北の国から
                              電灯


 田中家。沙羅は優秋にあることについて相談しに来ていた。

「つぐみが変?」
「そうでござる…普通じゃなかったでござるよ…」
 沙羅はそういってぶるぶると体を振るわせた。
「つぐみが、ねぇ…何事にも動じない人だと思うんだけど…」
「拙者、あんな母上を見るのは初めてでござる…」
 と、そこへ優春が話しに入ってきた。
「へぇ…つぐみが、どうなったの?気になるわね。」
「あ、田中先生。それがですね…


 1時間ほど前の倉成家

「ねえ、沙羅。どっちの服がいいかしら♪」
「おや、母上殿、どうしたでござるか?いつになく上機嫌でござるな?」
「そんなこといいじゃない。ほら、どっちが可愛いと思う?(にこにこ)」
「うーん、拙者は…読者の為にこれがいいと思うでござるよ?」
 さらは、ピピレンジャーの衣装を取り出した。
「もう、沙羅は…冗談言っちゃだめよ?」
(お、おかしい…お母さんがおかしい…いつもなら『あなたも似合うわよ…』なんて言いながらチョークかけてくるのに…)
「どうしたの、沙羅?」
「え、いや、なんでも、なんでもないでござるよ。あはははは…」
「沙羅、選んでくれないの?いいわ、ホクトに訊くから。」
「そ、そうでござるか…それじゃあ、兄上、後は任せたでござるよ!」
 沙羅はすばやい身のこなしで家の外に出て行ってしまった。


 再び田中家

 …という訳なんです。絶対おかしいですよ、ピピレンジャーの衣装を出したのにあそこまで穏やかなんて…」
 沙羅は話し終わるとそのまま口をつぐんでしまった。
「それはひょっとして…いや、そんなこと……」
優春は腕を組んで考え込んだ。
「なんなの、お母さん?何がありえないの?」
「田中先生?心当たりでもあるんですか?」
 にわかに空気が張り詰めた。
「………そんな、でも、それしか考えられない…」
「お母さん…?」
「……許せない…だめ……」
「なんなんですか、田中先生?教えてくださいよ…」
優春は言葉を選びながらゆっくりと喋った。
「まさか、つぐみ、デートなんじゃ…?」
「へ…?」
「ほえ…?」
「べ、別に、熱々の夫婦ならデートくらいしてもおかしくないんじゃ…?」
「そうですよ、そんな深刻そうに言わなくても…」
 優秋と沙羅は分からないといった感じで優春に質問したが、優春はそれには答えず沙羅に聞き返した。
「沙羅?今日、お父さんはどうしているの?」
「え、パパは、確か仕事の関係で北海道に滞在してるはずですけど…」
 武は、優春のつて(情報をリークした時に作ったもの)を頼りに警察官になっていた。キュレイの身体的特徴のひとつ、丈夫であることを生かせる職として武自身が選んだ道だった。それに、情に厚く、熱血漢であるため、彼は地域の住人たちの人気者になっていた。ただ、沙羅や優春、時にはホクトが仕事中に遊びに来たりするので、上司からは多少迷惑がられている。その彼が、なぜ北海道に転勤になったのか。それは誰も知らない。設定だからしょうがないのだ。

「なんか、途中のナレーション、最後が壊れてるんですけど…」
「気にしてはいけないのよ。」
「はーい…」
「話に戻るけど、倉成、つまり沙羅のお父さんは北海道にいるのよね。」
「そうですよ。だから、デートなんてありえないんじゃ…」
「甘いわよ。つぐみは武のためなら日本からブラジルまで飛んで行くわ。北海道なんて、近所の散歩と変わらないはずよ。」
「そ、そういうものですか??」
「そういうものよ。」
「はぁ…ってことは、ママはパパに呼ばれて北海道へ?」
「そう、だと思うわ。多分。」
「お母さん、でも、それをなんでさっきありえない、とか許せない、なんて言ってたの?別に、ちょっと熱々の夫婦ならそれくらい…」
「それ以上言わないで、ユウ…」
 優春は目を逸らしていた。沙羅たちは、無表情のその顔からは心のうちを推し量ることはできない。ただ、そのときだけは、優春がとても寂しそうに見えた。
「…ごめんなさい、急に黙り込んだりして。さぁて、私は仕事に戻ろうかしら。桑古木に無理させちゃってるから、少し手伝ってやらないと…」
「じゃあ、私はどうしようかな。…沙羅、ホクトは今家にいる?」
「え、お兄ちゃんなら…いると思いますけど。」
「そっか、じゃあ、私もホクトと映画にでも…(照)」
「あぁーっ、なっきゅ先輩ひどい!!なにも、私の前で言わなくてもいいじゃないですか!」
「くやしかったら、沙羅も恋人作りなさい♪」
「私にはパパとお兄ちゃんがいるからいいんです!」
「ふっふっふ。ざーんねん!ホクトは私のものだもん♪」
「よくそんなセリフを恥ずかしげもなく言えますね!」
「やきもち焼き〜」
「ーーーーー!!」

…結局、ホクトと優秋のデートに沙羅が加わって、三人で出かけたそうな。


 場所は変わって北海道は富良野のラベンダー畑

「どうだ、つぐみ。北海道もいいところだろ?」
 黒○五郎…ではなく、武はつぐみに声を掛けた。
「うん、本当に…綺麗…」
 つぐみは目の前に広がるラベンダー畑をまぶしそうに眺めていた。
「ちょっと、歩こうか?」
 つぐみはこくっと首を縦に振り、腕を絡める。武はそんなつぐみの頭を愛しそうに撫で、ゆっくりと歩き出した。しばらく歩いて、武は口を開いた。
「……なぁ、つぐみ?」
「…なぁに、武?」
 つぐみは武に寄り添って歩いている。
「俺達、今離れて暮らしてるだろ?」
「……うん…」
「辛く、ないか?」
「…辛いわよ、当たり前じゃない…ホクトがいたって、沙羅がいたって、あなたがいなければ同じ…」
 つぐみは、武に絡ませた腕に力を込めた。
「すまんな…本当に…」
「…武、わたし、寂しいよ……耐えられない……毎日電話してても、武に触れられない、武に抱いてもらえない……ご飯を作っても、武に食べてはもらえない……武が家に帰ってこない……もう、私どうにかなってしまいそう…」
 つぐみは毎日無理をして笑っていたのだ。ホクトや沙羅が心配しないように。幸せなはずなのに、苦しい、辛い毎日だった。つぐみは、今までためてきたそれらの辛さや苦しみ、会えなくて募る武への愛しさを全て武にぶつけた。
「武…お願い、戻ってきて……」
 つぐみは武に抱きついていた。
「あー、そのな、実は、今日帰れるんだ、俺の家に。」
「えっ??」
「こっちの仕事のノルマを終わらせたからな。今日つぐみを呼んだのも、一緒に帰ろうと思ったからなんだ。」
「ほ、本当なの、それ…」
 つぐみの声にはまだ戸惑いの色が隠せない。
「ああ、やっと帰れるんだ。LeMUの時ほどではないが…待たせたな、つぐみ。」
 武はつぐみの頭を撫でた。
「うん……」

 広大な富良野のラベンダー畑で抱き合う二人を、心地よい風が包んでいた。


 場所は田中家研究所(田中家に併設されている大規模な研究施設)

「桑古木!!何やってるのよ、このバカ!」
 ドスッ!ヒューン…どさっ…
「………優、今日は特に激しいな…ゴフッ」
 優春が桑古木にミドルキックを食らわせたのだ。5メートル吹っ飛んだ桑古木は無残な姿で床に打ち捨てられていた。
「(ひそひそ)田中先生、いったいどうしたんだ?」
 研究員の一人がつぶやいた。
「なぁに?山本君(にっこり)」
「いいえ!!なんでもありません!!」
「よろしい。」
 願わくば、桑古木に神の祝福があらんことを…アーメン…


 場所は某映画館

「ホクト〜、面白かったね!」
 優秋はホクトに擦り寄っている。
「お兄ちゃん!こっちの映画のほうが面白いよ!今から見に行こうよ、ねぇってば〜」
 沙羅もホクトの空いた手を取って引っ張っている。傍目から見れば、美少女二人に挟まれたうらやましい男だろう。
「は、ははは…そうだね、優。」
「お兄ちゃん!!」
「え、うん、どうしようかな…」
「ホクト!!」
「なんだい、優?」
「お兄ちゃん!!」
「ちょ、ちょっと、沙羅…」
「(どうして、こんな目に…お父さん、助けて…(泣))」


人生いろいろ…




あとがき

…ごめんなさい(爆死)ピピレンジャーを…(神に懺悔します…)

長編書くって言ってたのに、また短編になってしまいました…一番長く書こうと思ってた北海道での武とつぐみのからみがすごく短くなってしまって…予定外でした(もともと予定なんてほとんど無かったり…)
長編のほうは並行して今作ってますので、どうか見捨てないでください(平謝)

それでは失礼
                                   TTLL#09電灯


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