ふぁみりぃ たいず
                              かぱちゃぱ


  ある日の日曜日の事だった。場所は倉成家。
  ―――― ガチャッ!
「ただいま。」
  居間に入って来たのはついさっき出掛けた筈の沙羅だった。
  そして突然帰宅した沙羅のその表情は行く前より沈んでいる。
「おう、おかえり〜〜。 なんだ、早かったな。」
  ちょうどTVを見ていた武が沙羅を出迎える。  
  ちなみにつぐみは夕食の買い物に行っている。なかなか立派に主
 婦しているのが微笑ましい。
「あ、パパ〜〜〜〜っ。聞いてよ、お兄ちゃんとなっきゅ先輩ったら酷い
んでござるよ〜〜〜〜。(涙)」
「な、なんだ? ―――って 、わわッ!?」
  武に気が付くと、駆け寄って行き、ガバッと抱き付く。
「パパ〜〜。パパ〜〜〜♪(は〜と)  」
「あ〜〜〜、で? 何がどうしたんじゃい。」
  ゴロゴロと、甘えてくる娘の頭を撫でながら溜息を付く武。
「うん、実はね。さっきちょっと買い物に駅前まで行ったらね――― 」
「いったら?」
  うるうると目を潤ませて武を見上げる。
「なっきゅ先輩とお兄ちゃんがデートしてたの!それも楽しそうに!!」

「―――― ? まあ、あの二人、付き合ってるんだしデートしてたって
何もおかしくないだろが?」
  何をいまさらと言う感じの武。
  しかし、沙羅はブンブンッと首を振り不満を述べる。
「だって、今日は私がお兄ちゃんと買い物に行こうと思ってたのに、用事
があるからって――― 」
「なるほど・・・・お前、今日はホクトにたかるつもりだったんかい?」


  ちなみに先週は武がデートと称して、沙羅に引っ張り回された挙句、
 昼御飯、ゲーセン、小腹が空いたからファーストフード。そしてデパート
 では、下着売り場まで付き合わされてのだった。
『ねえ、パパ〜〜。 この色、沙羅に似合うかな?(は〜と)」
  そう言って、棚からちょっとレースが編み込まれた大人っぽいブラを
 ブラウスの上から当ててみせる。
『・・・・・俺に聞くなよ。(汗)』
  周りの視線が気になる武。どう考えても自分が居る場所ではない。
  おまけにワケあって娘との年齢差が4つの武は、多分、年下の可愛い
 彼女に下着を選ばせてた後、そのおニューを着せて楽しもうとしている
 羨ましい男・・・と見られてる事だろう――――
  いや、そうに違いない! と、武は頭を抱える。
『え〜〜〜? でも、沙羅はパパに選んで欲しいな。』
『いや、選んでもどうせ拝む事ないしさ。お前が好きなのを選べよ。』
  この一言が命取りになった。
  頬を染めた沙羅は武に寄り添って来て、こう言った。
『いいよ・・・・ 見ても。沙羅の――――― 』
『――――― さ〜ら〜〜〜〜〜。(大泣き)』
  一斉に店内の女性客と店員の視線が、アツアツのカップル、実は親娘
 に注がれたのであった。
  おまけにしっかりと、買う物も買わされたし。


「あ〜〜!? パパひど〜〜〜い!!」
  沙羅は傷ついた顔をした。それも恐ろしく芝居がかった――――。
「よ〜〜し、こうなったら!」
  目の据わった沙羅が武に迫る。
「な・・・なんだ?」
「――――― パパとラヴラヴするのでござるよ♪覚悟〜〜!!」
「わわわっ!!?」
  ドンっとイキナリ沙羅に押されてあぐらをかいたままの武は、そのまま
 カーペットの上に倒れてしまう。
  そして、沙羅はその上に馬乗りに跨る。
「ふっふっふっ♪ 参るでござるよ〜〜〜!」
  ワキワキと手を蠢かせると、武をくすぐり出した。
  ――――こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ―――― 
「わっわっ? こら! よせって! わははは♪ やめっ わあははっ♪」
「それそれそれ〜〜〜〜♪ あ、パパはここが弱いのか〜〜〜。」
  沙羅が攻勢のまま1分が経過・・・・
「わははっ わっ こらっ ははは♪ よ〜し・・・ わっ そうくるなら〜〜」
「へ? わっわっ! きゃん!?」
  一瞬の隙をついてふたりの体勢が入れ替わる。
  今、武はちょうど沙羅を押し倒している状態になっていた。
「フッフッフッ、覚悟はいいか〜〜〜〜。それそれ♪」
「えっ!キャっ ちょっと―― わわ?! ひゃん♪ きゃははははは♪」
  ――――こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ―――― 
  仕返しとばかりにくすぐり返す武。
  くすぐったさに身をよじる沙羅も楽しそうで、もし普通の時間を過ごせ
 ていたならとても仲の良い親娘としての想い出をたくさん作れたのだろう。
  しかし・・・・・やはり沙羅はもう・・・年頃の女の子でもあり、身体の方も
 それなりに―――――なっているので。
「それそれそれっ! どうだ、まいったか?」
「きゃんっ♪ あ、 あははは♪ きゃははっ♪ あ・・あん 、んっ―――」
  何か、沙羅の反応が違うものが混ざって来ていた。
  しかし、その変化に武は気付いていない。
「そらっ どうだっ! お? 沙羅はここが弱いんだな?それそれ!」
  ――――こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ―――― 
「きゃんっ あんっ あっあっあっ あんんっ あああ、 ぱぱぁ・・だめぇ 」
「へ?! ―――――― わわっ!? さ、沙羅? 大丈夫・・・か?」
  ようやく沙羅の異変に気がつき、くすぐる手を放す武。
「―――― ぱぱぁ・・・ はぁ はぁ はぁ・・・・・・・。 (は〜と)」
  頬を上気させた沙羅は夢見心地の表情で自分の上に乗っている武を
 見詰め、そして潤み切った瞳から涙が溢れていた。
「あ、え〜〜と。 沙羅?おい、しっかりしろ!」


「武・・・・・沙羅。 あなたたち・・・・・・?(呆然)」
  いつのまにか、買い物から帰ってきたつぐみが、その光景を目撃し、
 その場に固まる。

  武も沙羅も夢中になってて全然気付かなかった。
「つ・・・つぐみ? ああ、おかえり。」
「―― あんっ。 はぁ・・はぁ・・・  。 ままぁ・・・・」
  二人を見詰めるつぐみの目は怖かった。
  はっきり言って言い逃れが通用しない状況の中である。
「・・・・・・・・・・・・。」
  ゴキゴキッ!と指を鳴らし、掌をゆっくり顔の所まで上げ、無言で二
 人を睨みつけるつぐみ。
        (BGM  新・必殺仕置人)
  流れる様な長い黒髪とその美貌に、部屋へ注す日差しと影が微妙な
 コントラストを醸し出し、武も沙羅も身を寄せ合い身動きが出来ない。

  つぐみが一歩、踏み出したその時、沙羅がアクションを起こした。

「もう・・・パパったら・・・・・ 激しいんだからぁ。(はーと)」
  と、服装の乱れを直しながらそんな事を言う。
  ピクっ、と つぐみの肩が動く。
「お・・・お前な〜〜〜!? この状況でそういうボケをかますか?」
「いや・・・どうしてか、この場はこう言わなければいけない様な・・・」
「ほう? なんとなく分る気がするが、それはなんでじゃい?」
「だって、だって! ママのあんなビックリした顔みたらもう一押ししたくな
っちゃったんだもん〜〜〜〜。」
「出たての芸人みたいな事を言うな〜〜、お前は〜〜。(怒)」
  と、武は拳でグリグリとする。
「いたい いたい いたい いたい いたい――――」
  武の攻撃からジタバタと逃れようとする沙羅が実にユーモラスに見え
 て、つぐみの口元からクスっ、と笑いがこぼれる。
『どうやら”何も”なかったみたい。 ま、あたりまえよね。』
  二人のやり取りを見て、そう思うつぐみ。
  なんか安心して肩の力も抜けたようだ。
  息の合ったじゃれ合いが微笑ましくも、何となく羨ましい。
「フー―。 貴方達、本当に似ているわ。それとも・・・・武のバカな所が、
似てきたのかしらね?気をつけなさい、沙羅。」
  そんな憎まれ口を叩くつぐみ。
「ほほう・・・・・ 言ってくれたな、つぐみ。」
「フッフッフ♪ パパ、あんな事言ってますよ?」
  実に呼吸のあった親娘は顔を見合わせ、悪戯っぽい笑みを交わす。
  そして、矛先はつぐみに向けられた。
  二人はそろりそろりと、つぐみに近づいていき――――
「な・・・何よ? ふたりとも?」
  共同不信な二人を訝しげに思うつぐみ。
「行くぞ!沙羅!!」
「オー―ケイ! パパっ!!」
「えっ? ちょっと? キャっ!!?」
  二人がかりでつぐみに飛び掛る。
  虚を突かれたのか、簡単に床に倒されるつぐみ。
「それっ! つぐみもくすぐってやる〜〜。」
「ママ〜〜。 覚悟はいいでござるな?」
  ――――こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ―――― 
「きゃっ!? ちょっと! 何よ! 止めなさいってば、 クスッ、クククク」
  堪らず笑いが口からこぼれるつぐみ。
  痛みにはどれほどの事があっても耐える癖にこういう事には全く弱い 
 のだった。
「クスクスクスッ ククク♪ ちょっと・・・ねぇ、 クククっ 止めなさいって♪」
「だ〜〜め! とりあえずこれでお前も仲間だ!」
「きゃはは♪なんか楽しいよね〜。うん、スッゴク楽しいよ。パパ、ママ。」
  今度は親娘3人でじゃれ合う。その楽しげな時間が得がたくて、いつま
 でも興じていたいのが3人の共通の今の思いだった。



  しかし・・・・間の悪いのは続くのものである。
  ――――― ガチャッ!

  不意に3人が、”くんずほぐれつ”でじゃれ合う居間のドアが開く。
「だだいま〜〜〜。何?TVの音が玄関まで聞こえ―――― え!?」

  目の前の光景に今度はホクトが凍りつく番だった。

「ぜ〜〜〜。ぜ〜〜〜。 おう・・・・お帰りホクト。」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ。お兄ちゃんお帰り〜〜〜。」
「あん・・・ あぁ・・・  ホクト――― 。」
  絡み合ったままホクトを迎える3人。つぐみも沙羅も、ついでに武も肩が
 はだける程に着衣が乱れており、しかも全員息が荒い。
「うん・・・。 今日はいい天気だったね―――― 」
  額に流れる汗もそのままに、あくまでも自然に振舞おうとする、本当の
 経緯と事情を知らない気まずい顔のホクト。
  しかし、本当の危機はその後ろに居たのだ。
「ちょっと、何よ。皆いるんじゃない〜。 え?―――――」

  ―――― ゴンッ!!   バタンッッ!!!!  ドタッ!!

  優秋が居間のドアから顔を出した瞬間、家族を守る為、反射的にドア
 を勢いよく閉めたホクト。
「お・・・おい。今―――― 」
「なっきゅ先輩・・・・頭にゴンってドアが・・・で、ドタって・・・・?」
「―――― ホクト? 」
  何かを決意した、そんなイイ顔を家族に向け、微笑むホクト。
「僕たちは・・・・・・家族なんだよ。何があってもね。」
  そう言って、ホクトは家族に背を向け、恐らく怒りに震える優秋の待つ
 ドアの向こうへ行った。

『あ・・・あの、ゴメンね、優。』
『ホ〜〜ク〜〜ト〜〜〜!!!!(怒)』
  ゲシッ! ゲシッ! ゲシッ!
  実にいい音の打撃音が倉成家に響く。
  まあ、ホクトならなんとか優秋の機嫌をうまく修復して丸く治める事が
 出来るだろう。
  誰かと違って――――――。(オイオイ) 
 
  バタバタと、身繕いを直し、日常を演じる三人。
「あ〜〜〜、つぐみ。コーヒー煎れてくれるか?」
「え? あ、はい。 沙羅も飲むかしら?」
「――――!? うん、ミルクを入れてね、ママ。」
  ホクトが稼いでくれた時間のおかげで、とりあえずこれからドアを開け
 て来る優秋に平静を装って見せる事が出来るであろう面々。
  本当に良く出来た子だと思う武、つぐみ、そして沙羅だった。



     【あとがき】
 まあ、シングルCDの内容があまりにも重いと言う事もあるので
お馬鹿な内容に徹しましたです。
 少し前、たしか何処かで似た内容のモノがあった記憶がありま
して、それからヒントを頂きました。書き終えてから、もしそっくり
そのまんまだったらとどうしようかとヒヤヒヤものでした〜。(汗)
 やはり、武と沙羅はつぐみがヤキモチを焼くくらい仲がいいって
いうイメージは誰もが共通かつ常識でしょう!
 一部では沙羅が羨むほど武とホクトが仲がいいなんて・・・・
 あと、武と桑古木――――――― (以下削除)


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