Remodel Project<最狂の指導者達>
(Devil End)

                              マイキー



俺は武とつぐみの熱々ぶりに激怒をした。
沸々と湧き上がる気持ちが自然と声となり、出てしまう。
そう、リミッターは完全に切れてしまったのだ。
桑「人がフラれて落ち込んでいるっていうのに武とつぐみはイチャイチャイチャイチャと・・・・!」
桑「いいか」
桑「『負け犬である今の俺』にとってノロケ話・ノロケ合い・夫婦喧嘩ほど腹立たしいものはないんだぞ!!」
優「りょ、涼権・・・・そうハッキリといわなくても・・・」
つ「ご、ごめん、桑古木・・・」
武「す、すまなかった。そんなつもりはなかったんだ」
ホ「どうせどうせ・・・・・・(ウジウジウジウジウジ・・・)」
武とつぐみは本当に申し訳なさそうに謝っていた。
だが俺の怒りのリミッターは既にはち切れて、崩壊していた。
二人を許せるだけの理性・心の寛大さは存在していなかった。
武「桑古木、とにかく落ち着けよ」
武「なっ」
桑「・・・・・・・・・・」
桑「そうだな。愚痴を言ったりして悪かったな・・・」
桑「けど、どうせ武のようにモテる男には俺の気持ちなんてわからないのさ!」
桑「フッ、なんかもうどうでもいい気分になってきたよ・・・」
桑「もし神や悪魔が存在するのなら・・・・いや、いようといなかろうと!」
桑「俺は今、そいつらに魂を売ってやりたい気分だ!!」
優「りょ、涼権!ダメだよ!!」
桑「うるさーい!」
桑「優、お前にも最愛の娘がいるだろう?!」
桑「空とも一緒に住んでいるんだろ!」
桑「武に愛されなくても、自分のことを心から想ってくれる存在がいるだけお前は十分幸せだ!!」
桑「それに比べ、俺はなんなんだ?」
桑「この世界中に俺の事を心から想ってくれる存在なんて一人もいやしないんだ!!」
桑「俺は惨めで情けなく、誰からも愛されない男なのさ!」
優「そ、そんなこと・・・・・」
桑「また同情か・・・・よしてくれよ」
桑「自分がますます惨めに感じるだけだ・・・・」
桑「俺は何のためにこの17年間生きてきたのか・・・・よくわからなくなってしまったよ」
桑「なんかもう・・・どうでもいい気分だ」
桑「だったら俺は残りの人生、悪魔にでもなんでも捧げてやる!」




優「・・・・・・・・・」
武「・・・・・・・・・」
つ「・・・・・・・・・」
武「つぐみ、このまま桑古木を放棄しておくことは非常に危険だな」
つ「そうね、武」
非常に落ち着いた口調で武はつぐみに何かを確認するかのように語りかけた。
それに対しつぐみは全てわかっているかのように頷く。
武「ここは我が家に伝わる秘伝の儀式をやるしかないな」
つ「ええ、やむを得ないわね」
沙「ほ、本気やったちゃうの?パパ」
優「??」
優「なにをする気なの?」
武「・・・・・・・・・・・」
武「危険分子を排除するんだ」
優「へ?」
武「これより我が家に伝わる魔除けの儀式『悪魔祓いの刑』を実行する!」
つ「了解」
沙「ぎょ、御意・・・」
武「ほら、ホクトも手伝え!」
ホ「・・・・・・(ウジウジウジウジ)」
武「だぁぁぁあー!いつまでもウジウジしおって!!」
武「よってホクトも『悪魔祓いの刑』決定!」
優「無茶苦茶じゃない!!」
沙「パ、パパー!!」
武「このままでは立ち直る見込みがない」
武「だから軽〜く刺激を与えてやるだけだ」
沙「でも・・・・」
武「でももクソもなーい!手遅れになる前に浄化(?)だ!」
武「いくぞ、つぐみ!危険分子を捕獲するぞ!」
つ「了解」
掛け声と共に武とつぐみは桑古木に向かい、猛然とダッシュしていた。
桑「ぐ、ぐわ!何をする気だ!?」
抵抗も虚しく、桑古木は武とつぐみにアッサリと捕まえられてしまう。
武「聞いていなかったか?」
つ「桑古木、あなたはさっき『悪魔にでもなんでも魂を捧げる』と言ったでしょ?」
桑「え・・・・」
武「『悪魔にでもなんでも魂を捧げる』ような危険分子を排除するのは倉成家に伝わる古き法則なのだ!」
武「よってお前を『悪魔の下僕』とみなし排除する!」
桑「ま、待て!排除って!?」
つ「言うまでもないでしょ」
武とつぐみは仄かに『ニヤリ』薄ら笑っていた。
それはまさに悪魔の如し微笑だった。
その微笑みに桑古木はいつしか見た堕天使を思い起こしたかのように苦渋と恐怖の表情へと染まっていく。
桑「ま、まさか!」
桑「す、すまなかった!武!!」
桑「許してくれー!!」
武「黙れ!『悪魔の下僕』!!」 
桑「・・・・・・・・」
一瞬の沈黙がこの世界を支配する。しかし時はまた確実に動き出すのだ。
桑「うわぁぁぁぁああ〜!!!離せ〜!!!!」
つ「人生、諦めが大事よ」
武「そう、諦めが肝心だ」
武「そして・・・・今がその時だ!!」
桑古木は死刑宣告を受けた家畜のように死に物狂いで抗戦するが
キュレイにより力が増大されている二人を前になす術はなかった。
そして倉成家地下の儀式の間へと連行された。
その部屋は狭い密閉空間だった。桑古木はそこに入れられロープで巻き付けれてしまう。
桑「グワァァァアアァァァ!!!!!」
半狂乱状態になり、抵抗するがやはりなす術はなかった。
武「次はホクト!」
ホ「どうせどうせ・・・・(ウジウジウジウジ)」
だがやはりというべきか、今尚もホクトはウジウジとしている。
武「ホクト、お前の中には『ウジムシ』が生息しているようだ」
武「浄化の炎でお前の心を蝕む『ウジムシ』を燃焼するのだー!!」
武の意味不明な言葉と共にホクトは儀式の間へと入れられてしまう。
だがホクトの様子は先程までと全く変わらない。
もはやお馴染みというべきセリフと動作を機械仕掛けの人形のようにただ繰り返すだけだ。
ホ「どうせどうせ・・・・(ウジウジウジウジ)」
武「つぐみ、用意を!」
つ「了解」
冷徹機械人間、いやターミネ−ターと化してしまったつぐみは黙々と辺りにガソリンをかけ始める。
ガソリン・炎・密閉空間。
もうここまでくれば『悪魔祓いの刑』を想像する事は容易いだろう。
武が沙羅の持っていたと思われるライターを使ってガソリンに火をつけようとしていた。
その時・・・・・!
沙「お兄ちゃーん!!」
優「涼権―!!」
沙羅と優が必死の形相で地下まで来ていた。
沙「やめて!パパ!ママ!!」
優「倉成!つぐみ!!茶番もいい加減にしなさい!!」
懇願の眼差しで頼みを乞う沙羅。
掴みかからんばかりの勢いで詰め寄る優。
倉成家に伝わる古き法則を実行せんという使命感に燃える武。
同じく使命を実行せんと悠然とそして威圧的に立ち尽くすつぐみ。
何が武とつぐみをここまで動かすのだろうか?
それは皆目、見当がつかない。
武「我が娘であろうと邪魔はさせんぞ!沙羅!!」
武「それにこれはホクトのためでもあることはわかっている筈だ!」
沙「でも!」
武「・・・・しろ」
沙「・・・・・・」
聞とれない程小さな声だったが武は何か呟いていた。
その言葉を理解したのだろう。沙羅は目をつぶり、
何かを願うように両手をつかみ、握り締めていた。
そしてもう一方では・・・・。
つ「優、あなたは何もわかっていない・・・」
優「わかっていないのはどっちよ!!」
つ「これは桑古木のためよ」
優「意味不明よ!」
優「第一、言っている事とやっている事が矛盾しているじゃない!」
優「『ガソリン・火・密閉空間』ときたらやる事は一つだけでしょ!」
つ「そう、私たちはあなたの思っている通りの行為をするつもりよ」
優は衝撃のあまり立ち尽くすしかなかった。
だがたちまち表情が憤怒の表情へと変化していく。
優「し、信じられない・・・・・」
優「この鬼!悪魔!!冷徹のゲス野郎!!!」
つ「・・・・何を言っても無駄のようね・・・」
優「ええ!無駄よ!!だから・・・・!!!」
優「ムキュッ・・・!!」
優「キュウゥゥゥゥウウウゥ・・・・」
一瞬の出来事だった。数々の猛者を沈めてきたつぐみのボディブロウが優に炸裂したのだ。
万有引力の法則により、優はゆっくりと崩れ去ってしまう。
つ「何とでも言いなさい・・・」
つ「まあ言えればの話だけど」
つ「十数秒で済むから、それまで・・・・お休みなさい」
つ「邪魔者は始末したわ、武」
武「ああ、一番うるさいのが寝て、静かになったな」
それは冷徹外道夫婦の狂悪な儀式の前の最終確認なのだろうか。
それとも・・・・・。
沙「・・・・・・・・・・ママ・・・」
まだ尚も沙羅は居て立ってもいられない様子だ。
つぐみは溜め息をついた。しかしその表情は母親の顔になり、優しさに満ち溢れていた。
だがその内に秘めたる想いは予想不能だ。
つ「沙羅・・・・・・・すぐ終わるから」
沙「・・・・・・」
他にも何かをいったような感じだがそれを聞き取る事は不可能だった。
しかし確実に聞き取れた最後の『すぐ終わるから』。
その言葉が意味するものは二人の『人生の終着点』か?
あるいは・・・・・・・。
武「『悪魔祓いの刑』の始まりだ!」
武「地獄の業火を味わい、自分の愚かさを悔いるがいい!」
つ「魂が浄化されるまで灼熱地獄でのたうち廻るといいわ!」
桑「ま、待て!!!!」
ガソリンに火がつき、瞬く間に辺り一面が灼熱の海へと化していく。
そして無常にも人生の結末を意味するかのように耐熱性のドアが閉められた。
ガタンッ・・・・・!
ゴオオォォォォ!バチバチバチバチ・・・・!!
紅蓮の炎は荒れ狂った獣のように辺りを暴れまわる。
桑「グワァァァァアア!!!!!ご、ごめんなさい!!!!ごめんなさい!!!!」
桑「もうこんな事言いません!!!!しません!!!!!」
ホ「・・・ここは」
ホ「熱い?・・・・え―――!!!!」
ホ「うわぁぁぁあああぁ!!!!!」
ホ「どうして!!!パパ!!!ママ!!!」
ホ「僕がいつまでもウジウジといじけているから!!!」
ホ「もうウジウジしないから!!ごめんなさーい!!!」
ホ「だからここから出して―――――!!!!!!!」
灼熱地獄に揉まれ、二人は声にならない声を出し、生への執着心をみせる。
叫ぶ。慌てる。泣く。謝る。耐える。足掻く。二人は感情の全てを出していた。
だが炎は二人を嘲笑うかのようにその勢いを増大させる。
人生の結末に耳にする音は・・・・炎の渦巻く音となってしまうのだろうか。

ガタッ!
ドアが開く音と共に二人に滝のような水が正面から浴びせられる。
二人が気付いた時には灼熱の業火はもう消えていた。
だが二人共、心ここにあらず。恐怖の余韻のあまり放心状態だ。
桑「・・・・・・ぁ・・・ぁははは・・・・」
ホ「ぁぅ・・・ぁぅ・・・・・」
優「りょ、涼権!!大丈夫!!」
沙「お兄ちゃーん!!」
沙「・・・・・よ、よかった〜」
沙羅と優はそれぞれ桑古木とホクトに飛び掛るように抱きついた。
その様子からはどれだけ心配していたかが窺い知れるだろう。
しかし呆然自失な桑古木とホクトは虚空を見つめたままだ。
意識はまだ業火地獄の中にいるのだろう。
心配してくれる大切な存在に気付く気配は微塵も感じさせない。
武「なっ。だから大丈夫だって言ったろ」
つ「全くよ。少しは私たちを信用しなさい」
武は爽やかに、つぐみは呆れ果てたようにそんな言葉を言ってのけた。
優「倉成―!つぐみ―!」
沙「パパ―!ママ―!」
優・沙「やり過ぎ!!!」
見事に二人の声が重なった。
だがその二人の様子に武は最高の笑みを送り、つぐみは最高の微笑を送っていた。
武「いや、俺たちは浄化の炎であいつらの魂を清めてやっただけだ」
武「それに俺たちは最高のタイミングで切り上げたぞ」
その時の武の表情はやはり・・・・最高に爽やかだった・・・。
つ「これぐらいが調度いいのよ」
つ「それとも私たちがミスをするとでも思った?」
つぐみの表情は、これもやはりというべきか・・・・呆れ返っていた。
武「まったくだ」
武「これに懲りて二人共もう道を誤らないだろう」
武「もう俺たちに『愛の鞭』を入れさせないでくれよ」
武「ワッハッハッハッハ!」
つ「フフフフッ」
優「・・・・・」
沙「・・・・・」
これは武とつぐみ、いや倉成家にとっては一応、『愛の鞭』だったようだ。
つまりこの行為は二人にとってホクトと桑古木への愛の篭った『おしおき』だったのだ。
『悪魔祓いの刑』・・・その真意は
『密閉空間で業火の海に揉まれさせ、己の愚かな行為を心から謝罪するまで出さない』
という過度で異常な『最狂のおしおき』だった。
だが果たして道を誤ったのはどちらだったのだろうか?
いや答えは恐らく出ている。
それはここにいる全員なのだろう・・・・。
人の本質は外見から判別することは容易ではない。
正気があるから狂気がある。
狂気があるから正気がある。
互いがあるからこそ相対する二つが存在する。
そう、相対なる存在は密接な繋がりがあるものなのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
爽やかに笑う武、呆れ返りながらも微笑するつぐみ。
本人たちにとっては『愛の鞭』のつもりでもその行為は『狂気』が起こした行為。
しかし二人とってはこの行為は『正気』の元で行われたに違いない。
笑顔がそれを物語っている。
その心の奥底には『暗黒』という二文字に覆われているのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ここにも悪魔がいた。
                             
                                  Fin



あとがき







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