「・・・・なんでこんな事になったのかしら?」
  今、つぐみは鳩鳴館女子高等部校舎に居た。学校指定の制服着て―――。



田中先生シリーズ番外編 
おネェさまヘ・・・・
                              かぱちゃぱ


  事の始まりは何の事はない、沙羅が忘れた午後の授業に提出の課題を届けに行くだけの事だった。
  ところが、校舎に入るなり
 
    生徒に間違われる事6回。
     転校生ですかと問われる事4回。
     『お名前を聞かせて(は〜と)』と熱い視線で呼ばれる事12回。

  ――― 鳩鳴館女子高等部は学科別にA〜D棟に別れており、それぞれが特殊な派閥を形成して成り立っており、今まさにつぐみが迷い込んだC棟は『ソレ』系の女生徒達の集う『聖地』だった・・・・
  ちなみに沙羅は比較的まともなA棟。

  そして・・・・お約束とも言うべき出来事が―――
「あっ〜〜〜〜〜!!!! あぶないです〜〜!!」
「―――― え?」
 バシャッッッ!!  ポタッ ポタッ ・・・・
  慣れない・・・いや、慣れたくもない女子高の異様な雰囲気にいい加減うんざりして来た頃、トドメとばかりに花瓶の水を被る事に・・・・
「す・・・すみません〜〜〜。」
「・・・・ふ〜、 いいわ別に。荷物も無事だし怪我も無かったし。」  
  廊下でぶつかって来た気の弱そうな女生徒がオロオロと、涙ながらに謝って来る。
  クールにそっけなくそうは言ったが、水に濡れた薄手のワンピースは身体に張り付き、つぐみのその少女から大人への過渡期の『肉体年齢』にある微妙なラインを露にし、愛用のシンプルな白い下着も透けて見えていた。
「やれやれ、災難だわ全く・・・( ん?何?この視線、この雰囲気は?)」
  濡れた長い髪や服を気にしているつぐみが、フ、と周りを見ると女生徒の人だかりがつぐみを取り囲んでおり、恋する乙女にも似た、いやそのものの目で彼女を見詰めていた。
『な・・・なんなの? この娘たち?』
  ゾゾッと悪寒が背中を走る。流石のつぐみも焦りが隠せないでいると、先ほどぶつかって水をかけてくれた女生徒が、
「あ、あの・・・お姉さま。予備の制服を用意しますから、こちらへ――」
「そ・・そう?じゃあ、お願いするわ。(この娘、今お姉さまって言わなかった?)」
  戸惑いつつも、背に腹は代えられず女生徒に手を引かれその場を去って行った。女生徒達の熱い視線を背中に受けながら・・・・・

  案内されたのは体育館脇の更衣室だった。女生徒は備え付けのロッカーをゴソゴソと漁っていた。
「女子高生の学校生活ってこんなのが普通なのかしら?」
  ふ〜っ、溜息を付く。沙羅の事が心配になり、そんな事を考えていると、
「ありました〜。サイズは合うと思いますので。あ、あの・・」
「ありがとう。―――― ? どうしたの?」
  制服を受け取ったつぐみは、もじもじと上目使いで何か言いた気な目の前の少女にそう聞くと、
「お姉さまのお着替え・・・私にお手伝いさせて頂けますか?」
「・・・結構よ。」
  ギロリとひと睨みし、イタイケな少女の願いをつぐみは断固、断った。

「では私が心を込めて乾かしますので、後で取りにいらしてくださいね。」
  そんな声が聞こえた『気がした』が、つぐみは振り返らずレポート用紙が入ったバッグを小脇に抱え、凄い勢いで歩いて行った。
『冗談じゃないわ! 何なのよここは!!』
  もう周囲の女生徒たちの[熱い視線]も[お姉さま〜]も気にせず、一心不乱に娘を求めて行動を起こした。そう、今のつぐみはライプリヒに追われ、又、追っ手を狩るを繰り返したあの頃の―――――ソレだった。
    ソレとは即ち、『 発見、即皆殺し(サーチ&デストロイ)』


  食堂から出てきた白鳥と木戸が信じられないものを見た。
「ん? あれマヨのママと違う?」
「何をねぼけてるのよ、マヨのお母さんがこんなトコにいる訳が・・うそ?」
  何度か沙羅の家に遊びに行って顔を合わせた事のある、クラスメートで親友の母親が「鳩鳴館」の制服を着て歩いているのが確かに見えた。
  唖然とする白鳥と木戸の前を通り過ぎようとしたその時、
「もしもし〜、マヨのお母さん〜〜〜、ですよね?」
『――――ギロリング!!』
  立ち止まり、顔を向けるつぐみ。それは手負いの獣か貞子の眼だった。
  挨拶した木戸がへッ!? と思わず声をあげる。それほど今のつぐみは怖かったのだ。
「な・・なんでそんな酔狂な格好をしてるんです? 意外とお茶目な―――」
「五月蝿い、黙れ――― 」
  場の空気を和ませようと余計な事を言ってしまった白鳥を一喝するつぐみ。
  自分より身長の大きいその白鳥の肩をつぐみはガシッと掴み、ゆっくり一呼吸おいてから、
「いい? 私がこの制服を着てここにいるのは偶発的かつ予測不可能な事態が重なった上での、およそ考えられる全ての事象より発生する確率の低い要素の発現によるものであり、私の趣味、嗜好、もしくは二面性などとは一切関係の無いと言う事を・・・理解してくれる、わね?」
「は・・・ははははあ。」
  と、一気に捲くし立てる。怖かった。洒落にならないくらいにつぐみは怖かった。白鳥は口をパクパクさせるだけで声が出てこなかった。
『おい!? 冗談だろ! 何者なんだよ 沙羅のお袋さんはよ〜〜〜!!!!?』
  全国レベルの空手の使い手である筈の白鳥陽子は完全に、つぐみの細腕で抑え込まれており身動きが取れない。それどころか信じられない膂力でこのままひねり潰されそうだった。
「了解しました。本来有りうべからざる出来事ゆえ、理解出来ずにすぐに忘れる
―――と言う事でよろしいでしょうか?」
  つぐみの圧倒的な迫力に言葉も出ない白鳥をすかさず木戸がナイスフォローする。
  142cmと小柄ながら、口上も理路整然としていていい度胸だった。
「―――― 、分ってもらえて嬉しいわ」
「どうも。」
  つぐみは途端に穏やかな顔に戻り、木戸は涼しい顔でやり過ごす。
  掴んだ手を離すと、その場にへたり込む白鳥。その彼女をつぐみは片手で軽々と引っ張り起こし、持っていたバッグを手渡す。
「それ、沙羅の忘れ物だから渡しておいてくれるかしら?」
「わ・・・わっかりました。」
  思わず敬礼する白鳥。返事を確認するとつぐみは人間とは思えない様な素早さで二人の前から姿を消した。
  ・・・と言うか窓から飛び降りた様に見えた。ちなみにここは3階。
「な・・なんだったんだ?」
「・・・・・・・素敵 」
  ボソッと呟いた木戸のその言葉に、思わず一歩引く白鳥だった。
  



  それから暫くして――――
  つぐみは自分の家のドアの前に居た。何処をどう帰ったのかはよく覚えてはいないが多分、この制服を着たままで電車に乗って、なじみの商店街を通って来たには違いない。
「―――― ただいま・・・。」
  疲れ果て、打ちひしがれて家の中に入ると、
「おう、お帰りつぐみ。どうだった?沙羅に会えた・・・・うっ!?」
  武が今日はずっと家にいる事を忘れていたつぐみ。
  普段見る事の無い、また頼んでも着てくれる筈も無いだろう、つぐみの愛らしい鳩鳴館女子高の制服姿に武は息を呑んだ。
『た・・武―――― やだ、こんな短いスカートなんて・・・』
  家に辿り着いて気が抜けてしまい、何も思いつかず真っ赤になりスカート丈を気にしたりしてモジモジしていると、
「あ、・・・・・え〜と、さ。似合ってるぜ。可愛いよ、つぐみ。」
「武――――― バカ・・・ 」
  つぐみの様子を察し、何も聞かず優しい言葉をかける武。張り詰めていた気持ちが武の言葉で一気に解けてしまい、溢れる感情のおもむくままに愛する人に抱き付くつぐみだった。
  
  そして二人はこのまま玄関先で――― (いつもよりも『燃えた』とか)。



    【  あとがき  】
 禁断の女の園にてジェノサイドつぐみん(Ver.貞子+青葉)発動!
 実はつぐみと武の『制服でH』なシチュエーションが出来ないかな〜なんておもったりなんかしちゃったりして。
(声 広川太一郎) 

・・・・すみません。私が悪うございました。


 BGM 『奥井雅美』 輪舞 −revilution   
    『杉並児童合唱団』 絶対運命黙示録
今回のBGMはこれでした〜。「かしらかしらご存知かしら?」


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