夜。
闇が支配するもう一つの世界。
その中で、走る。
「はっ、はっ、はっ――――」
彼は走る。
足を止めない。
喉がカラカラに乾いている。
住宅地を走る。
彼は一軒の家が眼に入る。
見慣れた玄関。彼の家である。
急いでとび込み鍵を閉め自分の部屋へ急ぐ。
彼には数日前から妙な足跡がついてきている。
彼も最初は偶然だと思った。
しかし、
人気の無い道で、
連日、
彼に、
ついてきている。
「う、うそだろ・・・・」
消え入りそうな声で彼は言う。
いつもは、
家に、
着くと、
消えてしまうのに。
「どうして・・・」
彼は絶望する。
あの、
歌声が、
姿が、
扉を、
開けて、
入ってきた――――。

かーごーめー

かーごーめー

籠の中の鳥はー

いーつーいーつー出ーやるー

夜ー明けーの晩にー

鶴と亀がすーべったー

「う、う、うあああああああ!!」
彼は部屋のものを幾つも姿に向かって投げた。
その一つが姿に直撃――――

うしろのしょーめん

―――しなかった。
姿をすり抜け向こう側へと落ちた。
まっすぐ歩み寄り、口元を不気味に吊り上げ姿は笑い、詠(うた)った・・・。

だーあれー

すべてはもう遅かった・・・・・・。


かごめ、かごめ
                              七桃 りお

前編

四時間目


空が見える。
何も変わらない空。
青い・・・・空である。
黒でも白でもなく・・・・青。
窓際の席であるホクトはこうして春風に当たる事ができた。
ぽけーっと開かれた口はなんともまぬけである。
隣の席から沙羅が消しゴムを小さくちぎって思いっきり飛ばす。
「うわ!」
もう一発!
「うわわわ!」
沙羅はホクトが大声を上げてしまった事の重大さに気づいた。
失敗した・・・。
ぬっと現れる影。
「ナニやってるんだい?沙羅ちゃん?」
男の声。
この声で二人は覚醒した。
「ホクト君もサボっていたなぁ・・・・」

ぱきぱき!!

「廊下にー!!立ってろぉぉぉぉー!!!!」

ホクトと沙羅は、締め出されてしまった・・・。



お昼休み


「あははははー。沙羅ってば、また締め出されたー!」
バンバンと机をたたく少女。
「い、いや笑えないと思うよ?」
苦笑する少年。
ともに日向高生徒である。
「何よ!昨日の二時間目はさくらだったじゃなーい!」
「でもホクト君まで道連れにするなんて酷いんじゃない?」
「あー、それはホクトがまぬけだったからだとボクは思うよ?」
「ちょ、ちょっと響!それはぼくに対して失礼極まりないよ!」

「「「・・・・そう?」」」

もう、いやだぁ・・・・・・。byホクト
少女――――天詠 さくら (あまうた さくら)
少年――――芹沢 響   (せりさわ きょう)
彼らはホクトたちの数少ない友人。
沙羅はさくらと意気投合。
ホクトと響はそれを見守る。
なんとも似ている友人である。
「にしても彩先生も大人気ないねぇ」
うわさの彩先生はホクトたちの担任にして沙羅の天敵。
神楽 彩 (かぐら さい)
若き教師でかなり人気があるが少々厳しい。
どこと無く武と似ているのは思い込みだろうか。
なぜ沙羅の天敵かは・・・・あえて話さないでおこう。
「・・・・そうだ。噂、聞いた?」
「噂・・・・ってアレ?」
「呪い童歌・・・か」
沙羅は最近学校で流行っている噂で切り出した。
さくらと響は知っているようだ。
ホクトは知らなかった。

『呪いの童歌』

○呪いの童歌を聴くと連れ去られてしまう
それを基本に色々なオプションがついてくる。
○数日間幽霊に付きまとわれる
○見えないものが『視え』てくる

「へぇ〜」
ホクトはただそれだけだった。
「な、なんとも思わないの?お兄ちゃん」
「ニブっ!!」
気に留めずホクトはこういった。
「だって四次元人がいるんだからさぁ・・・」
「それとこれとは別でしょ!」
「「四次元人?」」
事情を知らないさくらと響は首をかしげた。
「「い、いやぁ〜。なんでも・・」」
上手くごまかせたのだろうか、二人はそれ以上聞かなかった。

キーン・・・・コーン・・・・

カーン・・・・コーン・・・・・。

チャイムが鳴った。
「おっと時間だね」
四人は階段を降り教室へと戻っていった・・・・。

その日は何も無かった。



登校中


「おっはよー!」
「おはよ〜ん!」
「ん、おはよう」
相変わらずホクトはココと優と沙羅で学校へ向かっている。
「お兄ちゃん。昨日の新情報!」
沙羅は眼をキラキラと光らせながら言った。
「・・・何?」
ホクトはどうでもよさそう。
「何々、沙羅聞かせて!」
「ココにも聞かせてよ〜!」
優もココもキラキラと輝いている。
眩しい。
どうしてこんなにも輝けるのだろうか・・・。
「心無き兄はほっといて教えてあげよーう。
じつは・・・・」
「「じつは・・・・?」」
ごくりと息を呑む二人。
「呪いの童歌って・・・・」

「かごめ かごめなんだってー」

「・・・・・」
無。
「え・・・。それってどう反応すればいいのかな」
あまりにもアバウトで。
あまりにも意味不明で。
「だから、かごめ かごめを聞くと呪われるってこと」
「うわぁー。なんかまぬけ」
優が引く。
しかしココは真剣な顔でこう言った。
「そうでも無いよ。かごめ かごめって童歌は謎が多いから」
「・・・かごめ かごめの歌詞ってどんなのだっけ」
「たしか・・・・こうだった」
沙羅は童歌を歌い出だした。

    かごめ かごめ

    籠の中の鳥は

    いついつ出やる

    夜明けの晩に

    鶴と亀がすうべった

    うしろのしょうめん

    だあれ

「っ!!」
ホクトの中で何かがうごめいた。
ごろりと腹の中で・・・。
これは―――――
「不安?・・・・それとも予感?」
ココは上を・・・・
空を見ていた・・・・・。

くすくすくす。

どこかでそんな声が聞こえた気がした・・・。


沙羅は、
この日の、
夕方から、
姿を、
見せなく、
なった・・・・。


くすくすくす・・・。


かごめ、かごめ。








あとがき

一日で仕上げたので何かと不安・・。
設定に時間がかかってしまいました。
でも一日で書き上げた・・・・。
でわでわ、後編で〜。
七桃 りおでした!


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