「・・・・ら」 「う・・・ん・・」 自分を呼ぶ優しい声に急速に頭が覚めてくる。 「・・そら、起きろよ空。」 「・・・・・え? 倉成・・さん?」 朝の日差しが眩しい寝室。そこに一つだけあるベッドの上で空と 武は寄り添う様に身体を並べていた。 「おはようさん。今朝もまた色っぽいお姿で♪」 「え? えええ? なんで? 私、こんな格好で?」 ガバッと起き上がり慌ててシーツを手繰り寄せる空。そんな様子 を武はおかしそうに見つめている。 「なんだ?寝ぼけてるのか。おまけに倉成さんだなんてよ〜。いつもどうり武って呼んでくれって。」 「た・け・し さ ん?―――」 空は思い出した。自分は茜ヶ崎空。海洋テーマパークLeMUに専属 スタッフとして勤務。システムの調子とお客の反応をその目で見る 為、時々案内役のコンパニオンを買って出ていた。 そして今年の5月、就職活動の企業訪問にLeMUを訪れた倉成武と出会ったのが縁で二人は付き合う事になった。 「やれやれ、やっと目が覚めたみたいだな。前の晩がんばり過ぎた所為で起きれないんじゃないかと心配したぜ。」 「――――っ!!(赤面)もうっ! せっかくの久しぶりの休日なのに そんなもったいない事出来ませんっ!」 真っ赤な顔で上目遣いに武を睨む空。そう、二人は恋人同士でありこれはごく当たり前の日常の1コマなのだ。 |
〜空と夢と黒猫と 前編〜 かぱちゃぱ |
薄暗い中に仄かな明かりが青く灯る閉館時のLeMU館内。 空はこの時間があまり好きではなかった。とても綺麗な空間ではあってもとても淋しかったから。 「――? ・・・何・・・かしら 」 無人の館内、センサーでも確かにそう判断した筈なのに確かに空は何かが自分の方に歩いてくるのを見た。 『ニャ〜』 「子猫? どうしたの? 迷子になってしまったのですか?」 深夜の侵入者だったのは、大きなリボンをつけた黒い子猫だった。 『ニャ〜?』 子猫はじっと空を見つめ何かを訴えようとしているように見えた。 「一体どこに潜り込んでいたのかしら?」 人影の無い館内を見回し、視線を子猫のいた場所に向けると――― 『あなた、この大きなお城の妖精なの?』 「―――!? え? え? あの、お嬢さん、いつの間に?」 そこにはもう子猫は居なく、代わりに大きなリボンをした黒い服の幼い少女が空を不思議そうに見つめていた。 『ねぇ、このお城に住んでる妖精なんでしょう?』 「よ・・・妖精? 私が・・・ですか?」 空の問いにコクンと頷く少女。 『うん。』 イヤホン無しで自分を認識する、突然現れた少女に妖精と言われ、流石の空も冷静さを中々取り戻せないでいる。 「え〜と、・・・ですね。 私は妖精ではありません。私は正式名称――」 混乱する自分を落ち着かせる様に、自分に関する事項を事細やかに理路整然と捲くし立てる空。 『―――――?????』 少女の方はと言うと、小首を傾げながら一生懸命聞いている。 「ですから―――― 私の本体は――――― 」 勤めて淡々と自分が妖精ではなくAIのプログラムである事、実体が無く、RSDと言うシステムでそこに居る様に見えると言う事を説明する。 「――― と言う事で理解して頂けたと思いますが、私は人の手で作られた存在であり妖精ではありませんよ。お分かり頂けましたか?」 可愛らしくコクンと頷く少女。 『―――(うんうん)。 やっぱり妖精なんだね。』 空の意図した事とは別の方向で少女は納得したようだった。 「・・・ま、まあ確かに、私は感情や衝動などの要素が取り入れられてますし、従来のAIとは異なる物なのかも知れませんけどね。それに・・・」 『それに? 』 「―――私には大切な人達、そして・・・好きな・・人がいます。この想いは私が私であると言えるのでしょう。でもやはり私は―――」 『淋しくないの?』 「―――? はい?」 突然の少女の質問にまたまた驚く空。一体この娘は――― 『私が―――――してあげる』 「え――――?」 突然意識が遠くなる。別にシステムダウンした訳でも、強制プログラムが介入した訳でもない。少女が何を言ったのか、何をしたのか空には分らなかった。 『クスっ、私があなたにあなたが望む夢ををあげるって言ったの♪』 ――― 後編へ続く。――― |
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【あとがき】 さて、謎の少女の正体は?おっと、ここは突っ込む所ではありませんのであまり追求しないように〜。(笑) 物語はグランドフィナーレの数ヶ月あと。空が武の年上の彼女だったらという設定でやります。 |
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