〜好き!すき!!田中先生〜
1&2

                              かぱちゃぱ


      【 好き!すき!!田中先生 その1】

   某大学構内にある401号室。ここが田中先生の研究室である。
 
  この大学で田中優美清春香菜はちょっとした有名人である。
  年頃の娘がいる未婚の母ながら若くして博士号をとった英才であり、
 そのバックに大企業ライプリヒが付いている事。
  その類まれな容姿も、年齢を感じさせない・・・・と言うか、18歳
 になる愛娘と並んでいると姉妹というより一卵性の双子にしか見えない
 というのは何故か、触れてはいけない禁止事項となっている。
  なにしろ彼女のバックは「あの」ライプリヒ製薬だから――――

「先生、これ例の資料です。」
「ありがとう、野村くん。お陰で助かったわ」
  穏やかな笑顔で書類を受け取る優春。新入り研究員の野村はその笑み
 に思わず顔が赤くなる。
「い・・・いえ。では失礼します。」
  一礼すると慌てた様子で部屋を出る。優春はその様子を気にも止めず
「もうひと頑張りね。よし!やるぞ〜!! 」
  また、パソコンにレポートを打ち込み始めた。徹夜も3日目となると流石
 に理知的な優春もハイになり始めているようだった。

「ん? どうした野村?」
  なにやらボーっとしている新入りを心配する背の高い男は先輩研究員の牧。
「あ、牧先輩。田中先生っていいですよね〜。美人で頭が良くて包容力があって・・・」
「そ・・・そうか。 」
  あまりこの話題に乗り気でない牧を訝しげに思い、更に続ける野村。
「そうですよ〜。あんな素敵な女性、どこにもいませんよ。」
「・・・そうだな。 それよりノム!この資料なんだがな――――」  
  意図的に話を打ち切るように仕事を言いつける。 野村はなんとなく納得
 出来ない様子で仕事に戻っていった。

  カタカタカタカタタタタ――――
  リズミカルに鳴り響くキーボードを叩く音。ラストスパートに向かい優春
 の調子も上がっていく。
「よ〜し♪ 夕方前には終わるわね。そしたら今日はどうしようかな〜♪ 自分に
ご褒美って事で――― あ、そうだ!あの店に倉井を誘って・・・(照笑)」
 カタタタタタタタタタタタ―――― 
  キュレイパワーとナチュラルハイに煩悩がプラスされ、更にキーを叩くスピード
 が上がっていく。
  
    ――――― しかし次の瞬間 ―――――
「え? 何? どうしたの? 」
  優春のパソコンは無情にも固まった。いくらキーを叩いてもディスプレイは
 動かない・・・・
「嘘? 三日間篭りっきりだったからバックアップは・・・う・・うう〜〜〜!!!!」

  ガシャ〜〜〜ンッッ!!! ゴスッ! バキッ!! グシャッ!!!
「な!?何ですか。この音は?」
  研究室内から聞こえる破壊音に驚く野村。それに対し、先輩の牧ともう一人の
 先輩で、がっしりした体格の男性である三沢は落ち着いていた。
「・・・・始まっちまったな。 行くか三沢?」
「そうですね。これ以上被害を増やす訳にも行きませんしね。行くぞ、新入り!」
  何が起きているのかを知る二人は、なにやら悲壮感溢れる表情で、未だ破壊音
 の鳴り響く優春の部屋に向かって行った。
「な・・なんなんですか?一体?」

  ドアを開けると飛び込んできたのは最早、原型を留めていないパソコンへ更に
 かかと蹴りを喰らわす田中先生の姿だった。
「この!この!! なんなのよ全くっ!! やってらんないわよっっ!!!」
  二人の先輩研究員は慣れたもので、お互いに頷き合うと優春を押さえに掛かった。
「先生! 落ち着いてください! おい新入り、気をつけろ! 油断すると怪我じゃ
済まないからな!!!」
「あ〜あ、何もここまで徹底的に潰さなくても・・・ 」
「なんでここまで来て固まる訳!! もう〜〜!止めよ止め!! 」
  尚も暴れる優春を必死の覚悟で押えつけ破壊の限りを尽くされた部屋の外へ引き
 ずり出していった。
「・・・・え〜と? 先輩? 田中先生?」
  一人、未だ事情が読めない新入り研究員の野村が部屋に残されたままだった。

 

    

       【好き!すき!!田中先生 その2】
   
    ―――― 日曜日 早朝の田中家 ――――
  優春が朝ごはんの支度をしていると、クリーム色のノースリーブとミニスカ
 ートでめかし込んだ優秋が上機嫌でやって来た。
「おはよう〜、お母さん」
「おはよう、優。 あら、今日はどこか出かけるの?」    
  その言葉に優秋は悪戯っぽく笑顔を浮かべ
「フフっ、これからホクトとデートなのだ。バイト料も入ったし、このお姉さんが
色々お相手してあげようってね〜(満笑)。」
「あら、いいわね〜。 でもあまり羽目外しちゃ駄目よ?」
  と、年頃の母親らしく娘に釘を刺す優春。
「16歳で私を生んだ人に言われたくないな〜。」
  娘が母親に切り返す。すると、負けじと
「私は別に、乱れた生活の末に貴方を身篭った訳じゃないのも」
「そ、それを言われるとね〜。(苦笑)」
  そう来られると返す言葉が無い。おまけに優秋の付き合っている相手は2つも
 年下の上、自分より頭一つ小さい男の子なのだ。
「でも・・・いいわね」 
  ポツリとこぼす優春。それにフ、とある事に思いつく優秋。
「ねえ・・・お母さんって男の人と付き合った事って無いの?」
  思い起こしてみれば、いままで自分の父親だと思っていた陽一は実は自分の祖父
 だったのだ。その事を踏まえてこれまでを思い出してみると、浮いた噂も何も母親
 には無いのに気が付いた。
「もしかして、お母さんって、その、まだ経験が・・・無い・・・と・・か・?」
「・・・・・・・(ギロリ)」
  思わず身を竦ませる優秋。間違い無い。自分は今、触れてはいけない所に触れ、
 地雷原に足を踏み入れてしまったのだと知った。
「え・・・え〜と。 、私、もう出かけるから・・・」
「・・・・そう。たっぷり楽しんでらっしゃいね? 私の分まで(ギロリ×2)」
  立ち上がると優秋はそのまま自分と同じ顔をした母親を振り返る事はせず、
 一目散に駆けて行った。

  バタンッ! と大きな音を立てて玄関のドアが閉まる音を聞きながら優春は
 静かに(表向きは))濃い目のコーヒーを優雅な動作で口に運んでいた。
「・・・・・・・」
  そして、思い立ったようにテーブルに置かれた眼鏡入れに付いている鏡に目を
 向け「あれから」ほとんど変わらない自分の容姿を見つめる。
「私だって、17年間待ったんだよ・・・ いいよね?つぐみ、優・・・」
  ポケットから携帯を取り出し、メモリーされた倉成武の番号へ―――
  トゥルルルル トゥルルル  トゥルッ
『もしもし?』
「あ、倉成? 私、優だけど。 今日―――――― 」

  【その3につづく?】  





   【 あとがき 】
 その1は少し前に某掲示板のEver17スレに私が書いた物に手を加えたものです。
 第401号研究室。研究員の牧、三沢、野村の3人の元ネタが分った人はいるかな?

 その2は・・・まあ・・・なんて言うかこんなのも良いんではないかと?
 武の為に優春の17年があったんだからね。(苦笑)

 ぜひ、感想をお聞かせください。お待ちしてます〜。


2002



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