田中魔道研究所
                              作 賢


前作の設定を、幾らか引き継いでます。
まとめると、「優は、自分の研究所を持っている」「武は、そこで働いている。」
と、言う事を頭に入れてお読みください。
相変わらずシリアスには、程遠く。先生は壊れてます。



ゆっくりと、後ろ手をドアノブに伸ばしていく……
「桑古木……まさか……まさか……」
「……死ぬ…‥気……なの……?」
俺は、優の目を、しっかりと見ながら答えた…
「大丈夫……俺は------」
ゆっくりと扉が開く
『俺は、まだ死にたくない。』
「待ちなさい!!」
ドアから飛び出す。

「待ちなさいってば!!止まらないと殺すわよ。」
「嫌だ!どうせ止まったら半殺しなんだろ!?」
「……もちろんよ!」

俺達が研究所の中で、生死を賭けたオニゴッコをしているのは、もちろん優の思い付きが原因だった。



「待ちなさいってばーー…」
優の声が遠くなっていく…
「ふぅ……逃げ切ったか。」
ゆっくりと足を止める。
額に滲む汗は、走った後の爽快感と恐怖から逃れた安堵感の産物だと考えながら,
自分が生きているという事実を実感する。
「全く…シャレにならん…」
キュレイに”死”という観念は無いにせよ。捕まってたら解剖されかねない。
17年もパートナーだった男を、人体実験に使おうとするだろうか。
少なくとも俺の知る限りでは、そんな女は一人を除いて居ない。
昨日、優に言ったあの一言……
「今の研究が面白くないんなら、他の事やればいいだろ。」
その言葉によって優が新たに考えた研究は、「魔術」だった。
元来、オカルトやおとぎ話が好きな優である。多少は、そういう系をやるかも・・とは、考えていた。
だからと言って俺に魔術を試そうとするのは、予想外だった。





今朝、優の研究室に入ると同時に感じた殺気……
いつもの落ち着いた口調で、優は俺に語りかけてきた。
「ねぇ、桑古木。悪魔を召還したいんだけど。その贄(にえ)に、なってくれるわよね。」
普通の男なら断ることのできない微笑みとともに与えられた言葉は、狂気を表していた…
そして...それを断ることは、死に限り無く近かった。
(戦って勝てる相手じゃない…逃げるしかないか)
俺は、ノブに手を伸ばした・・・
「ふぅ…」
今朝のことを思い出しながら俺は、ため息をついた……
-------シュタタタ・・・
「・・・ん?」
何かの気配を感じる……優じゃない。もっと人間的な誰か……
その気配は、確実に近づいていた…
「クッ!」
俺は再び走り出した。優が誰かを刺客に出したのは、目に見えている。
問題は、「誰か?」だ。ただの研究員や警備員とは考えにくい。
研究所に居るのは、武か空。外部の人間なら、戦闘能力の高いつぐみか秋香奈と考えるべきだろう…
「つぐみだったら。マズイな……」
たぶん勝ち目は無いだろう。パーフェクトキュレイということもあるが、それ以上に彼女は、戦い慣れしている。
シュタタタタタ・・・
「------来たか。」
気配は、かなり近くまで迫っていた。
「はぁ……はぁ……諦めるか。」
俺は決心した。どうせ、殺られるなら雄々しく散ろう…と。

精神を集中して相手の攻撃を、待ち構える。
「来るなら、来い……」

突然の煙幕。しかし俺は、背後から来る気配だけを正確にとらえていた。
身をかわしつつ、相手の足を払う。
相手が倒れた辺りから、少し距離を置いて。相手が立ち上がるのを待つ。
相手次第では、交渉も可能だろう…これ以上の戦いは、極力避けたい。

煙が晴れていく・・・・
そして、俺の目の前に、刺客は現れた。
「お主、覚悟は良いな…?」
刺客の正体は、つぐみでも、国家の特殊部隊でも、優のエージェントでも、無かった……
「……何やってんだ?沙羅……」
「っ・・・拙者は、伊賀流忍者でゴザル。けっして沙羅では……」
明らかに動揺する「自称伊賀忍者」を見て、一気にやる気をなくしてしまった…
「なあ、沙羅……優に、何で買収された?」
「・・・・・・」
おおかたホクトの極秘写真か、何かだろう……沙羅が釣られそうなネタである。
「流石に口は堅いか…...」
俺は、白衣のポケットから一枚の写真を取り出した。
「沙羅...これで、手をうってくれないか?」
「っ!...そ・・・それは・・・」
俺が出したのは、BW発動計画にあたり、ホクトを監視していた人間から貰ったモノだった。
(ホクト入浴(シャワー)の写真)...何故こんなものを常備しているかは、言えないが、どんな物でも役に立つときは来るモノである...

沙羅の目の色が変わった...効果は、絶大だったらしい。
(許せ・・・ホクト・・・)
かろうじて上半身だけを写している写真を沙羅に渡し、俺はその場から離れた。
研究所の正面玄関...
ここまで来れば、後は車で逃げればいい...
安堵感とともに、莫大な疲労が押し寄せてくる。
沙羅と分かれた後。50人の警官隊と20人研究員の包囲をかいくぐり
つぐみ&秋香菜の破壊力コンビを、武とホクトを褒めちぎる。という苦肉の策で突破し。
偶然、研究所に来ていたココの新作コメッチョを聞くという。
常人なら過労死するであろう試練をすべて突破してここまで辿り着いた......

「はぁ...はぁ......最後のが一番疲れた気がする......」
苦しい...何で俺はこんな目に...?
そして、ふっと思い出す。

避けては通れない。ラスボスの存在を...

「よくここまで来たわね。」
不敵な笑顔が、よく似合っていた。
「でも、ここでゲームオーバーよ。」
腹部に、猛烈な痛みを感じた。
優の放ったメスの様な形のナイフが突き刺さっている...
その俺を見下ろすような形で彼女は俺にこう呟いた。
「悲しいわね...でも、あなたはもう終わりよ。」
さらに2本のナイフが飛んでくる。
ナイフは両足に刺さり俺の動きを封じた...
出血もかなり酷いようだ...。
絶望的な状況の中、俺は精一杯優の言葉を否定した...
「・・・嫌だ。」
「...残念ね。でも否定する方法は無いわ」
「......ここまで...」
疲労も限界のようだ呟く程度にしか声が出ない...
「っ...はぁ......はぁ...」
血を失いすぎたようだ...言葉が繋がらない。
「さよなら...桑古木涼権...」
目の前には、寂しそうな顔で死を与えに来た。女性の姿があった。
最後の力・・・
身体に残された。かすかな力を振り絞り。俺は、最後の言葉を叫んだ。
「ここまで話を伸ばしといて、バッドエンドで終われるかーー!!」
俺は自分が笑っていることに気付いた。 死を目前にして笑っていられる...
(あぁ...武...これで少しは武に近づけたかな...)
そして、俺は全ての感覚をなくした...




自分が上に登っているのか...
ゆっくりと降りていっているのか...
俺には、もう分からなかった...
死...?
これは死なのだろうか...
温かい光を感じる...


「...」
「.........」
「.....」
(...ん?何か...声が聞こえる...)
「...!......!!」
「.......」
(誰かが話しているようだ...しかも、口調はかなり立っている。)
「だから...」
「呼吸が...」
天国にしては、五月蠅い感じがした...そして、聞き覚えのある2人の声だった。


俺は目を開いた。そして、周囲の光景を眺めた。
「桑古木!!」
「良かった。目を覚ましたみたいね」
目の前に居たのは、武と優の2人...

そして俺が居たのは、天国ではなく、地獄...いや、研究所の治療室だった。
「心配したのよ。4日も眠りっ放しだったんだから...」
「4日!!?」
前身を激痛が走る。どうやら、まだ体は、完全に回復はしてないらしい。
「ぐっ...ぁ...」
ベットに倒れこむ...体が思うように動かない...
「優に感謝しろよ桑古木。この4日間。ほとんど寝ずにお前を看てたんだからな」
武の横には、かなり疲れた感じの優が立っていた。
「優。どっかで休んでていいぞ。」
「私なら...大丈夫よ。」
「いいから。休んでろって、お前だって疲れてるんだから...」
二人のやり取りを俺は、ただ黙って聞いていた。
「ありがと...奥に居るから。何かあったら呼んで。」
そう言って優は、部屋から出て行った。


「しっかし...何があったんだ?」
唐突な質問に、どう反応していいか分からなかった。
「・・・どうゆうことだ?」
「あれ、お前...覚えてないのか?」
武の問いに、小さくうなずく。
「4日前にお前が、血だらけで倒れてたんだよ。研究所の玄関に...それを優が見つけて、ここに運び込まれたんだ。」


・・・・・


....思い出せない。
4日前の朝からの記憶が、まるで穴が開いたように思い出せない...
何か、大切なことを忘れてしまった気がする......
決して忘れては、いけない事を...
決して忘れることが出来ない何かを...

「おい。...桑古木?」
「っ・・・」
武に声をかけられ、我に返る。
「大丈夫か?なんか、ボーっとしてるけど...」
「・・・あぁ。もう大丈夫だよ。」
「そうか。...で、4日前、何があったんだ?」
「思い出せないんだ...全然・・・」
「そうか。まあ、じきに思い出すだろ。今は、休んでろ。」
「あぁ、ありがと。」

部屋を出て行く武と入れ違いに、優が戻ってきた。
「お、優。寝なくて大丈夫か?」
「えぇ、武も休んでて。」

優は、ベットの横の椅子に腰掛けた。
俺は、とりあえず。優に一つの言葉を伝えることにした。
「優・・・」
「何?」
「・・・ありがとう。」
しばらくの沈黙があった。・・・そして
「良いのよ。あなたは私のパートナーなんだから。」
優は、優しい微笑みを、自分に向けてくれた。
その言葉を聞き微笑みを見ることで。

自分が彼女と堅い信頼と絆で結ばれている・・・と、俺は実感した。
     ・
     ・
     ・
白く塗り固められた廊下...
そこを白衣の女性が歩いていた。
「ふぅ...流石に焦ったわね...まさか、急所にナイフが刺さっちゃうなんて......
処置が遅ければキュレイでも回復が間に合わなかったかも......
でも、桑古木にはまだ死んでもらうことは出来ないわ......
もっと私の為に働いてもらわないと......
ふふふ....とうぶん、魔術は、お預けね......」
不気味な笑みを浮かべながら、女性は、廊下を歩いていった。








「あとがき」
え〜〜・・とりあえず。「スミマセン!」
前作に比べて、サッパリ読めるって、感じじゃありませんね・・・(汗)

ゲーム中のセリフとかを、多少入れよう。とか、無謀な試みをしています。
これが、さらに読みにくさを支援してます。

書き下ろしの段階では、つぐみ&秋香奈との戦闘とかもありましたが...
笑いの要素が少なかったので削除しました。(おぃ)

2作目ですが、1作目のほうが、良かったかも...(滝汗)

ここからはちょっと変わりますが。
自分の小説...一つの事柄が凄く短い......と、言う点に気付きました。
戦闘始まったら3行くらいで終わったりしてますし...もっと考えないと...

では、感想、指摘などをお待ちしております。
最後まで読んでくださってありがとうございます。


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