と。
沙「あの〜、パパ、ママ…?」
ホ「何だか非常に…雰囲気に入りづらいんだけど…」
居間からひょっこりと沙羅とホクトが顔を出した。結局あの後3人は優秋と別れ、一緒に帰ってきたのである。
武「うわぁおっ!?お、お前らいるならいると最初から言え!!」
武は一瞬にしてつぐみから離れ、いつもの口調で話しかける。
ホ「そんな事言われても…靴脱いで居間に来たら…その…もう2人とも…」
沙「ラヴラヴオーラ全開でござったからなぁ。あまりの衝撃に拙者、一瞬別の世界に逝くところでござったよ。ニンニン」
沙羅はそう言って笑い、ホクトは照れて下を向く。ここのところに二卵性双生児の性格の違いが表れる。
武「んがぁ!そんなことはいいから、飯にしようぜ。今日は俺が作ってやるよ」
武はそう言ってつぐみの買ってきた食材を調べる。料理をしようと言い出したのに理由は無い。ただ、調理に没頭すれば嫌な気分を少しは和らげられるかもしれない。そんな思いからだった。


夕食後。
沙羅とホクトが部屋に戻った後、つぐみは居間でテレビをボーッと見ている武に声を掛けた。
つ「武…」
武「ん?どうした、つぐみ?」
武はのっそりと体を持ち上げ、つぐみは武の右肩に寄りかかる。そのままつぐみは上目遣いに武を見て、
つ「ねえ…武。一体何があったの?夕方から何か変よ、あなた…」
武「別に。何でもないさ…」
つ「…武。そんなに私って頼りにならない?」
武「なっ…何だよ、急に…」
つ「私は武の全てが知りたいの。もちろん、他人が知りえることなんて限界があるけど…。それでも私は武の全てが知りたいと思う。武の苦しみを理解したいと思うの。かつて武がそうしてくれたように」
武「つぐみ…やっぱ、お前には敵わないな…」
そう言って武は自分が今抱えている苦しみをつぐみに語った。


つ「そっか…それもそうね…。私は結局まだ誰一人として倒してはいないから分からなかったけど…」
武「とにかくさあ…軽すぎるんだよ。あんまりあっさりしすぎてすぐには死んだなんて思えないくらい。だけどさ、こっちの世界に戻ってから急に感じるんだよ。自分の罪の意識って奴を、強くな」
つ「私にも何となく分かるわ。もしかしたら…空間的なものなのかも…」
武「空間的?」
つ「そう。いわば…『罪悪感の麻痺』。自分の願いを叶える為に他人を犠牲にすることを何とも思わなくなる。そんな効果があの世界にはあるのかもしれない」
武「そんな…でも、別に俺は願いを叶えたいなんて思わないし、今日ミラーワールドに行ったのだって頭痛のせいで…」
つ「個々人の理由なんてどうでもいいのかも。この戦いを仕組んだ者…大いなる意思によるものなのかもしれない」
武「でも、殺したくはなかった…ただ、戦いをやめたくてやっただけなのに…」
つ「仕方ないわ。だって…やらなきゃ、やられてしまうもの」
武「だからって殺す必要はないだろ!?そもそも何でこんなことをする必要が…」
つ「それは…これから来る『奴』に訊きましょうか」
つぐみがそう言うとともに、キイイイイイイ…と耳障りな音が居間に響いた。
沙「ママ!これって…!」
ホ「桑古木が来たの!?」
つ「あ、あなた達、どうして…?」
沙「さっきトイレに行った帰りに、2人の話し声が聞こえたから…」
ホ「沙羅と一緒に、その…盗み聞きを…」
沙「まさかパパまでライダーだったなんて…何で言わなかったの?」
武「それは…俺は昨日ライダーになったばかりだったし…お前達に言う必要もないんじゃないかと思ってな…」
桑「そうだな。だが、武がライダーになった意味は大きいぞ」
桑古木は昨日と同じ場所に現れていた。その表情は上手く読み取れない。
沙「どういう事?」
桑「武は17番目…つまり今まで空いていた最後のライダーの座を埋めたわけだ。それにより、ライダー全員に大きな変化が起きた」
ホ「大きな変化?」
桑「そう…それは『戦う意思』。今まで欠けていた闘争心が武の登場によって燃え上がった、というわけさ」
つ「何でそんなことが…?」
桑「決まってるだろう?役者はもう揃ったんだ。ほとんどの連中は今までは知り合い同士顔つき合わせても会釈してやり過ごしたり、軽く衝突する程度なもんだったろう?」
つ「田中親娘は臨戦態勢だった気がするんだけど」
桑「…まあ、中には優や正午のような例外もいたがな。だが、昨日からはそれが常識となった。ライダーの脱落。親しい者同士の戦い。それはこれから激化していく」
桑古木は背を向けながら倉成一家に呟く。
桑「残り11人―――もしかしたらあと数日で決着はつくかもな?」
そう言って桑古木は鏡の奥へと姿を消した。
結局戦う理由は聞けずじまいだった。


その夜。
倉成夫妻はいつものように肌を重ね、同じベッドの上で体を休めていた。
武「なあ、つぐみ…」
つ「何?」
武「俺達さぁ…いつまでも一緒だよな?」
つ「いきなりどうしたのよ…当たり前じゃない。私も、沙羅も、ホクトも。もちろん武、あなたも。みんなずっと一緒よ。ずっと一緒に居るわ」
武「ああ…そうだよな…」
分かりきっていた返答。だが今の武にはその言葉が救いだった。あんな訳の分からない戦いで家族が無くなると考えたら怖くなったから。
そんな武を包み込むように、つぐみはそっと武の体に両手を回した。


翌日、ミラーワールド。
沙「♪どんなに僕等はごま〜かして、夢をかた〜る〜の〜♪」
沙羅は鼻歌混じりにそんな歌を歌いながらミラーワールドを歩いていた。これから大事な戦いがあるにも関わらず、いや、だからこそだろうか?沙羅のテンションは高かった。
沙「今日は負けないよ…絶対決着つけるんだから!!」
とは言っても相手は優秋ではない。昨日対峙した優夏のことである。
沙「昨日はしくじったけど…先輩とは一時休戦中だし、お兄ちゃんも助けてくれるし。3対1なら幾ら何でも勝てはしないよねぇ〜。小者は弱者、か…ん〜!いいセリフ!」
まず間違いなく優秋のセリフなのだが、そんなことは沙羅気にしない、といった感じで練り歩く。
だがその歩みは不意に止まった。沙羅の進行方向に、一人の人間が立っていたからだ。
沙「…一体何?って言ってもここでやることは一つしかない、か…」
沙羅はデッキからカードを引き抜こうとする。だが、相手に全く動きがないので、その手を止めた。
?「お前に一つ聞きたい……『今坂唯笑』というライダーを知っているか?」
人影はゆっくりと、静かな口調でそう尋ねてきた。その静けさがかえって不気味さを際立たせる。
沙「な、何よ突然…知らないわよ、そんな人……」
?「そうか…なら用は無い。じゃあな」
沙「ちょっ、ま、待ちなさいよ!!」
この世界で出会ったライダーは戦うのが常識。にも関わらず目の前のこの男は自分を無視してどこかに行こうかとしている。それが沙羅には我慢できないことだった。
?「…何だ?」
少しムッとした口調で男は答える。だがそれしきで怯む沙羅ではない。
沙「ここで出会ったライダーは戦うのが常識!逃げないで私と戦いなさい!!」
?「お前は唯笑を知らないんだろう?なら今の俺にはお前と戦う理由は無い。俺は唯笑を殺したライダーを探してるんだ。邪魔すんな!」
沙「そんな事言って!本当は私に負けるのが怖いんでしょ!?ま、無理も無いわね、何たって私は伊波殿を倒したライダー・倉成沙羅だもんね!」
?「何?お前が伊波を……分かった、戦ってやろう」
そう言って男性はデッキからカードを引き抜く。沙羅も身構え臨戦態勢に入る。
智「初めに名乗っておくぜ…俺は『三上智也』。言っとくが…俺は強いぞ!!」


ホ「ねえ優…ホントにここに来るの?」
優秋「きっと来る!私の元総長としての野生の勘がそう言っているの!」
勘だなんて随分優らしくないなあ…と思いながらも、ホクトは口に出さなかった。きっとそれだけ優は精神的に追い詰められているのだ、と分かったから。
何せ今待ち伏せているのは昨日戦った猛将・川島優夏その人だからである。
昨日は3人でもってようやく退却させただけで、しかも時間切れによる強制的なものであったから。しかもホクトの不意打ちがなければ優秋・沙羅ともにやられていた可能性もあったのだから、油断ならない。
優秋「相手は私と沙羅の二人でもってしても押されるほどの実力者。3人がかりでも勝てるかどうか分からないってのに…。沙羅はいつになったら来るのよ…」
ホ「…ねえ優?気になってたんだけど、どうして沙羅のことを『マヨ』って呼ばないの?」
優秋「そりゃそうでしょ。だってもう『松永沙羅』じゃないんだから」
ホ「そ、それはそうだけどさ…」
優秋「そんなことより、今大切なのは…」
?「私を倒すこと…でしょ?」
ホ・優秋「「!!」」
二人の背後にはいつの間にか猛将・川島優夏が立っていた。
ホ「いつの間に…!!」
優秋「また気配に気付かなかった…!あなた何なの!?人間!?」
優夏「当たり前じゃない。これは私のカードの能力よ」
ホ「…!そうか!『インビジブルベント』!」
優秋「何なのそれ?」
ホ「使用者の身体、音、気配…それら全てを知覚出来なくする特殊なカードだよ。以前に直人ってライダーに使われて苦戦した覚えがあるよ」
優夏「その通り。昨日あなたの背後をとったのもそのカードのお陰ってわけ」
優秋「…でも、どうして?どうしてそんなこと敵である私達に教えたりするの?」
優夏「そ〜んなの決まってんじゃな〜い♪今日今ここで、…あなた達は私によって葬られるからよ!!」
そう言って素早くカードを引き抜く優夏。
カシャァァン!『スマッシュベント』
その声と共に優夏の手に握られるは、一本のラケット。
優秋「!!ホクト、距離を取って!!」
ホ「分かってるよ!」
同時にそこから飛びのいて優夏との距離をとる2人。
優夏「ふふふ…せいぜい楽しませて頂戴!」
優夏はそう叫ぶと気合一閃、テニスボールを天高く投げ上げる。
ホ「…ねえ、優?もしかしてあれって…テニスボール?」
優秋「見ればわかるでしょ!油断しないでよ、とんでもなく強烈なんだから」
ホ「そうか…だったら……」
優夏「行くわよぉ…『必殺・ジャックナイフ』っ!!」
ホ「…勝機は、こっちにある!!」


同時刻、ミラーワールドの他方。
ここに2人の戦士が相見えた。
一人は『漆黒の斬鬼将』、小町つぐみ。
対するは『純白の聖天女』。茜ヶ崎空。
緊迫した空気が2人の間に流れる。
空「思えば…」
つ「ん?」
空「貴女と戦うのは初めてですよね…小町さん」
つ「そうね…それより空、もう『小町さん』はないんじゃないの?」
空「そんなことはないですよ?だって…私はまだ認めたわけではないんですから」
つ「…好い加減現実を見据えたら?武はもう…私の夫なんだから」
その時、空の殺気が一段と増した。
空「『私は認めていない』んですよ、『小町』さん…」
つ「……分かったわ。貴女がそういう態度を取るなら…こっちにも考えはあるわ」
空「…どうするおつもりで?」シュイイン…カシャァァン!『レイザーベント』
つ「…決まってるでしょ?」シュイイン…カシャァァン!『ソードベント』
つ「…貴女と同じことよ!!」


武「一体…どうしろってんだよ?」
武は困惑する。対峙するは自分が良く知る人間。こんなところで会いたくは無かった。
優春「仕方ないの…仕方ないのよ、倉成…これが、ライダーの宿命」
優春はそう言ってデッキに手を掛ける。
武「待ってくれ優!絶対…絶対に戦わなくちゃいけないのか?」
優春「私だって…貴方とは戦いたくは無いわ…だけどね、もう無いのよ、時間が」
武「時間が…無い?おい…どういうことだよ?」
優春「言った通りよ。時間が無いの。昨日桑古木から聞かなかったの?『あと2日のうちに決着がつかなかったらライダーの戦いによる願いは叶わなくなる』って」
武「な、何だよ…それは良い事じゃないのか?願いが叶えられないならもう戦う必要なんて…」
優春「そうじゃないのよ。桑古木は『願いが叶わなくなる』とは言ったけど戦いが終わるとは言ってないもの」
武の頬を冷や汗が伝う。風が、ひどく気持ちの悪いものに感じられた。
優春「このデッキにはね、制約があるのよ…」
武「…制約?何だよそれ…?」
優春「…このデッキを持つ者は戦いが終わるまで戦い続けなければならない。それを放棄した者には…死の裁きが下る」
武「……!!」
優春「つまりね…あと2日の間に全てが終わらなければ、それ以降の戦いは単なる殺し合いにしかならなくなるのよ。だから皆必死よ。恐らく…全てのライダーがここに集結している。決着は…近いわ」
武が感じるのは誰かに踊らされているという、とてつもない苛立ちと不快感。そしてそれに抗えない、自分自身の無力さ。
優春「今私が貴方に出来ることは一つだけ……せめて苦しまないように逝かせてあげること、それだけよ」
優春はそう言って静かにカードを引き抜いた。


桑「いよいよ始まったか…最後の聖戦が…」
桑古木は誰もいない、ミラーワールドの一角でそう呟いた。
桑「だが…どんなに頑張っても、最後に生き残るライダーは決まっている。運命は…変わらない」
そう漏らして、桑古木は当ても無く歩き出した。


沙「ああっ!!かっ…はぁっ……」
沙羅は派手に地面に叩きつけられる。余りの衝撃に息が出来なくなる。
智「言っただろう、『俺は強い』って。お前じゃあ俺には勝てん」
沙「ぐっ…!はあっ、はあっ…!!」
よろよろと立ち上がる沙羅。その全身はボロボロになっていて見ていて哀れなほどだ。
沙「私は…負けない!こんなところで、負けるわけにはいかないのよ!」
沙羅は力を振り絞りカードを引き抜く。そのカードは…『ファイナルベント』。
智「正気か?そんな体じゃあ満足に発動も出来ないんじゃないか?」
沙「うるさい…やってみなきゃ分かんないでしょ!」
嘘。沙羅にも分かっていた。きっとこれも彼には通用しない。でも、だけど。最後まで足掻いて足掻いて、そうして散りたかった。
智「…分かった。せめてもの手向けだ。俺もこいつで行く」
智也もカードを引く。『ファイナルベント』のカードを。
智「真正面からお前のファイナルベントを貫いてやる。貫いたら俺の勝ち、貫けなかったらお前の勝ちだ」
沙「…上等!いくわよぉ…!」
カシャァァン!『ファイナルベント』
マグロが、地面から現れ、沙羅の前に横たわる。沙羅はしっかりとマグロの尾を掴み、回すモーションに入る。
沙「うっ…!ぐううっ…!!」
みしみしと、全身が音を立てる。激痛が体を駆け巡り、苦悶の声が口から漏れる。
だが回転を止めるわけにはいかない。それは意地。絶対に負けたくないという意地だった。
沙「私は…勝たなくちゃいけないの!!」
沙羅の手からマグロが放たれる。マグロは今までと同じように空を裂きながら一直線に智也の元へと飛んで行く。
沙「いっけえーーーーーっ!!」
智「その怪我でこの速度…見事だ。…しかし!」
智也の腰から一閃の輝きが疾る。そして…
ズウゥゥゥゥン……。
マグロはその巨体を、真っ二つに斬られていた。
沙「そ、そんな……」
沙羅はがっくりと、膝から崩れ落ちた。
智「終わりだ」
そう言い放ち、智也が爆発的な勢いで距離を詰める。
沙「(パパ、ママ、お兄ちゃん…)」
智「ファイナルベント…『真神煉獄刹(まじんれんごくさつ)』!!」
沙「(……さようなら…)」
そう呟いた後、沙羅の意識は寸断された。


                『仮面ライダー沙羅』 脱落 ――――― 残り10人 ―――――


ホ「……沙羅…?」
優秋「何ボーッとしてんのホクト!?来たわよ!!」
ホ「あ、う、うん!」
2人に迫るは優夏のスマッシュ。それに対しホクトは光り輝く巨大な楯を構える。ボールと楯がぶつかった時、
ホ「光の楯よ、其を元あるべき所へと還さん!」
ホクトがそう叫ぶや否や、ボールは楯から離れ、優夏へと飛んでいく!
優夏「ああっ!もう、またなのぉ!?」
優夏は苛立ちの声をあげつつ、その弾を避ける。目標を失ったボールは遥か彼方の巨大ビルの瓦礫とともに消え去った。
優秋「ああっ、惜しいっ!後もう少しだったのにな〜」
そういう優秋の口調には余裕のようなものが聞いてとれた。
ホ「『リフレクトベント』…物質を反射して相手へと返す特殊なガードベント。これがある限り貴女は僕達には勝てない」
優秋「直接破壊なんてさせない。接近戦なら私の方に分があるんだからね」
『大惨死天』の切っ先を優夏に向け、ほくそえむ優秋。実際前回苦戦したのは優夏のしつこいスマッシュの為だったと、優秋自身は思っていた。
優夏「……そうね。そのガードがある限り私のスマッシュは通じない……だったら…」
優夏はゆらりと立ち上がり、一枚のカードを引き抜く。
ホ「(何だろう…?嫌な予感がする…)」
優夏は引き抜いたカードの表側を見せるようにくるりと反転させた。その表示には…『THE TIME VENT』と書かれていた。
優夏「仕方ないわね……これだけは使いたくなかったんだけど……」
ホ「…!くっ!!マズい!あのカードは…!」
慌てた様子でホクトが1枚のカードを装填した。
優夏「もう何をやっても無駄よ。…ケリを、つけるわよ!!」
カシャァァン!優夏のバイザーにカードが装填される。と共に、辺り一帯は光に包まれた。


空「連続射的!!対象を絶命させるまで続けるのよ!」
つ「全く…エネルギーの限界ってものはないの?」
空「そんな軽口が叩ける余裕があるんですか?まだまだ終わりませんよ!!」
ビシュウン、ビシュウン、ビシュウウンッ!!
高出力のレーザーが執拗につぐみを狙う。そのことごとくを、つぐみは完全に避けていた。
空「くっ…!流石、ライダーの中でもトップクラスのスピードの持ち主と言われるだけありますね…!」
つ「そっちの方こそそんな事言ってる暇無いんじゃないの?…『黒鷹旋』!!」
つぐみの手から剣が回転しながら、意識を持っているかの如くに空のほうへと飛んで行く。
空「甘いですよ小町さん。その程度のスピード、私にとっては止まっているようなものですよ!」
空は瞬時に計算し、つぐみの黒鷹旋をギリギリのラインで避ける。
空「武器を自ら手放すなんて、愚かですね。一気に攻め立てます!」
ビシュウン、ビシュウンッ!
レーザーが再び連射を始めた。今度は出力が若干落ちているが、発射の感覚が先程より狭まっている。
どうやらつぐみの足を止めることを優先したようだ。
つ「いくら連射が早くなったって言っても、まだまだ…っ!?」
ゴスッ、っと鈍い音がした。つぐみの後頭部に強い衝撃が走った。
つ「くっ…!」
ふらつく頭でつぐみは空との距離をとる。つぐみの後頭部を襲ったもの、それは3つあるビットのうちの1つであった。
空「油断しましたね。連射性にウェイトを置いた理由は貴女の足を止めると同時に、今の奇襲を成功させるためだったんですよ」
空は笑みを浮かべ、カードを引き抜く。…『ファイナルベント』のカードを。
空「終わりです。武さんのことは、私に任せて下さい」
空がバイザーにカードを装填しようとした。その時。
空「……!?ぐううっ!?」
空の左わき腹に、突如激痛が走った。痛みのあまり、がっくりと膝をつく空。
空「な、何が…」
シュルルルル……パシッ!
立ち上がったつぐみの手の中に、先程投げつけた剣が戻ってきていた。
つ「愚かなのはそっちのほうだったわね、空。私が何の仕掛けもなしに武器を投げつけると思っていたの?」
空「ブ、ブーメラン…ですか…」
つ「そう。黒鷹旋は剣に超回転を与えることでブーメランのような効果を持つ飛刀術。目の前の私にだけにこだわらなければ避けられたかも。ま、過ぎた事を言っても仕方ないけど」
つぐみはそう言って『ファイナルベント』のカードを引き抜き、装填した。
つ「『絶・神鳴流』秘奥義…」
高く飛び上がったつぐみは、その勢いのまま空の下へと飛びかかり……
つ「『斬岩滅砕刃』!」
斬撃一閃。
凄まじい衝撃波に飲まれ、空は完全に消し去られた。
つ「安心して、空…。私はこの戦いに勝つ。そして…この戦いを無かった事にする。2ヶ月前のあの頃に…戻すから…」
つぐみはそう言い残し、その場を去る。今日で戦いを、終わらせる為に。


                『仮面ライダー空』  脱落 ――――― 残り9人 ――――― 


優春「待ちなさい、倉成!そして喰らいなさい!私の愛の『震天烈空斬光旋風滅砕神罰割殺撃(しんてんれっくうざんこうせんぷうめっさいしんばつかっさつげき)』を!!」
武「長ぇ〜〜〜よっ!それにんなデカい斧で叩かれたら死ぬっ……どわああっ!」
ドゴオォォォォンッ!!!とんでもない勢いで振り下ろされた斧は、地面に炸裂し、大地をえぐり取った。
優春「私の手で葬られることを光栄に思いなさい!」
武「嫌じゃ!」
逃げる武に、追う優春。粉塵を巻き上げながら、爆走する2人。
……はい、そこ!画面の前のアナタ!『どっかで見た事ある情景だなあ』って思わない!!
優「BBさん、ネタかぶり気味ですみません!」
武「BBさんって誰だよ!?」


智「くそっ…一体誰なんだ、唯笑をやった奴は……」
沙羅を破った後も、智也はミラーワールドを彷徨っていた。
そこへ…
?「クスクスクス……ねえ、そこのあなた?」
智「…誰だ?(一体何者だ?俺に気配を感じさせないなんて…)」
?「それはひ・み・つ♪正体バラしちゃったらつまらないでしょ?」
智「!!(こいつ…俺の心を読みやがった!?)」
?「ねえ、私と勝負しない?私に勝ったら…あなたの大切な人を倒した相手を教えてア・ゲ・ル♪」
智「知ってんのか、唯笑をやった奴を!?」
?「知りたいなら…私を倒すことね」
すっ、と構える影。
智「……分かった。やってやろうじゃないか…」
相対し、構える智也。
風が、吹いた。


光の中を、優夏は漂っていた。
優夏「ふふふ…うふふふふふ…」
その顔から、笑みがこぼれる。
優夏「勝ったわ…この『タイムベント』の空間を越えれば、彼らと私が相対する前の時間に戻れる。その時、背後から一気に叩きのめせば……ふふふふふ」
優夏は勝利を確信しながら、光の空間を超えた。


優夏「なっ…!!ど、どうして…!?」
光を抜けた優夏が見たのは、無防備な優秋とホクトの後姿ではなく、眼前で不敵に佇んでいるホクトであった。
ホ「危なかったですよ…あと一瞬遅れていたらこっちが負けていたに違いない。でも時の神は僕等に味方したようですね」
優夏「あなた…あの時何をしたの!?」
ホ「あなたが使ったのは『タイムベント』…時空を超越し、未来を変えることの出来る禁断のカード……しかしその行為は時の神にとっては不都合なんですよ」
優夏「時の神とか何とか…そんな事聞いてないわ!!」
ホ「…時空超越も神の力の前には無意味なんです。僕が使ったのはその『時の神』の力を借りたもの…僕は『あなたがカードを使う』という行為を歴史から『消し飛ばし』たんです」
優夏「そんな…そんなことが…」
ホ「それが…『タイムベントBW・パイツァ・ダスト』の能力なんです…よっ!!」
呆然としている優夏を、蹴りで吹き飛ばすホクト。
ホ「いったよ、優!!」
優秋「オーケイ!後は…任せなさいっ!!」
そう言って優秋は、飛んで来た優夏を『大惨死天』で上空に弾き飛ばす。
優夏「ああっ…ぐっ…!」
無防備な状態のまま、天高く打ち上げられた優夏に、一つの影が重なる。
優秋「これで…終わりよっ!!」
優夏を追うように高く飛び上がった優秋は、流星の如し勢いで踵落しを叩き込んだ。
優夏「ああああああああああっ!?」
受け身もとれぬまま、優夏は地面へと叩きつけられ……そのまま、力なく、頭を垂れた。


                『仮面ライダー優夏』 脱落 ――――― 残り8人 ―――――


ホ「やった…何とか勝てたね、優」
優秋「うん。これもホクトのお陰よ〜…ちゅっ♪」
ホ「へ……………?」
頬に、柔らかな感触。
突然の強襲に一瞬意識が飛ぶホクト。が。
優秋「…!!ホクト!危ない!」
ドスンッ!突然ホクトは優秋に突き飛ばされた。そしてホクトの居た場所へと…
スタタタタンッ!
銀色の鋭い光を放つ、大量のフォークとナイフが突き刺さった。
ホ「うわっ!あ、ありがとう、優……」
優秋「お礼はいいの。それより…一体誰が?」
?「うふふ…『誰が?』はないじゃない。こんなところであんなことするのはライダーだけ…でしょ?」
ゆっくりと、闇の中なら一人の女性が現れる。その女性の顔を見て、優秋は驚愕の表情を浮かべた。
優秋「あなた…まさか『いづみ』さん!?」
い「あら…?私の事、知ってるの?」
優秋「前にお母さんの昔のアルバム見た事あるから…でも、あの写真は10年以上前の日付だったはず…なんで全然姿が変わってないの?」
い「簡単なことよ♪私もキュレイウイルスに感染しているの、春ちゃん経由でね」
優秋「そんな……」
い「でも…困ったわ。この世界ではキュレイの不死の力は適用されないみたいね。そうじゃなきゃ、優夏ちゃんが死ぬ訳ないんだから」
ホ「あの人もキュレイだったっていうんですか!?」
い「そうよ。だってそうじゃなきゃライダー同士の戦いにおいて2対1という状況で粘れるはずないじゃない?」
優秋「成程……これで初めて会った時に私と沙羅が簡単に背後をとられた理由がわかったわ…」
ホ「それで…一体何ですか?あの人の弔い合戦のつもりですか?」
い「弔い?とんでもないわ。むしろ感謝したいほど。彼女のサーブには随分手を焼いてたから……。こうして姿を現したのは、純粋に貴方達を倒したいが為」
優秋「上等…私達に挑戦したこと、後悔させたげる!ホクト、行くわよ!!」
ホ「う、うん!」
い「あらあら、若いわねぇ……実力の違い、教えて上げるわ」
突進してくる2人を見やり、いづみは冷徹な笑みを浮かべた。


智「がっ…はっ……!!」
地に転がる智也の口から大量の血が吐き出される。
?「ふう…つまんないんの。本当にマヨちゃんを倒したの〜?」
じりじりと、智也との距離を、影は詰めていく。
智「何なんだ、お前…?俺の攻撃が通用しないなんて…!?」
?「ふふ。そんなことどうでもいいでしょ?アナタにはもう…未来はないのだから」
そう言ってカードを引き抜き、装填する。
?「アナタにファイナルベントは勿体無いわ。苦しみ、悶えながら逝けばいいのよ。彩花さんを忘れて唯笑さんと仲良くした、裏切り者(ジューダス)のアナタにはふさわしい死に方よね」
智「!!な、何で彩花のことを……!?」
?「私は何でも知ってるのよ。アナタの事だけじゃない、この世界に生きる全てを、知る事が出来る」
智「何なんだ……お前、神なのか……?」
?「神?そんなのじゃないわ。そんなチンケなものと一緒にしないで」
カシャァァン!!『アドベント』
?「……さようなら。せめて天国に逝ければいいわね」
凶暴な獣の影が、智也の体を蝕んでいく。
霞んでいく景色の中、智也が思った事は。


智「(唯笑…俺も彩花の下へ、逝けるのかな……?)」


最期に智也が見たものは、無言で笑う唯笑の姿だった。


                『仮面ライダー智也』 脱落 ――――― 残り7人 ―――――


つぐみは走っていた。
先程見た、悪夢の様な光景から逃げるように。
つ「(沙羅……!!)」
地面に横たわる沙羅。その顔に生気は無く、青白いというのを通り越して、異常であった。
そして……まるでつぐみが来るのを待っていたかのように、沙羅の体は光の粒となって消えていった。
初めて目の当たりにした、ライダーの死。
そのなんと軽いことか。
そして娘に近寄れず、何もしてやれなかった自分自身の無力さを呪いながら。
つぐみは走っていた。
そして。
たどり着いた先で見た、戦慄の光景。


つ「―――――――――――――――――!!」
地に伏せ、今にも消えそうな光を放つ、ホクトと優秋。
そしてそれを嘲る様に見下す、いづみの姿。
それらはつぐみの心に、歯止めの無い怒りを呼び起こすに充分なものだった。
つ「―――ああああああああっ!!」
野獣の如き勢いで、いづみに飛びかかるつぐみ。
いづみは、何も言わずにナイフを投げた。


その光景を望みながら、ホクトは小さく呟いた。
ホ「お…かあさ…ん……さよな…ら………」
ふわりと、優秋の右手がホクトの右手にゆっくりと重なる。
優秋「ホク…ト……一緒に……」
ホ「う…ん……願わくば……いつまでも一緒に…………」
ふたりは静かに目を閉じ、終焉の刻を迎えた。


                『仮面ライダーホクト』 『仮面ライダー優秋』同時脱落 ――――― 残り5人 ―――――


優春「もう…そろそろ観念したら?逃げ続けるのにも疲れたでしょ?」
武「そうだな…逃げんのには疲れたぜ……」
優春「だったら…逝って頂戴ね!!」
ぶおんと、大斧を振り下ろす優春。
武「だけどよ…死ぬとは言ってねえぜ!」
瞬間、武の右足が上がり、優春の斧を握る手に当たる。
優春「うっ!?」
一瞬走った痛みに、優春の手から大斧が飛んだ。
その勢いのまま、優春は武を押し倒した。
武「――――――――!!」
武は、そのまま唇を奪われた。
倒れた時の衝撃も相まって、武の意識が薄れていく。
甘い感覚が武を支配しようとした、その時。
『―――――――――――――――――!!』
声が、聞こえた。


武は優春を押しのけると、体勢を立て直し、口をぬぐった。
武「どういうつもりだ?優…?」
優春「どういうつもりもないでしょ…?今の行為が、私の気持ち。2017年から変わってない、私の気持ち」
振り向いた優春の目は明らかに狂人のものだった。
優春「ねえ、倉成……。私は、貴方が好きよ。それこそ正に、殺したいほどに」
言いながら、優春は一枚のカードを引き抜く。
優春「これだけは使いたく無かったんだけど…仕方が無いわよね……」
そのカードに刻印されていた文字。それは―――――。
『THE SURVIVE』。

TO BE CONTINUED……
残りライダー:5人




[次回予告]


優春「ついにここまで来たわね」
武「そうだな。凄まじいまでの戦いだな……って!何で優がここにいんだよ!?」
優春「いいじゃない。ここはいわばアナザーワールド。本編で戦ってようが関係ないのよ」
武「しっかしなあ……」
優春「…何?嫌なの?(ギロリ)」
武「イエ、ソンナコトハナイデスヨ?」
優春「よろしい。それでは、この原稿読んでね」
武「はいはい…『遂に終焉の時を迎えようとするライダーの戦い!果たして最後に待ち構える敵は?この戦いの真の意味は何なのか?そして勝者の願う事とは!?次回『仮面ライダー武』最終幕『Till The End Of Time(仮)』お楽しみに!!』…っと」
優春「流石に2回目ともなると慣れたものね」
武「まあな。それより、聞きたいことがあんだよ」
優春「ん、何?」
武「一体、作者ってだ」
優春「それでは皆さん、次回の最終回まで、しばしのお別れです!」
武「なあ、一体誰に」
優春「黙れぃ!!」
武「ぐっはっ!?」



あとがき

うぃ〜うぃっしゅ!レイヴマっす!
まず始めに…申し訳ないです!(土下座)
予告と第1回を掲載してもらって1月半…こんなになるまで完成させられなかった自分自身に失望しております。
途中に春休みという長期休暇をもらったにも関わらず。
もしも心待ちにしているという方がいらっしゃるなら、非常に感謝と謝罪の気持ちで一杯です。


そして…BBさんへ。
今回作品内において、名前を無断で使用してしまい、大変失礼致しました。
BBさんにとってはいい迷惑かもしれませんが、どうかお許し下さい。

今回のこの作品を、謝罪と尊敬の意を込めて素晴らしき温泉ネタ作者・BreakBeat!!様に捧げます。
ではでは。

口ずさみソング 『Justiφ’s』 (ISSA)   


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