【 オレたちは天使だ! 】
                              かぱちゃぱ


  2017年5月3日。
  圧壊が迫る海洋テーマパークLeMU。
   ―――――  ドリットシュトック ”憩いの間=@―――――  

  今日も今日とて脱出もままならない中、そこに閉じ込められてか
 ら3日目を向かえた6人は、今日も逞しく大いに盛り上がっていた。
  

  さて、本日の『チキチキひよこゴッコ猛レース』の結果は・・・・・


「やった〜〜〜♪ これで私の2連勝よね〜。」
  異様な執念で1位をもぎ取った優春は勝利を見せ付けるべく
 Vサインで決めた。
「ココもゴ〜〜〜〜ルっっ♪ う〜〜ん、なっきゅ強いねぇ。」
  続く2位はココ。得意のひよこゴッコも体力勝負では優春には
 一歩及ばなかったようだ。
「ふふっ、とっても面白かったです。(笑顔)」
  ちなみに空はしっかり3位を獲得。
「・・・・・・・ふん。平和な人たちね。」
  つぐみは不参加だった。が、しっかりゲームは遠巻きに見物し
 ていたようだ。
  
「くっそ〜〜!じゃあ俺と少年がドンケツでバツゲームかい?」
「ご、ごめん、武。僕がコケちゃったせいで・・・・・」
  本気で悔しがる武に申し訳なさそうにを謝る少年。
  武はポンと、そんな少年の頭に手を置くと、
「なに謝ってんだよ。むしろ優がどんな罰ゲームを出してくるか楽し
みってもんだぜ、な?」
  と、気さくにむしろ楽しそうに笑って見せた。
  が、少年の方は武のようにポジティブではなかった。
「で・・・でも、あの優だよ?何を言ってくるか・・・・」
「何が来ようが俺は逃げん!見せてやるぜ、俺の芸人根性と生き
様をな!!」
  握りこぶしを掲げ、やたらテンションが高い武。

  少年にとっては頼もしい限りである・・・筈だったのだが、このハ
 イテンションがスグに思いもかけない方向に向かう事に・・・・



          §        §



「さ〜て、さて♪ それでは覚悟はいいかしら?(ニヤリ)」
  俗に言う王様の権利を勝ち取った優春が、何か本の様なモノを
 手に持ち悪戯っぽい笑みを浮かべながら武たちの方に歩み寄っ
 てきた。
「ああ、いつでもいいぜ。んで、罰ゲームのお題はなんじゃい?」
  こういう時の武は実に楽しそうだ。そして優も負けじとテンション
 がべらぼうに高い。
「ふっふっふっ♪ 今回はね、お芝居を倉成と少年にやってもらおう
と思ってるの。もちろんガチでね。」
  ちなみにガチとは真剣勝負の事である。
  つまり、優春は芸人としての魂を武に見せてみろと言っているに
 等しいのだ。

  ちなみにこの際、少年の低いテンションは無視である。

「・・・・・・・面白い、それは俺に対する挑戦だな?(ニヤリ)」
「ええ〜〜〜。僕、そんなのやれる自信ないな。(しょんぼり)」
  見せ場を用意されて水を得た魚の武と、既に逃げ腰の少年。
  やたら対照的な反応の二人だ。

「―――で、えっとね、これ。この本のこの場面を少年と二人で再現し
て欲しいのよ〜〜。あ、もちろん拒否なんて駄目だからね?」
「え〜と?どれどれ・・・ふんふん・・・・ん?・・・んん?・・こ、これは?」
  渡された雑誌の開かれたぺージを見ている武の表情がだんだん
 と強張ってくる。
「た、武? どうしたの?」
  なんか、ワナワナと手が震えているようにも少年には見えた。  

「ドンドンっ♪パフパフパフ♪ さあ、見せてちょうだい!倉成のその
熱い芸人魂をこの私に〜〜〜〜〜♪(ウットリ)」
  芝居がかったポーズでレビューの身振りをする優春の顔面に、
「アホか〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!!(大激怒)」
  パカンっっ!!と、いい音を立て、丸まった雑誌が絶頂期のバース
 よろしく”葬らん≠ニばかりに振り下ろされた。

「―――っきゃんっっ!!?  あああ・・・・ いった〜〜〜〜〜い。」

  素っ頓狂な声をあげてひっくり返る。
  それも力いっぱい叩かれたらしく、顔を押さえて、よたよたとフラつ
 く優春。
  しかし、スグに体制を立て直し、オニの様な形相で
「あ、ああ、あんたね〜〜〜。イキナリなにするのよ〜〜っっ!!!」
  と、鼻を赤くしながらも武に食って掛かった。
「何もヘチマもあるか!なんだこのマンガはよっっっ!!?」
  バンっ、と雑誌を床に叩き落し、武も負けずに突っかかる。
「ちょっ!止めなよ、武も優も〜。一体どうしちゃったんだよ!」
  訳も分らず目の前で始まった乱闘騒ぎに、慌てて割って入る少年。
  
  そんな揉み合う3人を呆然と見詰める空とココ。
「ど・・・どうしましょう。 あら?――――ピピちゃん?」
  ピピは武が床に落とした例の雑誌を咥えてココの元に持って来た。  
「ワンワンっ。」
「あっ。ありがと〜ね、ピピ。(ニッコリ)」
  ココはピピの頭を撫で、その雑誌を受け取り、栞の挟まったペー
 ジを開いてみた。 
「ん〜とぉ・・・・・おおっ!こ、このマンガって?!(ビックリ)」  
「あの、私にも見せてください。・・え?えええ?きゃっ!?(びっくり)」
  自分では物には触れない空が、ココの手元の雑誌を覗き込むと、
 そこには若い男性と可愛らしい少年が絡む絵が描かれていた。
「こ・・・こここ・・・・・これって・・・・・あの・・・・一体?(赤面)」
「これはねぇ、ボー○ズラブっていう一つの恋愛の形なんだよ〜。」
  顔を赤らめる空に、ココは満面の笑みで分りやすく適切に間違っ
 た説明をした。
  ・・・・・・・・・意外と、物知りなココである。

  そして、ココの説明を真に受けた空の目が点になった。
「えっ?ええっ? それでは・・・・これも恋・・・・・なのですか?」
「うん♪ 恋って色んな形があってねぇ〜。すごーく深いんだよぉ。」
  恥ずかしがりながらもその漫画から目が離せない空。
  ココもきゃっきゃっ♪と面白がりながらページを捲っていく。



  さて、武と優の言い争いはというと、まだ続行中だったりする。



「はぁ・・・はぁ・・・・。ふ〜〜。まったく、アンタにはガッカリしたわ。」
  荒い息を整えながら、乱れた髪を手で直す優春。しかも何故か
 気障っぽく。
「ふぅ・・・・・ふぅぅ・・・・。な・・・・何? 」
  武も乱れた息を抑えて、やたら真剣な顔を優春に向ける。
「倉成だったら・・・・罰ゲームにどんなお題が出ようと逃げたりはしな
いと思ったのに。まさかボー○ズラブくらいで取り乱すなんてね?」
「―――――! くっ・・・・・」
  失望の入り混じった冷たい視線の優春に返す言葉の無い武。
  確かにお題がいくらボー○ズラブとはいえ、腰が引けたのは自分
 らしくないと彼は今、己の未熟さを悔いていた。


  ・・・・・・・・・いや、ていうか普通は引くだろう。


「・・・・・え? ちょっと優?武? ボー○ズラブって何? どう言う事?」
  二人に挟まれた位置の少年は事の成り行きについて全く行けずに
 いた。

  しかし、空気が嫌な方向に流れているのは充分理解できた。


  しばらく俯いていた武は顔を上げると自嘲気味に笑い、
「ふっ・・・・ 確かに、俺らしくないよな。いいぜ、やってやるよ!俺と
少年でお前の言うボー○ズラブって奴をなっ!!(爽やかな瞳)」
  そう自分を叱咤してくれた少女に宣言した。
「倉成・・・・・・・そうよ。それでこそアンタよ。(キラキラした瞳)」
  優春も先ほどのわだかまりをすて、惜しみないエールを送る。
「武? 優? ねぇ、何のこと? ボー○ズラブって・・・・・まさか優の
罰ゲームのお題って?え〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!?(愕然)」
  ようやく自体が飲み込めた少年。
  まあ、だからと言って置かれた状況が好転する訳でもなく・・・・・・

  武は踵を返すと、先ほどのボー○ズラブ系漫画雑誌を見入ってい
る空とココの所に歩いて行く。
「―――――あ、 たけぴょん!」
「えっ? あ?ああっ――――― く、倉成さん?(赤面)」
  近くに来ていた武に気が付き、いつも通りのココと、慌てて取り繕う
 とする恥ずかしげな空。
「これ・・・・返してもらうぜ。」
  そう言って、ひょいっ、とココの手から雑誌を取り返した。

  そして、顔だけ優春に向けて、こう聞いた。
「優! 時間はどれくらいもらえるんだ!?」
「・・・・・・・30分! アンタに30分時間をあげるわ。倉成の役は・・・分
ってるわね?」
  武は振り返らず、手でOKの合図を送るとそのまま独りで練習でき
る場所・・・・多分トイレへと歩いて行った。


       
  何やらスクールウォーズのテーマが聞こえて来そうなノリである。
  そしてダークフォースを撒き散らす優春にはS・Wのダースベイダー
 のテーマが似合っていた。



  武が見えなくなると、今度は少年の方に向き直る優春。
「さて・・・と。今度は少年よね〜。(ニヤリ)」
「え〜〜〜〜?僕もやるの? やっぱり?(涙目)」
  獲物を狙う目で見られ思わずビクッとなる少年。
「もっちろん!あたりまえでしょうが、キミは敗者なのよ?負けたからに
は罰ゲームは身体で払うのが地球の常識。わかる?(ギロリ)」
「ううっ・・・・で、僕は何をすればいいの?」
  強気の優に逆らう事も出来ずに泣きそうな表情で優の言葉を待つ。
  そんな少年に優春はトドメの一言を放った。
「少年にはね、女装をしてらうわ。このLeMUの制服とアトラク用のカツ
ラ付きでね♪(ウインク)」
「―――――――――― そ、そんな? うううっ・・・・・・(涙)」

  よりによって、女の子の格好をした自分を好きな子に見られる。  
  言いようの無い絶望感に打ちひしがれ、チラリとココの方を見ると、
「少ちゃん〜〜〜、がんばれ―――っ♪(ニパっ)」
  と、満面の笑顔で声援を送ってくれていた。
「少年さん・・・がんばってください。(ポっ)」
  空も期待に満ちた目で少年を見詰めていた。
「ココ〜〜〜〜。空まで・・・・(大泣き)」
  更に後には引けなくなった少年だった。


「ほら、キミに合う服とカツラ・・・それと・・あ、そうだ!軽〜くメイクもして
あげるから早く一緒に来なさいよ。」
「は・・・・・・はは・・・はい。(ガクン)」
  もう文句を言う気力すら失せた。
「私、一度でいいから美青年と美少年の”絡み≠生で見るのが夢だっ
たのよね。(うっとり)」
  と、夢見る乙女の様に手を胸元で組んで天を仰ぐ優。
「そんな人迷惑な夢なんか持たないでよ〜〜。って聞いてないし。(涙)」
  少年の目には、そんな今の優春がフランダースの犬の最終回にて、
 念願のルーベンスの絵画を見る事が叶ったネロのように見えた。

  よーするにもうどっかに行っちゃいそうと言うか、逝っちゃってる感じ
 な訳で・・・・・・

「まさかその夢がこんな所で・・・・しかも死ぬかもしれない状況下で叶うな
んてこれはもう神様の私へのご褒美よ! 少年もそう思わない?」
「・・・・・・・・は・・・はは・・・・なんか僕もそんな気がしてきたな〜。(諦め)」
  死ぬかもしれない時に女装させられる少年の理不尽さはどうやら理
 解してもらえそうもなかった。
  気分は、文句も言えず最後まで不幸の道連れにされたパトラッシュの
 少年。

  優春に手を引かれ、トボトボと更衣室へと少年も消えて行った。
  さながら、この二人の後ろ姿にはドナドナがよく似合う事だろう。(爆)
  
「フン・・・・・・・・・馬鹿馬鹿しいわ。(聞き耳)」
  つぐみは壁に背を預け、腕を組んでポーズだけは冷ややかに彼らを
 見ていたが、やはりその場から離れようとはしなかった。
  ・・・・・・・クールを気取っていてもやはり女の子だったと。
    


          §        §


  
  禁断のシチュエーションを題材にした舞台、もとい罰ゲームにそなえ
 しっかり飲み物と食べ物を用意して優、ココ、空は床に座り込んで会場
 待ちの追っかけの如く、今か今かと待ち構えていた。
  やはりと言うか、つぐみは3人から離れた所にいる。でも、その足元に
 はしっかりと飲み物が・・・・・・

「あ、田中さん・・・・・そろそろお時間の30分になりますが?」
  正確に、しかも律儀に武がここを出て行った時間を測っていた空。
  どこかソワソワした様子なのが可愛らしい。
「う〜〜ん♪ 楽しみよね〜。こりゃ最高のイベントよ。」
  こちらも待ちきれない様子の優春。

「ねぇ、なっきゅ。たけぴょんと少ちゃんの役ってなんなのぉ?」
  興味しんしんに聞いてくるココに、待ってましたとばかりに答える優春。  
「ふっふっふ♪ 倉成は訳あって優しさを棄てて金の為に女の相手をする
ホストの役よ。で、少年はこちらも訳アリで女の子の格好をして夜の街で
お金を稼ぐ美少年役よ♪」
  実にベタでありがちでオーソドックスな女の子好みの設定である。
  だからこそ、役者のルックスと演技力が重要なのだ。

「じゃあ、そのお二人の・・・・・その・・・恋愛物語を・・・倉成さんと少年さん
が演じるのですか? まあ・・・・・・(ポっ)」
  頬を染めて会話に参加する空。
  もう完全にボー○ズラブにハマった感じだ。
    
「・・・・・・・・・・・・・フン。」
  そっぽを向き、関心なさそうに振舞うが、さっきよりも3人に近い位置
 に移動しつつ聞き耳を立てているつぐみ。


          §        §



「―――――待たせたな。」
  イキナリ室内に響く、武の声。しかもかなり演技が入っている。
  4人の視線が一斉に武の方に向き、誰もが声を失った。
「く・・・・倉成・・・・・・よね?」
「え・・・・ええ・・・えええ?・・・・倉成・・・さん?(赤面)」
「おおっ! たけぴょんカックい〜〜〜♪」
「―――――  武?(呆然)」

  そう、武の演技は完璧だった。
  服装はトレーナーから何処から見つけたのか、職員用のピシッとした
 シャツに着替え、前ボタンを4つ外し胸をはだけさせている。
  あとは、メモ帳を丸めたモノをタバコに見立てて口に加えただけなのに
 全身から男の色気を漂わせた武は、今、誰も目にも完璧に指名数NO・1
 ホストに見えた。
  素材が良いとは言え、これは最早、才能・・と言うか天職と言えるだろう。
    
「フッ・・・・、どうだ優? 俺はお前の期待に答えられたか?」
  顔を心持ち下に向け、流し目で優を見る武。
「さ・・・最高よ。ふふっ、私が男だったら間違いなくアンタに惚れてたわ。」
  ゾクゾクしたものが背中を駆け、上気した顔で壊れた事を言う優春。
「―――― そ、そうか。」
  とりあえず、突っ込み所満載の優春の発言を受け流しつつ、二ッとちょ
 っとワルっぽさが入ったニヒルな笑みを浮かべる武。
「こういう倉成さんも・・・・・・素敵です。(ポッ)」
  赤く染まった頬を手で押さえながら武に見とれる空。
「ね〜ね〜。たけぴょんって男前だねぇ。つぐみんもそう思わない?」
「―――え? や、やだ。・・別に私は・・・・・・・・(赤面)」
  思わず武に見とれている所を不意にココに聞かれて口ごもるつぐみ。    
  火照った顔を背けはしたが、視線はチラチラと武の方に向いていた。



「んで。・・・・俺の相方はまだ来ないのか?」
「遅いわね・・・・・・・・あ!? まさか逃げた――――」
  さっき更衣室で備え付けのファンデーションを軽くつけてあげた時に
 は大人しくしていて観念した様子の少年。
  着付けまでコーディネイトしようとしたら、恥ずかしいから出てってくれ
 と言われて優は少年の傍を離れたのだが。
  しかし流石にLeMUの制服とカツラで腰が引けたかー―――と、考え
 ていると、

「・・・・・・・僕はここにいるよ。」
  優春の耳に、その少年のボソっとした声が聞こえて来た。
  どうやら既に、武に皆の意識が言っている間に来ていたらしい。

「なんだ、もう来てたんだ。それなら一言いってよー――へ?(呆然)」
「少年・・・・・・・・・・・・か・・・よ?(呆然)」
「わ〜〜〜。わわっ!少ちゃんカワイ〜〜♪ (呆然)」
「お・・・お人形さんみたいですね・・・・・・・・(呆然)」
「―――――少年?(呆然)」

  今度は皆の意識が少年、いやLeMUの制服を着た栗色の長髪に赤
 いリボンを付けた少女に集中した。
  元々、中性的な顔立ちは化粧栄えするタイプだったらしく、優春の施
 した軽いメイクは充分に素材の良さを引き立てていた。
  華奢で小柄な体格も女性用のLeMUの制服であるミニのワンピース
 に違和感なく収まっている。
  そして無駄な肉が付いていない細い足に青いストッキングも綺麗に
 フィットして、全く文句のつけ様がなかった。
  泣きそうな、そして恥ずかしげな表情も相まって、もはや一部の隙も
 無い美少女ぶり。



「僕・・・・・僕・・・・・・・・。(涙)」
    ようするに・・・・・似合いすぎなのだった。
    しかし・・・あまりのハマリ過ぎは、こうなるともうギャグにしかなら
   ないもので――――――


「・・・・・・・・・・・・・・プっ!」
  まず、優春が口火を切った。

「ププっ! ククク・・・・・・あはははっははは♪駄目・・・・堪えきれない〜」
「あっははははっははははははっ。 いかん、俺とした事が・・・くくっ・・・・」
「キャハハハッハハハハハ♪ お腹がぷっぷくぷ〜だよ♪ キャハハっっ」
「くすっ・・・・くすくすくす・・・・ご・ごめんなさい・・余りにお似合いなので・・」
  突然、火が付いたように室内に大爆笑の渦が巻き起こる。
  どこか笑いのツボにピタリと嵌り込んだようだ。
  いわゆる給食の牛乳状態という奴で、みんなその場でうずくまり、お腹
 を抱えて笑いまくっている。
「く・・・・・・くくっ・・・・・・・・・・・・くすっ、くすくすっ・・・・・・・・・・・」
  つぐみはと言うと壁の方を向き、息苦しそうな声を漏らしつつ小刻みに
 震えて込み上げる笑いに耐えていた。
「”――――? チュウっ?=v
  様子のおかしい相棒を心配してか、チャミが胸元から顔を出して小首を
 傾げる。
  どうやらアグレッシブが苦手な彼女でも、少年の女装姿は受けたようだ
 った。それも、つぐみらしからぬ大受け。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ひ、酷いよ・・・・・・・。(涙)」
  もう何処かに逃げ出したい少年。
  でも、この場から逃げたりしたら優に何をされるか恐ろしくて、それも出
 来ずに涙の滲む目をジッと閉じて、羞恥に耐えていた。
  ここで武のように開き直れればいいのだが、出来る筈も無く・・・・・

「あははっ、あはっ♪は〜〜〜、もう最高♪ね、ねぇ・・空。舞台背景と音楽
お願い。(涙目)」
「くすくすっ・・・・はい・・只今。――――ええ〜〜と、LeMMIH。RSDステージ
システム起動・・・・・くすっ。(同じく涙目)」
  優と空も笑いを堪えて、二人の寸劇が始まるのを待ち構える。


 ―――― ”レディ! RSDステージシステム スタートアップ!=\―――  

  ブゥゥンッ ブゥゥゥンッッ と起動音と同時に皆がいる空間内の明かり
 が小さくなり、漫画の風景である新宿歌舞伎町がリアルに広がった。


  そして、バックミュージックは『ゴースト ニューヨークの奇跡』のテーマ。
  ハッキリ言って煩雑な歌舞伎町とは全くマッチしていない。
「うんうんっ♪ これよこの雰囲気なのよ!いい仕事だわ、空。」
  しかし、選曲した優は自分の演出に満足げに頷いているようだ。
  かの水野晴郎とタメを張るのかのような迷監督振りである。
「は・・・・はあ。ありがとうございます。(汗)」
  よく分らないまでも、何となくなミスマッチに首を傾げる空。

「げほっげほっっ!!く〜〜〜〜!やるねぇ少年。俺も負けてらんないぜ。」
  持ち前の芸人魂のプライドが刺激されたようで、咳払いでなんとか気を
 取り直した武が、女装した少年に近づいていく。
「た・・・・武ぅ。 ぼく・・・・・・・やっぱり・・・・(涙)」
  向き合うと少年は今にも泣き出しそうになった。
  そんな少年に役になりきった武は、少しワル入った頼り甲斐のある笑顔
 で見詰め、羞恥に染まる頬をそっと撫でた。
  その瞬間、少年の胸に熱い何かが込み上げてくる。
「大丈夫だ。・・・・・・俺を信じろ。お前は俺だけを見てればいいんだ。」
「・・・・・・・・うん。武なら・・・武となら・・・僕・・・・・・・・」
  役に入ったのかマジなのか、『僕を抱いてください』系オーラが少年から 
 発せられたのをココは見た。(オイオイ)
「少ちゃんすご〜〜い! これは高度な恋が芽生えるのかもぉ♪(ワクワク)」
「――――イキナリ本気モード!? 少年・・・・・・やるわね。(はーと)」
  思わず握る手に力が入る優春。もう目が離せなかった。

  そして、つぐみもいつの間にか空と一緒に真剣な顔で食い入るように見
 入っている。
「こ、小町さん。あの・・・・これは・・・恋になってしまうのですか?(ドキドキ)」
「・・・・・・・・・・・・・・・そう・・かも。(ドキドキ)」

  この状態、収集が付かなくなった場合、誰も止める人間はいない事に気
 付いている者はいなかった―――――――。
  
           『 以下検閲 』 (//。//)かぁ...




          §        §



  同時刻、浮き島にあるLeMU管制室。ここで空やLeMMIHに気付かれな
 いように彼らをモニターする白衣の女性がいた。

「う〜〜〜〜〜〜ん。ふ〜〜〜〜〜〜ん。む〜〜〜〜〜〜ん。」
  腕を組み、椅子にも立たれかかりながら沈み行く海底の城で繰り広げら
 れる、事の顛末を食い入るように見て、何度も溜息を付く、その女性。
  優美清春香菜の母親である一連の出来事の首謀者、田中ゆきえ博士だ。

「田中先生。 どうです彼らは。そろそろ不安と緊張から落ち込んで来てたり
はしてませんか?」
  ゆきえの助手らしき眼鏡の優しげな男性が心配げに優春達の事を聞く。
  するとゆきえは複雑そうな表情で答えた。
「それがね〜。これがまた、楽しそうに過ごしてるのよ。あの子たち。」
「へ〜〜、大した度胸ですね。流石は先生の娘さんだ。」
  モニターに映し出される寸劇に興じる武や、それに拍手喝采を送る優春
 を見て感心する青年。
  しかし、ゆきえの考えは青年とは全く違う所にあった。

「う〜〜〜ん。楽しそうよね〜。楽しんでるわよね〜〜〜〜。」
  画面と睨めっこしながら、何やらぶつぶつと繰り返すゆきえ。

  父親の行方を探る為、ゆきえの計画を知らずに優春が割り込んで来てし
 まい計画変更を余儀なくされたものの、TB対策、そして優春の延命に必要
 不可欠な純キュレイの少女との接触にも成功し、ここまでは順調だった。

  しかし青年はゆきえの様子になんとな〜〜く、嫌な予感を覚えた。

「・・・・・・・先生。 今、何かんがえてます?」
「え?いやねぇ、このまま計画通りに救出しても、あの子達があの調子だっ
たら助かった感動も助けた感動も薄いかな〜〜って思ったのよ。」
  案の定、不穏な事を考えていたゆきえ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・先生? 田中先生?(ジト目)」
  いや〜〜な汗が青年の額に流れる。
  不意にゆきえはポンっ!と手を叩き、
「―――そうだ!陽一さんだけ計画通り5月7日に助け出して、あの子たち
はそれから2、3日経った後で―――――」
「―――――― バカな事考えないでくださいよっっ!(怒&涙)」


  かくて、今日も海底の楽園での時は楽しく過ぎるのであった。(オイオイ)





          【 あとがき 】

 ああ・・・思い起こせば数ヶ月前。ガドガードを予備知識なしに見てて
タクミに萌えてしまいました。
 で、タクミが男の子だって友人から教えてられて落ち込みますた。
 と言う訳で〜、開き直りましたよ私は!(爆)
 ・・・・・・・・・なんか最近、なんでもありですね〜、私。
 
 この話、ゆきえさんが田中先生なので『あなざー・らいふ』編に入りま
すね。
 あ、断っておきますけどこの後、武は優かつぐみのどちらかとはくっつ
く話は書きますが、少年とくっ付く話は書きませんからね?
 ですから、けっして変な期待はしないでくださいよ〜。(オイオイ)

 本来はこのSS、60万HIT記念に考えたんですが、ネタがネタですので
長引いてしまいました。
 ごめんなさい、明姐さん。お待たせしました。(爆)


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