〜Ever17 After Story 〜
君の望む幸せ

                              tomo




 LeMUから本土へと帰る船上で潮を含んだ風を受けながらついさっきの出来事について考えていた。
ホクトや沙羅のいる前で恥ずかしかったものだから、からかってしまいつぐみを怒らせちまったな。
多分船室にいるから謝りに、…いや普通に謝りに行ってもさらに怒らせるだけだから、さっき台無しにしてまった感動の再会の代わりに17年前(俺にとってはつい昨日の事だけど)に言いそびれた言葉でも言うか。
最も以前に用意していた言葉だけではなく、俺たちの子供のことも加えて考え直さないといけないところもあるがな。
俺はさっそくつぐみのいる船室の前まで行き、ノックした。
 コンコン…
予想通りにノックをしても返事がないので、俺はドア開けて中に入っていった。
「武でしょ。今、あなたの顔なんて見たくないの。殴られたくなかったら出て行って。」
つぐみは抑揚がほとんどなく冷たくそう言ってきた。
やっぱりまだ怒っていたな。
まあ、いきなり殴りかからないのでさっきよりは機嫌直っているみたいだ
だから俺はその言葉を無視して言った。
「なあ、つぐみ。お前、本土に着いた後どうするんだ。」
「そんなの武には関係ないでしょ、ほっといて。」
「いいや、関係なくないね。俺はつぐみと一緒に暮らそうと考えているからな。いやつぐみだけでなく、ホクトや沙羅とも一緒にだ。」



私は武のその言葉が嬉しくて、さっきまでずっと機嫌が悪かったのをすっかり忘れていた。
17年もの間ずっとそんな来るはずのない日が来ることを願っていたから。
だけど嬉しいと言葉にするのが恥ずかしかったからこう言ってしまった。
「ほんとにそう考えているの? 冗談で言ったのだったら、さっきの倍以上痛い目にあって貰うわよ。」
「さすがにこの状況でこんな冗談言うほどの度胸はない。つぐみ、一緒に暮らそう。」
私はもう嬉しさを抑えることができなくて、武に抱きついて泣いた。
この17年間寂しさや悲しさが抑えられなくて何度も泣いたことは憶えているけど、嬉しくて泣いたのはホクトと沙羅を身篭ったと解かったあの日とホクトと沙羅に母親として再会した時のたったの2度だけだった。
武がそっとやさしく抱きしめてくれるから涙が止まらなくなった。

しばらくして、私が落ち着いた頃に武が私にこう言ってくれた。
「そろそろホクトと沙羅にも一緒に暮らそうって言いに行くか。」
「そうね。2人にはずっと寂しい想いさせてきたからきっと喜ぶわね。」
そんな会話をした後、2人の元に行こうすると、
 コンコン
とノックの音が聞こえた。
「どうぞ。」
と武が答えると、ドアが開き優(春)が入ってきた。
「2人ともここにいたのね。探したわよ。」
「なにか俺たちに用でもあるのか?」
「ええ、2人に本土に着いた後どうするつもりか聞こうと思って。行くあてとかあるの?」



 俺は優(春)の質問にこう答えた。
「行くあてなんて今のところないな。だが、つぐみやホクト、沙羅と一緒に住もうと考えている。」
「それで私たち、そのことを言おうと思って、2人を探しに行こうかって話していたところだったの。」
「ふふっ、ちょうどよかったわ。倉成、つぐみ、これ私からのプレゼント。」
そう言って俺にポケットから出した少し重みのある封筒を渡した。
俺は封筒を開けて中を見てみると、俺名義の通帳とキャッシュカードと印鑑、あと鍵が4本と住所の書いてある紙が1枚あった。
「2人とも受け取れないなんて言わないでね。これ用意するのに結構苦労したんだから。」
「優…ほんとにいいの?」
つぐみが驚きを隠せない表情で聞いていた。
「そのために用意したから受け取って貰わないと処分に困るわよ。ああ、通帳には当分生活に困らないだけのお金が入っているから、無駄遣いするんじゃないわよ。」
「わかってるって、サンキュー、優。」
俺はこの大切な仲間に言葉だけでは言い表せない気持ちを込めてそう言った。
「どういたしまして。それより、ホクトと沙羅にこのこと教えてあげないの。」
「おお、そうだった。つぐみ、早く2人に言いに行こうぜ。」
「ああ、倉成ちょっと待って。つぐみ紫外線に弱いから2人にはこっちに来てもらうほうがいいわ。呼んできてあげる。」
「そうか。なら頼む。」
「優、いろいろしてくれてありがとう。」
「いいのよ、つぐみ。それじゃ、2人を呼んでくるからちょっと待っていて。」
と言うとすぐに優(春)は船室から出て行った。
俺は優(春)が出て行くのを見送ってから、つぐみに、
「なあ、つぐみ、2人にはどう言ってびっくりさせてやろうか。」
「別に、びっくりさせる必要なんてないじゃない。普通に一緒に暮らそうって言えばいいのよ。」
「いいや、こういう重要事項はだなぁ…」
とつぐみに事の重大さを教えようとしたとき、
 コンコン
とノックの音と共に
「パパ、ママ、来たでござる。」
「お父さん、お母さん、入るよ。」
と元気よく2人がやって来た。



 ブオーーーーーン
本土への到着を知らせる汽笛が聞こえた。
その音を聞きながら、私は目の前の待ち望んでいた光景を見ていた。
沙羅が私と同じように嬉し涙を流しながら、武に抱きついている。
ホクトがまた沙羅にやきもち焼いちゃってる。
私はそんな3人のそばに近づいて、
「武、ホクト、沙羅、みんなで私たちの家に帰ろう。」
と今までずっと言いたいと思っていたその言葉を言った。






あとがき
 勢いのみで始めて書いたSSですが、みなさんどうでした。
 つぐみの17年間願い続けたであろう夢がかなう瞬間がうまく書けていればいいのですが…。
 特に途中、初めて書いているにもかかわらず視点を移すなんてことしでかしていますし。(汗
 意見、感想(酷評も含む…けどあまり欲しくないですw)などありましたら、いろいろ聞かせてください。
 以上、文系センスのかけらも見当たらない超理系人間のtomoでした。

 mailto: cuayk617@occn.zaq.ne.jp




2002



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