思い出がいっぱい
                              作 かぱちゃぱ

「じゃあ、行って来るから、あとはお願いね」
「行ってきます、沙羅」
「はい、いってらっしゃ〜い」
  平日の朝、母つぐみはバイトに、双子の兄ホクトは学校へ出かけた。
  つい最近まで知らなかった幸せ。それは家族を見送る事と見送られる事。
  自分が帰る場所、そしてみんなが帰って来る場所が確認できる事が沙羅は
 嬉しかった。

「さて、どうしよっかな〜」
  ちなみに沙羅は創立記念日とかで学校が休み。しかも二連休。何故二連休
 なのかは【誰も】知らないが、伝統と言う事なのだからしょうがない。
「パパは・・・まだ寝てるでござるな? 」
  夕べ、桑古木と遅くまで飲んでいたのが響き、家族との朝ごはんがとれなか
 った父、武はまだベッドの中だった。

「パパ〜、入るでござるよ〜〜」
  と、声をかけながら武とつぐみの寝室に入る沙羅。部屋に置かれたキングサ
 イズのベッドには案の定、武がまだスヤスヤと寝息を立てていた。
「う〜ん。これはまだ熟睡中でござるか?」
  さて、どうしようかと思案中に目に止まったのは洋服ケースの上に畳まれた
 つぐみの服だった。しばしそれをじ〜〜〜〜っと見つめる沙羅。
  
  ポクポクポクポクポク・・・・・チ〜〜〜ンっ♪ はっちゃけた!(番組が違う)

「フッフッフッ♪ いいこと思いついた〜〜♪(悪戯顔)」
  何を思ったかおもむろに着ている服を脱ぎだす沙羅。薄手のブラウス、そして
 履いていたミニスカートが床に落ちる。そしてストライプの入ったブラとパンティ
だけになった沙羅は頬を赤らめ、チラッと武の方を見て、
「・・・・よし、パパはまだ寝てるでござるな?(ニヤリ)」
  武が気づいていないのを確認すると、先ほどのつぐみのワンピースをその身
 に着け、沙羅のトレードマークでもあるリボンを解き髪を降ろす。
  そして姿見の前に行き、櫛で髪をストレートに治した。
「・・・まあ、ちょっと(?)大きいけどまあいいかな。これで髪を降ろせば・・
うん♪ やっぱりママと親子よね。ちょっと目にはママに見える筈♪ これは絶対に
寝ぼけてるパパはママと私を間違うでござるよ〜♪ ニンニン。(悪戯顔)」
  確かに髪を降ろした沙羅はいつもより大人っぽく見えた。落ち着いた色合いの
 ワンピースと相まってそこはかとなく色気も増した・・ように・・見えなくもない?
  そっと、沙羅は武の枕もとに足音を忍ばせながら近づき
「武・・・ 起きて、武。 」
「う〜〜ん・・・・」
  つぐみの真似をして、耳元で囁いたが・・・武は起きなかった。
「ねえ、武ってば。・・・おはようのキスをしてくれないの?」
「す〜、す〜、す〜・・・・」
  なりきってしまい、大胆な事を口走って変な気分になって来た沙羅。しかし
 というか何と言うか武はまだ夢の中だった。
「武・・・起きて・・・・パパ・・なんか・・可愛いな」

  ―――― 沙羅は只、しばらくそうしていた。何故かそれが幸せだった。  
「・・・・・・パパ・・ パパなんだよね。 沙羅の・・パパ」
  いつの間にか武の寝顔に見入ってしまっている沙羅。吐息が触れるくらい顔を
 近づけ、自分がもの心ついた時からず〜〜っと見つめ続けていたホログラムと寸分
 違わないその自分の父親を眺めていた。
「・・・・・ふぁぁ〜〜〜〜? なんか拙者も眠くなってきたでござるよ」
  なにを思ったか沙羅は空き面積の大きい、ベッドの反対側に回り込むとそのまま
 武が寝ているベッドへ潜り込んだ。
「ふふふ〜♪ 暖かいな・・・  なんか・・・幸せな気持ちになるね(はーと)」
  武が気づかないのをいい事に、寄り添い無防備に自らの身体を預ける沙羅。
  人の持つ暖かさが沙羅の心に、身体に染み込んで来る。今まで知らなかった充足感
 に夢中になった。

  淋しかった時、沙羅は自分を慰めた事が何度もあった。ある時はいつか迎えに
 来てくれると約束した兄を想って。またある時はホログラムに浮かび上がる父親を
 想って・・・・しかしそれは行為が終わると共に又、新たな寂しさを呼び込んだ。
  それは今からほんの少し前の事なのに、もうだいぶ昔のように感じられた・・・

  ――――そう、今はもうあの頃とは違う。兄は自分の傍にいつも居てくれるし、動か
 ない虚像だった父親は困ったような笑顔で自分の我侭にいつだって付き合ってくれる。
「・・・・パパ・・・大好きだよ・・・」
  包み込む暖かさ、泣きたくなるような充足感の中、まどろんでいると、
「・・・・う〜〜〜〜ん? ん?」
「・・・・あ?」
  涙を滲ませたままの沙羅は、不意に目を覚ました武と見詰め合ってしまった。
「(ど・・・・どうしよう?)」
  言い訳もなにも思いつかない程パ二くってしまった沙羅。変な娘だと武に思われ
 たらどうしよう。嫌われたらどうしよう・・・ そんな事が頭をよぎった。
  何も言えず、只、潤んだ目で泣きそうな顔をしていると、
「どうした? また変な夢でもみて泣いてたんだろ? ・・・しょうがないな」
  そう言って武は自分の隣に身体を横たえたままの沙羅を優しくその腕に包み込んだ。
「(パパ・・・私とママを間違ってる?)」
  沙羅の推測どおり、隣で寝てるのはつぐみだと勘違いし、武は怯える沙羅をなだめ
 る様に優しく頭を撫でる。
  つぐみと沙羅は実の親娘だけあって、匂いや肌の感触がそっくりだった。武は
 当然気づかずいつも通り、つぐみにする様に『接して』いた。
  その優しさに心が落ち着いていく中、こうやって毎晩愛されている母親に少し嫉妬
 の気持ちが芽生える沙羅――――。
「・・・・・・・(パパ・・・もっと私を、『沙羅』を抱きしめて)」
「おいおい? 今日はずいぶん甘えん坊だな?」
  沙羅はもっと密着するように足を絡め、小ぶりな胸を押し付けていった。
  頭を撫でていた武の手は、しがみ付くように安心を求めてくる少女の身体の
 ラインにと沿って撫で上げて行った。
「―――――― あっ」
  つい声を漏らしてしまった沙羅。しかしそれはむしろ愛撫によると言うよりも
 只、武の優しさが、暖かさが心地よかったからだった。
「ん―――― 」
「んふぅ・・・あ・・はあぁ――――(パパ・・・沙羅のファーストキスだよ)」
  そして二人は自然に唇を合わせる。しばらくそのままの時間が過ぎ、お互いの
 顔が離れた時、不意に武が驚きの声を挙げた。
「―――――?!ちょっと待て。 お、お前・・・・まさか 沙羅・・か?」
「・・・パパぁ?――――――(のぼせ顔) 」

   ―――――――― しばし時が止まった ―――――――

  まだ夢見ごこちの沙羅がボー――っとしていると、この世の終わりを見たかの
 ようにサ――っと血の気に引いた武はベッドから跳ね起き、
「――――――っ すまん!!!!!!!」
  バッと沙羅との距離を置くといきなり沙羅に向けて頭を下げた。
「――――――え?(パチクリ)」
「寝ぼけてたと言え、俺は自分の娘に何て事をしちまったんだ!!!!?」
  一気に眠気が覚めたとは言え、寝起きの武は明らかにパニクっていた。
「沙羅・・・大丈夫か? 気分悪くないか・・・ああ〜俺って何てこと――(悶絶)」
「(イヤじゃ・・・・なかったんだけどな)(照れ顔)」
  むしろ望む所などと沙羅が思っているなど想像もつかない武はひたすらに沙羅
 に謝り続けている。
  そんな武が可愛く見えた沙羅にちょっとした悪戯ごころが目覚めた。
「・・・・ファーストキス・・・だったんだよ」
「そ・・・そうか。 すまん」
  ちらっと上目使いで睨むと真っ赤になって縮こまる武。それが沙羅には愛しく
 想えた。
「・・・・反省・・してる?」
「ん? ああ、反省してるよ。 もう酒は控える。約束するぜ」
  込み上げる笑いを堪えて、そっと武ににじり寄る沙羅。
「欲しい服・・・買ってくれる?」
「おうっ! 買ってやる! 借金してでも買ってやるぜ!」
  目を見つめながら小首をかしげ、
「靴も・・・いい?」
「ああ! 何でもコイだ!! なんなら今から買いに行くか?」
  武からのデートの誘いと受け取った沙羅は満面の笑みを浮かべ
「うん! それじゃあ許してあげるでござるよ、パパ♪」
「そ・・・そうか。お前、優しいいい娘だな〜〜〜。ううっ(泣き)」
  許されざる行為に及んでしまった父親を許してくれた娘が愛しくなり、感極
 まって、ギュっと抱きしめる武。実際、元凶は沙羅の方なので許すも何も無い
 のだが、あいにく事の真相を武が知る事は永遠にないであろう(合掌)。

「パパ だ〜〜〜いすき!!!(は〜と)」
  偽らざる気持ちと、事の真相を胸に沙羅は最良の思い出を手にしたのであった。



      【 あとがき 】
 まあ、これくらいならこの二人には許されると思うのですよ。(オイオイ)
 長い監視付きの生活による心の傷を癒せるのはやはり男親の包容力ですね。
 こういうのは流石にホクトには無理でしょうから武がんばれ!(笑
 しかし、やる気満々の沙羅っち。この後どうなるのか!?
 そして武の財布は大丈夫か?(笑) 
 あ、しまった! ここから木戸ちんと白鳥ちんの目撃編に繋げればよかった!?

今回のBGM  H2O「思い出がいっぱい」
  ♪大人の階段上る 君はまだシンデレラさ
    幸せは誰かがきっと 運んでくれると信じてるね
       少女だったといつの日か 思い出す日が来るのさ ♪ 
 
 この曲は沙羅のイメージだと思うんですが。
 さもなくば少年忍者フジ丸。(笑)あ、誰も知りませんか?
感想、お待ちしております。 


/ TOP / BBS








SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送