こんにちは、雪風と申します。
以前1度SSを投稿させて頂いたのですが、
懲りずにまた書いてしまいました。
今回はギャグ色が強いので、
そういうのが嫌いな方は読まない方がいいかもしれません(汗)
あと、今回の話は武・つぐみ・沙羅・ホクトの4人が一軒家に住む事になったという
設定のもとでの話です。
それでは、覚悟の決まった方は読んでやって下さい(笑)





〜倉成家の朝〜
                              雪風



「何故だ!どうしてこうなっちまった!
くそっ!こんなはずじゃなかったんだ。
俺は、俺は!」
「お父さんー、ご飯まだー」
「・・・」
「・・・」
「俺は、まだ、やれる!
諦めるわけにはいかないんだ!
立ち止まるわけには、いかない!」
「お父さんってばー。お腹へったよー」
「・・・」
「お父さん?」
「・・・だぁー!?ホクト!何て事をしてくれるんだ!
せっかく、せっかく・・・」
ガクッ
俺は力なくうな垂れた。
本当に、どうしてこうなっちまったんだろうか。
ちなみに俺とホクトがいるのは台所だ。
俺は朝食作り―作りたくて作っているわけではないという事を声を大にして言いたい―に励み、
ホクトはテーブルに腰掛けている。
そして時間は朝。
ホクトにとっては、登校までのゆっくりタイムといったところだろうか。
ちなみにホクトと沙羅は学校は別だ。
沙羅が通っているのが女子校なので当然といえば当然なのだが。
しかし、これには裏話があるのだ。



「お父さんー、僕、沙羅と同じ学校に行く事にしたよ」
屈託の無い無邪気な笑顔。
誰がどう聞いても冗談には聞こえなかった。
「はははっ!ホクトは沙羅が好きなんだな」
「うんっ!だからね、僕、沙羅と同じ学校に行くんだ」
そうか。ホクトもそこまで沙羅の事を。
「うむ。わかったぞ、わが息子よ」
「ありがとうお父さん。嬉しいよ」



あ、頭が痛い。
吐き気もする。
そんなの嫌すぎるぞ!
裏話でも何でもない!
却下だ却下!
ったく!俺は何を考えているんだ!
「ホクト。つぐみと沙羅を起こして来い」
そんな考えを払拭するかのように、
俺はホクトに向かってきっぱりと言い放ってやった。
うむ。これぞ父の威厳。
つい先刻までの俺からは想像もできないほどの偉大さだろう。
この言葉にホクトは尊厳の念すら覚えるはずだ。
「えー、嫌だよお父さん。
だって、お母さんも沙羅も寝起き悪いんだもん。
お父さん起こしてきてよ」
「・・・」
ズーン
ほ、ホクト。お前ってやつは!
お前には思いやりってもんが無いのか!
というか俺の立場は!?
「沙羅はいきなり抱きついてくるし、お母さんは機嫌悪いし」
「だからって、俺に行けって言うのか、ホクト!?」
「うんっ!」
「ここでひとつ、今話題になっている人物達の朝について説明しよう。
沙羅は朝に弱いというよりも、性質が悪い。
まず自分ひとりでは起きてこない。
で、ホクトが起こしに行くと『お兄ちゃーん!』と叫びながら抱きつくわけだ。
わざとやっているとしか思えない。うむ。沙羅は確信犯だ、決定!
つぐみは、今までは気を張っていたからとかで、それなりに朝には対応できていたらしいが、
『武がいるから安心できるの』、そう言って朝にめっきり弱くなってしまった。
言葉だけを聴けば嬉しいが、つーか、それに騙されている気もするのだが・・・。
だが、実際問題としては最悪だ。寝起き悪すぎ!?
この前なんか脇腹蹴られたんだぞ!あいつのあの蹴りを、だ!」
「お、お父さんっ?」
「悶絶寸前の俺を横目に『おやすみ武』、そしてつぐみは布団に帰還♪・・・だぞ!?
あいつは、あいつは!?」
「お父さん、ドウドウ!」
「ふぅー、ふぅー。って、何じゃそりゃ!」
・・・
・・・
・・・
俺は冷や汗を流していた。
季節は春から夏に移り変わろうとする今日この頃。
そよぐ風が心地よく、爽快感を醸し出してくれる。
だが、今の俺は切迫していた。
はっきり言って非常にまずい。
生死に関わる。
俺の目の前にはわずか6文字による死刑宣告が告げられていた。

『つぐみの部屋』

結局俺はホクトとの口論に負けたのだ。
あいつ、普段はお父さんお父さん言ってるくせに、
肝心な時に頑固だよな。
まったく使えんヤツだ。
「にしても、いつまで経っても状況が変わらないのが虚しすぎるぞ」
さて、どうしたもんか。
・・・んっ?
ちょっと待て。
ここはまず、つぐみではなく、沙羅から起こす事にしよう。
沙羅ならデンジャラス度が一気に下がるからな。
よし、ナイス判断だ俺。
では、沙羅の部屋へゴー!
・・・
・・・
・・・
「沙羅、入るぞ」
ガチャ
そんな音を立てて扉は開いた。
そして、俺の目に飛び込んだ光景は、
「キャ、キャー!み、見ないでよ!パパのエッチ!バカバカ!」
・・・着替え中の沙羅がいた。
「す、すまん沙羅!」
そう言って俺は慌ててドアを閉めようとした。が!
「あっ!待って!えっと、ね。本当は、私、パパになら見られてもいいかな、って」
「えっ!?」
俺はまじまじと沙羅を見返した。
頬を赤くする沙羅。
「パパ」
「沙羅」
俺たちの間には不似合いなほどに甘い空気が流れた。
・・・なわけがない。
現実とゲームとはわけが違う。
「んな事、有り得ねーよな、普通」
沙羅は布団にくるまって安らかな寝息をたてていた。
そんな姿を見ていたら、ついさっきまで不謹慎な想像をしていた自分を殴りたくなる。
「ほらっ、沙羅起きろ。朝だぞ。遅刻するぞ」
俺は謝罪の念を込めて、できるだけ優しく起こそうとしてやった。
「沙羅っ、沙羅っ」
ゆさゆさ、ゆさゆさ・・・。
「・・・」
「すーっ、すーっ」
うむ。起きる気配なし!
じゃあ、戻るか♪
「って駄目だろおい!」
シーン
・・・ひとり突っ込み撃沈。
「はぁー。こうなったら最終手段だ。
できれば使いたくは無かったのだが」
俺はひとつ大きく息を吸ってから叫んだ。
「裸のホクトがぁ!!!」
「えーっ!!!」
沙羅は人間を超越した動きで布団から飛び出した。
ブンブンブン!
千切れんばかりに首を左右に振っている。
よし。これで沙羅はOK。
「ホクトが下で待ってるからな。早くするんだぞ沙羅」
それだけ言って、俺は沙羅の部屋を後にしたのだった。
・・・
・・・
・・・
俺は硬直していた。
まるで石化してしまったかの如くにだ。
距離にしてわずか1歩。
隔てるものは扉1枚。
そして、例の如く俺の目に映るのは、

『つぐみの部屋』

俺の頬を伝って、一滴の汗が床へと流れ落ちた。
それはすぐに床へと溶け込み、まるで何事も無かったかのようだ。
それを合図にするかのように、俺はドアノブを一気につかんだ。
ここにいつまで突っ立っていても埒があかん!やるなら今だ!
ガチャ
『あぁ!開いちまったぁ!まだ心の準備が!』
自分で思っているよりも往生際が悪かったりする。
だが、開いてしまったものはどうしようもない。
俺は身を滑らすようにつぐみの部屋へと入っていった。
・・・つぐみは寝ていた。
沙羅同様につぐみも安らかな寝息をたてていた。
はっきり言って寝顔は可愛い。
というか、つぐみは美人だ。尚且つ可愛さも兼ね備えている。
だが、油断はならない。
寝起きのつぐみはツキノワグマ並に危険だ。
いったん発動すれば俺には為す術が無い。
慎重に行動せねばならない。
ベストなのはつぐみに声をかけずに、身体にも衝撃を与えずに、
更には快適に起きてもらう事だ。
「・・・そんな方法あるわけがない!」
俺は叫んでいた。これでもかという位に。
カーンカーンカーンカーン!
どこかでゴングが鳴っている。
だが、ここはボクシングの会場ではない。
鳴っているのは・・・人生のKOのゴングだ。
そして、俺は哀願するような目つきでツキノワグマに視線を送った。
・・・ツキノワグマはまだ寝ていた。
あ、危ねぇ。助かったぁ。
事態は何ひとつ好転してはいないが悪化してもいない。
「ふぅー!はぁー!」
俺はひとつ深呼吸をした。
叫んでも起きないのだから、深呼吸のひとつは何のその、
「んんっ」
げっ!バカな!
何でさっきので起きないで、こんな小さな音で起きるんだよつぐみ!
「たけ、し?」
「やぁ、つぐみ♪おはよう!」
・・・って、こんなの俺のキャラじゃねぇー!
しかし、つぐみに反応はなかった。
もしかしたら、まだ完全には起きてないのか?
モゾモゾッ
つぐみが布団に潜り込んでいく。
『あっ、何か可愛いかも』
・・・って、んな事思ってる場合じゃねぇー!
「おい、起きろつぐみ!」
引き返せなくなった俺は暴挙に出た。
つぐみにかけられていた掛け布団を思いっきり剥ぎ取ってしまったのだ。
もはや引き返すことなどできん!
当たって木っ端微塵だ!?
「寒い・・・」
その言葉に俺は脱力して、気勢をそがれてしまった。
まさかこんな反応をするとは思ってもいなかったから。
というか、こんな事今までに一度も無かったぞ。
にもかかわらず俺は本能的に嫌な予感がしていた。
「寒い・・・、だから暖めて、武」
「・・・」
はっ?ちょっと待ってください、つぐみさん。
今なんと?寒い?暖めて?
答え:寒くない。よって暖める必要なし。
だけど思考とは裏腹に石化したままの俺。
「お願い、武」
あぁ、そんな瞳で俺を見ないでくれ、つぐみ。
そもそも本気なのか?それとも寝ぼけてるのか?
「・・・わかった」
はっ?ちょっと待ってください、武さん。
今なんと?わかった?何を?
答え:わかった。よって暖める必要あり。つまり、つぐみを抱きしめろ。
だけど思考とは裏腹に石化したままの俺・・・ではなかった。
俺の身体は石化から解き放たれ、つぐみの布団へと。
そして、俺はつぐみを抱きしめようとした。
ガチャ
「ママ〜、いい加減起きないとパパが」
ドアノブを握って笑顔のまま固まる沙羅。
布団の上であうあう言っている俺とつぐみ。
ガチャ
無言でドアは閉められた。
そして沈黙。
・・・よーし、これでつぐみを♪
「って!ちょっと待てぇ!沙羅ぁ!」
俺の叫びだけが虚しく響き渡った。

「にんにん」

だが、そんな言葉が何処からともなく聞こえてきたのは気のせいだろうか・・・。
「武のバカ」
「つぐみのバカ」
俺たちはタイミングを計ったかのように同時にガックリとうな垂れた。





あとがき

最後まで読んでいただけるとわかると思うのですが、
何だか流れも内容も『BE YOUR TRUE MIND』みたいになってしまいました・・・。
どうやら私は、こういう系しか書けないみたいです(泣)
                              雪風




2002



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