Remodel Project<最狂の指導者達>
(True End)

                              マイキー


俺はなんとか湧き上がる気持ちを抑えることが出来た。
ここでこの気持ちを口にして現状がどう変わるっていうんだ?
何も変わることなんかないじゃないか。
そう思うとこんなに怒っている自分がバカバカしく思えてきた。
つ「ご、ごめん、桑古木・・・・」
武「すまない・・・お前の気持ちも考えずに悪いことをしたと思っている」
沙「私も煽ったりしてごめんね・・・」
沙「いや、いきなり怒ったりした俺が悪かったよ」
優「涼権・・・」
桑「武・優・つぐみ・沙羅。協力してくれてありがとう」
桑「俺はその気持ちだけで十分だよ」
皆「・・・・・・・・・・」
辺りはまた水を打ったかのような静けさに見舞われる。
ホ「どうせどうせ・・・(ウジウジウジ)」
いや、いじけるホクトの暗い愚痴だけは響き渡っていた。
こいつも災難だな・・・・。
俺は少しホクトに同情していた。
そんなホクトをふと見てみると彼の背中の手前に一つの影があった。
見上げてみると影の正体は沙羅だった。
とても心配そうな表情をしている。
そして次の瞬間、沙羅はホクトの背中を抱きしめていた。
妹の突然の行為に今まで部屋の隅でいじけていたホクトの動きはいつしか止まっていた。
沙「お兄ちゃん・・・・・」
沙「大丈夫だよ」
沙「お兄ちゃんには私がいるから・・・・」
ホ「さ、沙羅・・・・」
沙「せっかくあんなにがんばったのに、なっきゅ先輩にまたフラれちゃって・・・つらいよね」
沙「けど私はこの三ヶ月間のお兄ちゃんのがんばりを誰よりも知っているよ」
沙「すごくつらいトレーニングも愚痴一つ言わずに一生懸命やっていたよね・・・」
沙「投げ出しそうになっても、また前を向いてがんばっていたよね・・・」
沙「どんなに泥まみれになっても、真正面から向かっていったよね・・・」
沙「そして、いつもなっきゅ先輩のために『男らしくなるんだ!』っていっていたよね・・・・」
沙「そんなお兄ちゃんの好きなところは山程あるけど・・・・」
沙「私はお兄ちゃんの『大切な人』のために一生懸命にがんばるところが一番大好きだよ」
沙「昔、いつも私のために一生懸命になってくれていたよね」
沙「イジメられていた私を助けるために勝てるわけがない相手にも立ち向かっていってくれたよね」
ホ「・・・・・・・・・・・」
沙「だけど3ヶ月前のあの事件以来、お兄ちゃんにとっての『大切な人』はなっきゅ先輩に変わっていた!」 
沙「羨ましかった・・・・そして嫉妬していた」
ホ「へ・・・・」
沙「私の大好きなお兄ちゃんにここまでさせるなっきゅ先輩が妬ましかった」
ホ「・・・・・・・・・・」
沙「挙句の果てにはお兄ちゃんがなっきゅ先輩にフラれて、内心喜んでいたんだよ・・・・」
沙「まだ私にもチャンスがあるって」
ホ「・・・ほ、本当なの?沙羅・・・・」
沙羅はただ無言で頷いた。
沙「悪い女だよね、悪い妹だよね・・・なっきゅ先輩は私にとっても大切な友達なのに・・・・」
沙「お兄ちゃんの事を大好きとかいっておきながら・・・・お兄ちゃんの不幸を喜ぶなんて・・・」
沙「軽蔑するよね・・・されて当然だよ」
沙「だけど最後にこれだけは言わせて・・・・お兄ちゃん」
沙「せっかく再会できたのにお兄ちゃんが見つめていたのはいつもなっきゅ先輩だけだった!」
沙「もちろん私の相手をしてくれなかったわけじゃないけど、私の事を『妹』以上としては見てくれなかった!」
沙「それが・・・それが!すごく悔しかった!悲しかった!!心が・・・痛かった・・・」
沙羅の透き通った瞳からはとめどなく涙が流れていた。
その涙は頬をつたい、やがて床へと落ちる。
自分の事を大切に想ってくれてはいるものの『妹』以上としては見てもらえない悔しさ・悲しさ。
それがあるから心の中では二人の仲を応援しようと思っていても『特別な存在』として見られている
優を心の奥底では嫉妬せずにはいられなかったんだ。
沙羅は友情と愛情の間に挟まれ、今までずっと苦しんでいたに違いない。
沙「私は・・・私は・・・・お兄ちゃんのことを他の誰よりも愛している!」
沙「抱きしめられたい!キスして欲しい!!結婚して死ぬまで一緒にいてほしい!!!」
ホ「・・・・・・・・・」
ホ「沙羅・・僕は・・・・」
沙「・・・・・ごめんね、お兄ちゃん・・・」
沙「・・・・・言いたい事はそれだけ・・・・迷惑だったよね」
沙「こんな奴・・・・『妹』失格だよね・・・・」
沙「・・・・・・本当にごめんなさい・・・・」
沙「もう・・・心残りはないよ、軽蔑するなり殴るなりなんなりとして」
沙「一生、目の前に現れるなって言われたら・・・・・二度と顔も見せないから・・・・」
ホ「・・・・・・・・」
ホ「バカだなあ・・・・」
ホ「そして、ありがとう」
ホクトは優しく沙羅の肩に手を掛けていた。
沙「え・・・・・」
沙「お兄ちゃん・・・・」
沙「私は大好きとか言っておきながら、お兄ちゃんの不幸を喜んでいたんだよ・・・・」
沙「お兄ちゃんの大好きななっきゅ先輩を妬んでいたんだよ・・・」
沙「私はそんな酷い妹なんだよ、女なんだよ」
沙「そんな私を・・・・許してくれるの?」
ホ「だからバカだって言っているんだよ」
ホ「だって・・・それはそんな風に思ってしまうぐらい僕のような兄を、いや男を・・・・」
ホ「誰よりも想ってくれているって証拠なんだから」
ホ「感謝しても軽蔑なんてする理由、どこにもないよ」
沙「お、お兄ちゃん・・・・」
ホ「優のことは確かにすごくショックだったけど・・・・また友達としていられれば・・・・」
沙「拒絶されたらそれまでだけどね」
沙「大丈夫!なっきゅ先輩はそんな人じゃないよ。私が保証するよ」
ホ「アハハハハッ、そうだね」
沙「そうでござるよ!」
ホ「沙羅・・・あと一つ言っておきたい事があるんだ」
沙「なに?お兄ちゃん」
沙「僕は沙羅の事を妹としてではなく、一人の女性として愛している」
ホ「だから・・・・これからもいつまでも一緒にいてくれないかな?」
沙「・・・・・・・・・」
沙「お兄ちゃん・・・・嬉しい」
そして沙羅は兄へと、いや最愛の男性へと飛びついていた。
ホクトは沙羅をしっかりと抱きしめる。
沙「お兄ちゃん・・・・大好き」
沙「そして愛している」
ここまでくればもはや自然と〇〇にいってしまうのだろうか。
しかしやはり歯止めは掛けられたようだ。
武「いや〜、熱い、熱い」
つ「全くよ。こんな『灼熱ラブリー』ぶりを見せつけられたらね」
つ「ねぇ、沙羅」
沙「そうでござるよ、ママ。拙者とお兄ちゃんは今、『灼熱ラブリー』状態でござる♪」
ホ「そう、僕たちは『灼熱ラブリー』状態なんだー!」
つ「武・・・・」
武「俺たちももっと素直になれ、と言いたいんじゃないのか・・・?」
沙「ニンニン♪」


俺は幸せな光景を横目にここを去ることにした。
よかったな・・・・ホクト・沙羅。
お前たちと俺とでは・・・・・あまりにかけ離れすぎているよ。
ここは俺の居場所じゃない。
倉成一家に気付かれないように俺はこの場から立ち去った。
さて・・・・行く当てもないし、どうするかな。
とにかく外の空気でも吸うため散歩でもするか。
行く当てもなく、辺りを散歩することにした。
優「桑古木!!」
後ろから声がしてみたから振り返ってみればそこには優が立っていた。
優「どこに行く気なの?」
桑「別に」
桑「少し散歩でもして、母なる地球の美しさを感じようと思ってな」
桑「見ろよ、空はあんなに青い・・・雲はあんなに白い・・・太陽があんなに眩しく輝いている・・・」
桑「地球って・・・なんて美しいんだろうか」
優「(ついに現実逃避か・・・)」
桑「それよりお前はどうしたんだ?」
桑「もう次の『武・拉致計画』の作戦会議か?」
桑「もうこうなったら何にでもお付き合いするぜ」
優「・・・・・涼権。大丈夫?」
桑「俺はいつでも健康体そのものだ」
優「そういう意味じゃなくて・・・・」
優「ココの事・・・・」
桑「・・・・・・・」
桑「終わったことをどうこう考えても仕方ないだろ」
桑「まあ、あの様子から判断するに絶望的だな」
桑「なんてったって、お前の言うあのココが怯えて逃げていったんだからな」
優「・・・・・・・」
桑「優、改めてありがとな。こんな計画に協力してくれて」
優「れ、礼を言われる筋合いなんて・・・ないわよ」
桑「いや本当に感謝しているよ。ありがとう」
優「・・・・・・・・」
桑「さて、じゃあお返しとしてお前の計画に参加してやるよ」
桑「つぐみが少し可哀相な気がするけどお前には世話になりっぱなしだからな」
桑「さあ、なんなりといってくれ」
優「・・・・・・・」
優「もうその必要はないよ」
優「つぐみに悪いし、倉成のつぐみへの気持ちもわかってしまったからね」
優「それに・・・・・」
桑「一生独身でいる決心がついたと?」
桑「まあ、それも一つの選択だな」
桑「おまえには最愛の娘に空もいるから大丈夫だろう」
優「・・・・・・」
桑「優?」
優は顔を真っ赤にして何かを言わんとしている。
明らかにいつもの優らしくない態度・・・・。
熱でもあるんだろうか。
桑「おい!真っ赤だぞ」
桑「熱でもあるんじゃないか?」
だが優は俺の言葉など聞いている気配は全くない。
優「そ、それに・・・・・」
優「涼権のことが心配・・・・だしね」
優「ねぇ・・・・優(秋)の義父さんになってくれないかな?」
それはささやか過ぎるぐらいささやかな意思表示だった。
その言葉に俺の脳内に存在するスーパーコンピューターは超速で回転し始めた。
優(秋)の義父さんになる=優と結婚する
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ぬわにぃぃぃぃぃい!!!あの優が俺にプロポーズ!?
ありえん!目的のためなら手段を選ばない『血に飢えた狂犬』がそんな乙女心を持っているなんて!
悪魔がマッチョの肉体美とやらに見とれるぐらいありえんことだ!
しかもその相手が俺だぞ!いつも扱き使っている、この俺だ!
こ、これには裏があるに違いない!うん、そうだ。
きっと俺を大学以外でも扱き使うために決まっている!
大学だけでは飽き足らず、家でも炊事・洗濯係りにでもしたいからに違いない。
狡賢く、意地汚く、姑息な優なら十分考えられる。
うん、これは罠だ。探索の必要性はもはやない!
桑「けど優よ。炊事・洗濯係りなら家政婦を雇えばいいだけだ」
優「は、はい?」
桑「あれ?違うのか?」
優「何、言っているのか、さっぱりわからないんだけど・・・・」
桑「なにぃぃ!!俺を家でも扱き使いたいがための罠ではないとでも言うのか!?」
優「なんで私がこんな恥ずかしい思いまでして、そんなこと言わないといけないのよ!」
俺たちは堰を切ったかのように絶叫していた。
桑「じゃあ、本気と言いたいのか!?お前は!!」
優「う、う・・・ん・・・」
桑「『ううん』って否定じゃねぇか!やっぱり罠だったんじゃないかよ!」
優「ちっがーう!!あんたの耳は節穴かー!!」
桑「じゃあ本気なのか!」
優「うん・・・・・」
優は消え行かんばかりの声で呟いた。だが確かに肯定の返事をしていた。
俺は落雷を浴びたかのような衝撃を受けていた。
あの優が俺を好きと!?どういうことだ・・・・。
ついに奴は毒虫にでも毒されたのか・・・!
桑「じゃあ、理由を聞かせろ!どういう風の吹き回しだ!!」
優「う、うん・・・・もっともな意見だね・・・」
優は深呼吸を大きく数回してから静かに語り始めた。 
優「涼権・・・・私、きっと今まで涼権に武を重ねて見ていたんだと思う」
優「涼権が武に近づくにつれて、涼権のことを意識するようになっていた」
桑「ちょっと待て。じゃあ俺を扱き使いまくっていたあの行為もおまえなりの愛情表現と?」
優「なんとも思っていない相手にあんなことやらないよ」
ゴロゴロゴロ・・・・グヮシャーン!!!バキバキバキ・・・・ズゥゥゥンン・・・!!!
俺は落雷を浴びた大木が轟音と共に崩壊していく程の衝撃を受けていた。
こんな恋愛表現がこの世に存在したとは・・・・。世界珍現象だ・・・。
しかし優は武に対してもそのような対応を見していたような気がする。
そう思うと、これも実はウブで不器用な優なりの愛情表現なんだとなんとか納得できるのではないか。
桑「・・・・・わかった。でもそれじゃあ確かに俺に武を見ていただけだな」
桑「それじゃあ俺自身を好きになったとは言えないぞ」
優「そうだね」
優「私もあの時までは本当に涼権が好きだということに確信を持てていなかったと思う」
優「でもあの時の言葉のおかげで私は涼権を『涼権』として見るようになっていた」
桑「あの時の言葉?」
優「うん、あの時の倉成の言葉だよ」
優「『というか仲いいよな、お前ら。計画以前にお前らがくっついらいいんじゃないのか?』っていう言葉・・・」
優「その言葉を聞いたとき、私、倉成とも涼権と同じように喧嘩できるのかな、って思ったんだ」
優「ううん、きっとこんな喧嘩できないと思う」
優「ここまで言いたい事を素直に正面からぶつけられるのは・・・・涼権だけだよ」
優「そして涼権も私に対して正面から言いたい事をぶつけてくれる・・・・・」
優「これって一見、仲が悪いように見えるけどさ・・・・」
優「ここまで正面から言いたい事を言い合える程、気を許せる相手なんてなかなか見つからないと思うんだ」
優「だから私は気付いた・・・・。私は涼権を意識しているんだってことに・・・・」
優「そして私はココの為に懸命にがんばる涼権を見て、いつしか支えになってあげたいって思うようになっていた」
優「実は計画の途中からこの計画は絶対失敗するって気付いていたんだ」
優「2017年の時にココがそういう激しいギャップが苦手だっていうことはわかっていたから」
優「ごめんね・・・・実はこの瞬間に告白するって決めていたんだ」
桑「・・・・・・・・・」
優「不思議だね・・・・他の誰かだったら、こんな事言わずに隠してしまうのに、涼権には話せてしまう」
優「涼権の前だと『ありのままの自分』になれる」
優「きっと涼権に私の綺麗な部分も汚い部分も含め、知ってもらいたいからだと思う」
あの武の言葉の後ぐらいからだったか。
何故か優が俺の事を今までより少しだけど心配し、優しく
してくれているような感じがしていたけど・・・・そういうことだったんだ。
確かに優の言う通り、優は俺に対して自分の気持ち正面からぶつけてくれる。
俺は優に対して自分の気持ちを正面からぶつけられる。
人間、誰しも他人に対して多かれ少なかれ自分を演じたり、偽ったりするものだ。
恋人や親しい友人に対しても少なからず演じたり、偽ったりもするのではないだろうか。
そう、偽りの無い『ありのままの自分』を見せられる相手など本当にごく少数だ。
あるいは居ない人だっているかもしれない。
けど優は『ありのままの自分』を俺に曝け出してくれる。
俺は優に『ありのままの自分』を曝け出せる。 
出来そうでなかなか出来ないこの関係とは実はすごく大切なものではないだろうか。
こうしてみると俺とって優は『ありのままの自分』で
正面からぶつかり合えるかけがえの無い存在ではないだろうか。
優「私はそんな気持ちにしてくれる涼権が・・・」
優「・・・・好きだよ」
桑「優・・・・・・」
桑「・・・・・・・」
桑「俺も・・・優が好きだ」
桑「偽りの無い自分を出させてくれる優の・・・・その雰囲気が好きだ!」
優「じゃあ・・・」
桑「ああ」
それから俺たちは抱き合った。
この時、俺は始めて優から愛おしさというものを感じた。
あまりに近すぎる存在であるため、その尊さにお互い気付けなかっただけなんだ。
だが俺たちは今、様々な出来事を乗り越え、かけがえの無い存在を見つけた。

                                  Fin



あとがき







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