この作品はブラック&ビターです。注意してください。
この作品はできればEver17のクヴァレを聴きながらお楽しみ下さい。たぶん曲と合ってます。
この作品にはグロテスクな表現が含まれてくる場合があるかもしれません。注意してください。

Like Ever Life
                              七桃 りお

-artificial 1 -

さんさんと輝く太陽。暑さを凌ぐ為の日陰。わいわいと騒ぐ子供達。
「ふぃ〜。お疲れさんっと」
ここは公園。日曜日の昼を少し過ぎた時。そこに倉成武はいた。
日陰のベンチで日光を遮る。
こんな時に日向市の特性は面倒だ。暑すぎる。
「あっちぃな・・・」
シャツの袖で汗を拭う。何度こうしただろうか、武は優春に呼び出されて待たされている。
何で来ないんだよ!!とか一人で奮闘していた時もあったが武はもう疲れていた。
ベンチで横になる武。その姿は――――――おっさんっぽい。
狭いベンチでごろごろ、ごろごろとする。
そこに一つの影ができる。武はそちらを見た。
「お・・・・・・」
沙羅だった。ニコリと愛らしい笑みを浮かべる。
「あー、折角のかっこ良さが台無しだよ〜」
武は一瞬ドキリとする。若く可愛い娘にそうされたら誰だって―――
「お、親バカ・・・か?」
ぷるぷると首を振る武。沙羅はその姿を見て、こう言った。
「ふふっ、おにーさんって可愛いねぇ!」
沙羅はぴょんぴょんと跳ねる。そこにもう一つの影。
「ほら!沙羅、行くよー」
ホクトだ。武に一礼すると沙羅を連れて歩く。
「・・・・・あれ?」
何かおかしい。いつもの沙羅たちが武に対する反応が違う。いつもなら仕事中だというのに遊びに付き回されるのに。
「お、おい!まってくれ!」
武はすがるように言う。二人がくるりと振り向く。しかし歩みは止めない。
「まてよ!――――――『沙羅』!『ホクト』!!」
武は言う。二人の名前を。
二人は眉間にシワを寄せ、怪訝に武を見る。沙羅が寄ってきて、言った。

「どうして私達の名前を知ってるの?可愛いおにーさん」

崩れて、生まれて、変わって、動く。世界というモノは確実に前へと――――――――





















                                       -artificial 1 -


沙羅とホクトは去っていった。不思議そうにしながら。
「なんだよ・・・・・・」
武は苛立つ。顔を深く沈め、苦の声を出す。
いつまでそうしていただろうか、彼ははっと顔を上げる。そして走り出す。
「つぐみ!!」


「・・・・・んな馬鹿な!」
悪い夢を見ているとしか言いようが無い現実。
そのわけは倉成家があった場所だった。
目の前に広がるのは綺麗な新築の家ではない。そこにあるのは―――――空き地。
少し荒れた土地が広がっている。そこにぽつんと一人立っているのは、
「つ、つぐみ!」
つぐみはそこに居た。放心状態のようにただ一人。
「つぐ―――――っ」
武は躊躇した。また、知らないと言われ拒絶されてしまうのではないのかと思い。
しかし、先ほどの声が聞こえていたらしい。つぐみがこちらに振り向いた。
「たけ・・・し?」
あ、と武は声を漏らした。
「武ー!!」
つぐみが武の胸に飛び込んできた。トンという軽い音。
「つぐみ・・・・」
武は笑う。嗚咽を漏らすつぐみを慰めた。
「ははっ、突進してきたから、ボディーブローかと思ったよ」
つぐみは顔を真っ赤にして、武の胸を軽く叩いた。
「・・・・・・バカ」


「さて・・・・どうする?」
なるべく日の当たらない所を歩きながら武は言う。日に当たっているとキュレイでなくとも倒れるだろう。
「どうするもなにも・・・・・確かめるのよ」
つぐみはスタスタと早足に歩く。一刻も早く知りたいのだろう。なぜ私達のことを誰も知らないのかと。
「・・・やっぱ、田中研究所だよな」
二人は走っていた・・・・・。


「すーはーすーはー」
武の深呼吸。するとおなかに手を当て、
「ひっh―――――」
「ぽんぽこぽんはやめなさい」
つぐみによって閉ざされたネタ。安産祈願でぽんぽこぽんって・・・・・。
「押す・・・・わよ」
つぐみの指先にはインターホンという文明の利器。
「いや、この場合は『たのもー』って」

「ポチっとな」

ピーンポーン
正解とインターホンの音。
「つぐみがポチっとな・・・・・何かおかしk」
ドス黒いものを武は見た。つぐみのオーラ。
「はーい」
ぱっと一言。それでオーラは霧散した。この声は、
「どちら様でしょうか?」
空。
玄関から出た彼女はニコリと快い微笑を浮かべる。
「研究所に所属したいのですが・・・・」
つぐみも微笑に答えるように微笑を浮かべた。


「少々お待ち下さい。今所長を呼びますので」
そう言って空は客室を出た。
「・・・・・・つぐみ、どうする気だ?」
「正直に私達を知ってるかなんて聞いても変でしょう。だから向こうの反応で対処するの」
武とつぐみのやり取りの間に所長である優春が現れた。
「彼方達が・・・・所属希望者ね?」
優春はスッと書類を差し出す。
「でもごめんなさい。ここではその判断ができないの。日本支社から派遣された人材が各研究所に所属するから」
つぐみは書類を見る。眼を疑った。
「だから、ライプリヒの日本支社に行ってみないと分からないわ。
 日向市には支社があるからその書類を見せれば話ぐらいはできるでしょう」
「ライ・・・プリヒ」
武は耳を疑う。優春はどうしたの?と顔を覗き込む。
「・・・ここは、ライプリヒの研究所」
「そうだけど・・・・」
つぐみは勢いよく立ち上がる。
「ココと桑古木と優秋は!?」
怒鳴るつぐみ。空と優春は眼を丸くする。そこに、
「呼んだか?」
桑古木が入ってきた。
「・・・ココは八神氏とこの町に住んでる。桑古木はウチで住み込み。優秋はもちろん家にいるわ」
躊躇しつつも優春は伝える。
「!?・・・そう」
つぐみは書類を握り締め、武を連れて田中研究所から飛び出した。
「なんなのでしょうか、所長?」
優春は笑い、上を見る。桑古木は無言。
「さあ・・・・ね?」


「どうして・・・ライプリヒが?」
つぐみは公園のベンチで考えに耽っている。
「そうだよなぁ」
ライプリヒは潰れた筈。それも優春たちの手によって。なのに今は昔のように幅を利かせている。
優春に渡された書類をつぐみは見た。そこにはライプリヒのパンフと優春のサインが書かれた紙がある。
「・・・・れ、LeMUがある」
パンフを見ていた武は震えた声で言う。
なんとパンフの中に株式会社LeMUの経営するテーマパークが載っていた。
あの忌まわしく、大切な場所。それが・・・・ある。
17年、34年の事件・事故で無くなったはずのLeMU。
「行って見るしか・・・ないか」
「ま、待てよ!ライプリヒだぞ!?ばれたらまずいって!」
そう、武たちはキュレイそれにつぐみはライプリヒから逃げてきたのだ。
「バカね。おそらく向こうも私達のことなんて忘れてるわよ」
武たちは忘れられている。それを利用する。そしてパンフの地図に沿って歩き始めた。


「でけえなぁ・・・・」
天に向かい一直線に伸びるビル。ライプリヒ製薬・日本日向支社。
そこらのビルよりかなり大きい。
「入るわよ」
大きな回転式のドア。信用のために言うが六○木ヒルズではない。
ドーム並みのエントランスホール。そこに人が沢山いる。外は暑いが中は冷房が効いていて快適。
つぐみはすたすたと歩き、社員っぽい人に話しかけている。
武は柱に寄りかかった。そこでつぐみを待つ。

ふと、眼を覚ます。眠っていたようだ。
「ふぁ〜・・・・っと」
伸びをする。そしてそのまま準備運動。
「ってなんじゃそりゃー!」
ノリ突っ込み。武は笑う、自分に対して。
「・・・つぐみ、まだ終わんないのか?」
あたりを見渡す。つぐみはいない。しかしそれ以上におかしい。
「おいおい、冗談・・・・・じゃないな」
つぐみどころか『誰もいない』のである。あれだけ人で賑わっていたのに。
空っぽになったエントランスホール。
「つ―――ぐ―――み――――!!」
叫ぶ。反応がない。

コツン

どこかで音がした。それを武は聞き取り音へ向かってダッシュ。
柱の向こう。そこにはソファーがあった。大きく、赤い、ふかふかの。

「こんにちは」

ソファーには先着がいた。それは、少女だった。少しウェーブのかかった髪。
「・・・・ども」


作り出された『もう一つ』は『本来』と繋がり『Y』となる。
そして武、つぐみは見ることになる。

その、『もう一つ』を――――――――






あとがき

ちょっと長編、バトルSSの第一話です。
かなり短め。
Y・・・・なんか鳥社永遠さまとテーマがかぶっ――げふんげふん。
3〜6ぐらい続くと思いますが、どうか最後までお読み下さいまし。

ココが書けない七桃 りおでした〜。


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