・・・・。 ・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・。 「・・・ん・・・・」 僕は目が覚めた。 「・・・ここは・・・どこなんだ・・・」 目の前に広がる風景・・・それを僕はまだ理解していない。 「・・・僕は・・・だれ・・・?」 そして、自分自身のことも・・・まだ理解していなかった。 |
未来への兆し 櫻条 紫希 |
僕には記憶がなかった・・・。 でも数少ない記憶をたぐり寄せてみる・・・。 だめだ・・・思い出せない・・・。 ふと自分の足を見てみると、膝の辺りまで湿っている。 しかし今の地面はぬれていない・・・。 「・・・僕は・・・水の中にいたのかな・・・」 その時一瞬の光景が頭をよぎった・・・。 押し寄せてくる水・・・。 「・・・レ・・ミュウ・・・ぐっ・・・」 頭の中に流れてくる映像によって頭に衝撃が走った。 思わず手で頭を抱えたんだけど・・・そこで数日間前の事は全て思い出せた・・・。 約6日間の生活・・・。 ・・・そして・・・ティーフブラウ・・・。 でも抗体をうった事で助かったみたいだ・・・。 「・・・でも・・・なんで外にいるんだろう・・・」 見上げると青い空がある・・・。 周り見渡せば青い海がある・・・。 白いカモメが飛んでいる・・・。 耳をすませば小鳥のさえずりと木の葉が触れ合う音が聞こえてくる・・・。 それでも周りに・・・人はいない・・・。 どれくらい島を歩いただろうか・・・。 見かけたのは僕を救助してくれたと思われる人達・・・それくらいだった・・・。 「・・・なんで・・・」 僕は歩き続けている・・・。 「・・・なんで誰も・・・いないんだよ・・・」 もう5週以上は見回っていると思う。 それなのにこのを6日間一緒に生きてきたはずの、 武、つぐみ、優、空、・・・そしてココ・・・皆の姿は見つからない・・・。 <きっと皆死んでしまったんだよ> 「そんなはずないっ・・・」 頭に語りかけてきた声に強く否定した。 <何を言ってるんだよ、本当はそう思いはじめてるんでしょ> 「・・・・・」 否定する事が・・・できなかった。 そう、この声は弱い僕自身の心の声なんだ・・・。 「ちくしょう・・・ココぉ・・・」 力をなくした足がガクッと折れ、地面にひざまづき・・・手を地面につき・・・、 僕は・・・泣いていた・・・。 だって・・・僕は・・・僕は・・・ココの事が・・・好きだったから・・・。 「どうしてだよっ・・・」 地面についていた手を上に振り上げ地面を叩く。 「・・・どうして・・・僕だけが・・・」 助かるはずなのは僕なんかじゃなくて他の皆のはずだよ。 なんでこんな事になるんだよっ・・・。 「救助の人はなんで僕だけを・・・」 いや・・・そうだ・・・・そうだよ・・・。 簡単な事じゃないか。 僕達は同じところにいたんだ、一緒に助けられてるはずなんだ。 きっともう本土に行ったに違いない。 そう自分に言い聞かせ僕は本土行きの船に乗った。 ―――――。 本土に着いた僕は念の為港のおじさんに確認をとってみた。 ・・・でも、その行動をとってしまったため、僕はまた深いところへ落ちていった・・・。 『いや〜・・・見かけなかったけどなぁ・・・』 そんなばかな・・・結局こういう展開なのかよ・・・。 ・・・いや、たまたま見かけなかっただけかもしれない。 こうなったら僕の力で見つけ出すしかないみたいだ・・・。 皆を・・・ココを・・・。 ―――――。 あれから僕は探しつづけている・・・。 何回日が沈んだか覚えていない・・・。 記憶をなくした僕には行く場所がない・・・。 ずっと探しているだけ・・・。 今までに食べた物は、畑の気の良いおじいさんから貰った、 きゅうりとレタスとトマト・・・そして公園の水程度だった・・・。 もう・・・意識を保つだけで精一杯だ・・・。 歩くのもままならなくなってる気がする・・・。 ・・・今の状況ではあれだけ嫌がってたタツタサンドでもいくらでも食べれる気がする・・・。 「・・・ちく・・・しょう・・・」 パタリ・・・。 僕は静かに倒れた・・・。 意識がだんだん遠のいていく・・・。 「僕なんかじゃなくて・・・ココが助かればよかったのに・・・」 そして僕の意識は闇の中へ・・・。 <ってゆーか、ココ達を勝手にころすなー!> (な、なんだ・・・?) <そうだぞ、それだから少年はいつになっても少年なんだよ> (・・・ココ?・・・武?・・・どういうことだ・・・) 僕の目は開かれた。 ゆっくりと周りを見渡しても2人の姿はない。 いや、はっきり見たわけじゃない。 意識ははっきりしてない気がする・・・ 周りの人が見たら僕の目からは、きっと生気が感じられないと思う・・・。 (どこへ行くんだ・・・?) 僕は歩き出していた・・・。 でも僕自身無意識に足が運ばれているから、何処へ向かっているのかわからない・・・。 ・・・・。 ・・・・・・・。 ・・・・ただ・・・・。 気がついたらここにいた・・・。 あの日LeMUから帰りついた、あの港に・・・。 遠くの海の上にゼロの島が少し見える・・・。 見えてる部分はあんなにキレイでも・・・あの下は・・・。 「・・・僕はこんな所に来て・・・何がしたかったのかな・・・」 そして目の前が霞み始めてきた・・・。 「さっきのは・・・幻聴・・・か・・・」 最後の力は遠くに見えるゼロの島ヘ向かって手を伸ばしただけだった。 人差し指と中指の間にゼロの島。 「・・・最後に・・・ココの顔が・・・見たかったな・・・」 「あー小ちゃんいたーーーっ!」 背後からあの元気な声が・・・。 また幻聴だろうか・・・。 しかし、その真偽は確かめられる事の無いまま僕の意識は途絶え、そこに倒れた・・・。 これで皆死んだんだ・・・。 <そう、全ての結末は始めから決まってたんだ> LeMUに閉じ込められた時から僕達の運命は決められてたんだ・・・。 <これがあるべき運命だったんだよ> 皆助からない。 <だれも生きていない> 武は言った・・・誰も死なせないと・・・皆で助かると・・・。 <でも結局それはでまかせだった・・・都合の良い幻想だった> ・・・・・・・・。 <・・・これで全てが終わる・・・> 『本当にいいの?』 ・・・だれ?・・・何が? 『キミはココの死をも認めてしまうの?』 <それは仕方ないんだ> ・・・・・・・・・・・。 『好きだったんじゃないの?』 僕は・・・・。 <もう希望なんてないよ!光なんてない!!> 『キミは本当は強いんだよ・・・ただ今のキミはそれに気づいていないだけ・・・、 信じるんだ・・・もっと・・・自分を・・・皆を・・・』 僕は・・・ココの事が・・・。 ・・・くそっ!ココが死んだなんて認めないっ! 往生際が悪いとか潔くないとか言われても構わないっ! 僕には聞こえたんだ・・・最後に一言・・・。 ココの声が・・・・。 『・・・そう、それでいいんだ・・・』 僕はゆっくりと目を開き、うっすら浮かび上がるピンク色の髪を見た・・・。 この色は・・・この香りは・・・この感じは・・・。 「・・・コ・・コ・・・?」 力を振り絞って呼びかけてみた。 目の前の人はそれに気づいて僕の顔を見てきた。 「・・・少ちゃん・・・?」 「・・う・・ん・・・」 ココはそこにいた。 涙を浮かべたココが・・・そこにいた。 「少ちゃーーーん!無事でよかったよぉ・・・」 「コ、コココ、ココッ!?」 なんか勢いよく抱きついてきた。 力をなくしていたはずなのに動揺する力はあったみたいだ・・・。 「おーい少年さんよー、なーに赤くなってんだー」 「えっ!?いや・・・これは・・・」 突然武がからかうような口調で声をかけてきた。 「見せつけちゃってくれますねぇ・・・」 「ゆ、優っ!!」 それに優ものってきた。 ・・・皆いる・・・。 武も優もつぐみも空もココも・・・皆・・・そこにいた。 「とりあえずココ、そろそろ離してやれよ。 あんまりそうしてると蒸発しちまいそうだからな」 ニヤリと笑った顔で言っている。 僕はこのままでも良いんだけど・・・からかわれるのがオチだから、 これ以上こうしていない方が得策っぽい。 「・・・あ、うん、ごめんねいきなり抱きついちゃって・・・」 「あ、いいい、いや、別に大丈夫だよっ!」 どうしてもこんな感じになってしまう。 横で武と優・・・だけでなく、つぐみと空まで笑っていた。 僕は皆の方へ向かって、 「な、なんで笑うん・・・」 ぐぅ〜〜・・・ 僕がそう言った瞬間、そても間抜けな音が聞こえた・・・。 「あっはっはっはっはっ」 皆笑い出した・・・。 「少ね〜んキミおもしろすぎぃ〜!」 一際優と武の笑い声が目立っている。 「・・んじゃどこかメシ食いに行くか」 お腹を抱えながら武が歩き出した。 「いいですね。どこに行くんですか?」 「そうねぇ・・・つぐみはどこ行きたい?」 「えっ!?私は別にどこでも・・・」 空が微笑んでいて・・・優が元気良くて・・・つぐみが困ってて・・・。 なんだかなつかしい感じがする・・・。 そして心が暖かくなっていく・・・。 「よぉ〜し、久しぶりに料理人武のタツタサンドでもごちそうしてあげましょうかね」 「それは勘弁して・・・」 僕はその案に小声で反論した。 「ん?腹の虫鳴らしたやつがわがままいうでない」 「私も少年の意見に賛成だわ」 武の横でつぐみが冷静に言った。 「何!?つぐみは少年の肩をもつのか!?」 「んじゃ〜変な事言った倉成のおごりで何か美味しい物でも食べに行こー!」 優が手を勢いよくあげ、いざレッツゴーとばかりに歩き出した。 「ご馳走様です」 「ぐあ、空ぁ〜その顔は反則だぁ〜・・・」 空が武に満面の笑顔をお見舞いしつつ優の後についていった。 「そういうことだから、よろしくね、武」 「つぐみまでもかよっ!!」 駄目押しにつぐみがいたずらっぽい笑みを見せて空の後へ・・・。 「くそー、あの3人がそろうといろんな意味で最強だ・・・」 肩をガクッと落とした武がその後にしぶしぶついていく。 僕はそれをじっと見ていた。 「少ちゃん!ココ達も行こ」 「あぁ、うん、そうだね」 ついあの平和な光景に見入ってしまってた。 僕はココと一緒に皆の後ろについていった。 「・・・あ、あのさ、ココ」 そして僕は数歩先を歩いているココを呼びとめていた。 「ん?なーに?少ちゃん」 あ、あれ?なんで呼びとめたんだろう・・・。 ・・・いや、自分に正直に・・・なろう・・・。 「・・・なんで僕の居場所がわかったの?」 って違うでしょ僕っ!・・あぁバカだ・・・。 「え?教えてほしいぃ?それはねぇ〜」 ココがなんだかもったえぶるような口調で話す。 「ココがちょーのーりょくしゃ、だからだよ」 ガクッ。とんでもない冗談だな・・・。 「そ、そうだったんだ」 苦笑いをしながらとりあえず質問者なんだから納得しているように応答しておいた。 「ってゆーか、少ちゃんそれを聞くために呼び止めたわけじゃないんでしょ? はやく本題に入らないとたけぴょん達どんどん先に行っちゃうよ」 「うん、そうだね、ってえぇっ!?」 なぬっ!?ココに僕の考えが読まれた!? 「あ、いや、その・・・」 ど、どうすればいいんだ・・・って、さっき決心したんじゃないのかよ僕。 「もーう、うじうじしてるとココが先に言っちゃうぞぉ」 なんですとっ!? ココは僕の考えがわかってるみたいだから、それを先に言うってことは・・・。 「それでは言います」 「ちょ、ちょっと待った」 ・・・ココに先に言ってもらってたらダメだ。 僕が・・・言わなきゃ・・・。 「ココ・・・僕が言う・・・。 僕は・・・ココが・・・す、好き・・・です」 なんで敬語になってるんだよ僕・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 あ、あれ?まさかココが言おうとしてた事って別の事なのか? ま、まずい・・・なんか顔があつくなってきた・・・。 僕は思わずうつむいた。 と、なぜか頬に髪が触れていた・・・ピンク色の髪が・・・。 「え?」 「やっと・・・言ってくれたね」 ココが僕に抱きついてきた・・・ということは・・・。 「し、知ってたんだ・・・やっぱり・・・」 もしかしたら武と優も知ってたのかな。 「うん当然でしょ。だってココは」 「ちょーのーりょくしゃだから、かな?・・・ッ!?」 ココの唇が僕の頬に触れた。 ・・・・・・・・・。 「おぉ〜い、おあついとこ申し訳無いんだがそろそろついてこーい」 それを聞いたとたん瞬時にココを離した。 ずっと・・・見られてた・・・? そう思った瞬間極限まで顔があつくなった。 「少年〜顔が真っ赤だぞー」 優の駄目押しでさらに意識しちゃってあつくなってく。 頭が蒸発しそうだ・・・。 「それじゃあ、少ちゃん、行こっ!」 と、ココが僕の手を握り駆け出す。 「あ、うん」 ココに連れられ僕も走り出した。 ・・・・僕に過去の記憶はない・・・・ ・・・・だけど・・・・ 僕はココとこれからの未来を生きていくんだ だから今の僕は過去に縛られない。 なくした記憶を取り戻せずとも・・・、 これからの未来に起こる出来事を一つ一つ思い出として 心に刻みながら生きていく。 僕の未来への扉は今開かれたんだ・・・。 「ココっ、今度新作コメッチョ聞かせてよ」 その日の空は澄み渡っていた・・・かぎりなくどこまでも・・・。 |
--------------------あとがき-------------------- なぜか少年を主人公にしてみました。 気が弱い少年を一歩成長させてみたいなぁ、 と思って書いてみたのですが、いかがだったでしょうか。 ・・・感じてる人はいると思いますが、 櫻条は決まったフレーズ入れすぎですね(^^; ボキャブラリィ増やさないとダメですねぇ・・・。 今回はあとがき簡単にしておこうかと思いますw それでは。 2003.2.14:櫻条 紫希(書き終わったのはもっと前ですが) |
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