真・女神転生SEVENTEENU 大根メロン |
「――まさか、ウリエルを斃してここまで来るとは。少々驚きましたよ」 ジュデッカへとやって来た武達を、ひとりの天使が出迎える。 「まぁ… それもまた、神の御意志なのでしょうね」 風の熾天使――ラファエル。 「――同じ天使がやられたってのに、随分と冷めてるんだな」 武が呆れたような眼を、ラファエルに向ける。 ラファエルはハハッ、と笑い、 「別に冷めている訳ではありませんよ。簡単に言えば… 天使はチェスの駒なんです。ウリエルも、私もね」 「…………」 「神という王を護り、敵を殺るためなら――どれだけ減ろうと、問題ないんですよ」 「チェスにしては戦術が悪いぞ。駒を1つずつぶつけてどうする」 「――駒は駒でも、私達は神によって創られた駒です」 ぞくり、とするような笑みを、ラファエルが浮かべる。 「そしてその駒を神が操っている限り、敗北はありえない」 ラファエルは芝居がかった動きで、天を仰ぐ。 「駒は私だけで十分です。それだけで、神はありとあらゆる盤上を征服できる――」 「…お前、いつか天から堕ちるぞ」 武が、突然そう呟いた。 「…………」 ラファエルは無理矢理張り付けたような笑顔で、 「…なかなか面白い冗談ですね。だが私はあの愚者のように、神に逆らおうとは思わない」 「ルシファーが天から堕ちたのは、唯一神に反逆したからじゃない。反逆の目的が、傲慢なモノだったからだ」 「…………」 「そして、今のお前の言葉。傲慢そのものだったぞ」 周囲に、風が渦巻き始める。 真空の刃が、僅かに武を切り裂いた。 「…そうですね。私も自重しなくては。ありがとうございます、貴方のおかげで眼が醒めましたよ」 「そりゃよかった。今後に生かしてくれ」 「ええ、勿論」 少しずつ――風が、強くなってゆく。 「――そろそろ下らないお喋りは止めにしろ、ラファエルとやら」 ヴァルキリィが、1歩前に出る。 「それとも、お前は話し合いで平和的解決でも望んでいるのか?」 「野蛮ですね。そんなに殺し合いがしたいんですか?」 「ああ、したいさ。私は戦場を翔ける神だからな」 ラファエルの澄ました顔の下から、怒りが滲み出して行く。 「…『戦場を翔ける神』? 『戦場を翔ける悪魔』の間違いでしょう」 「――…ああ、忘れていた。お前達はそうやって、神々の神格とそれに対する人々の信仰を奪ってゆくんだった」 「『神』とは、我等が主のみです。悪魔の分際で神を名乗る――それこそ、傲慢ですね」 「…やれやれ」 ヴァルキリィが、ふぅと息を吐く。 「まったく話が噛み合わないな。これでは、『話し合いで平和的解決』も無理だ」 「そうですか… 残念です」 ラファエルが、手で顔を覆う。 だが、悲しんでいるようには見えなかった。 武達は――それぞれ、戦闘態勢をとる。 「――貴方達の病は非常に重い。しかし、安心してください。この癒しの天使ラファエルが、1人残らず治療してあげますから」 「――<ガルダイン>」 武達が、一斉に四散する。 そこを、真空の嵐が通り抜けた。 魔法から逃れた武達は、四方八方に散って行く。 「…なるほど、別れましたか。私ひとりをこの街の中で相手するなら、その方がよいのかも知れませんね」 ラファエルか、足を踏み出す。 「しかし、ひとりずつ見付け出して始末すればよい事だ」 「――我等が見付け出されるまで、ただ待っていると思うか?」 「――!!?」 ラファエルの背後から跳び込んだケルベロスが、その左腕を喰い千切る。 「チッ、この駄犬が… <ディアラマ>ァ!」 回復魔法により、ラファエルの左腕が再生してゆく。 ケルベロスはまるで汚いモノのように、咥えていた腕を吐き棄てた。 「私は、治癒を司る者です。この程度では痛くも痒くもありませんよ……!」 「…そのようだな。ならば次は首だ」 ラファエルが、ニヤリとした。 「フフフ… 威勢がいいですね。さっきも、首を狙っていたクセに」 「…………」 確かに、ケルベロスはラファエルの首を狙っていた。だがラファエルは、それを腕で防いだのだ。 「……フン。それにしても、貴様は飛ばないのか?」 「ええ、ウリエルのように墓穴を掘りたくはありませんから」 空を飛ぶのに墓穴を掘るというのも変な話ですが、とラファエルは笑いながら言う。 「まぁ、何でもいい」 ケルベロスが、一気に攻める。 「何度も同じ手が通用すると思いますか!」 首に噛み付こうとしたケルベロスの口に、ラファエルは右腕を突っ込む。 そのまま右腕を自ら引き千切り、ケルベロスを蹴り飛ばした。 そして、再生した左腕を振り上げる。 掌の中で――風の元素が、集束してゆく。 「死になさい……!」 しかし。 「――甘いよ、ラファエル」 ラファエルの左腕が、斬り飛ばされた。 「……は?」 ラファエルの背後には、サリエル。 サリエルの大鎌が、ラファエルの左腕を斬断したのだ。 そして―― 「――これで終わりね」 つぐみが、踏み込んだ。 護法徳手により霊気に包まれたつぐみの拳が、ラファエルに向けて放たれる。 だが―― 「ふ、ざけるなぁ……ッ!!!」 2枚の翼が大きく広がり――ラファエルを、包み込んだ。 つぐみの拳撃が打ち込まれる。 しかしそれは、ラファエルの翼を吹き飛ばしただけだった。 「く――っ!!?」 「浅はかですね……!」 ラファエルが、後方に跳ぶ。 「――<マキシテンペスト>ォオオッッ!!!!」 ラファエルの口の両端が深く裂け、顎が外れる。 まるで獲物を丸呑みにする蛇のように、大きく口が開かれた。 圧縮された暴風が、その口から放たれる。 つぐみ達は声を上げる暇さえなく、それに呑み込まれた。 「――…逃げましたか」 風が起こした土煙が消えると、そこには誰の姿もなかった。 「しかし、手応えはありました。あれなら、しばらくは闘えないはず」 ラファエルの身体が、再生してゆく。 「――貴方も、そう思うでしょう?」 ラファエルが振り返る。 そこには、ヴァルキリィが立っていた。 「……ふぅ。やはり、まともに主殿を護れるのは私だけだな」 「…その召喚師さんは、どうしたんです?」 「とうに先に向かった。ケルベロス達も、回復したらすぐに追う。いちいち貴様如きを相手にしていられるほど、主殿は暇ではないのだ」 「…………」 ラファエルの眼が細められ、ヴァルキリィを睨む。 「…なら、貴方は私の足止めですか? ――役者不足にも、ほどがある」 「『足止め』? 笑わせるな」 ヴァルキリィは心からの嘲りを、ラファエルに向けた。 「――貴様は、ここで死ぬ。私が殺すからだ」 「……何?」 ラファエルが、怒りで震え始める。 「殺す、だと? 下等な悪魔が… この私を?」 ハハハ、とラファエルが笑い声を漏らす。 それは、狂気の笑いだった。 「――ハハハ、ハハハハ… ハハ、貴様は100度殺してやる! アハハハ、ハハハハハハッ!!!」 凄まじい風が、ラファエルを中心に渦を巻く。 そして―― 「熾天使ラファエルの名において――舞え、風の元素ォオ!!」 それを、ヴァルキリィに向けた。 「――<マハガルダイン>ッッ!!!!」 「……!」 ヴァルキリィが、上に跳ぶ。 地面が風によって、丸ごと抉り取られた。 「…無茶苦茶な威力だな……」 「――何処を見ているんですッ!!」 ヴァルキリィの上方から、ラファエルの声。 「……!!? クッ――」 「我は風に命ずる! 何者にも劣らぬその速さにより、我が敵に死を運びたまえッ!!!!」 一瞬だけ、世界から風が消えた。 何故なら、全ての風が――ラファエルの手中にあったのだから。 「――<ストームナイトメア>ァァアアッッ!!!!」 その風をまともに受けたヴァルキリィは気流に巻き込まれ、絶望的なスピードで地面に落下する。 風が地盤を貫き… 粉々に吹き飛ばした。 「――…死にましたか」 ラファエルは無感情に呟き、背を向ける。 ――それが、命取りとなった。 「――<ヒートウェイブ>」 ラファエルの背が、大きく斬り付けられる。 「な……っ!!!?」 バランスを崩したラファエルは、そのまま地へと墜ちた。 「――無様だな、翼人」 それを、冷ややかな眼で――ヴァルキリィが見つめる。 「き、貴様、どうして……!?」 「簡単な事だ。私は、風よりも迅い。そうでなくては、全ての戦場を巡る事など出来ないからな」 ヴァルキリィはそう言って笑うと、ラファエルに剣を向けた。 「ところで、お前達は… この街で、どれだけ殺した?」 「…ハハ、つまらない質問をしますね。そんな事、覚えているはずないでしょう。まぁ、覚えられないほど殺したのは間違いないでしょうね」 「覚えられないほど、か」 「それが何です? まさか、私達を責めるつもりですか? そんなモノは、ただの偽善です」 ラファエルが、嘲笑を浮かべる。 だが。 「責める? まさか、そんな事をするつもりはない。むしろ感謝している」 「――は?」 「おかげで――皆、復讐したがってるからな」 「……ッッ!!!?」 ラファエルの背筋に、冷たいモノが走る。 眼には見えずとも、この街で死した者達が少しずつ集まって来ている事が、嫌でも感じられた。 「死者を収集する私にとって、ここは非常によい場所だ。戦士の魂は少ないが、まぁ贅沢は言わない事にしよう」 死者達の魂が、ヴァルキリィの剣に宿って行く。その度に、剣は不気味な光を放った。 「そろそろ気付いていると思うが… 貴様の敗因は、死者の巣窟であるここで私と闘った事だ」 「…………」 ラファエルは、何も答えない。 天に向けられたヴァルキリィの剣は、まるで光の柱。 「斬死しろ――<ガリアンソード>」 ラファエルの頭上に、剣が振り下ろされた。 いつの間にか、雨が降り出していた。 雨の中、武とつぐみ、そしてヴァルキリィを除く仲魔達は、万魔殿に向け駆ける。 「――ラファエルの気配が消えた。ヴァルキリィが勝ったようだな」 ケルベロスが、誰に対してでもなく言う。 「…少しは、やるじゃない」 つぐみは少し不満そうに、呟いた。 「…………」 だが武は何も言わず、走り続ける。 「…ねぇ、武はどうしたの?」 つぐみが小声で、サリエルに尋ねた。 サリエルは少し唸ると、 「順番的には、次の相手は『彼女』のはずだからね… マスターには辛いだろうさ」 「『彼女』?」 「ま、辛いのは向こうも同じかも知れないけど――」 「……?」 つぐみは話がよく分からず、眉をひそめる。 ――その時。 「…………」 武が、足を止めた。 眼前には、巨大な万魔殿の門。 「…やっぱり、お前か」 その門の前に、ひとりの天使がいる。 雨でずぶ濡れの彼女は、門にもたれかかり静かに佇んでいた。 「…ついに私の前に現れましたね、咎人よ」 彼女が、閉じていた眼を開く。 「咎人、か。悪魔を操る上に生命の理まで狂わせた俺は、お前達から見れば間違いなく咎人だろうな」 武は、儚げに――笑った。 「――なぁ、ガブリエル」 |
あとがきだと伝わるもの・11 こんちゃ、大根メロンです。 どうでもいいですが、今、『だいこんめろん』と打ったら『堕遺恨メロン』と出ました。何か凄そうです(は?) さて、今回の話。 …うぅむ、何故かヴァルキリィの見せ場を作ってしまった。パートナーデヴィルのケルベロスより目立っちゃってる(汗) 頑張れケルベロス、パートナーデヴィルの威厳を見せろ。サリエルは… まぁ、どうでもいいや(オイ) 次回は、VSガブリエル。色々、大変そうな話です。 ではまた。 |
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