【 Yの悲劇 】 
                              かぱちゃぱ


「おっはよ〜、つぐみっ。遊びにきたわよ〜♪」
 
   ピンポ〜ン♪
 
  のチャイムの音と共に、底抜けに元気な声が倉成家の玄関に
 響き渡る。
「――― 優。 いらっしゃい。」
  友人であるショートカットの少女の来訪をつぐみは快く出迎えた。
 
  優秋はよく倉成家に遊びに来る。それも午前の授業がない日
 には暇つぶしとばかりに。
  まだ高校生のホクトと沙羅は学校、武も大抵この時間は不在
 なのでもっぱらつぐみが優秋の相手をするのだ。
  まあ、つぐみにとってもいい時間つぶしではあった。

  見た目は同世代の少女同士に見えるが、実際は親子ほど歳も
 違うふたり。
  付け加えれば、つぐみにとって優秋は自分の友人でもあるが、
 娘の学校の2年先輩で、息子のGFという複雑さ。

「いま、お茶でもいれるわ。」
  とりあえず居間にあがってもらい、つぐみはコポコポとカップに
 紅茶を用意する。
「あ、おかまいなく〜〜〜。」
  その間、勝手知ったるなんとやらで優秋は自分の指定席を陣
 取ると、そこにクッションを敷いて座り、テーブルの上のお菓子を
 口に運びつつ、テレビのリモコンを操作していた。

  つぐみがやって来て、テーブルの上にお茶が置かれる。
  差し出されたお茶を受け取り、優秋が一口すする。
  少し口の中を湿らせた優秋はつぐみに一言、こう言った。
      それも唐突に強烈なのを―――――

「で、つぐみ。 倉成とは・・・・・・夜の方ってどうなの?」

「------------っっ!!? な、何を言うのよ!?」
  ”わたわたっ”と、危うく手に持ったカップを取り落としそうなほど
 動揺したつぐみ。
  頬を赤らめながら上目ずかいに睨みつける仕草が何処か可愛
 らしい。

「何って、さ。やっぱり気になるじゃない〜。で、どうなの?」
  優秋はずっと女子校だった為、こういった話は日常茶飯事。
  そして実体験が無い分、人一倍興味があるのだ。
「―――――― ど・・・・どうって?」
  対するつぐみはもうしどろもどろになっている。この手の話には
 免疫が全く無いのだから仕方が無い。
  一応、夫である武との間に子を2人ももうけている以上、それ相
 応の経験はある訳だ。
  が、それも17年も前の事で、人を信用しない+身持ちの堅いつ
 ぐみは武に再会したつい先日まで全く・・・・無かったのだ。
  ブランクが長かった分、反応が初々しいのは良いとして(by武)
  よ〜するにこちらの方は知識も経験も乏しいのだった・・・。

  ニヤニヤしながら優秋はつぐみに質問する。
「ふ〜〜〜ん。ここ最近、一週間くらいはご無沙汰・・・かしら? あ?
それとも、早くも倦怠期〜〜〜〜?(悪戯顔)」
「な!? そ、そんな事―― そんなに間は空いて・・・(ハっ!?) 」
  普段は冷静で隙のないつぐみだが、この手の話は恐ろしく弱い。
  ついついムキになり、言わなくても良い事をこぼしてしまった。
「なるほどね〜。そんなにって事は、お楽しみは3日くらい前か〜。」
「―――――――― っ(赤面)」
  答えないでいる事が図星である答えと分りつつ、恥ずかしさで声
 も出せないつぐみ。

「そっかそっか・・・・ でも変ね〜。」
「変って・・・・何がよ?」
  意味深な優秋の言葉に顔を上げるつぐみ。
「ほら、倉成って20歳でしょ?その年齢の健康な男子だったら3日も
間が空くなんておかしいわよ。」
「そ・・・そう・・なの?(汗)」
  真面目な顔でまたもやとんでもない事を言う優秋。
「そうよ!こんな十代のピチピチした奥さんがいるんだから、毎日求
めたって不思議じゃないわ。ううん、そうじゃなきゃ変よ!」
「ま・・・毎日?(超赤面)」
  優秋は驚くつぐみに拳を握り締め力説する。

「もしかして・・・つぐみは余り燃えないタイプなの?」
「そ、そんな事ないわ。あ・・・・・(豪赤面)」
  女子校育ちの優秋とは違い、こう言った話にまったく免疫の無い
 つぐみの声は弱々しくてもはや聞き取れないくらいだ。
「なるほど・・・これはやっぱり問題はつぐみにあるわね。」
「――――――!? 私?」
  優秋は犯人を突き止めた名探偵のようにコクリと頷く。
「つぐみ。アンタは自分から求めた事ってないでしょ?」
「―――― っ!そ、それは・・・・・(ポッ)」
  思わず顔をそらし今までの事を思い返す。
  確かに武と”再会してから”は一度もつぐみの方から求めた事は
 無かった。

  しかし・・・17年前のLeMUで武との初体験の時、激情に駆られて
 クヴァレ内で押し倒したのは誰あろうつぐみの方だったりするのだが。
  まあ、あの時は若気の至りというべきか・・・ 

「きっと、倉成はつぐみの事を大事に思っているんでしょうね。」
「・・・・・・・・・・ (コクン)」
  無言で頷くつぐみ。
  それは分る。行為の最中の武は激しくはあったが、絶えずつぐみ
 を気遣い、優しくいたわる事も忘れなかった。
  それがつぐみには心地よく、武の求めるままに身を任せていたの
 だが――――――
「(まさか・・私は一人だけ満足してて、武は満ち足りてなかった?)」
  と、真剣に考える不安げな表情のつぐみ。

  倉成家の居間の雰囲気は今や、Y談で盛り上がる少女同士の一
 種独特のそれだった。
  優秋はともかく、つぐみは何処までも真剣だ。
  まあ、スパイ映画顔負けの逃亡生活を続けてきたつぐみに、女子
 校特有のお馬鹿なノリが理解できる訳も無く・・・・

「見かけはどうあれ、まがりなりにもつぐみの方が年上なんだから、
余裕をもって倉成をリードしてあげるべきよ。」
  ノリノリの優秋は熱弁を振るう。
「そ、そんな事言われても・・・・(どうしたらいいのか――――) 」
  つぐみは普段、女性誌は見ない。一応、家の中には沙羅のティー
 ン向け雑誌はあったが、それすらも見た事がなかった。
「(優(春)なら・・・・私よりも武を満足させられると言うの?)」
  武の悦ばせ方など何も思いつかないつぐみの顔に焦りが見えて
 きた。
  実際、武に抱かれて身体にその存在を感じているだけで満足だっ
 たつぐみには自分からの夜の知識なんか皆無に等しかった。
  要するにつぐみは”うぶ”なのだった。
  とてもLeMUにて、捲くれたスカート姿で
『見たい? もっと近くで見ていいのよ―――――』
  との発言をした妖艶な美少女と同一人物とはとても・・・・・

  なかなか答えを見つけられないつぐみに、優秋はこう言った。
「ズバリ!つぐみに足りないのは奉仕の心よ!!!」
・・・・・・・なんか良い具合に壊れ始めた優秋。

「―――――――― ? なによ、・・・それ。(眉間にシワ)」

  やはり肉体年齢が同い年でも、実年齢が41歳の自分と18歳の優
 秋では何か越えられない高い壁があるようだ。
  優秋の思考についていけないつぐみが思い切り怪訝な表情をする。

「つぐみは倉成を悦ばせてあげたいとか何かしてあげたいとか思った
事ないの?」
「わ、私ができる事なら・・・なんだって武に―――――」
  そう突っ込まれて、つい、ムキになるつぐみ。
  いつものつぐみなら、そろそろ優秋の話が妖しい方向に走り出した
 事に気付きそうなものだのだが、事、”武の為”なので今回ばかりは
 勘が鈍っていた。

「というわけで〜。これをつぐみにあげるわ。がんばってね♪」
  優秋が手渡した紙袋には黒を基調とした洋服とフリルの一杯つい
 たエプロンにカチューシャが入っていた。
  ついでにガーダ―とレースの黒い下着まで。
「・・・・・・何よ、これ?(汗)」
「これは・・・これこそが奉仕の精神の結晶!!メイド服よ!」
  胸をそらし、得意げに優秋はそう言いはなった。
「・・・・・・・メイド?(眉間にシワ)」
  それに対してつぐみは引き気味だった。
「実はこれ、LeMUの飲食店職員の制服なんだけど、一部で凄く人気
があるシロモノなんだからね〜♪」
「・・・・・・この、やけに煽情的な下着も制服なの?(汗)」
  まあ、海洋テーマパークの案内役の制服が深いスリットの入った
 チャイナドレスなのだから、食堂の店員がメイド服なのはさほど不思
 議ではない・・・・のかも。
  ちなみにこの制服のセンスがLeMUの売上に大いに貢献している
 とか・・・・

「・・・・・・私にどうしろっていうのよ?(汗)」
「決まってるでしょう、着るのよ。モノにはまずは形からってよく言うでし
ょうが。」
  ガサガサと中からメイド服を取り出し広げるつぐみ。
  優秋が手を出し、つぐみの身体に合わせてみせる。
「ほらっ〜 、似合う似合う。これを着て”なんなりと申しつけください
ませ、旦那様”なんて迫れば倉成はイチコロよ〜〜♪」

  冷たい汗が額をつたう。武がイチコロになる前に、自分がどうにか
 なりそうだと深い溜息をつくつぐみ。

「・・・・・ねえ、優? 貴女、私の歳を知ってる?」
  自分自身、41歳という自覚は無いにせよ、この恥ずかしい服を拒
 絶するには充分な理由だとつぐみは思った。
  しかし、優秋は妥協を許さなかった。
「甘いわね、つぐみ!41歳で高校生の子供がいても、旦那が二十歳
でも夫婦が夜やる事はひとつ!!そう!夫婦なら当然よ!!」
「う・・・・・・・(汗)」
  夫婦なら当然・・・ その言葉につぐみは弱かった。
  そう、数日前も・・・・・・  


『やだ・・ 武。こんな格好――――― 』
『おいおい〜。そんなに恥ずかしがる事ないだろ?』
『バ・・バカ。 だって・・・・・』
『俺たちは夫婦なんだぜ?でも、そんなに嫌なら無理はしないよ。』
『あ・・・ じゃあ、目・・・つぶって。それなら・・・・・(赤面)』


  はっと妄想から醒めると、優秋はニヤニヤと自分を見ていた。
  思わず赤くなりうつむくつぐみをニヤけながら、
「じゃあ、がんばってね〜。あ、成功談、期待してるわよ(ニヤリ)」
  と、励ます優秋。
  意味ありげにウインクひとつ残し、延々と夫婦生活がなんたるかを
 現役主婦に説いた爆弾生娘はしっかり昼御飯をご馳走になった後、
 午後の授業を聞くため倉成家を後にした。

「 ―――――やっと・・・・帰ってくれたわ。」
  居間に戻ったつぐみは溜息と共にドっと疲れたようにへたれこみ、
 爆弾娘が帰った後の静けさに身を委ねた。

  そして目がいくのはテーブルの上に置かれたままのメイド服。 
「私がこれを着たら・・・武は喜んでくるかしら。」
  まあ、少なくとも引かれる事はないだろう。
  むしろ、ノリのいい武の事だからメイド姿のつぐみを前にしたら色々
 と指示を出してくるのかも知れない―――――
  と、想像するつぐみ。


『武・・・・・・・』
  メイド服のつぐみの前にはベッドに腰を降ろした武が居た。
『こら。今は旦那様・・・・だろ?』
  悪戯っぽくつぐみを叱る武。
『あ、はい。旦那様――――』
『つぐみはいけないメイドだ。これは少しお仕置が必要かな?』
『はい・・・・・』
  つぐみは頬を染め、目を伏せて武の指示を待つ。
『自分で捲くってごらん。俺がいいって言うまでね。』
『は・・・はい。』
  スカートの裾を持つと、そのままゆっくりと捲くりあげて行く。
  武の目の前でつぐみの白くしなやかな足が晒されて・・そして―――



  不意にハッと、我に帰るつぐみ。そしてもう一度メイド服を上気した顔
 で見詰める。
  まだ優春が焚きつけた火が消えていない様子だった。
「・・・・・・・・ちょっと・・着てみようかしら。」

  自分以外誰もいない居間でつぐみは服を脱ぎ始める。
  部屋着の黒っぽいトレーナーの上下を脱ぎ、愛用の白いブラを外す。
  意外と着やせするタイプだったようで、外した瞬間、形の良い乳房が
 プルンっと震える。
  しばし躊躇いながらも、最後に唯一残ったブラと同じく飾りッ毛の無い
 シンプルな白のパンティを下ろす。
「(これを着れば・・・武が喜んでくれる・・・・・・)」
  そう考えると、不思議と積極的になれるつぐみ。
  最初にガーダ―を着け、黒いレースの下着に穿きかえ、あらわなまま
 の白く柔らかそうなお尻を隠した。
  そして、ストッキングを白く細い足に履き、ガーダ―と繋げる。
「や・・・やだ。 こんな下着―――― 。(赤面)」
  いままで身に着けた事のない煽情的な自分のランジェリー姿に、恥ず
 かしさから思わず気遅れするが、これも武の為と意を決意してメイド服を
 手に取り、着ていく。
  背中のチャックを閉め、胸元のリボンを結び、エプロンを羽織り、最後
 にカチューシャを頭の上に着けて―――――― 完成。

  部屋に備え付けてある、少し大き目の鏡に全身を映してみる。
  スカートの端を掴んで広げてみたり、くるっと回ってみたりもした。

「・・・・・・変・・じゃないわよね。別に。(照れ顔)」
  むしろ相当にイケているつぐみのメイド姿。
  美人は何を着ても似合うと言うけど、黒を基調としたメイド服はつぐみ
 の長い黒髪とスタイルの良さもあって恐ろしくマッチしていた。
「これを着て・・・武と・・・・・・・・・」
  しばらくつぐみはそうやって鏡に映った自分を見たり、そうかと思うと考
 え込んだりで、なかなかこれ以上に踏み切る決心が着かないでいた。

「(こういう時・・・優(春)のあの性格がうらやましいわね。)」

  これが行動力の固まりである優春だったなら即、迷う事無く行動に移
 したのだろうけど、つぐみは慎重派だった。
  この慎重さが逃亡生活を生き抜いてきた裨益なのだが、事、色恋沙汰
 においては不向きな性格なつぐみ。


  それから更に時間が経ち―――――


「・・・・よく考えたら、どうして私がこんな格好しなければいけないのよ?」
  ようやく頭が冷えてきたつぐみ。
  ふ〜〜〜っ、と思わず溜息が出た。
「クスっ。やっぱり私は・・・・・私らしくないとね。」
  優秋にいろいろ吹き込まれはしたものの、結局は自分らしく武を愛して
 あげたいという結論に達した様だ。
  姿見に映る自分に向けてそう呟くと、つぐみは着替える事にした。


  しかし・・・・・慎重さが災いしたか、結論を出すのが少し遅かった。
  時計は既に4時半を回り、子供たちの下校時間を過ぎていたのだ。
  

  その時、不意にドアの方から人の気配が―――――

  嫌な予感と共に振り返ると、そこには制服姿の沙羅がニコニコしなが
 らこちらを伺っていた。
「さ・・・・沙羅?」
「やっと気が付いたでござるか♪」
  青ざめたメイド姿の母親とは対照的に喜々満面な沙羅。
「いつ・・・帰ったの?」
「えっとね、15分くらい前かな〜。」
  娘は狼狽するつぐみに、しれっとそう答えた。
「もしかして・・・・ずっと見てた・・・・の?」
「うん♪」
  もはや言い訳の出来ない状況に泣きたい気分のつぐみ。
  もっとも沙羅は全然、気にした様でもない。むしろ積極的な母親を嬉
 しそうに思っているのだ。が、それはそれで母親としては困った事なの
 だが・・・・・・・・・
「え・・とね、沙羅? これは・・・その・・・」
「ママ。やる気満々でござるな〜。まさかママがこんな高等技術でパパに
迫る計画を立ててるとは・・・・・(ニコニコっ♪)」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!(赤面)」
  愛娘に恥ずかしい姿を目撃されたばかりか、動機の図星を差されて
 つぐみは声も出せないほど真っ赤になりうつむく。
  そんな母親を年頃の娘は実に興味深そうに眺める。
  沙羅にしてみれば、悪気は無く、大好きな母親のつぐみが大好きな
 父親の武と仲良くしようというのは嬉しい限りなのである。
  とは言え、やはりというか、先輩が先輩なので、沙羅も女子校特有の
 ノリの持ち主なのだった。

  ・・・・そしてつぐみはそんな視線を浴びながら、とぼとぼと自室へ歩い
 て行った。


           §        §


  その日の夕食の席に、つぐみはいなかった。
  夕方、用事から返って来た武は部屋に篭ったきりの妻を訝しげに思
 いつつも、『心配ないでござるよ』 との沙羅の言葉を信じた。
「まあ、つぐみにも色々あるんだろうな。」
「そう!そうなんでござるよ。ママにも色々とね〜♪ ニンニン♪」

  しょうがないので夕飯は、武とホクトが作った。
  ちなみに沙羅は料理の修業がまだまだ必要である。



           §        §



「おいおい〜〜。何なんだよ、いったい〜〜〜〜?」
「いいからいいから〜。パパはママの所にいってあげてよ、ね♪」
  夕食を終えると、沙羅は後片付けはいいからと、せっつく様に武をつ
 ぐみの篭っている二人の部屋に追いやった。

  武を二人の部屋に追いやった後、居間に戻ってきた沙羅はえらく楽
 しそうだった。
「・・・・・・沙羅? 何を企んでるの?」
「やだぁ、も〜〜♪ お兄ちゃんのエッチ〜。(ニヤリ) 」
  訳知り顔でニヤニヤする妹に、何かいや〜な予感を感じるホクト。

  
          §        §

     
「おい、つぐみ。 入るぞ〜。 ・・・・・・・つぐみ?」
  一応、断ってから部屋に入る武。
  そして目に飛び込んで来たのはベッドに腰掛けて俯き、LeMUのウェ
 イトレスの着ていたあのメイド服を身につけた妻の姿だった。
「 武・・・・・・」
  その服装よりもどこか様子のおかしいつぐみを心配した武が歩み寄る。
「どうしたんだ? どっか具合でも―――――」
  今のつぐみは、どこか拗ねてべそをかいた子供の様に見え、声も弱
 々しく、儚げだった。
  そして肩に手を置こうとしたその時、
「――――― え?」
  その手はタイミング良くつぐみに掴まれ、そのまま勢いをつけたまま
 ベッドに上に引き倒された。
「なっ?! おい一体どうしたってん――――――」
  文句を言い終える前に、つぐみは仰向けになった武の上に覆い被さ
 った。
  その顔は今にも泣きそうで、それでも何かを伝えようとしている。
  しかし、今のつぐみは上手く声に出して思いを伝える事が出来ないで
 いた。
「・・・・・・・・・・・・」
「(つぐみ・・・・・・? )」

  デジャヴが武の脳裏に浮かぶ。
  今のつぐみの表情は、思い詰めているというよりは煮詰まってしまっ
 た感じだった。
  もうどうしたらいいか分らない・・・・ そんな気持ちが重なった身体か
 ら武に、ひしひしと伝わってくる。  
  そう、あの時の 17年前のクヴァレ内の時の様に――――

「―――― 来いよ。」
  そう良いながら優しく微笑む武。
「―――――― 武・・・・・わたし・・私・・。」
  そっと頭が煮詰まったままの妻の頬を撫でながら続ける。
「いいから。遠慮なんてすんなよ。俺がいくらでもお前を受け止めてやる
からさ。」
「あ・・・・武―――――― 好きよ、大好き・・・・・」
  吹っ切れた様で、自分から夫に唇を合わせに行くつぐみ。
  熱く湿った吐息が二人の頬を掠めていく。
「あん・・・んんっ・・・あっ・・・はぁ・・・・ん・・・っ」
「ん・・・・・・つぐみ・・・・・」
  すり合わせる身体にお互いの着ている服が邪魔だったが、脱ぐのも
 もどかしく二人は肌の温もりと感触、そしてここに居ると言う存在の重み
 を感じあった。


       (以下、省略!!!!!!! (T-T)   )


「―――― あ・・ふぅ・・・・・・」
  感極まったつぐみの頬を涙が伝う。
  トサッ、
  そしてつぐみは糸が切れた人形のように武の倒れて来た。
「あ・・ああ・・・はぁ・・・はぁ・・・たけしぃ・・・・・」
  少し顔を上げ、潤んだ目で武の目を覗き込むつぐみ。
「ふぅ・・・・・つぐみ、俺はいつでもお前の傍にいるよ。」
「うん・・・分ってる。それに・・・」
「ん? 」
「―――― 今は・・・こんなにも近くに武を感じるもの。」
  そう言って愛しげに自分の下腹を撫でるつぐみ。
「おい?! ちょっと今、それは・・・・(汗)」
  その優しい指の刺激が、中の武にも伝わってしまったのだ。
「な、何? ――――!? あ・・・・・・・(赤面)」
  つぐみはまた、自分の中の武の存在が強くなったのに気付く。
  ちょっと罰が悪そうに、苦笑いする武をちょっと可愛いと思ってしま
 ったつぐみ。
  ここに来てようやく優秋の言った”余裕≠ェ出て来たようだ。
「つ、つぐみ・・・・ あのさ・・・・」
「クスっ。うん・・・もう一回・・・ね?」
  いつの間にか主導権はつぐみが握っていた。
  汗で顔に張り付いた長い髪を手で払うと、もう一度つぐみは自分か
 ら武に唇を合わせてった―――――


  ・・・・・・ま、要するに、この二人にはメイド服効果は必要なかったと。
  まあ結果オーライと言うか何と言うか・・・・・・・優秋に感謝?



           §        §



  その夜の田中家。

「今頃・・・つぐみと倉成は・・・・・・・ うふふっ♪ 」
  などと、二人の営みを想像して、自室のベッドの中でニヤけている優
 秋だった。
  実はちょうどその頃、優秋の耳から入っただけの性知識を遥かに上
 回るほどの盛り上がりを見せていたのだが、知る由も無く・・・・・
「そりゃそうよね〜。なんたってメイド服だもん♪ 盛り上がって当然って
・・・あれ? でも・・・なんで家にあんなメイド服があったのかしら? 」
  今更ながら、ふと、そんな事を思いつく優秋。
「ま、まあ、お母さんはLeMUに勤めてるんだし、それ関係で家に有って
も不思議じゃないわよね〜。あはは〜♪(汗)」
  と、完結しようとしたが、やはり気になる。何しろあの母親なのだ。
「・・・・・・・まさか、・・・・お母さんの?(大汗)」
  如何にキュレイで二十歳そこそこの外見とはいえ、35にもなる自分
 の母親がメイド服を着ているのを想像するのは耐え難いモノがあった。
「――――――― あはははは・・・・ もう寝よ。」



  同じ頃、優春は探し物をしていた。
「おっかしいわね〜。何処にしまっちゃったのかしら。」
  家中を探したが何処にも探し物はなかった。
「は〜〜。せっかくアレを着て倉成に迫る計画を立ててたのに・・・・(涙)」

  ・・・・・・やっぱり。




        【 あとがき 】
 ・・・・とまあ、お約束のオチがついてしまいました。(笑)
 最初は1○禁SSの練習と思って書いてたんですが、新TOPのウエディン
グつぐみんを見て、急遽、明姐さんの所への投稿を思い立ち、修正を開始。
 流石に (以下、省略!!!!!!! (T-T) )の部分は削るしかなかっ
たです。(大泣き)
 結果、話の上での山場も削ってしまったので纏まりが悪くなってしまったの
はもうご愛嬌という事で。
 H度はEver17本編くらいまで落とせたと思いますが・・・多分。
 
 数々の修羅場を潜り抜けてきた無敵のつぐみんも、一貫女子校生には
敵いませんね〜。
 知識が乏しい現役主婦のつぐみんは、優秋にとって格好の無駄話し相
手となっております。

 感想をお待ちしております。どんな事でも構いませんので〜。

  BGM   『pray』 (佐々木ゆう子)



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