chaotic mind キラ |
《春香菜視点》 「はぁ。」 ため息がでる。理由は分かっているが…。 「分かってたけど面とむかって言われるときついな〜。」 自分のこの性格をこんなに恨めしく思ったことは始めてだ。イヤ、一度あったから二度目かな? どちらにしてもたいした変わりはない。この性格が変わるわけでもないし…。 「また倉成の時みたいになっちゃうのかな…。」 以前倉成を好きになった時も素直になれない間につぐみと一緒になってしまった。 「それは流石にきついな〜。」 そう思うと泣けてきた。 「どうして…あたしは…こんなに…。」 涙が溢れてくる。泣いたのなんていつ以来だろう…。 「あぁ、Lemuの時以来か…。」 きっと彼は私のことをなんとも思ってないのだろう。今回の事も私が一緒に行っても足手まといだからだろう。 「そういう態度とってたのは私だもんね…。自業自得だよ…。」 私はこの涙を止める術を知らなかった。私の涙を止めることができるのは…。 「優!!」 「か…ぶらき?」 彼しかいない…。彼はどうして来たのだろうか。 「泣いてるのか?」 「違うわよ!」 私はバレバレの嘘をついた。 「そんな顔して泣いてないなんて言ってもバレバレだぞ?」 「うっさいわね。そっちこそなんで来たのよ…?なんで…?」 理由がわからないと期待してしまう。本当は彼も私の事を…と。 「もしかしたら誤解してる…と思ってな。」 「誤解?」 「ああ、俺の足手まといになるって思ってないか?」 「そ、そんなことないわよ。」 またしてもバレバレの嘘をついてしまった。 「いや、バレバレだから。でも決してそんなことは思ってないぞ。」 いつしか私の涙は止まっていた。しだいにいつもの自分が戻ってきた。 「じゃあ…なんで?」 「それは…心配なんだよ。お前のことがさ。」 胸が高鳴る。彼が心配してくれている。「ありがとう。」 やっといつもの私になれた。 「でも…私の心配するなんて10年早いわよ!」 そう言って私は彼の頬をつねった。 「痛いって!放せよ。」 「うふふ。」 微笑みながら彼の頬から手を放す。 「ふぅ、それでこそ優だよ。」 「どういう意味よ?」 「そのままの意味さ。さぁ戻ろうぜ。」 彼の手がさしのべられる。 「ええ。」 私は彼の手をとって部屋からでた。 今はこれでいい…。でもいつか…この作戦が終わったら…彼に言おう。私の本当の気持ちを…。 そして私たちは空が待っているはずの部屋に戻った。しかし空はいなかった。 「どうしたんだろ?」 「まあ、そのうち戻ってくるだろう。」 「そうね…。」 空にはいろいろ迷惑をかけているからお礼をいいたかったのだが…。 「じゃあちょっと探してくるよ。優はここで待っててくれ。」 「わかったわ。」 「じゃあまたな。」 バタンッ! 彼は部屋から出ていった。 「ふぅ、暇ね〜。」 どれぐらいたっただろう。まだ2人が戻って来る気配は無い。退屈なのでふと窓の外を眺めてみた。 「あれ…?空?」 庭に空ともう一人…彼、桑古木が話している。 「じゃあもうすぐ戻ってくるわね。」 私は椅子にもたれかかって目を閉じた…。 コンコン! 「…ん?やばっ!寝ちゃった。」 私は慌てて身嗜みを整える。 「どうぞ。」 カチャ。 ドアから出てきたのは空だった。しかし空の目はいつに無く真剣…と言うよりは殺気を醸し出している感じだ。 「どうしたの?空?」 空に近付く、が空の返事は無いままだ。 「空?」 空の手を触れた。 次の瞬間、私の体が中に浮いた。 「きゃ!?」 ドガッ!! 私は床に伏していた。一瞬何が起こったわからなかった。上から見下しているそらを見てやっと今の状況が理解できた。私は投げられたのだ。私は立ち上がる。背中には痛みだけが残る。 「どうしたの?空?」 当然の疑問を投げ掛けた。 「先生、突然ですが死んでください。」「は?」 私の頭の中は疑問符でいっぱいになった。 「空…もう冗談はよしてよ!」 努めて明るい声で話しかける。だが…。 「私は本気です。本当に申し訳ありませんが死んでいただきます。」 どうやら冗談ではないらしい。冗談ではなかったら狂言かと訊こうとしたが空の瞳には力強いものが宿っているところを見ると無駄だろう。 「わかったわ。でも…理由を教えてくれない?」 「そうですね。確かに何も知らないのはかわいそうですしね…。教えてさしあげましょう。」 空は哀れむような顔をしている。私は次の空の言葉を待った。 「はっきり言って先生、あなたは邪魔なんです。」 「私が…邪魔?」 「ええ、桑古木さんと一緒になるにはね…。」 「…。」 私は何も言えなかった。空も桑古木のことを…。 「今までは自分を抑えていました。でも、もう止められないんですよ!あの人に対する想いが!」 そう言うと空は右の手のひらを広げて私の方にむけた。 「だから…死んでください!」 空の手のひらから熱線が放出される。私はそれを間一髪躱した。しかし…。 「腕は2本あるんですよ?」 もう片方の手から再び熱線が私を襲う。「躱せない!?」 ジュッ! 「あぁっ!!」 熱線は膝に命中した。私はそのまま床に倒れこむ。するとゆっくりと空が近付いてきた。 「これで終わりです。せめて苦しまないように一瞬で終わらせてあげます。」 空は再び私に手のひらを向ける。もうだめかな…。せめて最後に…彼の声を聞きたかった。 カチャ! 「待たしたな、優。いやさ、空が見つからなくてさ…。」 そう言いながら彼は部屋に入ってきた。明らかにこの緊迫感とミスマッチだ。 「空…。お前ら…何してるんだ…?」 「か、桑古木…。」 私は弱々しい声で彼の名前を読んだ。 「優!?」 彼は空を押し退けて私の近くに片膝をついて座った。 「優!どうしたんだ!?一体だれが!?」 桑古木は明らかに動揺していた。しかし少し考えた素振りをして立ち上がると空の方を見た。 「空…まさかお前がやったのか?」 「空は無言のままで答えようとしない。桑古木も黙ったまま空を睨みつけていた。私はその状況をただ見ていることしかできない。 「なぁ、空。答えてくれよ。お前じゃないよな?」桑古木はすがるような声で言った。「私は…。私は!?」そう言うと空はすごい勢いで部屋から出ていった。 「空!?くそっ!優、大丈夫か?」 「ええ、なんとかね。」 「まったく、空のやつどうしちまったんだ?」 「私にもわからないわ…。」 彼の手に支えられながら私は立ち上がる。 「よし。とりあえず空のやつを追いかけようぜ。」 「ええ。」 私たちは空を探して真意を訊くことにした…。 しかし私は知らなかった。これがこれから起こる事の序曲にすぎないということを…。 続く。 |
あとがき やっと4分の1ぐらい終わりました〜。 前編、後編作品ならもう終わっているのに・・・。 つーか空さん恐すぎですな〜。まあ空については次回からということで。 ではまた〜。 |
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