エバセブ闘牌伝 
ー代打ち集団LeMU−

                              鳴きの虎

第4章 天使VS死神



ー武達は、大会二日目の朝を迎えた。2回戦は2日目の夜8時から行われるため、
それまでの間も各自自由行動となる。大会会場の温泉旅館は周辺が観光地ということもあり、
武達は「LeMU」のメンバー全員で名所巡りに出かけることにした・・・。−

  黒服:「では皆様、6時までに必ずお戻りいただき、受付を済ませて下さい・・・。
      6時までに間に合わなかった場合は、2回戦出場の権利を剥奪されることになります・・・。」

   武:「分かった分かった。それまでには必ず戻るから、心配ねえよ。」

   空:「さあ、出かけましょう、倉成さん。」

   武:「お、おい、空・・・。」

 つぐみ:「ちょっと・・・、何勝手に武と腕組んでるのよ。」
      
   空:「あ、ごめんなさい・・・。
      でも、せっかくですから私も倉成さんとご一緒させていただけませんか?」

ー武から離れる空ー

 つぐみ:「まったく・・・。しょうがないわね。」

  沙羅:「やれやれ・・・、ママも空殿も相変らずでござるなあ・・・。」

 ホクト:「まあ、いつものことだけどね・・・。
      でも、旅行先までは勘弁してほしいけど・・・。」

 秋香奈:「え?あたしたちは麻雀大会に参加しにきたんじゃなかったっけ?」

  沙羅:「大会会場周辺は観光地ゆえ、今回は旅行も兼ねているでござるよ。
      下調べは抜かりないでござる。」

 ホクト:「夜まで旅館にいても、しょうがないからね。」

ーガイドブックを取り出す沙羅とホクトー

 秋香奈:「おっ、二人とも気が利くじゃん。
      さて、どこに行くか決めないと・・・。」

  ココ:「たけぴょ〜ん!みんな〜!
      早くしないと置いてっちゃうよ〜。」

 桑古木:「まあまあ、ココ、そう慌てなくても・・・。」

ー武達は観光を楽しんだ後、別の場所に来ていた赤木たちとも合流し、
 受付を済ませ2回戦に臨んだ。ー
 

A卓:天・ひろゆきVSココ・桑古木
B卓:武・つぐみVS健・白川
C卓:空・沙羅VS尾神・南山
D卓:ホクト・秋香奈VS烏丸・北本

ーC卓、空・沙羅と尾神・南山の対局ー

   空:「(この人が尾神さん・・・。
       なるほど、かなりの腕前の持ち主と見えますね。
       恐らく、私の特殊能力(天使の微笑み)にも、惑わされるような人じゃない・・・。)

  尾神:「・・・・・・・。」

ー観光先での回想ー

   天:「そういえば、あんたらが2回戦で当たるのは尾神の奴だったな・・・。」

   空:「え?天さんは尾神さんをご存知なのですか?」

   天:「ああ・・・、あいつは昔、西側が俺を倒すために送り込んできた刺客だ・・・。
      奴の打ち筋は、人間性を感じさせない上に、いつ勝負に来るかが非常に読みづらい・・・。
      空さん、あんたの打ち方は冷静で無駄が無いが、奴も簡単には勝たせてくれないだろう・・・。」

   空:「天さん・・・、私はただ、倉成さんや他の皆さんと旅行とゲームを楽しみに来ただけですよ。
      プロの皆さんには申し訳ないですけれど、今回私は麻雀という頭の運動を思い切り楽しませて頂くだけです。」

   天:「そうか・・・。だとすれば、余計な口を挟んじまったかな?俺は・・・。
      ま、一つだけ忠告しておく。
      尾神の、“けむりの刃”には気を付けろ・・・。」
            
   空:「けむりの刃?何なんですか?それは・・・。」

   天:「まあ、口で話して分かるようなことじゃない・・・。
      奴と打ってみれば、すぐ分かる・・・。」

   空:「天さん、ありがとうございます。
      助言を頂いた以上は、勝てるように頑張ります。
     (ああ、でも、倉成さんとご一緒なら、どんな人が相手でも
      負ける気はしないのに・・・。
      もし、今私が倉成さんのパートナーだったら・・・。)」

ー妄想開始ー

   武:「くっ・・・。
      残りはもう千点・・・!
      奴は、尾神は強い・・・!
      俺は、負けるのか?」

   空:「倉成さん・・・。弱気になってはだめですよ。
      ほら、LeMUの時のことを、思い出して下さい。
      倉成さんは、何があろうと最後まで諦めなかったじゃないですか・・・。」      

   空:「空、ありがとう・・・。
      忘れてたよ、俺には空という勝利の女神がいるんだったな。
      空!今はお前のために、全力で勝ちにいくぜ!」

   空:「倉成さん・・・。その意気ですよ。
      さあ、二人の愛の力で勝利を掴みましょう!」
      
悦に入って頬を赤らめている空・・・。

ー空、回想(+妄想)終了ー

  尾神:「・・・・・・・・・?」

東1局 空の親番(東・空 南・尾神 西・南山 北・沙羅)

   空:「(東1局で私が親番なのは、ツキがありますね。
       尾神さんが真の力を見せる前に、決めてしまわないと・・・。)」

  沙羅:「(空殿、援護するでござるよ!
       幸い、天殿の言っていた人は、拙者の対面でござる。       
       私の透視能力で、この人(尾神)の手牌を・・・え!?)」

  尾神:「・・・・・・・」

ー尾神、牌を伏せ、その上に両手の指を置く・・・ー

  沙羅:「(こ、これじゃ手牌が透視できないじゃない!
       まさか、私の能力に気付いてた?
       でも、そんなはずは・・・。)」

ーその頃のホクトー

 ホクト:「(よし・・・!親は僕からだ。
       BWを発動して・・・え!?」

ー烏丸、北本、牌を伏せ、その上に片腕を水平にして軽く置くー

 ホクト:「(そ、そんな・・・!
       これじゃ折角の透視能力も役に立たないよ・・・。
       いくらなんでも、置かれた腕とその下の牌まで透視するなんて、不可能だ・・・。
       でも、あの人達が牌を切って入れ替えする時には何とか見えるかもしれない・・・。」

ーホクト、対面の北本の手牌に視線を向けるー

  北本:「おいコラ!坊主!
      さっきから何ジロジロ見とんのや!
      ワシの顔が、そんなに珍しいか!?」

 ホクト:「ご、ごめんなさい・・・。」

 秋香奈:「(何やってんのよ!弱気になっちゃって!
       男ならピシッとしなさいよ!)」
       
ー来賓席の赤木ー

  赤木:「(ククク・・・。倉成のお嬢ちゃんも坊やも、少しは出来るかと思ったが、まだまだだな・・・。
       あの二人がもつ妙な力がガン牌(牌の背中に傷や印を付けて、
       何の牌かどうか分かるようにするイカサマ)なのかどうかは知らねえが、
       あれほど対面の手牌を覗き込んでいたら、それらしい事をしているのは明白・・・!
       大方、一回戦で負けた西の奴がそれを教えたんだろう・・・。
       もしくは、情報の出所は、こいつか・・・?)」

ー赤木、原田に視線を向けるー

  原田:「ん?どうした、赤木?」

  赤木:「いや、何でもねえよ・・・。」

  原田:「(フン・・・。気付いたか・・・。
       アホが・・・!
       この俺の仕切る場にあんな年端もいかねえガキ共を連れてこられた上に、
       試合まで掻き回されて、黙っていられるわけねえだろうが・・・!)」
  
ー五巡後、空テンパイー

   空:「(これでテンパイ・・・。
       タンヤオ、ピンフ、三萬が来れば、三色も付いて親満の手。
       出だしとしては、上々の流れですね。)」
       
   空:「リーチです。」

  南山:「(チッ・・・、早いな・・・。)

  尾神:「・・・・・・。」

ー二巡後、尾神六萬切りー

   空:「(六萬・・・ですか。せっかくの三色が・・・。まあ、仕方ありません。)
       ロン、リーチ、タンヤオ、ピンフ。
       裏ドラは・・・ありません。」

  沙羅:「(さすが空殿、早いでござるな・・・。
       ん?少し不満そうなのは気のせいでござろうか?)」

ー東1局、1本場 空、七巡後テンパイー

   空:「(これでピンフ、ドラ2のテンパイ・・・。
       六索が来れば、一通が付いて親満です。)」

  尾神:「・・・・・・」

ー尾神、三索切りー

   空:「(またですか・・・。一通が付かないのは残念ですが。)
       ロン!ピンフ、ドラ2。」

ー東1局、2本場 空、八巡後テンパイー

   空:「(よし、ツモれば三暗刻です。)
       リーチです。」

ー三巡後、尾神、空のロン牌を切る・・・−

   空:「・・・・・。
      ロン、リーチ、タンヤオ。」

  沙羅:「(空殿、顔色が良くないでござるな。
       天殿が気を付けろと言っていたあの人から和了っているというのに・・・。)」

   空:「(やはり・・・!ここまで来たら、もうこれは偶然じゃない。
       この尾神という人、わざと私の当たり牌を切っている・・・。
       最初の親番は私で、しかも配牌も良い。
       私に今勢いがあることは明白で、高い手役を連荘することも可能。
       ならば、私に勢いがある中で被る被害を最小限に留めるためには、
       安目で和了らせることが最善であると、尾神さんは考えたのですね。
       ならば、私にも考えがあります。)」

ー東1局、3本場 空 11巡目テンパイの後リーチー

   空:「(時間はかかりましたが、今回は大物です。
       リーチ、発、混一色、ドラ2の親のハネ満テンパイ。
       裏ドラが付けば倍満です。
       もし私に打ち込めば、尾神さん、あなたは終わりですよ。)」

  尾神:「・・・・・・。」

ー空の大物手のテンパイ気配に、沙羅と南山は現物を切ってベタオリする。
 だが、捨て牌の気配からは、尾神はテンパイに向かっているー

   空:「(この捨て牌からは、尾神さんも一色系の気配・・・。
       さすがプロ、この危ない状況でも、勝負に来ましたね。
       ですが、私がツモでも和了ることができれば、この勝負は決まります。)」

ー流局間近ー

   空:「(尾神さんもテンパイですね・・・。
       おそらく門前の混一色、ですが、捨て牌の状況からは、私の待ちの筒子が
       まだ山に残っているはず。
       尾神さんは索子の混一色ですから、筒子を手に取れば、必ず捨てるはずです。)」

ー尾神、流局前に、五索を切るー

   空:「(え?そんな・・・、尾神さんは索子の混一色のはず。
       五索を切ってしまえば、せっかくのテンパイが・・・。」

ー東1局、3本場、流局・・・−

   空:「テンパイです。」

  尾神:「・・・ノーテン。」

  南山:「ノーテン。」

  沙羅:「ノーテンでござる。」

   空:「(尾神さんは、テンパイしていたにも関わらず、手を崩したに違いありません。
       最後の山には、まだ筒子が残っていたはず。
       尾神さんは最後に手にした筒子を手配の中に引き入れて、私に打ち込むのを
       避けたのでしょう。
       でも、あの流局間際、しかも混一色のテンパイを崩すなんて・・・。
       あれは、ただ私へ振り込むのを恐れて手を崩したのではなく、
       私の手配をこじ開け、手配を見通すことが目的だったのですね。
       しかも、自分のテンパイを崩したのは、ノーテン罰符を支払ってでも、
       私に手配を見せないという狙いがあったに違いありません。
       でも、私はこの東1局で、尾神さんに私の打ち筋を全てみせてしまった・・・。
       今までの私への打ち込みも、安めに落とすだけでなく、私の打ち筋を見極めるための策略。
       私は、気付かない内に完全に尾神さんの術中に嵌まってしまっていたんですね。)」

ー東1局 4本場ー

   空:「(相変らず流れは来ているようですね。
       中のと一筒の暗刻が二つに、対子も一つ揃っている・・・。
       これなら、三暗刻、若しくは四暗刻にももっていけます。
       三暗刻が確定できれば、安めに落とされても十分です。)」

ー五巡後、空四暗刻イーシャンテンー

   空:「(三暗刻は確定、でもこれなら間違いなく四暗刻にいけます。)」

  尾神:「カン・・・!」

   空:「(え?ドラの南を暗カン?
       ということは、尾神さんは満貫確定ということに・・・?)」

  尾神:「リーチ!」

   空:「(リーチ、南、ドラ4・・・。
       尾神さんはこれでハネ満が確定ということに・・・。
       まずいですね、これを和了されたら、流れを失ってしまいます。」

ー空、尾神の現物の一筒を切って、回し打ちに転じる。
 その後、中のみの和了を尾神から和了って親を続行するー

   空:「(何とか親を続行ですね。
       尾神さんのハネ満を何とか防ぐことができました。
       四暗刻が成らなかったのは残念ですが・・・。)」
       
ー尾神のハネ満を阻止して安堵する空だったが、今回の回し打ちは、実は空の完全なミスだった・・・!
 空は持ち前の合理性から、尾神にハネ満を和了されるよりも親を続行してそれを阻止するのが
 最善であるという判断を下した。
 尾神のリーチ、実はその中身は、バラバラ・・・!
 即ち、ノーテンリーチである。
 空が強気に四暗刻を目指したのであれば、上手く事が運べば和了、たとえそれが成らなくとも
 流局で尾神から満貫分の払いを受け取ることができるはずだった。
 だが、尾神のドラ4の圧力に屈した空は、結果的に最悪の選択をしたということである。
 尾神にとっては、今回の空による直撃の払いは、空の持ち得る全てのチャンスを潰したという点で
 非常に安い買い物となったのである・・・!ー 
    
ー東1局 5本場ー

   空:「(さっきチャンスを逃したせいで、手が重い・・・。
       このままでは、まずいですね。)」

ー空、北切りー

  尾神:「ポン・・・。」

   空:「(ドラの北をポン・・・。
       北は尾神さんの翻牌ではないから、恐らく混一色か役牌を搦めての
       和了が狙いのはず。)」

  尾神:「チー。」

   空:「(仕掛けてきましたね。
       もう恐らく、狙いは混一色で間違いないでしょう。
       ならば、混一色の材料となる萬子を抑えてしまうまで・・・。)」

  尾神:「ポン・・・。」

   空:「(え?筒子をポン・・・。
       しかも、八筒ですか?これでは、チャンタも付かずに、完全に役無し・・・。
       一体、何を考えているのかしら?)」

ー数巡後ー

   空:「(尾神さんの手牌の中には、もはや役牌は無いはず。
       白発中も、東も、尾神さんの翻牌の南も全部2枚切れてしまっている。
       八萬は私の手牌の中に2枚、八索も2枚場に切れているから、三色同刻も
       有り得ない・・・。
       ドラ3とはいえ、もはや尾神さんには和了する術はありません。
       なのに、どうしても嫌な予感がします。何故でしょう?)」

  尾神:「カン・・・!」

ー尾神、ドラの北をツモり、カンー

   空:「(ああっ!しまった・・・!その手が残されていました!
       カンをした後の、嶺上開花(リンシャンカイホー)狙いですか?
       もし、それが尾神さんの当たり牌なら・・・。」

ー尾神、嶺上牌を切るー

   空:「(良かった・・・。何とか嶺上開花は避けられたようですね。
       さて、カンドラは?)」

ー尾神、カンドラ表示牌を捲る。ドラ表示牌は西・・・!ー

   空:「(ド、ドラ8?
       でも、嶺上開花が成らなかった以上、尾神さんにはもう和了ることは
       できないはずですが・・・。
       このままでは、何が起こるか分かりません。
       早くこの局を終わらせてしまわないと。」

ー二巡後、空、リーチをかける。(手牌はリーチのみの安手)ー

ー流局間際ー

  南山:「あ、それポンや。」   

   空:「(え?ということは、最後に牌をツモるのは私・・・。
       じゃあ、尾神さんの狙いは・・・。)」

  南山:「(フフ・・・。罠に嵌まりよったな、姉さん・・・。
       そうや、わしらの狙いは・・・。)」

ー空、ツモった海底牌を捨てるー

   空:「(私としたことが・・・。不覚です。)」

  尾神:「ロン・・・!河底、ドラ8、倍満・・・!」

   空:「(・・・・・・!)」

  沙羅:「(そ、空殿が、振り込んでしまったでござる・・・。)」

   空:「(これが、尾神さんの狙いだったんですね。
       最初にドラを鳴いて、いかにも狙いが混一色や翻牌狙いであるかのように
       見せかける・・・。しかし、その次は八筒を鳴いて、まるで役無しのように
       見せかけた。これで、私達からは警戒心が少なからず削がれることになります。
       で、今度は狙いが嶺上開花にあるかと思わせ、失敗して更に相手を油断させる。
       でも、それら全ては実体の無い“けむり”・・・!
       真の狙いは、私が最後に捨てた牌で和了る、河底ロン。
       まやかしのけむりの中に、刃は潜んでいました・・・!
       これが、天さんの言っていた、尾神さんの、“けむりの刃”・・・!)」

ーこの東1局の中、好配牌と流れに恵まれた空は、自由自在に天を舞う天使だった・・・。
 しかし、天を舞う天使に、何かが次第に近づいてくる・・・。
 それこそ、死神、尾神の放つけむり・・・。雷雲を孕んだ、黒雲である・・・!
 黒雲の迷路に迷い込んだ天使は、疑心暗鬼に陥り、必死に抜け道を探す・・・。
 だが、どんなに進んでも、黒雲の中の抜け道は見つからない・・・。
 迷った挙句、疲れて動きの止まった天使の隙を突いて、黒雲は雷光を一閃させた・・・!
 雷光は、見事に天使の羽を直撃・・・。
 天使は、遂に堕ちた・・・!

ー東2局 尾神の親ー

  尾神:「ツモ・・・。
      親満、4000通し・・・。」

  沙羅:「(くっ・・・!
       もう少しでテンパイだったのに。)」

ー次局ー

  沙羅:「ポン!」

ー沙羅、東と白をポンした後テンパイー

  沙羅:「(何とかテンパイしたでござる・・・。
       空さん、待ってて。すぐにこの人の親を流してあげるから。)」

  尾神:「ロン・・・!
      タンヤオ、イーペーコー、ドラ1・・・。」

  沙羅:「(あちゃあ〜。もう少しだったのに・・・。
       空殿、何か手はないでござるか?)」

   空:「(沙羅ちゃん、慌てては駄目ですよ。
       この場は明らかに尾神さんの独壇場。
       何とか耐えて、チャンスを待つのです。)」

  沙羅:「(さすが空殿・・・。
       先程は手痛い一撃を受けたにも関わらず、冷静でござるな。)」

ー東2局 3本場ー

  尾神:「ポン!」

  沙羅:「(ま、まずいでござる・・・。
       白と中を鳴かれた以上、小三元、もしくは大三元でござるな。
       それにしても、空殿!何をしているのでござるか!?
       あの二つは、空殿が鳴かせてしまったものでござるよ!)」

   空:「・・・・・・。」

  沙羅:「(!?
       空殿に、落ち着きが戻っているでござる。
       空殿、一体何を考えて・・・?)」

ー空、片和了の三色ドラ3をテンパイー

   空:「(待ちは八萬のカンチャン待ちと、九萬の単騎待ちを合わせた変則待ち。
       ここはリーチをかけたいですが、それはまだ早急です。
       でも、このままの状態では、八萬が出ない限り、ツモれなければ役無し。
       何とか、チャンスを待たないと・・・。)」

ー空、不要牌の五萬切りー

  尾神:「チー!」

  沙羅:「ポン!」

  尾神:「!?」

  沙羅:「ポンとチーなら、ポンが優先だったでござるな。」

  尾神:「・・・・・。」

   空:「(尾神さんは、六、七萬でチーしようとしていたようですね。
      もし、私の読みが外れていなければ、チャンスはあります。)」

ー空、その後もリーチをかけずにダマテンでツモ切りをくりかえす・・・

   空:「(尾神さんの手が、大三元か小三元かは分かりかねますが、
      大物手であることは確実です。
      尾神さんの心は、少なからず和了に傾いているはず・・・。
      この局、もし私の手に残り1枚のあの牌が来れば、この状況を打破できます。)」

ー空、五萬をツモるー

   空:「(やりました。
       これは千載一遇のチャンスです。
       尾神さんにとって必要な、この牌を切れば・・・。」

ー空、五萬切りー

  尾神:「チー!」

ー尾神、鳴いて五六七の順子を作った後、手が止まるー

   空:「(どうやら、私の当たり牌を察知しているようですね。
       五六七の順子を鳴いて作れば、尾神さんの手牌の中から、八萬が溢れます。
       でも、切らなくてはテンパイに辿り着けず、かといって抱えては、大三元、
       もしくは小三元がテンパイできない・・・。
       さて、どうします?)」

  赤木:「(なるほど・・・。
       最初に撒き餌として三元牌を鳴かせ、尾神が和了りやすくなるように仕向ける・・・。
       そしてさらに他の牌を鳴かせて、自分の当たり牌が溢れ出すようにするわけか・・・。
       結果的に自分が和了れなくても、尾神の心の動揺を誘うことが本当の狙い・・・。
       大三元和了を狙って振り込むか、それとも大三元を棒に振ってまで逃げを打つか・・・。
       尾神の心を、あの姉さんは天秤にかけたというわけだ・・・。
       ククク・・・。それにしてもプロ相手に大三元を囮に使うとは、大した度胸だな。
       もし和了されたら、目も当てられない結果になっちまうわけだが・・・。
       さすが倉成の仲間といったところか・・・。」       

  尾神:「・・・・・」

ー結果的に、尾神は八萬を手牌に入れたまま、空の現物を切った・・・
 そして次に、南山が空の当たり牌である八萬を切るも、空はそれを見送るー

   空:「(よし・・・。
       この局面を打開するための材料が揃いました。
       そして後は・・・。)」

ー次巡、沙羅、中をツモる・・・−

  沙羅:「(うっ・・・。
       これはまずいでござるなあ。
       大三元に最も危ない、“中”が来てしまったでござる・・・。)」

   空:「(大丈夫、沙羅ちゃん。
       どうやら危ない牌が来たようですが、
       そのまま、真っ直ぐ行ってくれれば・・・。)」

  沙羅:「(良くて相手の大三元確定、最悪大三元直撃でござるが、
       このままではどうにもならないし・・・。
       え〜い、このまま行っちゃえ!)」
   
ー沙羅、中切りー
  
  尾神:「ポン!」

  沙羅:「(ええっ!やっぱり大三元確定でござるか?
       拙者としたことが・・・。」)

ー中を鳴いた直後、尾神、八萬切りー

   空:「ロン・・・。」

  尾神:「・・・・・・・!」

  沙羅:「(えっ・・・?)」

   空:「(ついに捕まえましたよ、尾神さん・・・。
       先程の南山さんの八萬を見送ったのも、沙羅ちゃんが中を切ったのも、
       全て私の計算通りです。
       この局面、普通なら尾神さんはその八萬は切らなかったはず・・・。
       でも、大三元という幻によって、少なからず心は動いている。
       加えて南山さんが八萬を切った時、私がそれを見送ったことから
       尾神さんの心の緊張が解けてしまった。
       そして止めは、沙羅ちゃんの中切り・・・。
       あなたが確定させた大三元は、結果的にあなたを討つ幻想の刺客となったのです。)」

  尾神:「・・・・・・・・!」

   空:「三色、ドラ3、満貫です。」
      
  沙羅:「(やったでござるな!空殿!
       これで勝ちが見えてきたでござるよ!)」

   空:「(いいえ・・・。
       私と尾神さんは、これで同じ傷を負っただけ・・・。
       本当の勝負は、これからです。)」

ー回想ー

   天:「尾神の奴は、獲物と定めた相手を殺ることに、力を発揮する。
      奴が狙うとすれば、恐らく沙羅ちゃんよりも、あんただろう・・・。
      だが、そこが付け目になる。」

   空:「ということは、どうすれば尾神さんに勝てるのですか?」

   天:「・・・それ以上は、俺の口からは言えねえな。
      ま、頭の良いあんたのことだから、すぐに分かるさ。」

ー回想、終了ー

ーその後、空と尾神は睨み合いが続き、硬直状態が続く。
 安手のサシコミ(わざとロン牌を打つこと)か、流局で場が進んでいったー

ー南1局、空の親ー

  南山:「(チッ・・・。このままじゃ埒があかん・・・。
       まあええ・・・。相手はガキと女・・・。
       幸い、対面の女は尾神の方に気を取られとる・・・!)」

ー南山、手中に不要牌を握りこむー

   空:「あら?南山さん、少牌していらっしゃいますよ?」

※少牌
手違いで、本来13枚あるはずの手牌が減っているというもの。
ルールにもよるが、今回の場合、罰としてその局は手牌を開き和了放棄となる。

  南山:「え?あ、ほ、ホンマや!
      こりゃあ、すまんことしたな、姉さん。」

   空:「・・・申し訳ありませんが、この局南山さんは手牌を開き、
      和了放棄ということになりますね。」

  南山:「そ、そうやな、いやあ、わしとしたことが・・・。
     (な、何でワシの握り込みがバレたんや・・・?
      畜生、素人相手になんちゅうヘマを・・・!)」

  沙羅:「(空殿!あれは多分イカサマをしようとしたのでござるよ!
       そこを突けば、その時点で拙者達の勝ちがきまるのに・・・。)」

  赤木:「(フフ・・・。
       さっきの和了で自分を取り戻したな、あの姉さん・・・。
       冷静で隙が無い・・・!
       少牌をイカサマとして指摘しても、南山は巧みに言い繕って誤魔化したはず・・・!
       それを、少牌というルールに則って指摘することで、南山を勝負から降ろしやがった・・・!)」
       
   空:「(この局は、尾神さんに勝つための千載一遇のチャンス。
       これをものにして、尾神さんに決定的なダメージを与えなくては・・・。)」

ー数巡後、空、タンヤオ、ピンフ、リャンシャンテンー

   空:「(手は安いですが、この手で勝負に出ます。
       尾神さんの手を、徹底的に読まないと。」)

  沙羅:「(空殿、勝負に行く気でござるな。
       よし、拙者も気を引き締めるでござるよ!)」


ー数巡後ー

  沙羅:「カン!」

ー空、ドラの北をカンー

  沙羅:「(これはツイてるでござるな。
       これで拙者は満貫確定でござる。)」

  南山:「(このガキ・・・!
       ドラの北をカンしやがった・・・。
       この南場早々、こいつを和了られたら苦しい・・・!
       チッ・・・!しかも、俺は和了放棄とは・・・!)」

  尾神:「・・・・・・。」

   空:「(沙羅ちゃんがカンしたドラが、圧力をもってこの局を支配しているようですね。
       これは、尾神さんを止めるための足枷になります。)」

ー後半、捨て牌の様子から、沙羅のテンパイ気配が濃厚となるー

  沙羅:「(むむむ・・・。拙者はテンパイしているというのに、
       なかなか振り込んでこないでござるな。
       しかし、なぜ空殿はリーチをかけないのでござろうか?」)

ー公開された手牌に目をやる沙羅ー

  沙羅:「(なるほど・・・。和了放棄となった人の手牌に合わせて
       待ちを工夫しているのでござるな。)」

  赤木:「(あの姉さんはおそらく、タンヤオ、ピンフによる両面待ちだが、
       捨て牌の様子からは、二、五筒か若しくは三、六筒・・・。
       だが、公開された南山の手牌の中には六筒が3枚と三筒が1枚、そして捨て牌には六筒が1枚、
       三筒は1枚・・・。
       まだ二筒と五筒が見えていないが、まだ卓上に見えないところを見ると、尾神の手の中にあるか、
       山の中に眠っている。そして五筒も・・・。
       さあ、どうする・・・?)」
       
ー沙羅、数巡後五筒をツモるー

  沙羅:「(多分、空殿はテンパイしているでござるな。
       これを空殿にサシコミして、親の連荘でチャンスを掴めるように
       するでござるよ。)」

   空:「・・・・・。」

  沙羅:「(え?ということは、空殿、まだなのでござるか?」

  尾神:「カン!」

  沙羅:「(え?尾神殿がカン?」
       あちゃあ〜。空殿にサシコミをするはずが、
       さらに空殿の和了るチャンスを減らしてしまったでござる・・・。)」


  南山:「(ここは、北家の娘のドラが怖いな・・・。
       何とか流局にもちこむべきや、尾神はん。)」

  沙羅:「(この分だと、拙者の当たり牌も尾神殿が抑えている可能性が高いでござるな。)」


ー沙羅、二筒をツモるー

  沙羅:「(空殿!これが最後のチャンスでござるよ!
       拙者のドラ4は惜しいけど、ここで和了って流れを掴むでござる!)」

ー沙羅、二筒を捨てるも、空は動かずー

  沙羅:「(な、何を考えてるでござるか!?空殿!
       もう、この局は和了るチャンスは無いでござるよ!)」

  尾神:「ポン!」

  沙羅:「(ああっ!五筒に続いて、二筒まで!
       もう!空殿らしくないでござる・・・!なぜ?」)

ーその後、空、リーチをかけるー

   空:「リーチです。」

  沙羅:「(な?この流局近くにリーチでござるか?)」

  南山:「(もう時間が無いと思い、しゃにむにリーチをかけよったか・・・。
       ま、どうせ無駄なことや。)」

   空:「・・・・・。」

ー尾神、最後のツモで二筒をツモるー

  尾神:「・・・・・・」

  南山:「(尾神はん、引きよったな。
       引いたのは、おそらく二筒・・・。
       さっき下家の娘が捨てた牌やし、対面の女がテンパイしてるなら、さっきで和了ってたはずや。
       大丈夫、必ず通る・・・!)」   

ー尾神、二筒切りー

   空:「それです、尾神さん。」

  尾神:「!?」

   空:「ロン、リーチ、ピンフ・・・。
      裏ドラは、2つで満貫です。」

  南山:「(な、何やと?五筒はカンされ、二筒はポンされとるのに・・・!
      残りたった一枚で、地獄待ち・・・!?)


   空:「(尾神さん・・・。
       あなたは序盤、私にわざと和了させて私の打ち筋を見極めようとしていました。
       結果、私は両面、若しくは多い待ちを好むという自分の当たり牌の待ち方を露呈することになりました。
       先程、尾神さんが二筒と五筒を鳴いて手に入れたのは、おそらく私の両面待ちを封じるためでしょう。
       また、沙羅ちゃんがドラ4のテンパイということもあり、それを和了させるのも避けたかった。
       沙羅ちゃんが二筒を切ったとき、本当は私はピンフのみでテンパイしていました。
       でも、あえてそれを見送り、最後に尾神さんが残り一枚の二筒をツモることに賭けたんです。
       尾神さんは二筒を鳴いたとき、この局は流局に持ち込めると確信していたはずです。
       でも、あなたの最後の不確定要素は、あと一枚だけ残っていた二筒にありました。
       最後のツモであなたがそれを手に入れた場合は、それをカンすることはできない。
       つまり、捨てるしかなかったわけですが、あなたは本音としては、私に和了されるよりも、
       ドラを4つ抱えた沙羅ちゃんの和了を阻止したかったはずです。
       ですから、沙羅ちゃんの一度捨てた二筒を切った・・・。
       そこが、私があなたを狙い打つ最後のチャンスだったんです。
       尾神さん・・・。これで勝負ありましたね。)」

ーこれがきっかけとなり、空は完全に流れを掌握した・・・。
 この異端とも言える空の狙い撃ちは、尾神を完全にその射程距離に捉えたのだった・・・。
 そして、最終的に空は南場を制して圧倒的な勝利を収めたのである・・・。ー

  沙羅:「さすがでござるな。空殿。
      これで、拙者達は準決勝進出でござるよ。」

   空:「ええ、そうですね。
      でも、私一人の力ではありませんよ。
      沙羅ちゃんの協力があってこその勝利です。」

  沙羅:「え?拙者の協力?」

   空:「沙羅ちゃんが、五萬を鳴いてくれたこと、そしてドラ4で圧力をかけてくれたこと等が
      私が勝つための大きな布石になってくれたんです。
      尾神さんは、今回の試合を制するために、私を標的と定めていらっしゃったようです。
      ですが、その分沙羅ちゃんに対する認識が甘くなっていたため、沙羅ちゃんが私の和了や
      場の状況を左右する事まで予測できなかった。
      つまり、沙羅ちゃんに対する認識が不足していたことが、大きな敗因だったと言えます。
      加えて、試合前に天さんにアドバイスを頂いたことも大きかったんです。
      先に相手の情報を得ることで、私達は既に先手を打っていたといえます。
      これが無ければ、おそらく私達は勝つことは出来なかったと思います。」

  沙羅:「なるほど、天殿のアドバイスもさることながら、
      拙者が強敵であると見抜けなかったことが敗因だったのでござるな。
      忍者は敵に気付かれることなく敵襲をかける・・・。
      まさに、忍の極意でござる。ニンニン。」

   空:「ふふっ、そうかもしれませんね。」

第4章 天使VS死神 END






あとがき

というわけで、何とか今回の闘牌も書き終わりました。
次回に関してですが、現在大ピンチ中のホクトの闘牌を書くことにします。
結構時間はかかると思いますが、頑張ります。


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