まずはじめにお断りしておきます。このSSは作者の趣味により登場人物の設定がかな
りぶっ飛んでいます。オフィシャル設定の信奉者の方は、決してお読みにならないようお
願いいたします。この警告を無視してお読みになった場合、いかなる抗議、苦情も受け付
けませんのでそのつもりで。






                             魔神 霊一郎


 俺が目覚めてからおよそ三ヶ月。奇跡の生還劇に対する興奮や興味も下火になり、俺た
ちの身辺も静けさを取り戻し始めていた。家があり家族が居る。出かける時には見送りの
言葉がかかり、帰宅時には温かい出迎えの言葉がある。そんな何でもない、それでいて何
にも代え難いものをようやく手に入れつつある。つぐみにとって、そしてホクトと沙羅に
とっても、夢にまで見た日々。それが現実になった今、俺たちの顔には、自然と微笑みが
浮かぶようになっていた。そんなある日の事……




俺たちは遺品を整理していた。俺が目覚めた時、俺の両親はすでにこの世にはいなかっ
た。原因はTB。優にその話を聞かされた時には愕然としたが、当然ショックは大きかっ
たが、今の俺には妻と子供たちがいる。両親という家族を失っても、一人じゃない。そう
思えたからだろう。
 そういうわけで、俺の手元には両親の遺品が遺された。本来なら処分されるのだろうが、
俺が生きていることを知っていた、優が引き取って保管していたらしい。かくして俺たち
は、家族総出でその整理に当たることになったわけだ。




 それを最初に見つけたのは沙羅だった。
「あ。ねえママ、見てアルバムがあるよ」
「あら、ホントね」
「パパ、写ってるかな」
「多分写ってるでしょう。見てみましょうか?」
「うん。昔のパパってどんなだったんだろう」
 そういいながら、アルバムを開く沙羅。その隣でのぞき込むようにして、アルバムを見
るつぐみ。まず最初に二人の目に飛び込んできたのは、お約束といえばお約束。幼稚園時
代の写真であった。その写真はお遊戯の発表会で撮られたものなのだろう。写真の中の武
は、かわいらしい衣裳を着て何かを踊っているように見えた。
「パパ、かわいー」
「ほんとね。武にこんな頃があったなんて信じられないわ」
 ワイワイ言いながら、幼稚園時代の写真を眺める二人。その姿は外見上年齢差がないこ
ともあって、女子高生同士のおしゃべりに見える。
「次見ましょ」
 そう言ってページをめくったのはつぐみ。だんだんとのってきたのだろう。ページをめ
くる手が軽やかである。
 次にでてきたのは、予想通りの小学校時代。そこに写る武はなんと半ズボン。その可愛
さときたらもう…
「ボー…」
 すっかりその写真に魅了されてしまっている、倉成夫人。その隣では同じように…
「ポー…」
 と、あっちに逝ってしまってる、倉成家令嬢。二人とも固まったまま時間だけが過ぎて
いく。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「はっ」
 どれくらい時間がたっただろうか。やがて、つぐみが帰ってくる。それつづいて沙羅も
こちらに戻ってきた。
「は、半ズボンはダメージが大きかったわね」
「い、今のパパからは想像もできないでござるよ」
「それにしても見てみたいわね、武の半ズボン。今度BWに頼んで過去に連れてってもら
おうかしら。それとも今の武に半ズボンを…」
「ママ!暴走しちゃだめ!」
 危ない方向に行きかけたつぐみを、沙羅が止める。沙羅も結構無茶な性格ではあるが、
両親に比べればまだまだ常識人である。
「ママ、落ち着いて。まだ、小学生なんだから。これから先どんなすごいのがでてくるか
わからないんだよ。ここで興奮したら、身が持たないよ」
 いまいち説得になっていないことを、堂々と言う沙羅。むしろ焚きつけているようにも
見えるが、本人は至って本気である。
「そうね、次はもっと落ち着いて見ましょう」
 と、あっさり説得、というより丸め込まれるつぐみ。
「じゃあ、つぎにいくよ」
 今度は、沙羅がページをめくる。そしてそこにあった写真を見て・・・・・・硬直。
 先程とは違い、今回はいくら待っても復活しない。よほどの写真だったのだろうか。そ
のまま五分、十分と時間だけが過ぎていく。その状況を打破したのは、ホクトの声だった。
「お母ーさーん」
 つぐみを呼びながら、階段を下りてくるホクト。ホクトは武と一緒に整理済みの遺品を
二階へ運んでいたのだが、いつまでたっても次の荷物が来ないので様子を見に来たのだろ
う。
「お母さん、さっきのでもう……」
 終わり、と続けようとしたホクトの目に飛び込んできたのは、完全に時間が止まってい
る母親と妹の姿だった。二人ともまるで見てはいけないものを見たかのような表情で、固
まっている。そしてその前には一冊のアルバム。
「二人とも、どうしたの?」
 問いかけるホクト。しかし二人の返事はない。その代わりに沙羅がおそるおそるといっ
た具合に、アルバムを指さした。思わずそちらを向くホクト。そして、そこに写っている
ものを見て………その瞬間、三人目の犠牲者が生まれた。




「あいつら何やってんだ。まだまだあるはずだぞ、遺品」
 そうぼやきながら、今度は武が降りてくる。ホクトも戻ってこないので、やはり様子を
見に来たのだろう。妻と娘がいるであろうリビングに入るなり
「おい、どうしたんだ。何かあった………のか」
 完全に固まっている三人を見て、思わず口ごもる武。ホクトの時と同じく返事はない。
何があったのかわからぬままに、武はその場に立ちつくす。やがて、つぐみが先程の沙羅
のようにある一点を指さした。そこには……
「ああーーーーー!! そ、それは!!」




「まいったね。まさかそんな写真が残ってるなんてよ。」
「驚いたのこっちよ。あれが武なんて、とても信じられないわ」
「拙者も度肝を抜かれたでござる。まさか父上が」
「ボクもびっくりしたよ。そんな雰囲気全然ないもん」
「あるわけねえだろ。中学の時だぞ」
「それにしたって、ねえ」
 件の写真に写っていたのは、中学時代の武であった。ただし写り方が尋常ではなかった
のである。写真の中の武は、背中に喧嘩上等、袖に特攻隊長と縫い取られた、俗に特攻服
と呼ばれるものを着た、暴走族スタイルの武であった。
「いやー、この頃は荒れてたからなー」
 そういって朗らかに笑う武。それを見てつぐみはふと思う。私の過去について、武は知
らないことの方が多い。だけど、私はそれ以上に武の過去を知らない。そう思うと、つぐ
みはせかされるように口を開く。
「その頃の事、教えてくれない。」
「中学の頃のことか。聞いてもおもしろくも何ともないぜ」
「それでも知りたいの。あなたの昔のこと」
「私も教えてほしい」
「あ、ボクも」
 つぐみだけでなく、子供たちにもせがまれる武。武はしようがないな、という風に
「わかった。話してやる。けど、ほんとにおもしろくも何ともないからな。後で文句言う
なよ」
 そう前置きする。その言葉にうなずく三人を見て、武は語り始めた……




「俺の親父の職業、なんだと思う。」
 いきなり質問され、思わず考え込む三人。その様子を見るに、今の武から両親の職業を
割り出そうとしているようだ。
「パッとは思いつかないわね」
「案外、お父さんからは想像もできない仕事なんじゃない」
「うーむ、これは結構難しいでござる。そもそも…」
「格闘家」
「まさか、いくら何でもそれは…え、武、今なんて言ったの?」
「俺の親父の職業は格闘家だよ」
 たっぷり一分は掛けて、その言葉の意味を吟味する三人。そして・・・・・・
「えぇぇぇぇぇぇ!!」
 倉成家に絶叫が響き渡った。
「何だよ、そんなに大声あげるようなことか」
「だって、格闘家だなんて…」
「思いもつかないでござるよ、そんなもの」
「じゃあ、大会とかに出てたの。テレビ中継されてるような」
「いや、そっち方面じゃなく弟子とかとって生活してた。だから格闘家って言うより、武
術家だな」
「空手とかの?」
「いや、古武術だ。ちゃんと倉成響心流って流派名まである」
『へぇー』
 感心したような声を上げる、ホクトと沙羅。二人の表情を見れば、何処がすごいのかよ
くわかっていないのが瞭然だ。
「それで。それが写真の中の武と、どう結びつくの」
 落ち着いた声でつぐみが問う。武は、彼女の方を向きやって
「そんな親父だから当然しつけは厳しくてな。もうちょっとでも気に入らないことがある
と、殴る蹴るの大騒ぎ。俺は親に愛されていない。そこまで思うようになったぞ。それが
原因で、徹底的に反発してな。気が付いたらあんな状態だった」
そう言って、武は写真の方を親指で指し示す。
「まあ、ああいう風に群れていきがってるのが、親への反発だって思って満足してたんだ
ろうな。今考えると、いかにもガキの幼稚な考えだけどな」
武は一息ついて、更に続ける。
「あんな風になってたのが、中学二年から三年の間の約一年間。丁度、17年前のココの
年ぐらいまでだな。そん時にある事があってな、すっぱりその世界からは足を洗った」
 足を洗ったって言うと、何かやくざの世界みたいだけどな。笑いながら、そう言う武。
やがて、笑いを収めると幾分まじめな口調になる。それは、形容しがたい感情を持った声
だった。
「あれは、2011年の冬だったかな。俺の入ってたチームがでかい喧嘩をやってな。当
然俺もそれに参加してた。さっきも言ったように親父は武術家だから、息子の俺もさんざ
ん鍛えられた。だから、ちょっとやそっとのことじゃ負けることはおろか、傷を負うこと
すらなかったよ。そん時も同じだ。そのおかげって訳でもないが、喧嘩は俺たちの勝ちだ
った。けどな・・・・・あいつらは最低だった」
 そう言った武の表情は、苦痛以外の何者でもなかった。




「暴走族同士の喧嘩ってのは、どっちかがつぶれるか、屈服するまでつづくのが普通だ。
少なくとも、おれがメンバーだった時代はそうだった。同時にメンバー以外には手を出さ
ないのが暗黙の了解みたいなもんでな。族の喧嘩は、部外者は巻き込まないってのがルー
ルだ。だが連中は違った。」
「メンバーの・・・・・・家族にまで手を出したのね」
 つぐみの一言にホクトと沙羅の息をのむ声が聞こえてくる。
「そうだ、一人また一人と家族を人質に取られてはやられていった。親兄弟を人質に取ら
れりゃ、誰だって抵抗できない。まれに抵抗するやつもいたが、目の前で自分の家族が殴
られるのを見て強がれるやつなんてのはいないからな。無駄な抵抗ってやつだな。」
「お祖父ちゃんの所にも?」
「もちろん来た。だけど、親父は連中を返り討ちにしてな。怒った奴らはその日から執拗
に俺を追い回す日が続いた。終いには家にも帰れなくなっちまった。そいつらが張ってた
からな。」
 その言葉に、つぐみは自分の逃亡生活を思い出し、両腕で自分の体を抱き締める。帰る
場所がない。これほど恐ろしいことは他にはない。つぐみは身をもってそのことを知って
いた。
「中学生の行動範囲なんざたかがしれてる。とうとう俺は捕まった。その時の連中の目と
いったら、一目ではっきりと分かるくらい異常だった。殺される。俺は本気でそう思った
ね」




「よう、倉成。さんざん手こずらせてくれたじゃねえか」
「てめえらが間抜けなだけだろ」
「何だと!!」
 自分でも馬鹿だと思うが、そんな時になっても強がるのを止めなかった。まあ、その結
果どうなったかは、言わないでも判ると思うけどな。
「まあ、俺らが間抜けってのはその通りだが、それに捕まってるてめえはもっと間抜けだ」
 そっからは殴る蹴るの暴行、というよりはなぶり殺しだな、あれは。どれぐらい続いた
か判らない。最初の方は、今蹴ったやつ殺す。とか、今ので骨が折れたな。とか、いろい
ろ考えてたんだが、最後の方はそんなこと考える気力もなかった。段々と意識にもやがか
かっていくような感じがして、ああ、死ぬな、そう思った時だった。でかい音が響いて、
意識が引きずり戻された。なんだと思って、音のした方−といっても、正確に判った訳じ
ゃなく何となくだが−に顔を向けると、そこには親父が立っていた。
「お義父様が」
 ああ。後で聞いた話によると、家の見張りが急にいなくなったんで、おかしいと思って
街中調べたんだと。で、俺が捕まったことと、連れ込まれた場所を連中の下っ端締め上げ
て聞き出したらしい。
「豪快でござるな」
 だけど俺は、親父を見ても助かったとかは思わなかった。むしろ、何しに来たんだこの
野郎、って感じに思ったよ。事実、親父が俺を助けに来る理由なんて無いと、その頃は思
ってたからな。これも今考えると、馬鹿丸出しだがな。
「なんだあ、おっさん。何か用かよ」
「息子を返してもらいに来た」
「息子だァ」
「そうだ、そこに転がっている男だ」
「なんだァ、おっさん。倉成の親父かよ。けど、それはできねえなあ。こいつにはよ、俺
らの仲間が30人はやられてんだよ。こんなもんで済ますわけにはいかねえなァ」
「派手にやったな。武」
「うる…せえ。何しに…来やがった、クソ親父」
「その状態でそれだけ言えればたいしたものだ」
 確かに、その時の俺の状況は医者に見せれば、十人中十人が重体と判断するだろう。両
腕骨折、肋骨もやられてたし、体の感覚もほとんど無かったからな。それでもあの連中は、
まだやり足りないといった表情だったからな。
「おっさん、和んでじゃねえよ。心配しなくても、殺すつもりはねえからよ。そこで大人
しく見てな」
「そうはいかん。私には、息子が傷つくのを黙ってみているような趣味はない。だが、君
たちの気持ちもわからんではない。取引といこう。君たちは武を解放する。私は、君達が
望むものを1つくれてやろう」
「へえ。何でもいいのかよ」
「私に与えられる物ならばな」
「じゃあよ、おっさんの眼をよこせ」
「眼だと」
 とんでもないこと言う奴らだと思ったぜ。連中はそんなことできないと思って、親父に
眼をよこせって言ったんだろうな。俺もそう思った。親父が俺のために自分の眼を差し出
したりはしないってな。けど…
「ふむ、眼か。では、右眼をやろう」
 何を言ってやがるんだ、こいつは。そう思った。俺も、そしておそらく連中もな。だけ
ど、次の瞬間、親父は自分で自分の右眼を…えぐり出した。何が起こったのか判らなかっ
たよ。いや、判ってたんだが、余りに現実離れしすぎた光景だったから、理解できなかっ
たんだな。
親父が、何をやったのかをようやく認識したのは、えぐった眼を連中に放り投げた時だ。
「これで満足かね」
 普通なら、激痛で喋ることなんか出来ない筈なのに、親父は平然とした顔で言い放った
よ。連中は圧倒されて、一歩も動けねえ。そんな中、親父は悠然と俺に近づいて
「では、息子は返してもらうぞ」
 親父はそのまま、俺を担いで帰ろうとした。その時、俺は思わず尋ねたんだ。
「何で・・・・・来た」
「私は、おまえの父親だ。父親なら、息子を助けるのは当たり前の事だ。たとえおまえが
私を嫌っていようが、疎ましく思っていようがそんなことは関係ない。親子の、そして家
族の愛というのは、その程度で消え去る物ではないからな。例え地球の端と端にいても、
感じ取れるもの。それほどに深く強いものだ」
 その台詞に、全身の力が抜けたよ。そして、そのまま意識が飛んだ。




「で、次に目覚めたのは病院だった。どうやら、三日ぐらい気を失ってたらしくてな。よ
うやく目覚めた瞬間、側にいたお袋の怒りの平手が俺にヒットして、そのまま、もう一回
気を失っちまったんだ。で、更に二日間眠り続けたわけだ」
 すべてを語り終えて、大きく息を付く武。殆ど喋らず、聞き入っていた三人に目を向け
る。
「そう、そんな事があったの。でもそれじゃ、あなたがチームから抜けた理由が、いまい
ち伝わってこないんだけど」
「おいおい、言わなくても判るだろ。それくらい。俺が何で荒れてたか、最初に言っじゃ
ねえか」
「だからそれが…そうか、そうなのね。武、あなたも」
「そう言うこと。結局、俺も欲しかっただけなんだよ。目に見える形での愛情が、な。つ
ぐみ、そしてホクト、沙羅。おまえたちと同じようにな。餓えてたんだよ、愛情に」
 三人は武のその気持ちが、よく分かった。彼の妻は、そして子供たちは常に夫の、両親
の、そして兄の愛情を欲していたのだから。
「俺は、そうして突っ張るのを止めた。きっぱりとな。親父の態度が変わるわけでもない
し、それからも殴られ続けたけど、いやな思いはしなかった。俺は両親に愛されてるそう
思えたからな。今までの親不孝は、何十倍もの親孝行で返そう。そう思って、それからの
生活を過ごした来たんだ。十七年前の…あの時…まで」
 急に声が詰まる。つぐみたちが武の顔を見て、言葉をなくす。その顔には、初めて見る
武の涙があった。
「俺…は…何も…出来な…かった。十七年前…死んだはずの俺が…生き返って…嫁さんと
…子供たちが…家族が出来た…って…新しい…家族が…出来たって伝えたかった。それが
…俺の…親…孝行…だったのに。それなのに…俺は…伝えられなかった…会わせてやれな
かった…俺は…最後の…最後まで…親不孝の…馬鹿…息子だ」
「そんなことない! あなたの気持ちは、ちゃんと伝わってるわ! お義父様が言ったん
でしょ。家族の絆は深く強いって! だったら、ちゃんと伝わってるわ! ちゃんと、伝
わってるから」
たまらず武を抱き締めるつぐみ。その顔は武と同じように涙に濡れている。いや、つぐ
みだけでなく、ホクトと沙羅も涙で顔をゆがめていた。
「そうだよ、パパ。ママの言うとおりだよ。きっと、お祖父ちゃんも、お祖母ちゃんも、
私達のこと見てくれてるんだから、パパの気持ちが伝わらないはずないよ!」
「ボクも、そう思うよ。今のパパの言葉を聞いて、喜んでるよ。きっと」
「お前たち」
「武。もしあなたが、納得出来ないなら。自分がまだ親孝行出来ていないと思うなら、私
達を幸せにして。私達に、あなたの持てる愛情の全てを注ぎ込んで。怖いくらいに。それ
が、きっと親孝行になるはずだから」
「それで、いいのか。そんな事で、本当に」
「もちろんよ」
「当然でござる」
「十分だよ」
 三人がそれぞれの思いを込めて、答える。武の顔から悲しみの色が消え、笑顔が浮かぶ。
「よーし、覚悟しろよ。お前ら。いやだっていっても、逃げ出したくなっても絶対に離し
てやらねえからな」
「それはこちらの台詞よ、武。あなたの方こそ覚悟を決めるのね。生半可な決意じゃあ、
身が持たないわよ。そうでしょ、あなた達」
『うん!!』
 つぐみの声に答える、ホクトと沙羅。リビングに明るい雰囲気が戻る。
「さあ! それじゃ、残りの荷物を片づけましょ。早くしないと夕飯に間に合わないわよ」 
つぐみのかけ声に全員が、動き出す。
 武は、そっとつぐみに近づき囁く
「今度、墓参りに行こう。親父たちに会いにな」
「そうね。家族四人、幸せですって報告しましょう」
「ああ、そうだな」
 かつて父親が言った家族の絆。それをかみしめながら、武はつぐみを抱き寄せそっとくち
づけた。全ての思いを、込めながら。



  ーFinー






あとがき


 長い、長すぎる。SSは一分前後で読めるもの。と、いう私の理想を自ら破ることにな
りましたが、いかがだったでしょうか。皆さん初めまして、魔神霊一郎と申します。最も
ひょっとしたら初めてではない方が、幾人かいらっしゃるかもしれません。可能性は限り
なく零に近いですが。
 作中でもつぐみの台詞にあるように、このゲームで武自身については、あまり触れられ
ていません。ですから、その部分を想像するような形で、この話は生まれました。そのた
め、ヒロインたちの出番は殆どなく、ヒロイン好きの方々にはつまらない話だったかもし
れません。が、これも仕様ですので我慢してください。
また、序文の通りに設定はかなりぶっ飛んでます(特に武)。こちらで不満を覚えた方は、
あきらめてください。序文の通り、責任は負いませんので。
 では皆さん。縁があったらまたお会いしましょう。最後になりましたが、私の駄作を受け
取ってくださった、明さんに感謝を。


魔神霊一郎


/ TOP  / BBS









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