Go ahed, make my day
                              七桃 りお



2017年、そして2034年に起きたLemuの事故は終結を迎えた。

家族はふたたび、そして始めて出会い、すべての罪は償われようとしている。

それぞれが行く先には、いったいなにが見えるのだろうか。

なにかを信じること、なにかを願うことで、すべての世界は意味を持ちはじめる。



ピピピ、ピピピ、ピピピ・・・・
「ん・・・」
鳴り止まない電子音で彼、倉成武は目覚めた。
「・・・・朝・・・か」
TVでも見ながら寝ていたのか、ソファーで寝ていた。
「さて、朝飯・・・・」
武は傍らにいるつぐみを起こさないようにキッチンへと向かった。

『あれ』からまだ数週間しかたっていない。
しかしもう皆、平穏な日々をおくっている。
・・・・まあ、『事後処理』とやらで忙しい所もあるが。
ここ、倉成家は住み心地がよかった。ありとあらゆる設備もその理由の一つである。
このキッチンも、料理を担当している武とってはありがたかった。
なぜ武が料理担当なのかは、つぐみと沙羅に料理を作らせるのが怖かったから。
ホクトでも良かったということに武が気づいた時はもう遅かった・・・。

胸をなごますいい香りにつられて三人の姿がキッチンに現れた。
「おっはよー」
と、沙羅。
「おはよう」
と、ホクト。
「・・・おはよう、武」
と、一番眠たそうなつぐみ。
武は少し微笑むと、
「おう、おはよう」
倉成家は幸せの真っ只中にいた。


「いってきま〜す!」
重なる沙羅とホクトの声。
二人は青空の下、学校へ向けて元気に駆け出していった。
「さて・・と」
武もそろそろ出勤の時間だ。といってもただの『研究員』だが・・・。
「んじゃ、俺も優のとこ、行ってくる」
「うん」
武は優の研究所で働いている。最初はつぐみも猛反対した。しかし、この世の中では
働かなければ食べていけない。給料も良く、万が一何かあったとしても桑古木がいる
ので恐らく安心と思ったのだろうかつぐみも一応納得した。
「いってきます」
武が手を振って玄関へ向かうと、
「いってらっしゃい」
つぐみは微笑んでいた。


「あー、日の光が眩しい・・・・」
ホクトは太陽の光にもう屈している。
「大げさだよー。ひなたぼっこが丁度いいぐらい。・・まあ街の名前が日向ってほど
だし」
沙羅がけらけらよ笑う。
この街、日向市はその名の通り年中ほとんど晴れ。でも、水不足だとか作物が育たな
くなったことなど一度も無い。まさに丁度いい気候なのだ。・・・キュレイにとって
は少し難だが、日の光の紫外線もじょじょに減少しているらしい。
「まぁ・・・ね・・」
すると沙羅はむっとした。
「ほら、急いで!」
沙羅が走り出す。ホクトはそれをトボトボと小走りで追いかける。
「急ぐ必要ないって!」
それでも沙羅は走る。
「いいの!」
「えぇ〜。・・・あ、ユウだ!・・・ココも!」
沙羅の走る先には田中優美清秋香菜と八神ココが歩いていた。
「なっきゅせんぱ〜い!ココ〜!」
「あっ、沙羅!」
どうやら沙羅は優とココへ向けて走っていたようだ。
「ホクたんも〜」
ホクトは引かれるように三人の所へ走り出すと、沙羅はニヤリと笑った・・。

優は日向学院大、沙羅とホクトとココはその付属学校なので登校の時間は一緒だが、
皆で登校したのは始めてだった。ココは田中家に引き取られたので優と一緒に登校し
ていたらしい。沙羅はココと『あの』後仲良くなった。電波は大丈夫なのだろうか。
ホクトは優とうまくいっている。沙羅も陰ながら応援しているそうだ。

ホクトはたどり着くと、
「おはよう!」
さっきまでとは違う、力強い挨拶皆に送った。


「おはよう、空」
「おはようございます、田中先生」
もう一人の優、田中優美清春香菜は相変わらずチャイナの茜ヶ崎空に挨拶をした。
いつもは散らかっているデスクの上も今日は綺麗に片付いている。
「仕事、終わったねぇ・・」
「徹夜しましたから」
しかし、二人は隈一つなく元気そうだ。もう徹夜に慣れたらしい。
「暖かいね〜」
「日向ですから」
「あ、日向市とひなたぼっこのひなた、かけてる?」
優はけらけらと笑った。空も苦笑している。
二人は日の光の祝福を思いっきり受けている。
「世の中も便利だね〜。つぐみや武も日光浴でもすればいいのに・・。私のように」
「田中先生は日光浴というよりも、怠けているように見えますが」
「ひ、ひどい!!」
優は大粒の涙をぼろぼろと零しながら(もちろん嘘ではあるが)空に講義した。
「キュレイが日の光を浴びれるのは私のおかげなのに!」
「正しくは『私と空と科学の力』ですけど」
空は悪魔とも思えるダメ出しをした。普段は天使のようなのだが・・・。

キュレイは日の光、もとい紫外線に極度に弱い。しかし、田中研究所では紫外線を無
力化とまではいかないが対策を研究中(しかし実は優が日に当たりたいと駄々をこね
たのが始まりであるという事を知るものは少ない)である。
結果、数時間以上紫外線に直接当たらないかぎり大事には至らないという所まで進歩
した。

「ひ、ひどい!毒舌よぅ!!」
「田中先生と一緒にいたら誰だってこうなると思いますが・・・」
「も〜!!・・・桑古木、お茶ぁ!」
すると、優の右斜めのデスクから怒鳴り声が聞こえた。
「おれかよ!!」
優はすっと立ち上がると桑古木の首に抱きついた。
「う、ななな!」
「おね〜が〜い・・・」
本来、男なら喜んで頼まれる事だろう。しかし・・・
「・・・って、ナゼ動脈を圧迫しようとしてるぅ!」
優は桑古木の首筋を押しつぶそうとしているのを殺気で感知した。
手首を回し優を一本背負い。それに対して優は軽快なステップで着地。
「ちっ!だけど・・・」
「上司の命令は絶対です。桑古木さん」
いつの間にか桑古木の後ろに回っていた空が威圧的な声で言った。
「空まで・・・ちくしょー!!」
桑古木は泣きながらお茶を取りにいった。哀れ、桑古木。
二人は突然笑い出した。優も空もごきげんだった。
「あははは、空ナイス!」
「ふふ、ツッコミではありませんが」
二人は本当に楽しそうに笑っていた・・・。



それぞれの道はまだ始まったばかり。

ころんだり、道草する時だってあるかもしれない。

だけどたくさんある道を一つ一つ選んで前へと進んでいる。

引き止めたり、惑わしてはいけない。

道は自分で選ぶものなのだから。


彼らは歩き出す。

歯車も回り出す。

ゆっくりと、確実に。


すべてが動き出して、観測者はやっと安堵の息を漏らす・・・。



                    -Go ahed.make my day-





あとがき。

こんにちは〜。
初のSSです。・・・・・短い。(泣)
クリア後SSです。遅れていますねぇ。
設定がほかの方のSSとかぶってたりしています。すいません・・。
キュレイの紫外線に関する間違いなどがありそうなので心配ですよぅ。
次のSSから少しずつ長くしたり、オリジナルなども入れたいと思います。


今後ともよろしくお願いします。七桃 りおでした〜。


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