真・女神転生SEVENTEEN 作 大根メロン |
「君達は疑問に思わないかい?」 闇の中に青年が立っていた。 そして、青年と同じく闇の中に立つ六副官。 第一副官、夜魔『リリス』。 第二副官、魔王『ベルゼブブ』。 第三副官、魔王『ベルフェゴール』。 第四副官、堕天使『アラストール』。 第五副官、魔王『モロク』。 第六副官、妖獣『ベヒモス』。 「君達の盟主であるルシファーは唯一神に対し反乱を起こした。だが全知全能の唯一神が創造したはずのルシファーがどうして『傲慢』という性格を持つ、不完全な存在だったんだろう?」 青年が、笑った。 「唯一神は全知全能の存在などではなかったのか、あるいはルシファーの反乱は唯一神のシナリオだったのか… ふふ、あまり気分の良い話ではないかな?」 闇に、霧の中をさまよっている武達が映し出される。 「さて、アルケニーが死んだ。そろそろ君達六副官の出番だよ」 副官達の眼が、禍々しい光を放つ。 「俺に行かせろ」 アラストールが言った。 「俺は退屈してんだよ。お前が清姫やらアルケニーやら、ザコばっかぶつけてたせいでなぁ」 「あら、あなたはザコじゃなかったのね」 リリスが嗤う。 「…んだと?」 アラストールはリリスを睨みつける。 「そのキレイな顔、グチャグチャにしてやろうか…?」 「へぇ… あなたごときに、そんな事が出来るかしら?」 凄まじい、殺気と魔力が渦巻く。 「…止めなよ」 青年の声が響いた。 「……チッ」 「…………」 2者は睨み合いを止め、不服そうな顔で青年を見る。 「そうそう、誰が行くのか決めなければね。そうだな…」 青年がひとりを見た。 そして、微笑む。 「じゃあべヒモス、君に頼もうか」 それは溜息だったのか、欠伸だったのか。 突然べヒモスが吐き出した吐息は、凄まじい風圧で武達に襲いかかった。 三者の身体がまるで風に吹かれた落ち葉のように浮き上がり、吹き飛ばされる。 「ぐぁあっ!?」 「きゃあぁぁああ!!」 「グゥッ……!!」 骨を軋ませる衝撃と共に地面を十数メートル転がり、ようやく三者の身体は停止した。 「…まるで塵のような連中だな」 べヒモスが言葉を発する。重く、冷たい声だった。 「くっ…!」 武は起き上がると同時に跳び、べヒモスの巨大な身体を斬り付ける。 だが、べヒモスの皮膚はまるで鋼鉄のように、斬撃を弾き飛ばした。 「バカが!」 べヒモスはその太い足を武の身体に打ち込む。骨が砕ける音が響いた。 「がぁ……!!?」 武はその場に倒れ込む。そして、べヒモスの足が武を踏み潰そうとした。 「死ねぇ!!」 「武さん!」 咲夜はとっさに武を抱え、べヒモスとの距離を取る。間一髪だった。 「ケルベロスさん! 武さんに回復魔法を!!」 「もうやっている!! 傷は癒えたが、意識が戻らない!!!」 「クッ…!? 合金繊維チョッキを着ている武さんが一撃で……!!?」 咲夜はドラグーンをべヒモスに向け、銃撃を放った。 ドオォ…ン!! 「ん、何だ? 今のは攻撃か?」 だが、べヒモスの身体には傷一つ付かなかった。 「なら反撃だ… <マハマグナス>!」 ドゴォォオオオ…ンッ……!!! 魔力によって形作られた、無数の岩石が降り注いだ。 「きゃぁぁああ!!?」 「チィ…!」 ケルベロスは武と咲夜を自分の背に放り上げ、岩石の雨を紙一重で躱してゆく。 まるで隕石が落ちたかのような衝撃が、地面を伝わった。 「一体どうするんです!? 逃げてばっかりじゃ絶対勝てませんよ!!?」 「貴様がなんとかしろ!! 仮にもバスターなのだろう!!?」 「あんな上級悪魔(グレーターデーモン)の相手なんて出来るはずがな…」 その時、魔力が集束するのを感じた。 「<マグダイン>…!!」 ドォオオンッ…!! 巨大な岩石が、叩き込まれる。 悲鳴を上げる事すら出来ずに弾き飛ばされ、ケルベロスと咲夜は地の上を跳ねた。 「あ、ぁあ…!!?」 地面が赤く染まる。それが自分の血だと理解するのに、咲夜には数秒必要だった。 何とか顔を上げ、周りを見る。 「グゥウッ……!!」 ケルベロスも咲夜と同じように、血を流しながら倒れていた。 だが、武にはほとんど傷は無かった。おそらく、とっさにケルベロスが護ったのだろう。 「弱い」 べヒモスの声が聞こえる。 「弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い… 弱すぎる」 地響きを上げ、べヒモスの巨体が迫ってきた。 「人間とその使い魔など、所詮この程度か……」 咲夜はドラグーンに手を伸ばそうとした。しかし、身体は少しも動かない。 「大地よ! 唸りを上げ、我が前に立つ愚者達を飲み込め…!!」 咲夜はその眼を閉じる。悔しさで、涙が滲んだ。 「<マハマグダイン>――!!!」 ドゴォォオオオオンッ…!!! 大地が鳴くような、凄まじい轟音が響く。 「……?」 だが、予期していた衝撃が襲いかかる事はなかった。 咲夜は、少しずつ眼を開いていく。 「…武、さん?」 「おう、なんとか無事みたいだな…」 目の前に、武が立っていた。 「ほう… その刀の力で俺の魔法を受け流したのか……?」 「ああ、磁石の反発と似たような感じで、お前の魔法を逸らした。ようやく俺もこの刀の遣い方が分かってきたよ」 「なるほど。だが、貴様の負担は小さくないようだ」 「…お見通しか……」 武の身体に鈍い痛みが走る。 (くそっ… 身体が言う事を聞かねぇ……) いくら受け流したとはいえ、強力な魔法をまともに受けたのだ。ただで済むはずはなかった。 「<マグダイン>!!」 「――!? クッ…!!」 ドォオオンッ…!! 刀で魔法を受け流し、何とか直撃を避ける。 だが、完全に防いだ訳ではなかった。 「ぐぁッ…!!」 衝撃を殺し切れず、武の身体が吹き飛ぶ。 「<マハマグナス>!」 ドゴォォオオオ…ンッ……!!! さらに追撃。 続け様の攻撃に対処出来ず、魔法は武を直撃した。 「ぐっ…!」 「とどめだ…!!」 魔力がべヒモスを中心に渦を巻く。 「クッ… 主よ!!」 ケルベロスが跳ぶ。 「武さん!」 咲夜もべヒモスに向かい、跳んだ。 銃撃は効かなかった。なら、物理攻撃以外で攻めるしかない。 咲夜は両手を合わせ不動明王印を結び、 「オン・ナウマク・サンマンダ・バザラダン・カン…!」 真言を唱える。さらに刀印を結び、 「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!!!」 九字を切った。 「<ファイアブレス>!!」 そしてそれと同時に、ケルベロスが炎の息を放つ。 ダァアアァア…ン……! 咲夜の咒力とケルベロスの魔力が形を成し、べヒモスを撃った。 「ぐぅう…!? こ、小癪なぁ……!!」 べヒモスが怯む。 「どうやら咒術の類は効果あるみたいですね… 武さん、大丈夫ですか?」 「あ、ああ、助かった… って言うか、お前あんな事が出来たのか」 「ええ、こう見えてもあたしは優秀な咒者(呪術師)なんです。あたしの一族の中でも、五本の指に入る異能者だったんですよ」 「ほう… ん?」 「どうかしましたか?」 不自然だった。 動けないほどだったはずの咲夜の傷は、今はもうほぼ完全に塞がっている。 驚異的な、回復・再生能力だった。 「お前、まさか…」 武がその言葉を口にしようとした時、 「<マハマグダイン>!!!」 数多くの巨大な岩石が、武達に襲いかかる。 「しまった…!?」 油断していた。今の武達に、この魔法を避ける術はない。 「くっ……!?」 武は何も考えず、ほぼ無意識に刀を振るった。 魔法が裂けた。 「へ……?」 無数の岩石達は左右に分かれ、武達から逸れる。 そしてその不可視の刃は、べヒモスをも斬った。 「グォオオ…!? な、何だ…!!?」 ドゴォォオオオオンッ…!!! 岩石の落下による轟音が響く。だが、武達には傷一つなかった。 「えっと… 今のは一体何だ?」 「さ、さあ…? あたしに訊かれても……」 「…その刀のおかげだ」 ケルベロスが静かに言った。 「この山の霊気がその刀に満ちている。霊気の斬撃が、奴の魔法を斬り裂いたのだろう」 「そ、そうか! 将門之刀は神器――つまり『器』です。そこに、山の霊気が入り込んだんですね!」 咲夜の顔が歓喜に満ちる。 「きっと泰山府君が力を貸してくれたんでしょう。チャンスですよ! その太刀ならべヒモスを斬れます!!」 だが、武の口からとんでもない言葉が放たれた。 「…あー、悪い。俺、もう身体が動かないんだ。あちこち骨が砕かれてる」 空気が凍る。 数秒間、場を沈黙が支配した。 その後、 「……おい」 「……はい?」 ケルベロスが、咲夜の方に話しかけた。 「我が、主を動けるように治療する。その間は…」 「…その間は?」 「1人でべヒモスの相手をしろ」 「……………………へ?」 何を言われたのか、理解出来なかった。 「……本気で言ってます?」 「無論だ。それとも、他に何か手があるのか?」 「うっ…! で、でも……!!」 「時間を稼ぐだけでいい。そうしないと、全員死ぬぞ」 「………!」 咲夜は少しの間黙り込んだが、 「……解かりましたよ」 すぐに、首を縦に振った。 「決まりだな」 ケルベロスが武の治療を始める。 「<ディアラマ>…!」 回復魔法の優しい光が武を包み込んだ。 「さてと…」 咲夜はそれを見ながら、不可視の一撃で怯んでいたべヒモスと対峙する。 「今更ながら… どうしてこんな事になったんでしょうかね……?」 べヒモスの禍々しい眼が咲夜を捉えた。 「に、人間めぇえ…!!!!」 すべてを侵蝕しようとする、邪な視線。 しかし咲夜はそれを受けながらも、気圧される事はなかった。 「プロ根性、見せてあげますか」 咲夜とべヒモスが跳んだのは、ほぼ同時だった。 「死ねぇぇえええ!!!」 べヒモスは上方に跳び上がり、その巨体で咲夜を押し潰そうとする。 だが、咲夜は自身の瞬発力とスピードを最大限に発揮し、べヒモスの下を潜り抜けた。 ドゴォォオオオオン…!!! べヒモスの落下により、地が震える。 まるで大地震のようだった。 「はあ…!」 咲夜は自身の気から気弾を練り上げ、後ろを振り向いたべヒモスの顔に向け放つ。 「喰らいなさい!!」 だが、 ドォ…ン……! べヒモスに効果はなかった。 「そんなもの、眼暗まし程度にしかならんわ!!」 「眼暗ましなんですよ!!!」 「何……!?」 咲夜の姿がべヒモスの視界から消える。 「おのれ、何処へ…!?」 その時。 「ぬぉおお!?」 びっしりと漢字が書き込まれた長い経典が、べヒモスの身体に巻き付く。 そしてその経典は赤い文字――血文字で書かれていた。 「『血写経典』です!!」 咲夜自身の血で書かれた咒詛の経典は、べヒモスの力を奪い縛る。 だがそれと同時に、咲夜の咒力と生命力を奪ってゆく。 (クッ… さすがにきついですね……!) 赤い文字が、不気味な光を放った。 「ぐぅぅううう!!!」 べヒモスが経典の力に抵抗する。その度にべヒモスの身体と経典、そして咲夜の身体にスパークが走った。 「くぅ……!!」 痛みと脱力感が咲夜を襲う。 (ケルベロスさん、武さん… 早く……!) そう長くは持たないのは明白だった。 そして、 「がぁぁああぁああ!!!」 雄叫びと共に大きなスパークが走り、べヒモスの身体から経典が弾き飛ばされる。 「きゃああ!?」 それにより、咲夜の身体にも衝撃が走った。 そのまま地に倒れる。 「…人間にしてはよくやった、と誉めてやろう……」 べヒモスが力のない声で言った。 少しずつ、咲夜に近付いて行く。 「これほど苦闘したのはあの反乱の時以来か… だが、これで終わりだ……!」 「あなた、馬鹿ですね…」 「……何?」 咲夜が笑った。 「――!!?」 べヒモスの背後に、1つの影が跳びかかる。 「ぐぅ…!?」 一瞬だけ、べヒモスはその影――ケルベロスに意識を向けた。 しかしそれは、致命的な隙を生んだ。 「これで… 決まりだ!」 べヒモスの意識の外から武が跳び込み、霊気が込められた斬撃を放つ。 血写経典により弱ったべヒモスには、それを受け止める力も、躱す力も残っていなかった。 斬撃がべヒモスの身体を裂く。それはまるで、光の線のようだった。 「に、人間ごときにぃぃいいいい!!!?」 絶叫。それと共に光の線から大量の魔力が溢れ出し―― バァアアァアア…ンッ……!!!! ――べヒモスの身体は、まるで割れた風船のように破裂した。 「勝った、のか……」 マグネタイトの破片が降るのを見ながら、武は小さな声で呟く。 やがてその破片も、PDAに吸い込まれていった。 PDAの画面を見る。 「うお!? 凄い量だ…」 今までとは比べ物にならないマグネタイトの量が、画面に表示されていた。 「あいつ、強かったからな……」 そう言った時、突然頭が重くなるのを感じた。 「あれ……?」 意識が遠退いて行く。 武は、そのまま地面に倒れ込んだ。 「ちょ、ちょっと武さん!?」 突然地面に倒れ込んだ武に、咲夜が駆け寄った。 だが。 「…ね、寝てるだけ?」 武は、安らかな寝息を立てて眠っていた。 「寝かせておいてやれ。今までの疲れが出たんだろう」 「…解かってます。この人はあたしやあなたのような闘いに慣れた者とは違うのに、よく頑張りましたよ」 ケルベロスの言葉に答えながら、咲夜は祠を見た。 しかしそれは、もう祠としての役割を果たしてはいない。 「祠は、見事に破壊されちゃいましたけど…」 「…仕方有るまい。あの状況で祠を護るのは不可能だった」 「まぁ、そうですが…」 その時。 ――……が…ぁ………。 「――!!!?」 べヒモスの声が聞こえた。 咲夜とケルベロスは声の方向を向く。 「な、何です? あれ……」 そこには、弱い光を放つ発光体が宙を漂っていた。 ――…この者達が……これほど…の……力を…持つとは………。 「…おそらくあれは、べヒモスの残留思念か何かだろう」 「残留思念……」 ――……話が違……うぞぉ……イ…オン………! その言葉を放った瞬間。 その光は、まるで燃え尽きた蝋燭の炎のように消えた。 「…力尽きたか」 ケルベロスが呟く。 そしてふと、隣に立つ咲夜を見た。 「…どうした?」 「…………」 咲夜は呆然と、光が消えた場所を見詰めている。 それは、今ではなく此処ではない何処かを見ている眼だった。 その状態のまま、咲夜はたった一言だけ呟いた。 「『イオン』……?」 |
あとがきと呼ばれるもの・04 バトル苦手です…。 まぁ、私の得意苦手はどうでもいいですね。はい。 ふと思ったのですが、敵はユダヤ・キリスト教の悪魔である六副官なのに、剣術やら咒術やら和風テイスト漂うものが山ほど出てくるのは何故なんだろう…。 …私の趣味? 嗜好? ……さよなら!(逃げるように去る) |
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