【  傷だらけの天使になんてなりたいとは思わない  】
                              かぱちゃぱ


  第2次LeMU圧壊事件7日目。
  ついにサイバネ装置の中で17年の間眠っていた武と
 ココを助け出し浮島にて二人と再会した桑古木。

  感激と照れくささで中々言葉が出ない純な桑古木に
 ココは一言こういった。

「えへへ〜♪ココね〜。たった今、お兄ちゃんと彼氏さん
がいっぺんに出来たんだよ〜。(ニッコリ)」
「――――――え?(呆然)」
  この瞬間、17年ぶりの再会と同時に桑古木の失恋が
 確定したのだった。(合掌)



          島刀@    島


  それから少し経った後のライプリヒ製薬ビル近くの
 喫茶店にチケットらしきものを手に携帯電話に向って
 話し掛ける桑古木がいた。

「そ、そっか・・・ そうだよな。ははは・・・」
  携帯電話を手に震える声で立ち尽くす桑古木。
『うんっ。それじゃまた今度一緒に武ぴょんのお家にケ
ーキ持って遊びに行こうね、涼ちゃん。』

   プツっ。・・・・・・ツー ツー ツー

  ココが電話を切っても呆然としたまま桑古木はその
 場から動けないでいた。


          島刀@    島



  所は変わってここは優春が籍を置く、清明院大学。
  夕方になり、生徒たちもキャンパスから消えて行く
 中、一人の若い男が構内に入って行った。

  覇気に無い顔で優春の研究室の前に来ると、彼は
 ノックも忘れてフラリと中に足を踏み入れる。
「・・・・・・・・・優〜。いるか〜〜?」

  小奇麗に整理され、ちょっと少女趣味が入ったような
 小物が置かれた室内を見渡すと、椅子に腰掛け学生
 にしか見えないくらい若い白衣の女性が声の方に振り
 返る。

「―――――? 涼じゃない。どうしたのよ。」
「ああ・・・・ちょっと、な。」
「ふ〜〜ん?女の子をデートに誘ったら即、断られたよう
な顔しちゃって〜。一体何の――――」
  その言葉にビクッ!と、反応する桑古木。
「ううっ・・・・・・・(涙)」
「あれ?」
  どうやら図星だったようだ。
  そう。彼はココに振られたのだった。チーンっ♪



「さあ、何があったのか話してみなさいな。(ワクワク)」
  コーヒーカップを差し出すと、興味心身な顔で桑古木
 が口を開くのを待った。
「・・・・なんか嬉しそうだな?」

  優春の態度に釈然としない物を感じつつ、熱いコーヒ
 ーを一口すする桑古木。

「さっきな・・・・ココが好きそうなテーマパークの券がある
からデートしないかって誘ったんだよ。」
  と、机の上に置かれたのは入手困難とされているテー
 マパークのナイトパレード最前列プラチナカードだ。
「へ〜。アンタにしてみれば随分と思い切ったアクションを
したのね。」

  LeMUの事故以降からの付き合いがある優春には、
 目の前の青年の性格を誰よりも分っていた。
  そしてその短所・・・・というか要領の悪さも。

「で?ココの返事はどんなだったの。」
  わざわざ聞くところが実に意地の悪い・・・・・

「”ココにはね〜。もうお兄ちゃんっていう彼氏さんがいる
んだよ?だからねえ、涼ちゃんとデートしちゃうと浮気に
なっちゃうからダ〜メっ♪” だとさ〜〜〜〜。うううっ。」
  桑古木は見事に振られたのだった。それもアッサリ。
  しかしソレが優春の笑いのツボにハマッたようだ。

「あっはっは〜〜♪逆に惚気られた訳だ〜。(大受け)」
「ううっ・・・ 笑う事無いだろう。」
  本気で傷ついた桑古木が泣きそうな顔で文句を言う。

「あっ?ごめんごめん。でもアンタもホントに間っていうか
要領が悪いわね〜。」
「・・・・・・なんだよそりゃ?」
「だってそうでしょ?ココの性格を考えれば、普通に遊びに
行こうって誘えば絶対にOKって返って来たのに。」
「―――――!?」
  あっ!と思わず顔を上げる桑古木。
  今更ながらに、その手があったかと気付いたようだ。
  しかし、今回用意したチケットは無駄となった・・・・・

  目に見えて更に落ち込んでいく桑古木。


「まったく、焦りすぎと言うかガッツキ過ぎと言うか。よく考え
てみなさいよ。私達と違って今のココの心は17年前のあの
時、そのままなのよ?」
「・・・・・・でも、俺はその17年間ずっとココの事を・・・・」
  確かに桑古木は事を急いていたかもしれないが、それも
 無理からぬ事だった。


「なあ、俺の願いって、そんなに高望みなのか?」
「・・・・・・・・涼。」
  その真剣な眼差しに、ただ敗因が要領の悪さだけだと
 は言えない優春。(オイオイ)

「確かに、私達にとっての17年は長かったけどね。でもそれで
アンタだけが焦ってもしょうがないでしょう。」
「だって今は逢いたい時に逢えるんだぜ。俺にはもう・・・・・・」
  時は過ぎても桑古木の気持ちはあの頃から少しも変わっ
 ていなかった。

  だから優春の口車、もとい計画に一も二も無く乗った上に
 17年も付き合っていた訳なんだが・・・・・(マテコラ)

「ねえ、涼。あの子が涼の気持ちに対して、真剣に答えられる
ようになるまで見守ってあげたら・・・・どう?」
「見守るって・・・・それじゃあ何も解決にならないよ。」
「想いは伝わらなくても、想い続ける事は出来るでしょ?」
  あくまで弟を諭すように優しく語り掛ける優春。

「それって片思いって事になっちまわないか?」
「かもね。・・・・でもその人が今しあわせなら、それでもいいっ
て思えないかしら。」

  押し黙り、優春の言葉を噛み締める桑古木。
『・・・・・ああ。それもいいか・・・・な。』
  そんな優しい気持ちが心に染み込んで来るのが分った。

  しばらくすると、段々と桑古木の中で燻っていた焦りも解け
 て来たようだ。
「・・・・・・・・・落ち着いたかしら?」
「・・・・・・・ありがとう、優。」

  ちょっと照れくさそうに言う桑古木。
  考えてみれば、同じ様に17年の間、想いを秘めていたのは
 目の前の女性だった同じなのだ。
  そう考えると何か気が楽になって来た。

     しかし――――――  


「そっか。そうやって優も武の事を吹っ切れたんだな。」
  桑古木のその言葉に優の口調と表情が一瞬にして変わ
 った。
「――――はあ? 何言ってんのよアンタは?」


「―――え?あれ?だって・・・・・・」
「いつ私が倉成の事を諦めたって言ったのよ!?(怒)」
  さっきまでも雰囲気が嘘のように刺々しい。

「いい?倉成は17年前そのままなのよ。言うなればここから
が私と倉成とのスタートって事じゃない。分る?」
「・・・・・・・言ってる事がさっきと全然ちがうじゃないか?」

「目の前のチャンスを逃すようでは17年間頑張った甲斐がな
いじゃないの!(ビシ)」
  妙に自信の篭った力説だった。しかも理不尽極まりない。  
「・・・・・・・見守る事も想いを伝える方法だって自分で言って
たくせによ〜。(涙)」


「と、言う訳で〜。このチケットもらってくわね。」
  とんびが油揚げを掠め取るが如く、ヒョイと机の上に置か
 れたプラチナチケットは優春の手に落ちた。
「・・・・・・・そんなんありか?(唖然)」
「フフフっ、倉成と二人でナイトパレードか〜。それでムードが
盛り上がったその後は〜。(はーと)」
  上機嫌な優春には既に桑古木の呟きなんか聞こえてもい
 なかった。

「さて、早速、倉成の帰り道にある喫茶店で待ち伏せてと。」
「・・・・・・・しかもえらく計画的だし。」
  
「じゃあ私、急いでここを出るから鍵掛けといてね。それと使
ったカップは洗っておくように。あとゴミ出しもやっといて。」
  そう言い残すと、弾む足取りで桑古木の視界から消えて
 行った。

  ポツンと研究室に残された桑古木は一言、
「・・・・・・・俺、一体何しにここに来たんだっけ?(呆然)」


           ( 教訓 )
  ”泣くつく相手にジャイアンを選んじゃいけません。





       【 あとがき  】

 最初は皆を見守る母親のような優春をイメージしても
最後にはどうしてもこうなってしまうんですよ〜。
 そうなると、一番ワリを食うのは当然、桑古木!

 ・・・まあ優春も彼を可愛がってはいるんでしょうけどね。
 所詮姉にとって弟は鉄人28号なんですよう!(涙)

     感想、お待ちしております。


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