真・女神転生SEVENTEENU
                              大根メロン



第三話 ―暗動―




「それで、熾天使であるお前がどうして魔界に? 唯一神に反逆して、天から堕とされたのか?」
「何処かの誰かと一緒にしないでください」
武・ケルベロス・ガブリエルは、宿屋で朝食を摂りながら話していた。
「突然、光に包まれて… 気が付いたら魔界ここに。きっと、これも神の御意志でしょう」
「…………」
武はその光の正体に心当たりがあったが、口には出さないでおいた。
「それより、お前はこの後どうするのだ?」
ケルベロスが肉をかじりながら、ガブリエルに言う。
「『旧友』に会ってみようと思います。彼なら、天界へと戻る方法を知っているかも知れませんから」
「『旧友』……?」
「ええ。数千年前、友だった者です。もっとも、今は敵同士ですが」
武の言葉に、ガブリエルが答える。
「…なら、しばらくは一緒だな」
「そうですね。助けていただいた恩もありますし、このガブリエルが城下町まで貴方達を守護いたしましょう」
ケルベロスとガブリエルの間で、何か話が決まったらしい。
「……えっと?」
武は、完全に置いて行かれていた。



「よし、じゃあ出発するか」
「ああ」
「はい」
武達は荷物をまとめ、宿を発つ。
だが、その時。
「…………」
宿の前で1人の少年が、じ〜っと武を見詰めていた。
「――? 何だ、俺の顔に何か付いてるのか?」
「あ、いえ――」
その少年は笑って頭を掻くと、
「僕、人間の方を久し振りに見たので、つい……」
「ああ、そうか」
なんだかんだ言っても、やはり人間は珍しいらしい。
「ごめんなさい。気を悪くされましたか?」
「いや、そんな事はない。気にするな」
「ああ、よかった」
少年は武に歩み寄り、
「僕、テトラっていいます」
「テトラ……」
「それで、貴方は?」
「俺は倉成武。一応、サマナーだよ」
「サマナー!? 凄いですっ!!」
テトラは本当に嬉しそうに、まぶしいほどの笑顔を浮かべる。
「それで、武さん達はこれからどちらに?」
「トロメアを通って、城下町に行くんだ」
「――えっ!?」
テトラは大きく眼を見開いて、
「凄い、奇遇ですね! ルートは違いますが、僕達も城下町に行くんですよ!!」
「お? なら、向こうでまた会えるかもな」
「ええ、会えるといいですね。楽しみにしてますよ」
「ああ、俺も楽しみにしてるよ。じゃあな」
「はい、お気を付けて」
お互いに手を振り合いながら、別れる武とテトラ。
テトラの姿が見えなくなってから、武はケルベロスとガブリエルに話し掛けた。
「何か、面白い奴だったな」
「…………」
だが、ふたりは答えない。
ただ、小さな声でふたり同時に、
「『4テトラ』……?」
と、呟いただけだった。



「そう言えば、ガブリエル」
「はい、何でしょう?」
武はケルベロスの背に揺られながら、ガブリエルに声をかける。
「お前、サリエルっていう大天使を知ってるか?」
「ええ、もちろん。武さんこそ、彼の事を知っているのですか?」
「ああ、前に俺の仲魔だった事があるんだ」
「――! そのような事が……」
「そこで、お前に訊きたい。あいつを『A』〜『E』で評価するとしたら、どれだ?」
「…………」
ガブリエルは少し考えた後、
「…評価不可能、ですね」
「うんうん。やっぱりあいつは、同じ天使から見ても変な奴なんだな?」
武は無駄に爽やかな笑顔で、ガブリエルを見る。
「はい。この前も、泰山父君に『ルシファーは娘に手を出している』などというウソを教え込んで遊んでいましたから」
「あいつの事だ。バレる前に逃げたんだろ?」
「ええ。1週間ほど、行方不明になっていました。天界も魔界も全力で捜索しましたが――結局、サリエルが自分から出て来るまで見付からなかったのです」
「…その能力、もっと別の所で生かせればなぁ……」
「まったくです」
「……はぁ〜」
武とガブリエルだけでなく、ケルベロスの口からも溜息が漏れる。
「――何か、面白い話をしてるね?」
「ああ。あいつ、どう考えても神の慈愛を説くなんて柄じゃないよなぁ」
「それは仕方ないよ。ボクの仕事は、神から離れた同族を狩る事なんだから」
一行の動きが、止まる。
そしてその背後には、鋭い眼光を向けるサリエルの姿。
「え〜と… サリエル」
「何だい、元マスター」
「じっと睨むのは止めてくれないか? 少しも動けないんだが」
「いやいや、元マスター達の勇姿をこの眼に焼き付けなきゃいけないから」
「…………」
武は少しの無言の後、
「すみません、サリエル様。調子に乗り過ぎました」
謝った。
「よろしい」
邪視が解除され、武達の拘束が解ける。
「…ちなみに、どこから聞いてた?」
「う〜ん… 『それで、熾天使であるお前がどうして魔界に? 唯一神に反逆して、天から堕とされたのか?』の辺りからかな」
「――そんな所からッ!!?」
サリエルは武から視線を移し、
「まったく、ガブリエルもガブリエルだよ。ボクの尊厳を傷付けるような事を言わないでよ」
「…傷付く傷付かない以前に、貴方に尊厳があるのですか?」
「そりゃあ、ボクも一応天使だから」
サリエルは、さらに視線を移す。
「それに、ケルベロスも久し振り」
「…結局何をしに来たのだ、お前は」
「元マスターがピンチみたいだから、天使の御心で助けてあげようと思って。まぁ、君と同じだね」
再び武にその眼を向け、
「という訳で、元マスター。またボクと契約を結ばないかい? ボクは、元マスターからお金と実体化のためのマグネタイトを頂く。その替わり、ボクは全ての敵を滅ぼしてみせるよ」
と、堂々と宣言した。
「…ま、お前が強いのはあの戦いでよく分かったからな。拒否する理由もない」
「じゃあ、決まりだね」
サリエルは自身の名をPDAのディスプレイに刻む。それにより、システムに仲魔として登録された。
「今後ともヨロシク、マイ・マスター」



「なるほどね… 今の目的は、つぐみちゃんと魔界からの脱出法を見付ける事、か」
「ああ、そうだ。サリエル、お前何か心当たりはないか?」
サリエルは、首を横に振った。
「残念ながら」
「そっか。ま、元々お前には期待してない」
「…あっそう……」
そんな話をしながら進んで行くと、前方に街が見えてくる。
「お、目的地トロメアが見えてきたぞ。ケルベロス、急げ!」
「急ぎたいのなら、我の背から降りて自分の足で走れ」
街へ向け、進んで行く一行。
そんな武達の様子を、虚空に浮かぶ眼――天使ウォッチャーが監視している事に、誰も気付かなかった。




あとがきだと伝わるもの・3
…何か、今回は全体的に1話1話が短いなぁ。まぁ、いいって事にしましょう(え?)
こんにちは、大根メロンです。
さて、サリエルがパーティ入りです。ヴァルキリィの出番は次の次くらい。
あと、サリエルは武と契約しているので仲魔ですが、ガブリエルは一緒に行動しているだけなので、仲魔ではありません。一応、補足。
そして、たけぴょんサイドでもテトラ出現。あれは、つぐみと宿を発つ直前ですね。タイミングが悪い(笑)
しかも、ルート分岐。お互いを捜せば捜すほど遠くなる2人。ああ、無常(?)
最後にウォッチャーが出てきましたが、あれって元ネタがよく分からないんですよねぇ……。堕天前のグリゴリかとも思いましたが、違うようですし。
…まぁ、気にしない事にしましょう(オイ)
次回は再びつぐみんサイド。ようやく、話が進む予定。やっと長くなると思います。
ではまた。


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