夏休みレポート〜中編〜
                              クロロ


「これで全部かい?沙羅。」
 「うん、ありがとう、お兄ちゃん。あとはこれをこうして・・・。」
 ここは田中優美清春香菜が勤めている研究所の中にあるラボ。2人は学校から家に
帰らず直接ここに来ていた。
 「でも、いいのかな?ラボをこういう事に使って・・・。」
 「大丈夫、研究には変わりないから。」
 「それはそうだけど・・・やっぱり止めとかない?」
 「何を言うでござる。お兄ちゃんは拙者が宿題を提出できなくてもいいと言うので
ござるか?」
 「そ、そうは言ってないよ、でもやっぱり桑古木を実験体にするのは・・・。」
 「だって他にいないんだもん。なっきゅ先輩やパパやママにはできないし、空は可
哀想だし。」
 「桑古木は可哀想じゃないんだ。」
 つっこむホクト。
 「そんなじゃないよ。桑古木にはお世話になったから『プレイボーイになれるマル
秘魔術〜これであなたもモテモテに〜』で恩返しをしたいだけでござる。」
 「十分怪しいけど・・・。っていうより『意中の相手に吹き掛けるだけでラブラブ
になれる』っていうのおかしくない?」
 「大丈夫だってば、あとはこれと・・・。」
 心配するホクトをよそに着々と準備を進める沙羅。

 「よし、これであとは桑古木の髪の毛と爪を入れれば完成っと。じゃあお兄ちゃん
帰ろうか。桑古木今日家に御飯食べにくるらしいからその時に手にいれればいい
し。」
 「あのさ、沙羅。これこのままにしておくの危なくない。誰かが間違って飲んだり
したら・・・。」
 「ん〜それもそうだね。よし、じゃあこのロッカーにいれとこうよ。田中先生が自
由に使っていいって言ってカギもくれたし。」
 「うん、そうだね。じゃあついでにこの本も。」
 ホクトは借りてきた本を紫色の液体の入ったビーカーの横に置いてカギを閉めた。
 2人はこれで安心と満足したがこの会話を聞いていた者がいたのは思ってもいな
かった。
 「ふふふ・・・2人で何をするのかなと思いきや黒魔術とはね〜しかも『意中の相
手に吹き掛けるだけでラブラブになれる』なんてね〜。さてとそれじゃあこの予備の
カギで開けてっと、あったあった。え〜と何々、『この術は容器に使用者の爪と髪の
毛とカラスの羽・・・を入れてから火を付けたロウソクを五角形の魔方陣の中央に置
いて呪文を唱え、唱え終わった後に対象の相手に吹き掛けるだけでラブラブになれ
る』か・・・。『黒魔術でラブラブ』ってとこが怪しいけど試してみる価値はありそ
うね。これが成功すれば、フフ・・・とりあえず少しいただくわね。沙羅、ホクト。
さ〜てとあとは桑古木の様子を観察するだけね。」
 春香菜は微笑し容器から紫の液体を少量手にいれた。
 翌日沙羅が言ってた通り桑古木が夕飯を食べにきた。
 「どうするの?沙羅。桑古木来たけど。」
 「慌てなくて大丈夫。きっとパパと一緒にお酒飲んでぐっすりいっちゃうから。」
 「でもそんなにお酒飲むのかな?よっほど飲まないと寝ないと思うんだけど。」
 「も〜お兄ちゃんたら心配症なんだから。大丈夫いざとなったらコレ使うから。」
 ポケットから白い錠剤を取り出す沙羅
 「何?コレ。」
 ホクトはそれをまじまじと見つめる。
 「ふふふ、これは田中先生特製の眠り薬でござる。例え象でもグッスリスヤスヤで
ござる。」
 「なんでそんなもの持ってんのさ?」
 「それはお兄ちゃんに飲ましてってじゃなくて、忍びのさいに有利にことを進める
為でござるよ。」
 沙羅は笑ってごまかしたが明らかに顔は引きつっていた。
 「・・・頼むから止めてね、沙羅。」
 ホクトを本気で怖がりながら言った。
 「ま、まぁともなく作戦開始でござる。」
 「ハァ〜。」
 こうして『桑古木モテモテ化計画』の火蓋は切って落とされた。
 まず沙羅とホクトは何事もないように雑談しながら夕飯を食べ、食べ終えるといつ
ものように各自の部屋に戻った。いつもながらの行動なので桑古木、武、つぐみの誰
1人として気がつかなかった。
 「ふ〜とりあえずここまでは成功っと。う〜ん、思ったより飲まないわね。ママは
もう酔いつぶれて寝ちゃってるけどパパと桑古木は元気一杯だし。やっぱりここはコ
レの出番でござるな。」
 沙羅は例の睡眠薬を取り出し握り締めリビングに向かった。
 「お、どうした?沙羅。お前も飲むか?」
 「未成年の自分の娘に酒を勧めるなよ、武。」
 「社会勉強になると思ったんだが。」
 「ならないって。」
 そういって2は大笑いした。どうやらかなり酔っているようだ。
 「ねぇパパ、ママこのままじゃ風邪ひくからベッドに連れていってあげたら?」
 「ん?ああ、そうだな。んじゃちょっと行ってくる。」
 「んじゃ俺もトイレ借りるぞ。」
 沙羅の狙いどおり2人はリビングから離れ沙羅は桑古木と武のコップに睡眠薬をい
れその場を離れ自室に戻った。
 しばらくするとまた飲み出したのか2人の笑い声が聞こえたが睡眠薬が聞いたのか
笑い声はしなくなった。
 「聞いたみたいね、お兄ちゃんいくよ。お兄ちゃん?」
 ホクトから返事がないのでホクトの部屋に近付くと、え、そうなの?あはは、あ、
そうだ優、今度映画行かない?お父さんがもらってきたんだけどお母さんが興味ない
からって貰ったんだ・・・。ん?なんかね、アクションものでスパイが主人公のやつ
なんだけど・・・、いい?それじゃあいつにする?・・・」
 沙羅は部屋から離れると、
 「絶対に使おう。」
 と心に固く誓った。


あとがき
読んでくださりありがとうございます。
なんだか最初考えていた話と違うものになってしまいましたがなんとか書き終えたいと思います。
(いつになるやら)では・・・また。


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