リレーSS
                              チョコシュー



プロローグ


ゴロゴロ・・・ピカ!
「ふふふふ・・・」
「くすくす・・・」
雷雲が立ち込める嵐の中、
太平洋のど真ん中に位置する
地図にものっていない無人島。
その地下に存在する研究所に、二人の不気味な笑いがこだまする。
「ついに準備は整った。後は標的をここにつれてくるだけだ・・・」
「長年夢見たことが現実となる・・今度こそ、いただくとしよう・・」
「こんどこそ・・・!!」
「こんどこそ・・・!!」
ゴロゴロ・・・ピカ!!
最後のほうは雷によりかき消され、最後に言った言葉は本人のみ知ることが出来た。






「少し買いすぎたか・・・」
両手にかかった荷物の重量を確かめながら倉成武は言った。
「俺とホクトはともかくつぐみはよく食べるからなぁ・・」
武の妻である倉成つぐみはそれはもうよく食べる。
家族4人のくせにいつも米を6合炊かなければならない。
ちなみに食事は武か武の息子のホクトが作る、倉成家の女たちは何故か料理が驚異的なほど下手だからだ。
一度張り切って武の娘である沙羅と一緒に、夕食を作ってくれたのは良かったが・・
食べ終った後全員寝込むはめになってしまった…あまりの不味さと、そしてどこをどう料理すればこうなるのかと
小一時間ほど問い詰めたくなるような・・醜く、なんともいいがたい形をした物体Xを食べたせいで。
「つぐみ・・いつか絶対に太るような気がする」
つぐみが自分の食事を食べながら
ぶくぶく太っていく様子を思い浮かべながら、武はひとり言を言った。
しかし、ひとり言は一人でしゃべるからひとり言であって誰かが聞いていた場合それは会話となる。
「お父さん、今の言葉お母さんに言ってあげようか?」
武の後ろから声が聞こえた。
「おわぁ!さ、沙羅。いつの間に…」
「ふふふ、くのいちをなめたらいけないでござるよ」
不敵な笑みを浮かべ沙羅は武に言った。
「さ、沙羅さん。お願いですからつぐみには…」
「分かってるでござるよ父上。その代わり…」
「な、なんだよ…」
やはりなにかあるのか。そう思いつつ武は身構える。
「福引券、ちょうだい」
「ふ、ふくびきけん?」
武は予想していた答えと違っていたため思わず聞き返してしまった。
「そ、福引券でござる。今、商店街のキャンペーンで福引やってるからやろうと思って」
「な、何だそんなものか…今買い物したから十枚あるぞ、ほれ」
「サンキューでござる父上」
沙羅は上機嫌で福引所へ向かっていく。
武も暇だからその後をついていくことにした。

福引所についた武がまず最初にしたのが景品を確かめることだった。
福引の景品は、最低がオーソドックスなティッシュ、最高がリゾートの島一週間貸し切りご招待券だった。
もちろん中間にも豪華な景品があったのだが、武はリゾート貸し切り招待券の文字を見た瞬間
招待券だけに目がいってしまった。
そして武は妄想モードにはいる。…数秒後武の顔がにやけた。何を考えていたのかはご想像にお任せしよう。
「なあ沙羅、お前が狙っている景品ってまさか…」
妄想が外にでないように武は沙羅に聞いてみた。
リゾート貸し切り招待券だったら嬉しいなと思っていた武であったが…
「もちろん!二等の新型ノートパソコンだよ!
ノートなのに今私が持っているデスクトップの性能をはるかに凌駕するスペックは魅力的だよー」
そ、そんなものがあったのか…と思いつつがっくり肩を落とす武であった。
「?どうしたのお父さん」
沙羅が心配そうな顔をして武の顔を覗き込んだ。
「いや、なんでもないんだ…なんでも……」
「??」
よく分からないと言いたげな沙羅だったが、福引の順番が来たため質問は後回しにした。
おじさんにこの時のためだけに友達などからかき集めた福引券30枚を渡した。
「えっと、30枚ね。3回だよ。」
そういわれると沙羅はハンドルを持ち、目をつぶり精神集中を始めた。
自分の手に全神経を集中させ、沙羅は一回ハンドルを回した。出てきたのは白の玉だった。
「…白ね。はいティッシュ」
沙羅は忌々しげにティッシュを受け取り、また一回ハンドルを回した。すると…
「…こ、これは!!」
おじさんがすぐそばにあったベルを大きく振り回しながら鳴らした。
「おめでとうございます!二等のノートパソコンです!!」
「…え?」
沙羅は信じられないという顔をしながら立ちつくしている。
「はい、景品のノートパソコン」
おじさんから景品を受け取った後、沙羅は正気に戻り、嬉しさのためか体が震え始め景品を頭上に上げて叫んだ。
「うおおおおお!!!エイドリアーーーーン!!!!」
その光景を見ていた武は…
「む、娘よ…立派な芸人になったな…」
感動していた。周りは賞賛の拍手を送りながらも引いていたが。
「さて、帰って早速やらなきゃ…」
帰ろうとする沙羅の肩を武がつかむ。
「ちょっとマテ」
「な、なにお父さん…」
沙羅が「私何か悪いことした?」て顔をしながら武を見る。
「後、一回残ってるぞ」
「あ、嬉しさのあまり忘れてた」
沙羅は「もうどうでもいいよ、目当てのものは当たったから」という感じの顔をしながら適当に回した。
しかし沙羅の運の強さはノートパソコンでは収まらなかったらしい。
「お、お、おめでとうございます!!一等リゾート貸し切りチケットです!!!」
おじさんはありえないという顔をしながら沙羅にチケットを渡すが
「…お父さん、こ、これ…って何で倒れているの?!」
沙羅は困っていた。チケットを手に入れた喜びもあったが
それより鼻血を出しながら倒れていたこの父親をどうやって連れて帰るかに。


1時間後、家のリビングで目を覚ました武が目にしたものは狂喜乱舞した家族の姿だった。
「リゾートだー!!!!」
ホクトが家の中を犬のように駆け回っている。
「お兄ちゃん!なに着てく?!」
沙羅は洋服を並べ何を着ていくか迷っているようだ。
「武と旅行…ふふふ」
つぐみはなにやら笑みを浮かべている
どうやら、かなりの嬉しいらしい。
「おはよ…かなりうるさいんだけど」
耳の中に耳鳴りを感じた武はつぐみに話しかけた。
「おはよう武。沙羅が当てた招待券なんだけど…勿論行くわよね」
つぐみは武の顔を覗き込む。その顔は笑っていてとても自愛に満ちているようだった。が
最後の言葉で武は背筋に寒気を感じた。もしここで「いや、仕事が…」って言った瞬間…
武の体は家族の手によって、屋上から落とした潰れたトマトみたいなことになるだろう。
「あ、ああ。もちろん。仕事も休めそうだし…」
勿論仕事なんか休めるわけがない。ただでさえこの不況の世の中、休んだりしたら即首が飛びそうだ。
まあ、そうなったらそうなったで優に助けてもらおう。と武は思った。
確実に自分の体を失うことになると思ったのは後のことだったが。
「よし!リゾートへ行くぞー!!」
「おー!!」
「おー!!」
「おー!!」
家族全員でリゾートへの夢を膨らませた、ある一日だった。
しかし、今思えばおかしいことだと思うべきだった。
まさかこの旅行があんなことになるとは誰も予想しなかった…

つづく


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