〜思い出の鏡。そして・・・〜
                              櫻条 紫希


「・・・・・」
「・・・・・」
『カチカチカチカチ・・・』
静寂に包まれる部屋に、時計の秒針の音だけが響きわたる・・・。
部屋にいるのは武とホクト。
2人ともテーブルに肘をおき、頭を抱えるようにして座っていた。
こんな状況になった原因は、30分前に起きたある出来事だった・・・。

 ――――― 30分前 ――――――

「ねぇお父さん、何してるの?」
「いやなに、ただの探し物だ」
イスの上に立ち、タンスの上に山積みにされたダンボールを調べている。
そのすぐそばでホクトはただ立ってそれを見ている。
「何探してるの?」
「ん?あぁ・・・火の光をあてると俺の姿が映るアレだ、っと・・・」
喋りながら上にあったダンボールを手で持ち上げる。
「それだったらそこにあるみたいだけど・・・」
床を指差しながら言う。
そして武はそちらの方を見ようとする。
「ん?どこだ?」
方向転換した瞬間、武のバランスが崩れ・・・。
『ズダン・・・ガラガラガラガラ・・・・』
武の落ちた音とダンボールの中身が崩れ出る音。
「あだだ・・・」
「大丈夫?お父さん」
ホクトが武に近寄る。
「なんとかな」
武が立ちあがる。
「グチャグチャになっちゃって何処行ったかわからなくなっちゃったね・・・」
ダンボールの中身にまじってしまったらしい。
「まったく。整理整頓せず山積みにしてばっかいるからこうなるのだよ、うん」
腕をくみ、自分で言ったことに対して頷く。
山積みにされているのは、まだ越して来て間もないからであったからだ。
「で、どうするの?お父さん」
「言わずもがな、探すしかないだろ」
こうして捜索作業が始まった。
「何で探してたの?」
散らばった物を片付けながらホクトがたずねる。
「あーいやな、特にやる事もなかったからな。
 その時何故かアレが頭に浮かんできたもんだから、
 アレがどういった感じで映るのか気になったからだ」
武も片付けをしながらそれに応える。
その言葉にホクトは手を止め、武の方を向き、
「あれ?お父さん赤外線視力ってあったっけ?」
「そうだなー、まだ実際には試してないから何とも言えん。
 だけどTBの抗体うった際に感染してる事は間違いないはずだ。
 優も桑古木もそうなってるわけだしな」
武は手を動かしながらのまま喋る。
「うん。そのことは知ってるよ。
 僕が言いたいのは、たしかお父さんたちはキュレイに感染したとはいえ、
 不完全なものなんでしょ?だから聞いてみたんだ」
しかし武に反応はなかった。
「お父・・・さん?」
武はかたまっていた。
ホクトは武の近くまでいきもう1度呼びかけてみる。
しかしまたも反応はなかった。
どうしたのだろうかとホクトも武の視線の先も見てみる。
「・・・・」
「・・・・」
2人の間でしばしの沈黙が流れる。
「どうするの?・・・これ」
「どうするもなにも・・・・」
例のホログラムの映る鏡はこなごなに割れていた。
「で、でもよ、これってカケラでもいちおう姿が映るんだよな?
 全体がくっきりと・・・そうなんだよな、ホクト」
ホクトの両肩をガシッとつかみ問いかける。
「そうだけど・・・そういう問題じゃないような気がする・・・」
「いいから試してみてくれ!な?」
「わかったからとりあえず手、はなして」
そして鏡のカケラをひとつつまみ、ライターに火をともす。
・・・・。
「なんだ、俺にはやっぱ見えなかったってわけだ」
そうかそうかと笑いながらそう言っている武の横でホクトはかたまっていた。
「ん?どうしたホクト、顔色が悪いぞ?」
「・・・え・・・んだ」
「はい?今なんと?」
小声で言ったホクトの声は武にはとどいていなかった。
もしくはとどいているのだがそれが信じがたく確認する。
この2つのどちらかだが、今はとくに関係ない。
「み・・か・・たん・・」
「だー!もうはっきり言えっての!」
勢い良く叫ぶように言う。
そしてライターの火と止め、ホクトがまた口を開く。
「・・・僕にも見えなかったんだ・・・ホログラム」
「・・・なんだと?」
さっきの勢いはどこへやら、2人は愕然としていた。

 ――――― そしてそのまま現在に至る ―――――

テーブルの中心には集められた鏡のカケラとペンダントの部品。
2人はさっきからピクリとも動いていない。
つぐみと沙羅は今出かけている。
その事がなによりの救いだった。
「つぐみが帰ってきたら・・・殺されかねないかもしれん・・・」
長い間の沈黙をやぶったのは武のぼやきのようなひとり言。
「問題なのはそこじゃないよ、お父さん」
小さな声だがホクトも口を開ける。
「何ッ!じゃあホクトは俺が殺されても良いとッ!?」
「冗談を言ってる場合でもなくて・・・」
いや、半分は本当なのだが・・・とでも言いたそうな顔をして武は黙り込む。
「だってさ、あれって僕達家族皆にとっての思い出の物でもあるんだよ」
静寂の中、ホクトの声と時計の秒針の音だけが響きわたる。
武は黙ってそれを聞いている。
「それ以前に沙羅と兄妹だって事がわかったキッカケのひとつでもあるし、
 今家族が皆そろっているのも、きっと・・・」
たんたんと話すホクト。
武はなにひとつ言わず静かに聞いている。
そんな姿を見てか、
「・・・まぁ最終的には田中先生に教えてもらえたのかもしれないけど・・・」
「ホクト・・・今の言葉はいらない」
「・・・うん」
一瞬静まり、
「たしかに言う通りだ。俺は本当にすごい事しでかしてしまったようだ」
静かに立ちあがる。
「どうするの?」
それにつられるようにホクトも立ちあがる。
「もう腹くくって全面謝罪するしかなかろう、とりあえずな」
と、その時・・・。
『ガチャ』
「ただいまー」
玄関のドアが開けられつぐみが帰ってくる。
そして武は慌ててテーブルの上の物を背中の方へもっていく。
「・・・覚悟決めたんじゃないの?」
「いや・・・心の準備というものがだな・・・」
そしてつぐみが部屋まで入ってきた。
「2人してつったって何やってるの?」
「いやこれはだな・・・」
「なにか後ろに隠してるみたいだし」
さすがと言うべきか、つぐみは鋭かった。
まぁ、武が相手だったら誰でも見抜けそうだが。
「いやまだ・・・まだあとちょっと待ってくれ」
「待つって何を・・・」
とその時ひとつのカケラが床に落ちていた事につぐみが気づき拾い上げる。
「・・・何?これ・・・」
細かく砕けたカケラでは瞬時に何か判断するのは苦しいようだ。
「・・・武。隠してる物、出してみて」
口調はとても穏やかだ、しかし声がそうではない。
武は手にある物をテーブルに広げ、
「スマン、悪かった・・・でも不可抗力だった事は言っておく」
「・・・不可抗力とかそういう問題じゃなくて・・・」
つぐみは顔を伏せる。
「これはあの時の大切な・・・」
つぐみの言葉が途中でとぎれる。
「あぁ・・・わかってる・・・」
「・・・・」
3人の中に沈黙が訪れる。
それぞれの思いが部屋の中でうずまく。
・・・・。
とそこへ、
『ガチャ』
「只今帰ったでござるー」
沙羅が帰ってきた。
そして3人のいる部屋に足を踏みいれる。
「・・・な、なんでござるか・・・この空気は・・・」
思わず一歩あとずさる。
「じつはさ・・・」
その沙羅に耳打ちするようにホクトが小声で話しかける。
そして出来事の一部始終を伝える。
「お兄ちゃん。何言ってるの?」
「え?」
沙羅の意外な言葉に疑問の顔を浮かべる。
「だって・・・たしかに一度ママに返したんだけど、
 お守りとして持ってていいって言われたから、私が持ってるもん、ほら」
「・・・・・」
バッグの中から取り出す。
それを見たホクトは沈黙に。
となりでそれを聞いていた武とつぐみもそちらを向く。
「あれ?どうしたの?」
「・・・と言いますと・・・」
「それは違うみたいだね、お父さん」
沙羅以外はこなごなの鏡の方へ視線を向けた。
――つまり本当のホログラム鏡は沙羅が所持していたわけで、
武が壊したものはどうやらまだ何も焼きつけていないものだった。
なにも焼きつけていないのだからホクトが見えなくても当然のことだった、
というわけだ。
・・・・・。
「・・・武のバカ・・・」
「だーなんだこのありがちな展開はー!」
「無事だったんだから良かったんじゃないの・・・」
「・・・・」
小声でつぶやくつぐみ。
思わず叫びだした武。
少し呆れた感じでつっこむホクト。
なにがなんだかわからず立ち尽くす沙羅。
・・・4人は今一緒にいる。
・・・バラバラになった4人が今、一緒に暮らせている。
「真剣になってたと言うのに、こんな何も面白くないくだらんオチでしめられてたまるか!?」
「オチとかじゃなくてさ・・・」
「・・・本当に・・・バカ」
「私にもわかるように説明してよー」
叫ぶような口調のままホクトに同意を求める武。
もはや完全に呆れて、頭をガクッと落とし片手で顔をおおうホクト。
ホクト以上に呆れ果てているつぐみ。
自分だけがわからないでいるので、武の腕を掴み訴える沙羅。
・・・そう4人は今、この一瞬一瞬の時を共に生きている。
・・・・。
「・・・こいつも大切な思い出のひとつだもんな」
落ちついた武が本物の鏡を上にかざしながらつぶやく。
武とつぐみが結ばれた時に撮った思い出の映像・・・。
ホクトと沙羅が兄妹だったということを知るキッカケのひとつとなった思い出の映像・・・。
「・・・でもよ・・・」
全員が武の方を見る。
一瞬の静寂が部屋を包み込む。
「今の俺たちは、これから・・・そう、これからたくさんの・・・
 もっとたくさんの思い出がつくれるんだ・・・」
そしてゆっくりと微笑む。
それにつられて皆微笑った。
・・・4人は今、一緒にいる・・・。




SSの練習の為に書いてみたものです(;´∀`)
なので文章変だし、キャラぶち壊してるし、話面白くないしで・・・。
この話だってポンと頭に浮かんできたものを無理やり話にしたものなので、
こじつけっぽいトコロがあります(;´∀`)
こんな未熟無知なヤツが書いたものですが、
よろしければ皆さんのアドヴァイスが頂けたら、と思って投稿してみました。
良い話が書けるように少しずつ学んでいこうと思います。
最後にこの話を読んでくださった方、ありがとうございました(礼




2002



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